雇止めの進め方

すぐわかる!雇い止めの進め方(書式例あり)

社長
当社は中小の電子部品メーカーですが、製造工員としてYを期間半年間と定めて嘱託社員として雇用し、以降4回の契約更新を経ました。しかし、Yは最初こそはまじめに勤務していたのですが、徐々にミスが多くなり、しばしば遅刻欠勤を繰り返すなど勤務態度が思わしくなくなりました。また、新しく赴任した正社員とも折り合いが悪く、よく作業に関して口論になると聞いています。そこで、Yを次回の更新期日で契約終了としたいと考えています。このような雇い止めの進め方について教えてください。
弁護士吉村雄二郎
まず,現在の雇用状態・更新状況・契約上の更新条項を確認します。
次に,不更新事由に該当する雇止めの理由やそれを裏付ける事実関係や証拠を確認します。特にトラブルになりそうな労働者に関しては,雇止めを強行したとしても事後の紛争に耐えうるかを慎重に検討します。
労働者に対して期間満了による契約終了(雇止め)を通知(3回以上更新、通算1年以上になっている者には30日前予告)し,退職日までの勤務(引継)や退職手続(貸与物の返還,社会保険手続関係)を進めます。必要に応じて雇止め理由証明書を発行します。
雇止めには労働契約法第19条が適用され法律上の更新が認められる可能性があるので,事前に事実確認や証拠の確認をして検討をする必要がある
法的に雇止めが認められない可能性がある場合は,事案に応じて,上乗せ退職金や解決金を提示して合意による退職を得るなど柔軟な対応をすることも検討する

1 雇止めの要件の確認

有期労働契約においては,労働契約は期間満了とともに自動的に終了するのが原則です。しかし、正社員と同様の内容の業務に就いていた場合や、更新を何回も続けて相当長期間にわたって働いていた場合、あるいは、「ずっと働いて欲しい。」と言われていた場合など一定の条件があれば、雇止めをしたとしても,労働契約法第19条により法律上契約が更新される場合があります。

そこで,労働契約法第19条の適用があるか否かを確認する必要があります。

>>詳細は,「雇止めが許されない場合とは?」をご参照ください。

雇止めの基準
・更新状況(回数・期間)の確認
・労働契約法第18条の無期転換権の発生の有無
・更新・不更新の方針,労働契約書や就業規則の更新条項,不更新事由
・不更新事由に該当する雇止めの理由やそれを裏付ける事実関係や証拠

 

弁護士吉村雄二郎
雇止めの理由は労働契約法第19条により解雇に準じた理由が要求されますので,紛争になった場合の立証責任が使用者にあることを踏まえて,慎重に検討する必要があります。解雇を実行する場合同様にこの段階で出来るだけ専門家の助言を得てください。

2 本人との面談・雇止めの通知

(1)本人との面談

契約を更新しないこと(雇止めをすること)について本人と面談を行います。

契約不更新(雇止め)を予定する場合の面談時期ですが、本人の転職や生活への配慮から、なるべく早い段階(遅くとも契約満了1ヶ月前)で実施するべきです。

面談を行った際,雇止めを予定していた従業員本人が更新を希望していない場合もあります。そのような場合には、不更新を希望する旨の文書を提出してもらってください。退職届でも良いでしょう。下記書式は退職届と会社の承諾を一体化したフォーマットです。合意解約の効果を持ちます。2部作成して、お互い1部を保管します。

株式会社****御中

退職届

 私は、現在締結している有期労働契約について、契約期間終了後の更新をせずに、期間満了日をもって退職いたします。

20●●年●月●日
氏名 甲野 太郎 印


****殿

上記の退職の申出を承諾しました。
退職に伴う手続きについては、迫ってご連絡いたします。

20●●年●月●日
○△商事株式会社
代表取締役 ○野△太郎 印

(2)雇止め通知書(契約不更新通知書)

本人が契約更新を希望するものの、会社としては更新をするつもりがない場合は,期間満了による契約終了(雇止め)を告知します。事後のトラブルを防止する為,雇止め通知書を作成・交付し,受領のサインを取得します。

なお、次の条件に該当する場合は、有期雇用契約を更新しない場合、少なくとも契約の期間が満了する30日前までに予告をしなければなりません「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」平15.10.22 厚労告357)。

