業績悪化による人員削減策

業績悪化による人員削減策(リストラ)

会社の業績が悪化したため、余剰人員の削減を行いたいという経営者も多いことでしょう。

しかし、人員の削減は従業員に辞めてもらうことであり、従業員の生活に重大な影響を及ぼします。法律的にも厳しい規制がなされています。対応を誤ると、退職が無効となり、過去の賃金の支払いや慰謝料の支払いを命じられる場合もあります。

そこで、経営難に陥った場合に行う余剰人員の削減の内容・方法についてわかりやすく説明します。

人員削減の位置付けを押さえる

人員削減・人件費削減は会社の経費削減策の最終手段

経営の再建・合理化のためには、さまざまな施策によってより強い企業体質、競争力をつけていかなくてはなりません。

ただし、この場合の施策とは、人員削減・人件費削減といった雇用調整に限られるものではありません。むしろ雇用調整は、経営の再建・合理化に向けた企業全体の再編や改革、すなわち“リストラクチャリング”の一環として、最後の手段としてとられる方法だということを忘れないでください。

雇用調整としてどんな施策を行うにしても、それを実施する前には、まず雇用調整を回避するための施策を十分に検討し、実施することが重要です。

たとえば、役員報酬カットや役員数の削減など、一般社員に先立って、経営陣自らに何らかの経費削減策を課す必要があります。これは、経営悪化の責任を示す意味でも重要です。雇用調整をこれから行うに際して、経営陣自らがまずは“血を流す”ことをしなければ、一般社員は決して納得しません。

役員以外にも、雇用調整の計画を立てるうえでは経営に近い立場にある者、つまり管理職について、一般社員よりも先行して雇用調整を行うことが重要となります。

さらに、処分できる会社資産があれば、雇用調整に先行して処分しておきます。人件費以外に削減できる経費は徹底的に削減します。

こうした雇用調整を回避するための努力は、万一紛争になった場合に、”最大限行われたかどうか”が裁判所等の判断材料とされることもあります。

人員の削減と人件費単価の削減はどちらを先に行うべきか?

経営者・人事担当者はリストラの方策をめぐって、人員の削減が先か、賃金ダウンが先かで、いつも思い悩みます。

この点について、賃金ダウンは従業員のモチベーションを大きく下げるので人員の削減が先だという論者を比較的多く見かけます(髙井伸夫「人員削減・賃金ダウンの法律実務」18頁 日本経団連出版 平成16年)。その理由は「人員削減を先行しなければ社員の納得は得られないのが現実である」ということにあるようです。

しかし、この見解は、業務との関係で余剰人員(「含み損社員」)が生じていることを前提とした主張であると思われます。つまり、担当業務や賃金の高さから辞めてもらった方がよいと思われる余剰人員がいるのであれば、その人たちに辞めてもらい、残った社員の賃金は維持する(賃金カットを回避する)べきだという考え方であると理解されます。この考え方であれば、人員削減を先行するべきということは正しいと思います。

しかし、例えば会社の維持するために必要な業務との関係で、現在の人員を辞めさせるわけにはいかない場合もあります。つまり、余剰人員は発生していないが、会社の業績及び資金繰り的に現在の賃金水準を維持出来ない場合です。その場合は人員を削減してしまっては業務を維持できないわけですから、賃金カットにより経営破綻を回避するしかありません。

このように、会社の存続に必要な業務との関係で余剰人員が生じている場合は、人員削減を先行させ、賃金ダウンは回避することになります。これに対して、会社の存続に必要な業務との関係で余剰人員が生じていない場合は、人員削減を回避して、賃金ダウンを先行させる必要があります。

経営難における人員削減の成功とは?

人員削減と一言にいっても、社員が辞めただけでは成功とはいえません。何をもって成功とするのかについては常に意識をする必要があります。

① 量・質ともに予定どおりの人員削減が達成できたこと

まず、「量」とは、予定どおりの人数の人員が削減できたことを意味します。様々な指標から事前に算出した目標人数の削減が達成できたのであれば成功といえます。

ただし、「量」だけでは不十分です。人員削減の「質」も問われます。「質」とは、簡単に言えば、残ってもらいたい優秀な社員が残り、辞めてもらいたい余剰人員に辞めてもらうことを意味します。企業の再建に必要な優秀な社員が想定以上に辞めてしまった場合、再建はおぼつかなくなります。また、能力や業績の劣る余剰人員が想定以上に残ってしまっているのであれば、コストカットの目標が達成できていないことになります。

