会社による懲戒処分の対応【まとめ】

chokai.jpg

社員(労働者)による不祥事が生じた際,会社は社内秩序を守るためには懲戒処分を検討する。しかし,懲戒処分は企業秩序違反者に対する一種の制裁「罰」であるという性質上、労働者保護の観点から法律による規制がなされている。すなわち、懲戒処分の選択を誤った場合(処分が重すぎる場合)や手続にミスがあった場合などは、事後的に社員(労働者)より懲戒処分無効の訴訟を起こされるリスクがある。懲戒処分が無効となった場合、会社は、過去に遡って賃金の支払いや慰謝料の支払いを余儀なくされる場合がある。 そこで、このようなリスクを回避するために、会社による懲戒処分の行い方について、詳しく説明をまとめた。会社の経営者の方は是非参考にしていただきたい。  

目次

1 懲戒処分とは?

1.1 懲戒処分とは何か?

懲戒処分とは、業務命令や服務規律に違反するなどして企業秩序を乱した労働者に対して、使用者が制裁として行う不利益措置(制裁罰)のことをいいます。

労働契約は,社員が会社組織の中で,一定のルールの下に他の社員と協働して仕事を行うことを前提としています。社員が社内ルールを無視して好き勝手に仕事をしたのでは,会社組織としての成果を得ることはできません。そこで,労働契約関係では,企業秩序の維持が重要となるのです。

経営者が企業秩序を維持するための手段としては、人事考課の低査定,配置転換、普通解雇、損害賠償請求等があります。つまり,職場ルールを守らない社員については,人事評価を低く査定して賞与金額等を下げる,職種や職場を変更する,それでも改善されない場合はクビ(普通解雇)する,会社に損害が生じた場合は損害賠償を請求する,という方法もあるのです。

しかし,これらの手段だけでは,組織秩序を維持することが出来ないこともあり,より効力・威嚇力の強い制裁処分・罰が必要とされます。そこで,より威嚇力が強く、企業秩序を担保する特別の制裁・罰が懲戒処分なのです。

1.2 懲戒処分のどのような種類があるか?

それでは,懲戒処分にはどのような種類があるのでしょうか?以下概略を説明します(各懲戒処分の詳細は下記リンクをご参照ください。)

1 譴責・戒告・訓戒

いずれも労働者の将来を戒める処分ですが、戒告・訓戒が始末書の提出を求めないのに対し、譴責は始末書の提出を伴うことが多いという点で、一般的に戒告のほうが軽い処分です。
また、譴責・戒告は,多くの場合,昇給や賞与の支給などにおいて人事考課上不利益に考慮されます。

2 減給

減給の懲戒処分とは,労働者が労働義務を履行し、賃金請求権が発生しているにもかかわらず、制裁として賃金から一定額を差し引く処分を意味します。減給については労働基準法(以下、労基法)91条で、減給できる上限が定められています。
減給処分の限界の詳細については,以下の記事をご参照ください。

 

3 出勤停止・停職・懲戒休職

出勤停止の懲戒処分とは,労働契約を存続させながら、制裁として一定期間(一般には7日から10日程度)労働者の就労を禁止することをいいます(「停職」「懲戒休職」と呼ぶ例もあります)。

出勤停止の場合、労働者の帰責事由によって労務提供がなされないので、出勤停止期間中は賃金が支給されないのが普通です(民法536条2項)。ただし、就業規則に出勤停止期間中も賃金を支払う旨が規定されている場合はこの限りではありません。

出勤停止期間の上限については、法令による制限はないのですが, 実務的には、7日以内、10日以内、14日以内、1カ月以内、3カ月以内などさまざまな例がありますが,7日以内や10日以内が多い(労務行政研究所 労政時報3949号-18.4.13、懲戒制度の最新実態[図表13]参照)です。

4 降格・降職

降職の懲戒処分とは,職位を解き若しくは引き下げる処分をいいます。例えば,課長職を解いて,主任職とする場合などを意味します。

降格の懲戒処分とは,職能等級制等を採用している場合で,従業員の職能資格や等級を引き下げることをいいます。また,職務等級制を採用している場合には,給与等級(グレード)を引き下げることをいいます。