30日前予告の対象となる有期雇用契約
① 3回以上更新されている場合
② 1年以下の契約期間の有期雇用契約が更新され、最初に有期雇用契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
③ 1年を超える契約期間の雇用契約を締結している場合
※①~③に該当する場合であっても、あらかじめ契約を更新しない旨が明示されている場合は除く

甲野太郎 殿

契約不更新通知書兼理由書

令和●年●月●日
株式会社○△商事
代表取締役 ○野△太郎 印

 貴殿と当社との間では、現在有期雇用契約(期間満了日令和●年●月●日)が締結されていますが、下記理由により上記契約の更新は行わず上記契約の期間満了日をもって貴殿との雇用契約は終了となりますことを通知します。退職に伴う諸手続については、追ってご連絡いたします。

1 遅刻・早退が多いこと
2 業務にミスが多いこと
3 ・・・・・・

以上

雇止めによる労働契約の終了は、あくまで契約期間満了によって生ずるものであり、使用者からの雇止めの通知(意思表示)によって生ずるものではありません。解雇が使用者の一方的意思表示によって労働契約の終了という法的効果が生ずる(法律行為) のとは異なります(山川隆一『雇用関係法』第4版 253ページ参照)。よって、雇止めでその通知をすることは、本来理論的には不要ですが、労働者保護の観点からこれが必要とされています。すなわち、有期労働契約を3回以上更新し、または雇い入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者(あらかじめ更新しない旨明示されている者を除く)を更新拒絶(雇止め)するときは、「少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない」(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」平15.10.22 厚労告357、平20. 1.23 厚労告12)とされています。もっとも、同告示は、私法上の効力規定ではないので、告示に違反しても雇止めが無効となるものではありません(ただし,行政指導の対象とはなり得ます)。

(3)雇止め理由証明書

また,以下の条件を満たす有期契約社員を雇止めする場合,「使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない」こととなっています(前掲「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」)。

雇止めの理由証明書の交付の対象となる有期雇用契約
① 3回以上更新されている場合
② 1年以下の契約期間の有期雇用契約が更新され、最初に有期雇用契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
③ 1年を超える契約期間の雇用契約を締結している場合
※①~③に該当する場合であっても、あらかじめ契約を更新しない旨が明示されている場合は除く

そこで,雇止めとなった有期契約労働者から請求された場合に、速やかに雇止め理由を記載した文書が発行できるように、あらかじめ契約不更新通知書(兼理由書)を作成しておくか、雇止め理由書のフォーマットを作成しておくべきです。

雇止め理由書

〇〇〇〇 殿

当社が〇年〇月〇日付けで貴殿に予告した労働契約不更新(雇止め)の理由は、以下のとおりです。

  年  月  日
〇△商事株式会社
代表取締役 ○野△太郎

【労働契約を更新しない理由】
1.契約を更新しない旨が合意されているため
(1)契約を更新しない旨の契約条項がある
(2)契約更新の上限が定められている
(3)契約を更新しない旨が合意されている
2.更新の判断基準に照らして、当社が更新しないと判断したため
(1)担当していた業務が終了・中止したため
(2)事業縮小のため
(3)業務を遂行する能力が十分でないと認められるため
(4)勤務不良のため(               )
(5)その他(            )
※該当するものに○を付け、( )に具体的な理由を記載する

以 上

3 雇止め後にトラブルになった場合

雇止めについて、労働者が異議を述べた場合はどうするべきでしょうか?

裁判(労働審判や訴訟)を提起された場合でも、高い確率で会社側の主張が通る事実関係及び証拠状況であれば、特に対応する必要がありません。これに対して、裁判に以降した場合に会社側に不利な判断がなされる可能性が高い場合は、早期解決の観点から一定の金銭的提示を行い退職合意により解決することも検討します。