このように量・質ともに予定どおり人員削減が達成できたことが成功条件となります。

② トラブルなく人員削減を進められたこと

人員削減の過程で、例えば違法な退職勧奨や整理解雇を強行した結果、外部の労組の労働争議や弁護士による法的紛争に発展した場合、トラブルが残り企業再建の足かせとなってしまいます。

トラブルなく人員削減を進められることも成功条件となります。

③ 社内のモチベーションダウンを回避できたこと

人員削減は、辞めた人間のみならず、残った人間にもマイナスの感情をもたらします。会社に残れたとしても会社が人員削減を余儀なくされるほど経営危機に陥っていることは明らかですので、会社の行く末や自信のキャリアプランに不安を持つことは当然でしょう。モチベーションダウンにより仕事の生産性が下がることもありえます。

残る人員に対しても会社の状況や企業再建の道程を具体的に示し、モチベーションを維持することも成功の条件となります。

以下では個別に方法論を概説しますが、上記①~③の成功条件についても留意しながら進める必要があります。

配置転換

内容・効果

配転とは,従業員の人事配置を変更することであり,通常,職務内容や勤務場所の変更を伴います。

不採算部門や不採算支店の閉鎖に伴い生じた余剰人員を、別の部門や支店へ異動させることで、雇用を維持しつつ、人員を有効活用することができます。また、異動に伴い、役職変更(降格)や職種変更に伴い賃金の減額がなされる場合もあります。

配転そのものは、会社全体としては、直接的な人員削減ではなく、解雇回避(雇用維持)という側面もあるので、コストカットの効果は限定的です。

方法

配転については、就業規則上、使用者に広範な裁量が認められており、労働者が同意しない場合であっても、一方的な配転命令をすることは原則として認められています。

特徴・注意点

勤務地や職種の限定合意がある場合

企業が一般的に配転命令権を有するとしても,従業員との間に特定の職種に従事させることにつき合意していたり,特定の勤務場所で業務を行わせることについて合意している場合には,こうした職種や勤務場所の変更に際しては従業員側の同意が必要となります。

異動に伴い、役職変更(降格)や職種変更に伴い賃金の減額をする場合

降格や職務変更についての根拠規定や役職や職務に紐付いた賃金体系が賃金規程等に定められている必要があります。また、賃金の減額幅が大きい場合は降格や職種変更に関する必要性・合理性が強く求められ、不利益性を緩和する措置も必要となってきます。

出向

内容・効果

出向は、企業に籍をおいたまま、ほかの企業で勤務することを意味します。今までの処遇を変えずに、勤務場所だけをほかの企業に移します。それにより、出向元の企業では実質人数が減ることになります。

出向する社員の人件費を、どちらが、どのような割合で払うのかは出向元企業・出向先企業の取り決め次第です。一般的には、形式上は出向元の企業が出向者の人件費を全額負担し、給与支払いも行います。もっとも、出向先の企業から当該社員の人件費の一部を「出向料」「出向戻入金」などの名目で受け取りますが、人件費全額が受け取れるとは限りません。

したがって、出向では実質的な人員数は減らせますが、人件費は全額減らすことはできず、人件費削減の効果は限定的となります。

方法

出向は社員個人の合意を得なくても、会社の命令で実施できます。社員は特段の事情がなければこの指示に背くことはできませんから、雇用調整としては非常に取り組みやすい施策といえます。ただし、就業規則や労働契約において出向があり得る旨を示し,これに対する同意(包括的同意)を得ておくことが前提となります。

特徴・注意点

中小企業での活用は限定される

大手企業では、親会社から子会社、関係会社、関係の深い取引先などへの出向が多く実施されています。もっとも、中堅・中小企業でも、関連会社や取引先で懇意にしている企業があれば実施できますが、そのような関係企業がなければ実施は難しいのが実情です。

出向に伴い雇用条件が低下する場合は慎重な対応が必要

労務提供の相手方の変更に伴い、賃金などの労働条件、キャリア、雇用確保などの面で従業員に不利益が生じる場合は、就業規則に出向を命ずることがあるという定めのみならず、出向命令前に出向先での労働条件を明示して労働者の同意を得ておくべきでしょう。

