試用期間中の解雇_進め方

5分で理解!試用期間中の解雇の進め方【書式・ひな形あり】

社長
当社では、試用期間を3ヶ月と定めています。今回、新卒で採用した社員の業務遂行能力が低く、病気で休みがちであるため、試用期間で解雇したいと考えています。試用期間で解雇するための方法を教えてください。
弁護士吉村雄二郎
試用期間中とはいえ雇用契約は既に成立していますので、解雇に関する厳格な規制が及んでいます。もっとも、試用期間中の解雇は、通常の解雇よりも広い範囲で認められますが、簡単には解雇はできないと考えてもらって間違いはありません。従って、業務遂行能力が欠けていることが客観的に明らかであり、指導・教育を何度も行ったが全く改善の余地がない等の特段の事情がない限り、解雇は難しいです。もっとも、即戦力として中途採用された社員については、新卒社員に比べて解雇が認められやすい傾向にあります。採用時からしっかりとした準備をすることで、解雇が認められる確率を高めることができます。
試用期間中は、解約権留保付労働契約であり、解約権の行使には合理的理由及び社会的相当性が必要となる。
本採用社員の解雇よりは比較的広い裁量があるが、慎重に行う必要がある。
試用期間前の留保解約権の行使は原則的には認められない。
試用期間の延長も就業規則等に明文の定めや労働者の同意がなければ原則として認められない。

試用期間中の解雇の進め方

試用期間中の解雇の進め方は以下の通りです。

試用期間中の解雇(本採用拒否)_流れ

以下、この内容に沿って、具体的な書式(ダウンロード可能)とともに、説明します。

1 試用期間中の解雇

試用期間とは,労働契約の締結後の一定期間、会社が従業員の身元調査の補充や期間中の勤務状態の観察により,会社の職務についての適格性を判断し,それらにより適性がないとされる場合には本採用拒否ができる制度をいいます。多くの企業では、正社員の採用について、入社後一定期間(多くは1~6か月で、3か月が多い)を試用期間とする制度を採用しています。

試用期間中の労働関係は、一般に、解約権が留保された労働契約と考えられています。すなわち、試用期間中であっても使用者と社員との間に労働契約は成立しており、ただし、試用期間は従業員の適格性を判定する期間であることから、使用者に解約権が与えられていると考えられています。

したがって、試用期間中に不適格と判定した場合に本採用を拒否するということは、法的には、使用者に留保された解約権の行使であり、解雇の一形態で
す。

そして、この解約権の行使については、通常の解雇より広い範囲で解雇の自由が認められますが、労働契約法16条に従い,客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合のみ許されます。

つまり、試用期間中の解雇も通常の解雇とほぼ同様に解雇権濫用法理である労働契約法16条の適用を受けますので、簡単には解雇はできないのです。

2 試用期間中の解雇が認められる理由

試用期間中であっても簡単には解雇が認められないとしても、どのような場合であれば解雇は認められるのでしょうか。

2.1 試用期間中の解雇が認められる理由のポイント

① 採用選考や内定の段階で知り得ない事実が発覚したこと

採用選考や内定の段階で通常知り得る事実は、原則として、本採用拒否の理由にはなりません。

例えば、採用選考の時点で、病気であることが分かっていた場合、仕事に必要な資格やスキルがないことが分かっていた場合などは、試用期間中に改めて事実を把握したとしても、それを理由に試用期間中の解雇はできません。

② 引き続き来ようすることに大きな支障がある場合に限られること

試用期間は、企業内で実際に勤務させながら、その適格性を判定するものです。それゆえ、勤務成績・勤務態度の不良あるいは経歴詐称が判明したことなどが、本採用拒否の理由の中心になります。

ただし、試用期間は、適格性判定期間であるとともに、新入社員の教育・研修期間の意味もあります。それゆえ、勤務成績,勤務態度が不良な場合、教育・指導によってその改善を図る必要があり、改善の機会を与えないまま解雇することは許されません(解雇しても無効になります)。