降職及び降格に伴い,職位ごとに定められた役職手当の減額,資格・等級ごとに定められた基本給の減額などが生じます。

5 諭旨解雇・諭旨退職

諭旨解雇の懲戒処分は,一般的に、懲戒解雇相当の事由がある場合で本人に反省が見られる場合に,解雇事由に関し本人に説諭して解雇するものであり,懲戒解雇を若干軽減した懲戒処分です。
一般に,諭旨退職は,労働者に退職願の提出を勧告し、それに応じない場合は懲戒解雇するという形式をとります。
いずれも懲戒解雇より一段軽い懲戒処分の一種であり、退職金の一部または全部が支給される場合が多いとされています。

6 懲戒解雇

懲戒解雇とは,重大な企業秩序違反者に対する制裁として行われる解雇であり、懲戒処分の中で最も重い処分です。

解雇の予告またはそれに代わる解雇予告手当の支払い(労基法20条)をせずに即時に行われ、退職金の一部または全部不支給を伴うことが通常です。

また,懲戒解雇は,労働者にとっての極刑を意味し,死刑のイメージとなります。懲戒解雇された事実は,労働者にとって再就職の大きな障害ともなり,不利益性が非常に高いものです。それゆえ,懲戒解雇の有効性は極めて厳格に審査されます。

懲戒解雇の場合は,解雇予告を行わず,解雇予告手当も支払わないといった対応をしている会社も多いですが,懲戒解雇であれば当然に解雇予告も解雇予告手当の支払いも不要になるという訳ではありません。事案によっては ,解雇予告または予告手当の支払いを必要とする場合もあるので注意が必要です。

1.3 懲戒処分はどのような場合に有効となるか?

それでは,懲戒処分にはどのような場合に有効となるのでしょうか?以下概略を説明します(懲戒処分の有効となる場合の詳細は下記リンクをご参照ください。)

懲戒処分を行う前に知っておきたい法的ポイント(有効要件)

懲戒処分を行う前に知っておきたい法的ポイント(有効要件)について,労働問題専門の弁護士が分かりやすく説明しました。

会社が懲戒処分を有効に行う為には,
①懲戒処分の根拠規定の存在,②懲戒事由に該当する事実の存在,③処分の相当性が要件 となります。

① 懲戒事由と懲戒処分の種類が就業規則に明記されていること

就業規則に明記

懲戒処分を行うには「使用者が労働者を懲戒することができる場合」(労契法15条)であること、すなわち、あらかじめ就業規則において懲戒の種別および事由を定めておくことが必要です(フジ興産事件 最高裁二小 平15.10.10判決)。
この懲戒処分に関する就業規則上の定めは,そこに記載していない事項は事後的に追加することはできない為,特に懲戒事由に関してはある程度網羅的に定めることが必要です。

就業規則の周知

就業規則が効力を有するためには、その内容の適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きがとられている必要です(労基法106条1項)。
周知させるとは,
① 就業規則を常時各作業場の見やすい場所へ掲示し又は備え付けること
② 書面を労働者に交付すること
③ 磁気テープ,磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し,かつ,各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること

を意味します(労基則52条の2)。

② 懲戒事由に該当する事実の存在

懲戒処分が有効であるためには、「客観的に合理的な理由」(労契法15条)があること、すなわち、労働者の行為が就業規則において定められた懲戒事由に該当することが必要となります。社員の不正行為が発覚した場合,就業規則に規定された懲戒事由に該当する事実があるか否かを, 証拠(特に客観的証拠や被処分者の自白が重要)の存否を見極めながら慎重に認定する必要があります。