転籍

内容・効果

転籍とは、現在の自社との雇用契約を解消し、それと同時に別会社で新しい雇用契約を開始することを意味します。形態的に出向と似ていますが、実はかなり性格の異なる方法です。出向の場合は、出向元企業の社員としての身分は維持しながら、別の企業で就業します。これに対して転籍では、自社の社員としての身分はなくなります。代わりに、完全に転籍先企業の社員となりますので、自社との雇用関係はなくなるわけです。

雇用契約がなくなりますので、該当社員の人件費の支払いも、完全に転籍先企業が行います。要するに、転籍とは、再就職と同時に行われる退職なのです。

雇用契約がなくなりますから、人員削減が実現できますし、人件費の削減効果も出向より大きくなります。

方法

常識的な範囲であれば会社が命令することができる出向とは異なり、転籍では、雇用契約の終了という重大な変更になるため、本人の同意が必須となります。通常は転籍同意書を取ります。

特徴・注意点

退職勧奨と同じ配慮が必要

次の就職先が明確となっているだけで、実体的には退職勧奨と同じですから、退職勧奨の場合と同じ注意が必要です。具体的な実施方法も、退職勧奨とほぼ同じになります。

出向+転籍の場合は、転籍について同意が必要

雇用調整型の出向や企業再編に際しての出向の際に,転籍を予定したうえで出向を命ずるケースがあります。このような出向+転籍の場合であっても,転籍について従業員の個別の同意が必要となります。具体的には,出向後どの程度の期間が経過した後に転籍となるのか,また,転籍後の条件等について示したうえで同意を取る必要があります。このような具体的な同意を得ていないにもかかわらず転籍を予定した出向を命じた場合,転籍予定時に出向者から転籍に対して異議が述べられたときには,転籍を強制することはできず,出向を継続するか出向を中止して復職させるかを判断しなければならないことになります。

解雇回避措置としての転籍を拒否した場合も整理解雇は慎重に

業績悪化により従業員全員の雇用維持が難しい状況にある場合、最終的には整理解雇とい
う形での人員整理が視野に入ってきます。整理解雇を回避する措置として転籍することは、雇用が確保される分、整理解雇より従業員にとってもメリットがあると言えます。ただ、転籍に応じず、整理解雇やむなしとなった場合、その対象者を解雇できるか否かは、改めて整理解雇4要素に従って判断することになります。転籍を拒絶した人を自動的に整理解雇の対象とすることは、人選の合理性に疑いが生じます。あらためて整理解雇の人選を行い、転籍の検討が解雇回避努力として評価されるように進める必要があります。

派遣社員の削減

内容・効果

派遣社員は、派遣会社(派遣元)との間の労働者派遣契約に基づいて受け入れている外部人材であり、労働者派遣契約の解消あるいは不更新によって、派遣社員を削減することは可能です。

直接雇用している社員の労働契約を解消する場合は厳格な解雇規制(労働契約法16条 解雇権濫用法理)や雇止め法理(労働契約法19条)を受けますが、派遣社員の場合はこのような規制は受けません。派遣会社との間の労働者派遣契約を解消すればよいので、低リスクで解消可能です。

労働者派遣契約を解消して派遣社員を削減することで、その分の人件費コストの削減が可能です。

方法

労働者派遣契約を期間満了で終了(不更新)とするか、または、労働者派遣契約の期間途中の解約により、契約を解消します。

特徴・注意点

1 派遣契約の終了時期

派遣先が,派遣先・派遣元間の派遣契約を終了させることが,いわゆる「派遣切り」として論じられることが多い。もっとも,派遣契約終了には,①契約期間満了型と②中途解約型の2種類があります。

この点,①の期間満了型の場合は,派遣契約期間の満了時に,派遣契約を更新しない(新たな派遣契約を締結しない)というだけですので,法的リスクは相当程度低いといえます。派遣契約の不更新は有期雇用解約の雇止め法理のような法理はない為,例えばコロナ不況による業績悪化のタイミングで派遣解約期間が満了するのであれば,更新せずに終了させればよいです。このような観点から、有事に備えて労働者派遣契約は出来るだけ短期で更新するようにしておくことが無難でしょう(例えば、2~3ヶ月更新とする)。

2 ②派遣契約の中途解約

労働者派遣契約は,派遣先と派遣元で締結され,契約の解除には,①債務不履行による法定解除,②契約に定めた解除権の行使,③合意解除のいずれかの方法が考えられます。

この点,コロナ不況による業績悪化・業務縮小により派遣社員の受け入れを停止したいという場合は,派遣元(派遣社員)に落ち度はありませんので①の債務不履行に該当しません。よって,②の「業績悪化による業務縮小で派遣受け入れの必要がなくなった」場合に解除できることが派遣契約に定められている場合は,③派遣元と派遣先の合意による場合で無い限り,派遣契約は中途解約(解除)できません。