したがって、無断欠勤や業務怠慢、上司に対する反抗的態度といった協調性の欠如などの問題がある場合には、その程度にもよりますが、原則として、注意・指導を行って改善の機会を与え、それにもかかわらず同種行為を反復し、改善がみられないときに、本採用を拒否するかどうかを検討すべきです。

③ 私傷病を理由とする場合

私傷病を理由とした試用期間中の解雇については、試用期間満了の時点で療養中であり就労の目処がたっていないような場合には解雇ができます。就労の見通しはたっているが、正社員として完全な労務提供ができる健康状態ではない場合(例えば、残業や休日出勤ができない、転勤ができないなど)も解雇できます。ただし、休職が適用されないように、就業規則上の休職制度が試用期間中の社員に適用されないように注意してください。

2.2 試用期間中の解雇の具体例(裁判例)

ブレーンベース事件(東京地判平成13・12・25 労経速1789号22頁)

上司からの緊急の業務指示に対し、他に急を要する業務を行っているわけでもないのにすみやかに応じないなど指示に従わないことが複数回あったこと、採用面接時にパソコンの使用に精通していると述べていたにもかかわらず、困難ではない作業を満足に行うことができなかったこと、重要な業務のある日に2回休暇をとったことなどから、会社が期待する業務が実行される可能性が見出しがたいととの理由による解雇(本採用拒否)が有効と判断されました。

EC委員会(駐日代表部)事件(東京地判昭和57・5・31労民集33巻3号472頁)

雇用主が能力主義を採用し、ランク別に地位、給与などに格差が設定されている場合に、高いランクで中途採用されたものの、仕事ぶりにミスがあり、能力が期待された水準に達しておらず、また協調性に欠ける点もあったという事案において、解雇(本採用拒否が有効)とされました。

アクサ生命保険ほか事件(東京地判平成21・8・31労判995号80頁)

他社における職務経歴や他社との間の訴訟の係属について、意図的に履歴書や職務経歴書に記載せず、面接においても暖味に回答したことを「経歴詐称」と評価し、勤務態度の不良や協調性の不足、競業や他社への転職活動からうかがわれる勤労意欲の喪失、会社のパソコンの私的利用などの事由とあわせて理由としてなされた試用期間中の解雇(本採用拒否)が有効と判断されました。

キングスオート事件(東京地判平27.10.9労経速2270号17頁)

管理部のシニアマネージャー(役員に次ぐ地位である)として,初年度から年俸730万円(最低保証額)という高額の賃金で中途採用されたXが,業務遂行能力の欠如等を理由に3カ月の試用期間後に解雇(本採用を拒否)された事案。

裁判所は,Xは,管理部の責任者としての地位に見合う水準の能力を発揮することが求められていたにもかかわらず,インプット作業のような単純作業ですら適切に遂行することができず,定時を過ぎてもXのインプット作業のチェックを行っていた他の社員に声をかけずに帰宅しようとするなど,管理職としての姿勢に疑問を抱かせるような態度もあり、Xに管理部の責任者としての業務を行わせることができないと判断したことには合理的な理由があるというべきであるとして,解雇を有効と判断しました。

社会保険労務士法人パートナーズほか事件(岡地判平25.9.19労判1096号87頁)

社労士事務所に,社労士資格を有し中途採用されたXが,能力不足を理由に3カ月の試用期間途中に解雇された事案。

裁判所は,事務所は採用時,Xが社労士として実績のない初心者であり,無償の手伝いでも良いから経験を積みたいと申し出ている者であることを十分認識していたことに加え,事務所自身,Xが作成したメモや起案に不満がなかったことなどからすると,本件解雇を基礎づけるほどの事情があるとはいいがたいなどとして,解雇無効と判断しました。

ファニメディック事件(東京地判平25.7.23労判1080号5頁)