③ 処分の相当性

「社会通念上相当」(労契法15条)であること、すなわち、処分の相当性も懲戒処分の有効要件となります。相当性とは,簡単に言えば懲戒処分が「重すぎないこと」です。相当性は「当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして」判断するとされています。具体的には、労働者の行為の態様・動機、業務に及ぼした影響、損害の程度のほか、労働者の反省の態度・情状・過去の処分歴などの諸事情を総合考慮して判断されます。

相当性については、まず、懲戒事由と懲戒処分の重さのバランスが要求され、重すぎる処分は相当性を欠くとして無効となります。
また、同種事案における過去の処分例との均衡や、賞罰委員会の開催、被処分者への弁明の機会の付与など懲戒処分に至るまでの手続的相当性(適正手続)も求められます。

具体的な事案において,いかなる懲戒処分が相当であるかについては,法律上の基準はありません。もっとも,参考にするべきデータは存在します。そこで,諸事情を考慮し,データを参照しながら,最終的に懲戒処分を決定することになります。

懲戒処分の基準に関する詳細は以下のページをご参照ください。

2 懲戒処分はどのように行うか?

2.1 懲戒処分の進め方・手続

懲戒処分の進め方の概要は以下のとおりです。

① 就業規則の作成・周知

企業が懲戒処分を行うには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別および事由を定めておくことが必要です。また,就業規則はその周知が有効要件とされていますので,懲戒について定める就業規則の内容について,従業員に対して適宜の方法で周知する必要があります。

② 事実調査

懲戒処分に該当する可能性のある事案が発生した場合は,懲戒処分の前提として事実の調査を行います。

③ 処分の決定

調査により認定された事実に基づいて懲戒処分を行うか否か,行う場合の懲戒処分の種類・程度を決定します。

④ 処分の実施

決定した懲戒処分を当該社員へ文書により通告します。

⑤ 処分の公表

実施した懲戒処分について,必要に応じて社内外に公表します。

⑥ 再発防止

懲戒処分を行っただけでは再度同じ不祥事が生ずる可能性があります。そこで,会社は再発防止の為に各種施策を講じます。

2.2 懲戒事由の調査はどのように行うか?

行うべき調査はケースバイケースで異なりますが,懲戒処分が争われた場合の立証責任が会社にあることを念頭に慎重に行う必要があります。

具体的には,関係者からの事情聴取,行為者本人からの事情・弁明の聴取,客観的証拠による裏付けの有無等を総合考慮した上で事実を認定します。

2.3 懲戒処分前に弁明の機会は必ず与えないといけないか?

懲戒処分,特に懲戒解雇のような重い処分をなす場合には,当該社員から弁明の聴取をする機会を設けるべきかどうかが問題となります。
まず,就業規則や労働協約に明定されている場合には,懲戒処分前の弁明機会の付与が欠ける場合,手続違反を理由に懲戒処分が無効となります。

就業規則や労働協約に特に弁明の機会の付与について定めがない場合は,法律上は弁明の機会を付与することは必須ではありません。しかし,特に懲戒解雇のような重い処分を行う場合には,慎重を期する意味で,できる限り弁明の機会は付与するべきです。

2.4 懲戒処分の種類・重さは、どのように決定するか?

懲戒事案が発生した場合,行うべき懲戒処分の種類・重さを定めた法律上の基準はありません。あるのは,「行為の性質及び態様その他の事情に照らして」「社会通念上相当である」べきであるという抽象的な規定(労働契約法15条)だけです。具体的な処分はケースバイケースで決定せざるを得ないのです。
そこで,同種事案における過去の裁判例,自社及び他社における過去の懲戒処分例,公務員の懲戒処分の基準(指針)などを参考に,ケースバイケースで決定する必要があります。

【参考】懲戒処分の基準については,以下の記事をご参照ください。

もう迷わない!分かりやすい懲戒処分の判断基準

懲戒処分の基準について労働問題専門の弁護士が分かりやすく解説します。 ...

2.5 懲戒処分の告知はどのように行うか?

懲戒処分の告知は,法律上は書面による必要はありません。ただし,事後の無用な紛争を回避するため,懲戒処分であることを明示して書面により通知しておくことが望ましいと孝えられます。なお,懲戒処分通知を発する場合には,処分対象行為と該当条項をできる限り包括的に記載しておくべきです。

2.6 懲戒処分の公表はどのように行うか?