3 解除出来ないのに派遣就労を拒否した場合

上記のように派遣契約を解除できないが,派遣先企業の仕事が無い等の理由で派遣社員の就労を拒否した場合であっても,派遣先の都合によるため民法536条2項により派遣料金は約定どおり発生します。

ただし,派遣先が緊急事態宣言下における特措法45条2項に基づく休業の「要請」又は同3項の「指示」の対象事業に該当するため休業を余儀なくされている場合は,不可抗力による休業といえ,派遣料金は発生しません。

4 派遣元との間で合意解約する場合

上記3のとおり派遣就労を拒否しても派遣料金が発生するのであれば,派遣元と合意により解約をする他ありません。その場合は,以下の措置を取る必要があります。

派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
(1) 労働者派遣契約の解除の事前の申入れ

派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって解除の申入れを行うこと

(2) 派遣先における就業機会の確保

派遣先は、派遣労働者の責めに帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の碓保を図ること

(3) 損害賠償等に係る適切な措置

派遣先は、派遣先の責めに帰すべき事由により期間満了前に労働者派遣契約の解除をする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、損害賠償(休業手当、解雇予告手当等に相当する額以上の額)を行わなければならないこと

派遣先は、派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずること

派遣元事業主および派遣先の双方の責めに帰すべ事由がある場合には、派遣元事業主および派遣先のそれぞれの責めに帰すべき部分の割合についても十分に考慮すること

(4) 派遣契約解除理由の明示

派遣先は、期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行う場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行う理由を当該派遣元事業主に対し明らかにすること

5 実務的には

実務的には,上記3,4を踏まえて,派遣先から派遣元に一定の解決金(例えば,(派遣社員の休業手当相当額+派遣元会社の管理費用相当額)✕2~3ヶ月分)を支払うことにる示談で解決することもあります。また,その是非はともかく,派遣元と派遣先のビジネス上の力関係(今後の取引の継続)から,派遣先が派遣元に少額の解決金をもって対応する場合もあります。

6 派遣社員に対する休業手当の支払い義務

なお,派遣先が派遣就労を拒否した場合や派遣契約を中途解約した場合,派遣元にて他の派遣先をあっせんすることが出来れば別ですが,そうでなければ派遣社員は就労できずに休業状態となります。その場合でも,雇用主である派遣元は派遣社員に賃金又は休業手当を支払う義務があります。支払の要否は前記を参照にしてください。

契約社員の雇止め

内容・効果

期間を定めた労働契約を締結している契約社員,パート,アルバイトなどの有期雇用契約者は,期間満了で契約を終了させられることが原則です。そこで、業績悪化の場合には、正社員の雇用調整に先立って、契約社員を期間満了で更新せずに終了させることができます。

これに対し、有期雇用契約の契約期間中の解雇は行うことは可能ですが、正社員の解雇以上に厳しい規制がなされています(民法628条,労働契約法17条)。そこで、期間途中の解雇は出来るだけ避け,説得の上で退職・合意解約を行うか,期間満了による契約終了を行う方が適当な場合が多いでしょう。

方法

本人が契約更新を希望するものの、会社としては更新をするつもりがない場合は,期間満了による契約終了(雇止め)を告知します。事後のトラブルを防止する為,雇止め通知書を作成・交付し,受領のサインを取得します。一定の場合に有期雇用契約を更新しない場合、少なくとも契約の期間が満了する30日前までに予告をしなければなりません。

特徴・注意点

雇止め法理が適用される場合

更新回数が多数回に及び期間も長期となり,業務内容も正社員と同じで,契約更新も厳格になされていないような場合は,労働者の契約更新に対する期待は法的に保護され,正社員の解雇に準じた正当な理由がなければ,雇止めが許されません(労働契約法19条)。

雇止めの理由は正社員の整理解雇理由よりは若干緩やかに解されていますが,就労実態が正社員と異ならない場合は,正社員の整理解雇理由と同程度の雇止めの理由が必要とされます。いずれにしても前記正社員の整理解雇の要素である①人員削減の必要性,②人選の妥当性,③ 解雇回避努力,④解続の相当性に照らしに準じた慎重な対応が必要です。