中途採用された医師に対して,能力不足等を理由として6カ月の試用期間満了をもって雇用契約を終了する旨の意思表示がなされた事案

裁判所は病院はXを「診療能力や外科手術の手技に長けた人物であることを期待して採用した」が、Xの「診察には細かいミスが散見され」るが、「繰り返されているわけではないから過大に評価すべきではない」,Xが「院内勉強会に対して必ずしも熱心ではなかったことはうかがわれるものの…院内勉強会への出席について明確な業務指示をしたとは認めがたい本件において,院内勉強会への出席状況を勤務態度の評価に反映することには抑制的であるべきである」として,解雇を無効と判断しました。

インターナショナル・クリーニング・サービス事件(東京地決平6.1.25労経速1535号6頁)

労働者であるXの暴言その他の言動を理由に1カ月間の試用期間中に解雇をした事案

裁判所は,Xが会社代表者らが挨拶するのを無視するばかりか,話合いをしようとする代表者らに対して「労働基準局に訴える。裁判にする。仕事の邪魔だ。帰れ」「仕事の妨害罪で訴えてやる。おまわりを呼んで来い。」「今日,代表者が突然来たが,変態だと思った。突然来たことに対して謝罪しろ。」などと述べたことを事実認定し、試用期間中の解雇は有効であるとしました。

ライトスタッフ事件(東京地判平24.8.23労経速2158号3頁)

Y会社に中途採用で入社したXが,受動喫煙による健康被害を理由に約1ヶ月間休職した後,3カ月間の試用期間中に協調性不足等を理由に解雇された事案

裁判所は,Xが休職中,体力の回復状況について全く連絡を入れず、その休職期間の満了間際になってようやく電話連絡を入れ,あたかも自己に有利な専門医の診断結果が出るまで休職を続け,しかもその間の給与支払いも請求するかのような内容の伝言を行ったこから、Xの対応は従業員としての協調性等に疑念を生じさせるものであって,従業員としての不適格性を根拠づけるものと評価できるとしました。

しかしながら,Xの本件対応の背景には,営業マンとしての能力や受動喫煙等をめぐる会社代表者とXとの確執があり,会社代表者のXに対する強引な退職勧奨と事務室からの事実上の締め出し行為等などの事情が、Xから会社代表者に対する病状報告等の適切な連絡をとる機会を奪っていたとも考えられるので、Xのみを責めることは適当ではなく、本件では解雇事由として重大というには十分ではないとして,解雇を無効と判断しました。

空調服事件(東京地判平28.3.8労判1145号28頁,東京高判平28.8.3 労判1145号21頁)

社労士有資格者のパートタイマーとして入社したXが,Y会社社内のほほ全員が参集した全体会議において,Yの計算表や決算書が間違っているなどと発言したことを理由に,1カ月の試用期間後本採用を拒否された事案

第一審は,Xの上記発言が事務連絡の一環としてなされたものにすぎないことなどを理由に,解雇無効としました。

しかしながら,控訴審は,Y会社がXを雇用したのは,Xが人事,税務,労務関係の情報管理や配慮ができる人材であることを前提としていたところ,Xは,Y会社の会計処理の許容性についての検討をすることもなく,Y会社の従来の売掛金等の計上に誤りがあると即断し,全体会議の場において,突然,決算書に誤りがあるとの発言を行ったものであり,組織的配慮を欠いた自己顕示以外の何物でもないから,労務管理や経埋業務を含む総務関係の業務を担当する従業員としての資質を欠くと判断されてもやむをえないなどとして,解雇を有効と判断しました。

まぐまぐ事件(東京地判平28.9.21労経速2305号13頁)

中途採用でY会社に入社したXが,勤務態度不良等を理由に6カ月の試用期間中に解雇された事案

Xには上司の指導や指示に従わず,また上司の了解を得ることなく独断で営業活動を行うなど協調性に欠ける点や,取引先に対し過剰な要求をして取引先や同僚を困惑させるなどの問題点が認められ,それを改めるべくY会社代表者が指導するも,その直後に再度上司の指示に従わないといった行動に出ていることに加え,上記問題点に対するXの認識が不十分で改善の見込みが乏しいと認められることから、試用期間中の解雇を有効と判断しました。