4 退職手続

退職日までの勤務(引継)や退職手続(貸与物の返還,社会保険手続関係)を案内します。

5 対応方法

1 事実の確認

雇止めの対応については,以下の事実を確認する必要があります。

□ 雇用契約の内容
□ 契約締結日,雇用期間,更新に関する約束,更新契約書の管理状況
□ 募集条件・採用手続
□ 雇止めの理由,経緯

2 証拠の確認・収集

□ 全期間の雇用契約書
□ 更新時に交わされた文書
□ 募集要項
□ 就業規則
□ 雇止めの理由に関わる書面
□ 雇止め後の交渉に係る文書

3 面談・雇止めの通知

遅くとも期間満了1ヶ月前には,雇止めをする旨を労働者に伝えます。事前に雇止め通知書や雇止め理由書を準備しておく必要があります。

それを受け,労働者が異議を述べる場合は,理由を説明して説得します。場合によっては上乗せ退職金や解決金を提示して,合意により雇用契約を終了させます。交渉が決裂した場合は,雇止めを実行し,期間満了後は出社させないようにします。

4 示談交渉

雇止め後に,労働者が異議を唱える場合があります。この場合も理由を説明して説得します。場合によっては上乗せ退職金や解決金を提示して,合意により雇用契約を終了させます。

5 労働審判・訴訟対応

労働者が示談に応じず,労働審判や訴訟を提起した場合は,代理人を選任の上,適切に対応します。

雇止めについては労務専門の弁護士へご相談を

弁護士に事前に相談することの重要性

雇止めについては、労働者の雇用契約上の地位を失わせるという性質上、労働者保護の観点から法律による厳しい規制がなされています。

判断を誤った場合や手続にミスがあった場合などは、事後的に社員(労働者)より地位確認・未払賃金請求等の訴訟を起こされるリスクがあります。会社に不備があった場合、復職や過去に遡って賃金の支払いや慰謝料の支払いを余儀なくされる場合があります。

また、解雇をきっかけに労働組合に加入をして団体交渉を求められる場合があります。

このようなリスクを回避するために、当サイトでは実践的なコンテンツを提供しています。

しかし、実際には、教科書どおりに解決できる例は希であり、ケースバイケースで法的リスクを把握・判断・対応する必要があります。法的リスクの正確な見立ては専門的経験及び知識が必要であり、企業の自己判断には高いリスク(代償)がつきまといます。また、誤った懲戒処分を行った後では、弁護士に相談しても過去に遡って適正化できないことも多くあります。

リスクを回避して適切な懲戒処分を行うためには労務専門の弁護士事前に相談することとお勧めします

労務専門の吉村労働再生法律事務所が提供するサポート

当事務所は、労務専門の事務所として懲戒処分に関しお困りの企業様へ以下のようなサポートを提供してます。お気軽にお問い合わせください。

労務専門法律相談

専門弁護士に相談することが出来ます。法的なリスクへの基本的な対処法などを解決することができます。

詳しくは

サポート内容及び弁護士費用 の「3 労務専相談」をご参照ください。

コンサルティング

会社は限られた時間の中で雇止めを適正に行う必要があります。進めていくなかで生じた問題に対して適時適切な対応が要求されますので単発の法律相談では十分な解決ができないこともあります。
コンサルティングにより、雇止めの準備から実行に至るまで、労務専門弁護士に継続的かつタイムリーに相談しアドバイスを受けながら適正な対応ができます。
また、雇止めに至るまでの注意指導書、弁明聴取書、雇止め通知書、雇止め理由書などの文書作成のサポートを受けることができます。
これにより企業の負担及びリスクを圧倒的に低減させる効果を得ることができます。

詳しくは

サポート内容及び弁護士費用 の「4 コンサルティング」をご参照ください。

労務専門顧問契約

人事労務は企業法務のリスクの大半を占めます。
継続的に労務専門の弁護士の就業規則のチェックや問題社員に対する対応、労働時間制度や賃金制度についてのアドバイスを受けながら社内の人事労務体制を強固なものとすることが出来ます。
発生した雇止め問題についても、準備から実行に至るまで、労務専門弁護士に継続的かつタイムリーに相談しアドバイスを受けながら適正な対応ができます。
また、注意指導書、弁明聴取書、雇止め通知書、雇止め理由書などの文書作成のサポートを受けることができます。
これにより企業の負担及びリスクを圧倒的に低減させる効果を得ることができます。

詳しくは

労務専門弁護士の顧問契約 をご参照ください。

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