なお,③に関して、正社員と有期雇用契約社員とでは,会社との結び付きの程度に差があり、そのことは人選基準の設定でも考慮されるべきとした裁半例(高松重機事件・高松地判 平10.6.2,アイレックス事件・横浜地判平18.9.26)があります。ただし,企業の財務状況や業務継続性との関係で,同じ業務を担えるのであれば,賃金の高い正社員よりも賃金の安い契約社員・パートアルバイトを残す(つまり正社員を整理解雇する)という判断も合理的な場合もありますので,ケースバイケースに判断をする必要があります。

採用内定取り消し

内容・効果

採用内定者の学生は、会社への入社は決まってはいるものの直ちに戦力となる人材ではありませんので、会社の業績悪化の状況によっては既に入社済みの正社員に先立って、内定取消をすることも可能です。

内定取消により内定者の就労は開始されず、その分の人件費コストの削減に繋がります。

方法

採用内定取消は内定者に通知する方法で行います。

特徴・注意点

1 採用内定取消しの規制

採用内定であっても,始期付き解約権留保付きの労働契約が成立するとされており,内定取消しは,解雇に準じて,労働契約法16条の解雇権濫用法理が適用されます。すなわち,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上の相当性がない場合は無効とされます。コロナに関連した業績悪化を理由に解雇をする場合は,整理解雇に準じた検討が必要とされます。

2 採用内定取消し回避努力

前述のとおり、採用内定取消しに関しては,整理解雇に準じた検討が必要ですから,まずは採用内定取消しを回避するための努力を尽くす必要があります。具体的には,前記正社員の整理解雇における対応のほか,採用内定取消しに関しては,以下の方策が考えられます。

(1) 自宅待機と雇用調整助成金の活用

採用内定取消し回避の為の方策として、入社予定日に入社させたうえで,実際には就業をさせずに自宅待機を命ずることが考えられます。もっとも,業績悪化に伴い会社の判断で自宅待機を命ずる場合は,事業者の責めに帰すべき事由による休業に当たるものとして,少なくとも労働基準法26条に定める休業手当を支払う必要があります。この場合は,雇用調整助成金を利用することが考えられます。

(2) 入社時期繰下げ

入社日自体を延期する措置(就労開始日の延期)を行う場合は,採用内定者への十分な説明をしたうえで.同意を得る必要があります。採用予定者の同意を得て入社日を変更した場合でも,採用内定者の不利益をできるだけ限定するため,延期期間はできるだけ短くするよう努めることが望まれます。

3 内定者を優先して整理対象とすることも可能

なお,整理解雇に際して,内定者を正社員より優先的に対象者とすることを不合理とはいえません(インフォミックス事件 東京地決平成9・10・31労判726号37頁)。

退職勧奨

内容・効果

退職勧奨とは、対象となった労働者の自発的な退職意思の形成を働きかけるための説得活動のことをいいます。つまり、会社の側から従業員に対して、「退職しないか」と勧めることであり、俗に「肩たたき」などと呼ばれることもあります。

業績悪化に伴う人員削減の方法として、従業員の退職を勧奨する手段として、希望退職の募集という方法があります。もっとも、希望退職が一定範囲の社員から一律に退職者を募集する施策であるのに対し、退職勧奨は「特定の社員に退職を促す」施策です。つまり、会社の業績に貢献していない社員にターゲットを定めて退職を勧めるという点が退職勧奨の特徴です。中小企業ですと後述の希望退職の募集は実施しずらいことも多く、退職勧奨が人員削減の中心的な施策になります。

退職勧奨に応じて退職した場合は、固定費である人件費コストの削減に繋がります。

方法

対象となった社員と個別に面談を実施して退職を促します。面談では、人員削減の必要性や当該社員が対象となった理由の説明を行います。また、退職を促進する観点から、所定の退職金に退職割増金をプラスし、さらに再就職支援を提示することもあります。

特徴・注意点

退職「強要」になってはならない

退職勧奨に関する法的な規制はありませんが、執拗な退職勧奨は違法とされ,不法行為に基づ
く損害賠償請求の対象となります。あくまでも本人の自由意志に基づく退職を引き出すことがゴールであり、退職強要によって無理矢理退職に追い込むことは避けなければなりません。

退職勧奨に応じない場合の対応に注意

退職勧奨に同意が得られなかった場合に、やむを得ず業務をあてがうために他部門への配置転換や転勤を行わざるを得なかい場合もあります。これらの措置は解雇を回避する措置としてもちろん有効となります。