3 試用期間中の解雇の進め方

試用期間中の解雇の進め方は以下の通りです。

試用期間中の解雇(本採用拒否)_流れ

以下、この流れに沿って説明します。

① 本採用拒否事由の定め

本採用拒否事由を定める意味

前記のとおり本採用拒否は、採用時にオプションとして設けられた「解約権」の行使として行われますので、採用時にどのような場合に解約権が発動するのかについて定めます。試用期間中の解雇(本採用拒否)が発動する条件を「本採用拒否事由」といいます。解雇の場合に解雇事由があったのと同じく、本採用拒否の場合にも本採用拒否事由があるのです。

本採用拒否事由を定めることにより、本採用拒否事由に該当しないように意識させ、実際に該当する事態になった場合には、本採用拒否に応じやすいというメリットがあります。従って、内定取消し事由は網羅的かつ具体的に記載するべきです。

試用期間中の解雇(本採用拒否)に関する就業規則規程例

就業規則に以下のような規定を記載します。

第○条(試用期間)
1 従業員として新たに採用した者(中途採用者も含む)については、採用した日から6か月間を試用期間とする。ただし、従業員としての適格性を判定するためにさらに必要と認める場合は、会社は3ヵ月を限度として試用期間を延長することができる。
2 前項について、会社が特に認めたときは、この期間を短縮し、又は設けないことがある。
3 試用期間中は会社に解約権が留保されている。会社は従業員の業務適性等を総合的に判断して、試用期間が満了するまでに本採用の有無を決定する。この決定は試用期間の途中又は満了日に行う。
4 試用期間は、勤続年数に通算する。
5 試用期間中の従業員の労働条件は個別に雇用契約書により定める。

第○条(本採用拒否)
1 試用期間中に従業員が次の各号のいずれかに該当し、従業員として不適格と認められる場合、会社は留保解約権を行使して、本採用を行わない。

① 遅刻・早退及び欠勤が多い等出勤状況が悪いとき
② 上司の命令・指示・指導に素直に従わない、同僚との協調性がない、仕事に対する意欲が欠如している、又は勤務態度が悪いとき
③ 会社が求める能力に足りず、かつ、改善の見込みも薄い等、能力が不足すると認められるとき
④ 暴力団員や暴力団関係者と関わりがあることが判明したとき
⑤ 採用選考時又は採用決定時の提出書類や申告事項が事実と相違することが判明したとき
⑥ 会社が求める書類を提出しないとき
⑦ 正常な勤務ができない健康状態(精神の状態を含む)であると会社が判断したとき
⑧ 第○条(服務規律)の遵守事項その他この規則の規定に従わない又は違反したとき。
⑩ 第○条(普通解雇)の解雇事由に該当するとき。
⑪ 会社の経営上やむをえない必要性があるとき
⑫ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき
2 採用の日から14日を経過した者の本採用拒否については、第○条(解雇予告)の規定を準用する。

② 雇用契約書の締結、誓約書の取得

雇用契約書の締結

雇用契約書には、試用期間の定めについて明記してください。

雇用契約書兼労働条件通知書(正社員シンプル版)

正社員を対象とした、労働条件明示義務(労基法第15条)を充足しながらも、必要最小限度のシンプルなバージョンです。

雇用契約書 兼 労働条件通知書

 株式会社○○(以下「甲」という。)と末尾記載の労働者(以下「乙」という。)は、次の労働条件に基づいて雇用契約(以下「本契約」という。)を締結する。

雇用期間期間の定めなし
就業場所東京都○○区○○○○○○○○○ その他甲が指定する場所(地域限定なし)
業務内容○○、○○業務その他これに関連する業務その他,甲が指定する業務(職務・職種限定なし)
就業時間等1.       始業・終業の時刻等

9時~18時(休憩12時~13時の1時間)

2.       所定外労働,休日労働(あり)