懲戒処分を受けた者の氏名,対象行為,処分内容を社内に公表することは,他の社員への戒めとして再発防止目的でなされるものとして,合理性があります。
しかし,当該社員にとっては懲戒処分を受けた事実は社会的評価に大きな影響を及ぼすため,事案に応じて一定の配慮をする必要はあります。
具体的には,会社の文書を偽造したなどにより社外の者に多大な影響を与えた労働者を懲戒解雇したようなケースであれば,懲戒解雇をした事実を社内外に公表し,会社の名誉の保持と新たな被害発生の防止および責任の拡大の阻止に努めることが必要です。また,刑事事件により逮捕され,マスコミ報道により社名が取り上げられた場合に懲戒解雇したようなケースも,そのことを公表することが,会社の名誉の保持ないし回復のために必要性が認められます。こうした場合には,懲戒処分の公表行為は正当な業務行為として許容されるものと解されます。これに対し,社内の軽微な手続違反行為につき譴責や減給といった軽い処分を実施した場合であれば,処分対象となった行為と処分内容を社内にだけ公表するは合理性がありますが,氏名や所属まで公表する必要はないといえます。

3 事例別、懲戒処分のポイント

事例別の懲戒処分のポイントは以下のとおりです(詳細は,各事案におけるリンクを参照してください。)

3.1 痴漢等で逮捕された場合の懲戒処分

社員が痴漢等で逮捕された場合であっても必ずしも全ての事案で懲戒解雇をできるわけではありません。例えば,痴漢であっても,迷惑防止条例違反にとどまる場合は比較的軽い刑事処分(罰金など)になる場合が多く,初犯で反省もしており,勤務態度自体は真面目である場合などは,懲戒解雇をすることが無効となる可能性があります。この場合は,出勤停止や降格などに留まる場合もあります。これに対して,痴漢であっても強制わいせつ罪に該当する場合は,重い刑事罰が予定されており,懲戒解雇も許容される場合が有ります。

【痴漢等で逮捕された場合の詳細はこちらをご参照ください。】

社員が逮捕された!10分で分かる会社が知るべき7つの対応

社員が逮捕された場合に会社が行うべく対応を労働問題専門の弁護士が分かりやすく解説します。 ...

3.2 セクハラをした場合の懲戒処分

セクハラは,被害従業員に対して身体的又は精神的苦痛を与え,職場における具体的職務遂行能力を阻害し,企業秩序を乱す行為であることから,企業としても加害者に対して厳しい処分を行う必要があり,懲戒処分の対象となり得ます

懲戒処分の量定を考えるにあたっては,社員のセクハラ行為が①刑法上の強制わいせつ等犯罪行為に該当するレベルなのか,②着衣の上からお尻を触るという民法上の不法行為(損害賠償)が生ずるレベルなのか,③①,②には該当しないが被害者の職務遂行能力や職場環境を阻害するレベルなのか,ということが1つの重要な基準となります。

①の犯罪行為レベルの場合,強姦や強制わいせつに該当する犯罪行為を行った従業員に対する懲戒は,懲戒解雇を含む労働契約の解消しかありません。

②の不法行為レベルの場合,着衣の上から胸やでん部を触るといった行為は,初犯の場合には懲戒解雇や諭旨解雇することはできないと考えられ,普通解雇も一般的には難しいと考えられます。処分としては,降格(職位を外す)や出勤停止等の懲戒処分が相当といえます。もっとも,過去に同様の行為を行い,譴責・戒告等の懲戒処分を受けている場合は,事案によっては普通解雇できる可能性が高いと思われます。

③職場環境を阻害するレベルの場合は,譴責や減給,悪質な態様のものは降格等の懲戒処分とすることになります。管理職などの立場の場合は,職務適性がないとして普通解雇も許容される場合もありえます。また,それ以下のレベルのセクハラ行為者については,懲戒ではなく,まず注意・指導を与え,是正されない場合には譴責等の懲戒処分とすることが相当であると思われます。

【セクハラをした場合の懲戒処分の詳細はこちらをご参照ください。】

セクハラ行為に対していかなる懲戒処分ができるか?