しかし、こういった業務上の必要性や解雇回避目的がないにもかかわらず、給与減額を伴う配置転換や降格、無理な転勤、過酷な研修を行ったりした場合は、退職を仕向ける不当な動機・目的があったとして無効となる場合もあります。

また、退職勧奨を拒否した従業員を解雇する場合も注意が必要です。退職勧奨は,あくまでも「任意」での退職を求めるものであり,業務命令ではありません。したがって,退職勧奨に応じないからといって,そのことのみを理由として解雇できるものではありません。

もっとも、後述する整理解雇の場面において,退職勧奨を実施したとが「解雇回避努力」の一態様として斟酌され,整理解雇の合理性を認める要素として働くことはあり得ます。それゆえ、退職勧奨後の整理解雇も予定している場合は、退職勧奨の段階で、整理解雇の要件に沿って準備を進める必要があります(特に、整理解雇の人選基準について)。

希望退職者募集

内容・効果

希望退職は、短期間のうちに大幅な人員削減を実現する手法として、もっとも一般的な施策です。通常は、業績不振、事業所の統廃合、企業の合併・吸収、あるいは業務改善などによって生じた余剰人員を削減するために用いられます。

会社が一定の期間、および対象範囲を指定し、その期間に限った退職優遇条件を設定して、退職者を募集します。なお、「‘退職優遇条件」とは、退職金の割増や再就職支援サービスの付与など、通常の退職時にはない条件のことです。

希望退職は人件費を短期間のうちに削減できる効果があります。

方法

削減(募集)人数、対象者、募集期間、退職日などを設定した上で、従業員説明会を実施して周知し、応募を募ります。応募が予定した人員に達した場合は退職手続を進めて終了となります。予定人員に達しなかった場合には,①募集期間の延長,②いったん打ち切りのうえ,二次募集を実施,③希望退職以外の手段の実施(退職勧奨)などを行い、予定人員に達するまで進めます。

希望退職の募集に当たっては,応募者を確保する観点から一般的に優遇措置を付する場合が多くあります。具体的には,割増退職金の付与,有給休暇を買い取り、再就職の斡旋、社宅の退去に関し配慮する場合,再就職のための特別休暇を付す場合などがあります。

特徴・注意点

退職してほしくない社員からの応募への対応

希望退職を募集する際,企業側としては,退職してほしくない優秀な社員らからの応募があった場合の取り扱いが問題となります。こうした問題に対応するため,希望退職の募集条件として,「企業側が希望退職制度の適用を認めた者のみ」とするケースが多いです。とは言え,実際には希望退職に応募した従業員は,自分が退職を希望しているといったん表明してしまった後に,引き続き企業に勤務し続けることは難しいといえます。このため,実務上は,企業に
おいて希望退職の募集と同時に残って欲しい優秀な社員と個別の面談を実施し,企業側としての希望を伝えるといったことが行われることが多いです。

すでに退職の意思表示をしていた者が適用を求めてきた場合

すでに退職を表明していた(あるいは退職に合意していた)従業員が,希望退職の募集を知って自分も当該優遇条件の適用を受けたいと希望する場合にトラブルになることがあります。法的には希望退職の募集が開始される前に退職の意思表示をした以上,当該条件の適用を求める権利はないと解されています。もっとも、トラブルを避けるために,希望退職の募集要項には「募集要項が明らかにされた時点よりも前にすでに退職の意思表示をしていた者には応募資格がない」旨を明記しておくことが望ましいでしょう。

整理解雇

内容・効果

以上に述べた人員削減策その他合理化策を検討又は実施しても、なお会社の経営が危機的状況である場合に、最後の手段として整理解雇を行うことになります。

一方的に雇用契約を解消することになりますので、人件費コストの削減に絶大な効果を有します。

方法

整理解雇の(予告)通知を行う方法によります。

特徴・注意点

整理解雇の要件

整理解雇が有効と認められるには,①人員削減の必要性があり,②整理解雇を実施する前に十分な解雇回避の努力が尽くされ,③整理解雇の対象者を選定する際に客観的かつ合理的な基準を用いており,④整理解雇の必要性や人選等につき従業員(および組合)に対して説明を尽くしてその納得を得るよう努め,誠意をもって協議していることが必要とされています。これらを踏まえた上で解雇通知を行います。

 

 

 

 

 

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