休日・休暇1休日 土日祝日、その他会社が指定した日(就業規則第○条による)

2休暇 法定の年次有給休暇その他詳細は就業規則第○条~○条による

賃金1.基本給 ○○ 円

2.資格手当 ○○ 円(詳細は賃金規程第○条)

3.役職手当 ○○ 円(詳細は賃金規程第○条)

4.○○手当 ○○ 円(詳細は賃金規程第○条)

5.通勤手当 実費支給(上限○○円 詳細は賃金規程○条)

6.割増賃金 法定割増率に従う(詳細は賃金規程第○条)

7.締日・支払日:毎月末日締め翌月15日払い

8.昇給・降給 あり(能力・業績による 詳細は賃金規程第○条)

9.賞与 あり(6月・12月 業績・個人の評価による。詳細は賃金規程第○条)

10.退職金 あり(詳細は退職金規程)

退職に関する事項1.  定年制 あり(60歳)

2.  自己都合退職の手続き(退職する1ヶ月前に退職願提出 詳細は就業規則第○)

3.  試用期間 採用後○ヶ月間(就業規則第○条による。)

4.  解雇事由・手続:懲戒解雇・諭旨解雇(就業規則第○条~○条による),普通解雇(就業規則第○条による)

5.  その他退職関係(就業規則第○条~○条)

その他乙は、甲が定める就業規則、賃金規程その他諸規程の内容が雇用契約の内容であることを確認し、それら諸規程を遵守し、誠実に勤務することを約束する。

本契約書は、2 通作成し、甲および乙の双方が各1 通を保管する。

年   月   日

甲 東京都千代田区○○○○○
株式会社○△商事株式会社
代表取締役 ○野△太郎

乙(労働者)
住所 東京都江東区○○○○○
氏名 甲野 太郎 印

 

参考記事

5分でわかる!労働条件通知書の記載事項【すぐ使える書式あり】

入社誓約書

通常の誓約書を取得します。

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③ 本採用拒否事由の発生

上記就業規則、入社誓約書にありますように、これらの書類には「その他、上記各号に準じる事由がある場合」などという幅広いものも含めて本採用拒否事由を記載しています。

しかし、記載された本採用拒否事由があれば、当然に採用内定取消しをできるわけではありません。実際、前記2.2のとおり①採用選考や内定の段階で知り得ない事実が発覚した場合、②引き続き来ようすることに大きな支障がある場合に限られますので注意が必要です。

試用期間の延長

もし本採用拒否する判断がつかない場合は、試用期間を延長して経過観察をしてから判断することも一案です。

試用期間の延長は、就業規則などで、延長する場合の事由、延長期間などが明示されていない限り、認められません。就業規則には延長に関する規定をしてください(前記就業規則例参照)。

規定がない場合は合意を得て延長します。

実際に試用期間を延長する場合、紛争になる可能性にも備えて、その意思表示は次のような試用期間延長通知書で行い、延長の理由等も含めて通知をしておくべきです。

試用期間延長通知書

○年○月○日

○○ ○○ 殿

株式会社○○○○
代表取締役○○○○ ㊞

試用期間延長通知書
拝啓 

貴殿は、○年○月○日に当社に入社して以降、試用期間中(○年○月○日まで)の社員として、当社に勤務されています。しかしながら、貴殿の試用期間中の勤務状況には、下記のような問題があり、当初の期間では本採用を相当と判断することができませんでした。

つきましては、就業規則第〇条(試用期間)1項但書の規定にしたがい、試用期間を○年○月○日まで延長することとしましたので、ご通知申し上げます。

当該期間で貴殿が正社員としての適格性を有していると判断できない場合には、本採用とせず、貴殿との労働契約は終了となりますので、ご承知おき下さい。

敬具
1 無断遅刻〇回、早退〇回があり、無断欠勤〇回があったこと
2 入社時研修におけるレポート提出期限を徒過したこと
3 無断欠勤について注意をした上司に反抗的な態度をとったこと
以 上