セクハラ行為に対する懲戒処分について労働問題専門の弁護士が分かりやすく解説します。

3.3 パワハラをした場合の懲戒処分

パワハラは,被害従業員に対して身体的又は精神的苦痛を与え,職場における具体的職務遂行能力を阻害し,企業秩序を乱す行為であることから,企業としても加害者に対して厳しい処分を行う必要があり,懲戒処分の対象となり得ます

懲戒処分の量定を考えるにあたっては,社員のパワハラ行為が①「殴る」「ものを投げつける」などの暴行・傷害など刑法上の犯罪行為に該当するレベルなのか,②嫌がらせ目的等による強い叱責に起因して精神障害を発症するなど民法上の不法行為(損害賠償)が生ずるレベルなのか,③①,②には該当しないが「故意に無視する」「悪口をいう」「嫌みをいう」「からかう」など職場環境を阻害するレベルなのか,ということが1つの重要な基準となります。

①「殴る」「ものを投げつける」などの暴行・傷害,「死ね」「殺すぞ」といった脅迫などに該当する犯罪行為を行った場合は,出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などの比較的重い処分を検討することになります。被害者に生じた結果や言動の悪質性等を考慮して最終的には処分を決定することになります。

②上司からの嫌がらせ目的等による強い叱責に起因して精神障害を発症するなど民法上の不法行為が成立する場合は,懲戒処分としては,いきなり懲戒解雇や諭旨解雇することはできないと考えられ,普通解雇も一般的には難しいと考えられます。そこで,処分としては,降格(職位を外す)や出勤停止等の懲戒処分が相当とされるケースが多いと思われます。もっとも,過去に同様の行為を行い,譴責・戒告等の懲戒処分を受けている場合は,事案によっては普通解雇・諭旨解雇できるケースもあると思われます。

㉓職場環境を阻害するレベルのパワハラの場合は,譴責や減給,悪質な態様のものは降格等の懲戒処分とすることになります。管理職などの立場の場合は,職務適性がないとして普通解雇も許容される場合もありえます。
また,それ以下のレベルのパワハラ行為者については,懲戒ではなく,まず注意・指導を与え,是正されない場合には譴責等の懲戒処分とすることが相当であると思われます。

【パワハラをした場合の懲戒処分の詳細はこちらをご参照ください。】

パワハラ行為に対していかなる懲戒処分ができるか?

パワハラを理由とする懲戒処分について,労働問題専門の弁護士が分かりやすく解説します。

3.4 他の社員を暴力・障害した場合の懲戒処分

他人に暴行を加えることは,たとえ相手にけがをさせなくとも刑法208条の暴行罪(2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは過料)に,暴行によって怪我をさせた場合には同法204条の傷害罪(15年以下の懲役または50万円以下の罰金)に該当します。会社内で暴行・脅迫等の行為が行われると,従業員が暴力のもとに支配され,その恐怖を感じることとなり,職場秩序を乱すことは明らかです。よって、暴行行為は懲戒事由に該当する行為であり,事案によっては懲戒解雇や諭旨解雇の事由に該当します。

懲戒処分の量定を考えるにあたっては,社員の行為が暴行罪にとどまる程度なのか,傷害罪にまで至る程度なのかということが1つの重要な基準となります。そして,暴行にとどまる範囲である場合には,懲戒解雇など労働契約の解消を前提とする懲戒処分を選択することは難しいといえます。これに対し、傷害に至る程度である場合には,行為の態様その他の事情にもよりますが,諭旨解雇や懲戒解雇を選択することも検討されます。

もっとも、傷害の程度が軽微で,加害者が謝罪をし,被害者もそれを受け入れているような場合には,懲戒解雇や諭旨解雇といった重い処分を課すことは困難であり,より軽い処分にとどめざるを得ない場合もあります。

【暴行・傷害をした場合の懲戒処分の詳細はこちらをご参照ください。】

会社内での暴行・傷害で懲戒できるか?