※ トラブル防止の観点から、いかなる事由により延長するかを明記した方がよいでしょう。延長を必要とする合理的な事由が必要とされています(大阪読売新聞社事件 大阪高決昭45.7.10労判112号35頁)。

試用期間延長に関する同意書

株式会社●●
代表取締役 ●●● 様

試用期間延長に関する同意書

この度、貴社より○年○月○日付試用期間延長通知書により、下記理由で試用期間が○年○月○日まで延長されることに同意致します。

また、当該期間中に私が正社員としての適格性を有していると判断されない場合は、本採用とならずに労働契約は終了となることに同意します。

1 無断遅刻〇回、早退〇回があり、無断欠勤〇回があったこと
2 入社時研修におけるレポート提出期限を徒過したこと
3 無断欠勤について注意をした上司に反抗的な態度をとったこと

年  月  日
住所:○○県○○市○○町○丁目○番○号
署名:               ㊞

※ 試用期間延長に関する根拠規定がない場合や根拠規定がある場合であっても試用期間延長の理由が不十分な場合に取得します。

④ 本採用拒否通知書の交付(送付)

本採用拒否通知書(新卒)

○年○月○日

○○ ○○ 殿

株式会社○○○○
代表取締役○○○○ ㊞

本採用拒否通知書
拝啓 
 貴殿は、○年○月○日に当社に入社して以降、試用期間中の社員として、当社に勤務されています。
 しかしながら、貴殿の試用期間中の勤務状況には、下記のような問題があり、この間、当社は、貴殿に対し、新入社員教育はもとより、配属先の上司からの注意指導を繰り返し行ってきましたが、残念ながら、一向に改善されず、その意欲もみられませんでした。従って、当社としては、貴殿は当社社員として不適格と判断せざるをえません。
 つきましては、就業規則第〇条(本採用拒否)の規定にしたがい、試用期間の満了日である○年○月○日をもって本採用を拒否することをご通知申し上げます。これにより○年○月○日をもって貴殿との労働契約は終了しますので、○年○月○日までに、当社より貸与した携帯電話、○○、○○を当社人事部宛てにご返却下さい。
敬具
1 無断遅刻〇回、早退〇回があり、無断欠勤〇回があったこと
2 入社時研修におけるレポート提出期限を徒過したこと
3 無断欠勤について注意をした上司に反抗的な態度をとったこと
以 上

※ トラブル防止の観点から、本採用拒否通知書に、いかなる事由に該当するかを明記した方がよいでしょう。

本採用拒否通知書(中途採用・病気発覚)

○年○月○日

○○ ○○ 殿

株式会社○○○○
代表取締役○○○○ ㊞

本採用拒否通知書
拝啓 

 ○年○月○日に当社に中途採用され入社して以降、試用期間中の社員として、当社に勤務されています。貴殿は、採用面接の際、健康状態に何ら異常はなく、入社後に従事予定の○○業務も問題なく遂行可能であると申告されていました。

 しかし、今般、入社後に貴殿が欠勤した際に提出した主治医の診断書から○○という疾患を有することが判明しました。貴殿が提出した主治医の診断書及び当社産業医の意見によれば、○○疾患では、○○業務の遂行に看過できない支障が生ずることは明らかであり、また、時間外・休日労働を行うことも困難であるとのことでした。かかる貴殿の病状は、採用決定時の申告事項が事実と相違しており、かつ、試用期間満了日において正常な勤務ができない健康状態であると判断せざるを得ません。

 つきましては、就業規則第〇条(本採用拒否)の規定にしたがい、試用期間の満了日である○年○月○日をもって本採用を拒否することをご通知申し上げます。これにより○年○月○日をもって貴殿との労働契約は終了しますので、○年○月○日までに、当社より貸与した携帯電話、○○、○○を当社人事部宛てにご返却下さい。

敬具

本採用拒否通知書(中途採用・特定地位・職務の能力不足)

○年○月○日

○○ ○○ 殿

株式会社○○○○
代表取締役○○○○ ㊞

本採用拒否通知書
拝啓 

 ○年○月○日に当社に中途採用され入社して以降、試用期間中の社員として、当社に勤務されています。雇用契約書兼労働条件通知書にも記載されているとおり、貴殿は、当社の○○システム開発プロジェクトのプロジェクトリーダーとして、○○に関する高度な開発スキルを有し、プロジェクトを円滑に進めるための工程・人員・予算管理能力、クライアントとの良好な関係を維持しえるコミュニケーション能力を有する即戦力として採用されました。そして、○○プロジェクトを円滑かつ適切に進めるマネジメントを行い、納期までに所定のスケジュールに沿って開発を完遂することが求められていました。

 しかるに、試用期間中の貴殿の業務遂行において、○○システムの基礎的なスキルが欠けている、チームメンバーに対する不必要に高圧的態度により同メンバーより本社へ数多くの苦情(ハラスメント申告を含む)が本社人事部へ寄せられている、貴殿による誤った指示命令によりプロジェクトの進捗が予定より大幅に遅延している、顧客への情報提供や事前折衝が不十分なため顧客からもクレームが寄せられ貴殿の交代を強く求められているなどと著しく業務遂行能力に欠けるものとなっています。当社は採用直後より貴殿に対して改善を求める文書やメールを送りましたが、自己弁護に終始し、有意な改善がみられませんでした。かかる状態では、貴殿は、雇用契約で特定している即戦力のスペシャリストとしての能力を保持しておらず、今後も即戦力としての短期間のうちに能力を発揮することは期待できないと判断せざるを得ません。

 つきましては、就業規則第〇条(本採用拒否)の規定にしたがい、試用期間の満了日である○年○月○日をもって本採用を拒否することをご通知申し上げます。これにより○年○月○日をもって貴殿との労働契約は終了しますので、○年○月○日までに、当社より貸与した携帯電話、○○、○○を当社人事部宛てにご返却下さい。

敬具

⑤ 和解・示談による解決

本採用拒否事由に不確実な要素が残る場合、通常の解雇に準じて客観的に合理的な理由及び社会的相当性が必要であるとした判例理論に照らすと、試用期間中の解雇(本採用拒否)の有効性にリスクを残している状況となります。

このようにリスクが残る場合は、前記④の本採用拒否通知書を送付する前、又は、送付した直後に、労働者と面談して和解・示談により解決する方法も検討することも一案です。

解雇(本採用拒否)が無効となった場合は、解雇(本採用拒否)以降の賃金(バックペイ)のみならず、慰謝料などの損害賠償義務を負う可能性もあります。

そこで、リスク回避の観点から、労働者と合意退職書を取り交わし、一定の解決金を支払い、解雇(本採用拒否)について他言しないこと、その他債権債務がないことなどを合意することも一案です。

従業員が退職勧奨に応じて退職することとなった場合、退職の条件と合意内容を明確にしておくため、退職合意書を締結することをお勧めします。

退職合意書

 ○△商事株式会社(以下「乙」という。)と甲野太郎(以下「甲」という。)は、以下の条件による甲野の退職につき合意した。
1 甲は、乙からの退職勧奨を受け入れ、2021年12月31日付で、退職する。
2 乙は、甲に対して、会社都合退職扱いで計算した通常退職金〇〇〇万円に加え、退職勧奨を受け入れたことに伴う特別退職金として金口□□万円を支払う。
3 乙は、前項の通常退職金及び特別退職金から、所得税、地方税等、法令上必要な源泉徴収を行った残額を、甲が本合意書上の全ての義務を履行することを条件に、2022年1月15日限り、甲の給与振込先銀行口座に支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。
4 甲は、乙が提示した退職勧奨の条件を十分に理解し、任意に退職することを確認する。
5 甲は、乙が指定する後任者への引継ぎを、責任をもって2021年11月30までに終了させる。
6 甲は、乙が甲に貸与した従業員証、入館証、社章、業務用パソコン、業務用携帯電話、業務用の書類、その他会社の所有物の全てを2021年11月30日までに乙に返還する。
7 甲は、乙が指定する書式の「競業禁止及び秘密保持に関する誓約書」に署名、押印の上、2021年11月30目までに乙に提出し、その内容を遵守することを約束する。
8 乙及び甲は、本合意書に定める事項のほか、一切の債権債務がないことを、相互に確認する。
この合意を証するため,本書2通を作成し,甲乙両各署名(記名)押印の上,各その1通ずつを保有する。
2021年8月31日