会社内における暴行・傷害行為は懲戒事由に該当する行為であり,事案によっては懲戒解雇や諭旨解雇等の事由に該当します。当該行為の悪質性,企業秩序に与えた影響の大きさによっては,懲戒解雇も含めた厳しい処分が必要になります。労働問題専門の弁護士が分かりやすく説明します。

3.5 経歴詐称をしていた場合の懲戒処分

職歴や学歴、資格取得などを偽る経歴詐称は、労働者の適正配置や人事管理等に多大な支障を来す行為です。また、労働契約の基盤である信頼関係を破壊するものでもあります。そのため、経歴詐称については、懲戒解雇事由として規定されていることが一般的です。

もっとも、いかなる経歴詐称もすべて懲戒解雇相当ということではなく、経歴詐称による解雇が有効とされるためには、「重要な経歴の詐称」に該当することが必要とされます。

「重要な経歴詐称」とは何かというと、一般論としては、(1)その経歴が当該労働者の採否に決定的な影響を与えること、すなわち、真実の経歴が申告されていれば、その労働者を採用することはなかった場合であって、しかも、(2)そのような事実があれば採用しないということに社会的な相当性があること(つまり,他の会社でも採用しなかったといえる場合)が要件だとされています。
具体的には,採用面接時の着目度合い,その詐称の内容や本人の職務,入社後の状況などを踏まえて検討をすることになります。

【経歴詐称をした場合の懲戒処分の詳細はこちらをご参照ください。】

経歴詐称で懲戒解雇できるか?知っておきたい調査・処分決定のポイント

経歴詐称で懲戒解雇できるか?調査・処分決定のポイントについて,労働問題専門の弁護士が分かりやすく解説します。

3.6 遅刻・無断欠勤を繰り返す場合の懲戒処分

労働契約関係において,所定労働日に所定労働時間に過不足なく労務提供を提供することは,労働者の基本的な義務です。それゆえ,所定労働日に無断で出勤せずに労務を提供しないこと(無断欠勤)や,所定労働時間に満たない労務提供しかしないこと(遅刻や早退)は,労働者としての基本的義務を怠ることに外ならず,重大な債務不履行になります。そして,重大な債務不履行は普通解雇の対象となります。のみならず,無断欠勤や遅刻等は,会社の人員配置にも影響を与え,企業秩序を乱す場合は懲戒処分の対象にもなり得ます。

もっとも,無断欠勤や遅刻があったとしても,懲戒解雇や諭旨解雇などの重い処分を行う場合は慎重な検討が必要です。裁判例では,事前に注意・指導や戒告・譴責等の懲戒処分による警告を行った上でなければ,無断欠勤や遅刻があったとしても懲戒解雇や諭旨解雇を認めないとするものもあります。そこで,無断欠勤や遅刻などの勤怠不良の場合は,懲戒解雇や諭旨解雇を行う前に,普通解雇を行う又は懲戒解雇や諭旨解雇より軽い懲戒処分に留めるという選択肢も検討した方がよいでしょう。懲戒解雇や諭旨解雇を選択する場合は,同時に,予備的普通解雇を行うこともお勧めします。

【無断欠勤,遅刻を繰り返した場合の懲戒処分の詳細はこちらをご参照ください。】

無断欠勤,遅刻を理由に懲戒解雇できるか?

無断欠勤,遅刻を理由に懲戒解雇できるか? 対応のポイントなどについて,労働問題専門の弁護士が分かりやすく説明します。

3.7 勤務時間外に飲酒運転をした場合の懲戒処分

飲酒運転は,道路交通法上の酒気帯び運転または酒酔い運転の罪に問われ,懲役または罰金刑が科されることがあります。また,人を死傷させた場合には,その程度に応じて,危険運転致死傷罪,自動車運転過失致死傷罪,業務上過失致死傷罪などの刑法上の罪に問われることになります。ただし,勤務時間外の飲酒運転は,マスコミ報道などにより会社の名誉・信用が失墜したとか,逮捕勾留等により長期間の欠勤により労務提供が出来なくなった場合以外には懲戒解雇等の重い処分を行うのは難しいと思われます。

【飲酒運転の場合の懲戒処分の詳細はこちらをご参照ください。】

飲酒運転を理由とする懲戒処分 | 弁護士の解説

飲酒運転をして逮捕された場合の懲戒処分について,労働問題専門の弁護士が分かりやすく解説します。

3.8 業務命令・指示に従わない場合の懲戒処分

会社は業務全般について労働者に対して必要な指示命令を行う権限を有しています。指示命令が有効である限り,それを正当な理由無く拒否する行為は懲戒事由に該当します。

懲戒処分の量定は,業務命令違反の頻度,業務上の支障・被害の程度,改善の見込みの有無などに応じて決定しますが,懲戒解雇などの重い処分をいきなり行うことは一般的には困難です。

【業務命令違反の場合の懲戒処分の詳細はこちらをご参照ください。】

業務命令違反と懲戒

業務命令違反の場合の懲戒処分の可否・量定について,労働問題専門の弁護士が分かりやすく解説します。...

 

3.9 残業や休日出勤を拒否する場合の懲戒処分

会社は労働契約上,適正な手続(36協定など)を前提に,時間外労働・休日労働を命ずることが出来る場合,それを正当な理由無く拒否する労働者の行為は懲戒事由に該当します。

懲戒処分の量定は,残業・休日出勤命令違反の頻度,業務上の支障・被害の程度,改善の見込みの有無などに応じて決定しますが,懲戒解雇などの重い処分をいきなり行うことは一般的には困難です。

【残業や休日出勤命令違反の場合の懲戒処分の詳細はこちらをご参照ください。】

>>追加予定

 

3.10 異動・転勤命令に従わない場合の懲戒処分

会社は労働契約上,異動・転勤・職種変更を命ずることが出来る場合,それを正当な理由無く拒否する労働者の行為は懲戒事由に該当します。

懲戒処分の量定は,異動・転勤・職種変更の拒否による業務上の支障の程度,改善の見込みの有無などに応じて決定しますが,懲戒解雇などの重い処分をいきなり行うことは一般的には困難です。ただし,正当な理由なく拒否を続ける場合は,最終的には懲戒解雇を含む重い処分も可能です。

【異動・転勤命令に従わない場合の懲戒処分の詳細はこちらをご参照ください。】

転勤命令を拒否した場合の懲戒処分 | 弁護士の解説

転勤命令を拒否した場合の懲戒処分は懲戒解雇が基本です...

3.11 社内で窃盗・横領をした場合の懲戒処分

社員による業務上横領罪(刑法253粂),窃盗罪(同法235条),詐欺罪(同法246条)などの刑法上の犯罪行為は,会社の秩序を害する重大な行為であり,当然のことながら懲戒事由に該当します。

懲戒処分の量定は,金額が少ない場合であっても,懲戒解雇を含む重い処分が許容される場合が多いでしょう。被害金額の回収も同時に問題になりますのでその点の配慮も必要となります。

【社内で窃盗・横領をした場合の懲戒処分の詳細はこちらをご参照ください。】

社内で窃盗・横領した場合の懲戒処分の判断基準

社内で窃盗した場合の懲戒処分の基準について労働問題専門の弁護士が分かりやすく解説します。 ...