住所 東京都千代田区神田・・・
○△商事株式会社
代表取締役 ○野△太郎 印

住所 東京都墨田区・・・・・・
甲野 太郎       印

試用期間中の解雇(本採用拒否)については労務専門の弁護士へご相談を

弁護士に事前に相談することの重要性

試用期間中の解雇については、労働者の雇用契約上の地位を失わせるという性質上、労働者保護の観点から法律による厳しい規制がなされています。

判断を誤った場合や手続にミスがあった場合などは、事後的に社員(労働者)より地位確認・未払賃金請求等の訴訟を起こされるリスクがあります。会社に不備があった場合、復職や過去に遡って賃金の支払いや慰謝料の支払いを余儀なくされる場合があります。

また、試用期間中の解雇をきっかけに労働組合に加入をして団体交渉を求められる場合があります。

このようなリスクを回避するために、当サイトでは実践的なコンテンツを提供しています。

しかし、実際には、教科書どおりに解決できる例は希であり、ケースバイケースで法的リスクを把握・判断・対応する必要があります。法的リスクの正確な見立ては専門的経験及び知識が必要であり、企業の自己判断には高いリスク(代償)がつきまといます。また、誤った懲戒処分を行った後では、弁護士に相談しても過去に遡って適正化できないことも多くあります。

リスクを回避して適切な試用期間中の解雇を行うためには労務専門の弁護士事前に相談することとお勧めします

労務専門の吉村労働再生法律事務所が提供するサポート

当事務所は、労務専門の事務所として試用期間中の解雇に関しお困りの企業様へ以下のようなサポートを提供してます。お気軽にお問い合わせください。

労務専門法律相談

専門弁護士に相談することが出来ます。法的なリスクへの基本的な対処法などを解決することができます。

詳しくは

サポート内容及び弁護士費用 の「3 労務専相談」をご参照ください。

コンサルティング

会社は限られた時間の中で試用期間中の解雇を適正に行う必要があります。進めていくなかで生じた問題に対して適時適切な対応が要求されますので単発の法律相談では十分な解決ができないこともあります。
コンサルティングにより、試用期間中の解雇の準備から実行に至るまで、労務専門弁護士に継続的かつタイムリーに相談しアドバイスを受けながら適正な対応ができます。
また、試用期間中の解雇に至るまでの試用期間中の解雇事由への該当性判定や裏付け証拠の収集などのサポートを受けることができます。
これにより企業の負担及びリスクを圧倒的に低減させる効果を得ることができます。

詳しくは

サポート内容及び弁護士費用 の「4 コンサルティング」をご参照ください。

労務専門顧問契約

人事労務は企業法務のリスクの大半を占めます。
継続的に労務専門の弁護士の就業規則のチェックや問題社員に対する対応、労働時間制度や賃金制度についてのアドバイスを受けながら社内の人事労務体制を強固なものとすることが出来ます。
発生した試用期間中の解雇問題についても、準備から実行に至るまで、労務専門弁護士に継続的かつタイムリーに相談しアドバイスを受けながら適正な対応ができます。
また、試用期間中の解雇通知書や労働者との交渉文書などの文書作成のサポートを受けることができます。
これにより企業の負担及びリスクを圧倒的に低減させる効果を得ることができます。

詳しくは

労務専門弁護士の顧問契約 をご参照ください。

まとめ

以上おわかりいただけましたでしょうか。

ご参考になれば幸いです。

 

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