3.12 勤務成績不良の場合の懲戒処分

追加予定です。

3.13 リベート等の不正な利益を得た場合の懲戒処分

追加予定です。

3.14 不当な内部告発をした場合の懲戒処分

追加予定です。

3.15 無許可で兼業・兼職をしていた場合の懲戒処分

追加予定です。

吉村労働再生法律事務所の対応

1 経験豊富な弁護士に相談

懲戒処分の有効性判断は,明確な基準が存在せず,かつ,判断が難解かつ複雑であり,また,貴社が採るべき対応策はケースバイケースで決めざるを得ません。貴社独自で調査の上でのご対応が,時に誤った方法であることも多分にございます。
そこで,まず,懲戒処分について豊富な経験実績を有する弁護士にご相談下さい。ご相談が早ければ早いほどとりうる手段は多いのが実際ですので,トラブルが少しでも生じましたら出来るだけ早期にご相談されることをお勧めいたします。
吉村労働再生法律事務所では,常に労働問題を専門的に取り扱う経験豊富な弁護士が直接対応させていただいております(原則的に代表弁護士である吉村が対応させて頂きます。)。裁判のリスクを踏まえながら,法律上の問題点を指摘しつつも,抽象的な法律論に終始することなく,貴社が採るべき具体的な対応策を助言いたします。早期のご相談により紛争を未然に防止することが出来た事例が多数ございます。また、その後の交渉・裁判対応においても有利な対応を取ることが出来ます。

法律相談受付 TEL:0120-3131-45

2 継続的なご相談・コンサルティング

懲戒処分に関する対応は,長期化することがしばしばあります。ケースバイケースに採るべき対応策や確保すべき証拠も異なりますし,時々刻々と状況が変わっていき,その都度適切な対応をとることが必要です。この対応が間違っていた為に,その後の交渉や法的措置の段階で不利な状況に立たされることもままあります。
吉村労働再生法律事務所では,経験豊富な弁護士が,継続的なご相談を受けコンサルティングを行います。初期の段階より貴社にとって有利な対応をアドバイスしていきます。それにより,その後の交渉・法的措置にとって有利な証拠を確保でき,適切な対応をとることで,万全の準備が出来ます。また,継続的に相談が出来ることにより安心して他の日常業務に専念していただくことができます。

3 貴社を代理して労働者(弁護士,労働組合)と交渉いたします。

懲戒処分を受けた労働者の対応は様々ですが,貴社へ要求を認めさせるために,様々な働きかけをする事が多いのが実情です。労働者が弁護士や労働組合を介して,会社に対し各種の請求を行い,交渉を求めることはよくあることです。弁護士や労働組合はこの種事案の交渉のプロですので,貴社独自で臨むことで,あらぬ言質や証拠をとられ,本来了承する必要のない要求まで認めさせられることもしばしばです。貴社独自でのご対応は,一般的には困難であることが多いといえます。
そこで,吉村労働再生法律事務所では,労使間の交渉対応に精通した弁護士が,貴社に代わって交渉の対応を致します。具体的には,貴社担当者から詳細なヒアリングを実施し,証拠の収集等の準備を行った上で,弁護士が法的根拠に基づいた通知書を出し,相手方と適切に交渉することで,貴社にとって有利な結論を,裁判を経ずに勝ち取ることも可能となります。

4 裁判対応

労働者が労働審判,仮処分,訴訟などの裁判を起こしてくる場合が近時急増しています。かかる裁判への対応は法律で訴訟代理権を独占する弁護士のみが対応することができます。
但し,労働問題を適切に対応することができるのは労働問題について豊富な経験実績を有する弁護士に他なりませんが,労働問題は極めて特殊専門領域であるため,経験実績がない又は乏しい弁護士が殆どである実情があります。
吉村労働再生法律事務所では,労働事件を専門分野とし,裁判対応の豊富な経験実績を有する弁護士が常時対応させていただいております。貴社に対し,最善の弁護活動をお約束いたします。

※本サイトに関する知的財産権その他一切の権利は、弁護士吉村雄二郎に帰属します。また、本サイトに掲載の記事・写真等の無断複製・転載を禁じます。

法律相談受付 TEL:0120-3131-45

ご挨拶 / 弁護士紹介 / 安心の費用 / 地図・アクセス / 無料法律相談 / 法律相談の流れ / よくある質問 / 解決実績 / お問い合わせ