シフト制_雇用契約書

10分でわかる! シフト制の雇用契約書 兼労働条件通知書の作り方【規定例・書式あり】

シフト制社員の雇用契約書 兼労働条件通知書のポイントについて、労働問題専門の弁護士が分かりやすく解説します。

社長
当社では、シフト制で勤務するパート社員がおります。雇用契約書には、労働時間や休日については「シフトによる」とだけ記載し、具体的な始業・終業時間、休憩時間、休日の日数や曜日を記載しておりません。このような記載で問題ないでしょうか?
弁護士吉村雄二郎
シフト制の場合、具体的な始業・終業時間、休日などは、毎月社員の都合や希望を聞いて上で、各現場で定めており、雇用契約の締結時点では具体的には決まっていないのが通常です。その場合、雇用契約書には、具体的な始業・終業時間、休日などを記載することはできませんので、「シフトによる」との記載で問題ありません。

重要

労働条件通知書については、2024年4月1日より法改正が予定されています。シフト制について労働条件通知書における考え方に変更はありませんが、その他の労働条件については大きな改正がなされています。詳細は、以下の関連記事をご確認ください。

シフト制とは

シフト制とは、あらかじめ具体的な労働日、労働時間を決めず、シフト表等により柔軟に労働日、労働時間が決まる勤務形態をいいます。

シフト制は、人手不足や労働者のニーズの多様化、季節的な需要の繁閑への対処等を背景として、パートタイム労働者やアルバイトを中心に採用されている勤務形態です。

その時々の事情に応じて柔軟に労働日・労働時間を設定できるという点で、企業側・労働者側双方にメリットがあります。

会社側のメリット

業務の繁閑状況に応じて勤務時間を増減できる
柔軟な調整できるのでフルタイム社員に比べ採用しやすい

労働者側のメリット

学生は、学業や行事の都合にあわせて勤務量を調整できる
主婦は、家庭の事情にあわせて勤務量を調整できる

他方で、会社の都合により、労働日がほとんど設定されなかったり、労働者の希望を超える労働日数が設定されたりすることにより、トラブルが発生することもあります。

トラブルの発生を防止するために重要なのが、労働契約書です。あとあとトラブルになった際に会社側に有利な解決を導けるように事前設定が極めて重要です。

そこで、本稿では、シフト制の雇用契約書 兼労働条件通知書のポイントを解説します。

雇用契約書に記載するべき事項

雇用契約書とは

雇用契約書とは、会社と社員の個別の雇用条件を記載した合意文書(契約書)になります。

一般に会社と社員との間における雇用条件は、①就業規則、②労働条件通知書、③雇用契約書、④入社誓約書・秘密保持誓約書によって設定します。

種類規定内容法律上の作成義務・規定事項
就業規則全社員共通の基本的労働条件(法律上の記載事項あり)あり(ただし、常時10名以上の労働者を雇用している場合)
労働条件通知書個々の社員の労働条件(法律上の記載事項あり)あり
雇用契約書個々の社員の労働条件及び合意事項なし
誓約書個々の社員についての誓約事項なし

雇用契約書では、個々の社員の労働条件を合意文書として定めます。労働条件の規定内容は、労働条件通知書での規定内容と重複します。

そのため、雇用契約書と労働条件通知書を別々に作成するのではなく、両者を合体させて「雇用契約書兼労働条件通知書」として取り交わして労働者に交付すれば一石二鳥でよいです。

また、雇用契約書兼労働条件通知書は、労使の合意文書の体裁となっているという点でも重要な意味をもちます

というのも、労働条件通知書は会社が作成した文書の体裁となっており、特に労働者の同意の署名捺印がない場合などは、後々になって労働者が「労働条件通知書は貰っていない」「会社が勝手に作成したので合意していない」などと主張して、労働条件を争ってくるケースがあるのです。

雇用契約書兼労働条件通知書であれば、労働者も署名捺印して労働条件に合意した体裁をとっていますので、後々になって「貰っていない」「合意していない」などという詭弁を封ずることができるのです。

そこで、労働条件通知書は、「雇用契約書兼労働条件通知書」として作成し、労働者の署名捺印をきちっと貰っておくことは非常に重要です。

雇用契約書兼労働条件通知書の記載事項

雇用契約書兼労働条件通知書には、労働条件通知書で記載する事項を最低限カバーする必要があります。

労働条件通知書とは

労働条件通知書とは、使用者が労働者を採用する際に、契約期間、賃金、労働時間その他の労働条件を記載して労働者に交付する書面をいいます。

労働基準法第15条(同法施行規則5条)により、会社は労働契約の締結に際し、賃金、労働時間その他の労働条件を明示し、一定の事項については書面の交付により明示しなければなりません。

これを労働条件明示義務といいます。この労働条件明示義務を果たすために作成し労働者に交付されるのが労働条件通知書です。

労働条件明示義務の対象

必ず明示しなければならないこと
①労働契約の期間に関すること
②期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
③就業場所、従事する業務に関すること
④始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
⑤賃金の決定方法、支払時期などに関すること
⑥退職に関すること(解雇の事由を含む)
⑦昇給に関すること
※①~⑥は原則、書面で交付しなければならない。ただし、労働者が希望した場合は電子化可能。
定めをした場合に明示しなければならないこと
①退職手当に関すること
②賞与などに関すること
③食費、作業用品などの負担に関すること
④安全衛生に関すること
⑤職業訓練に関すること
⑥災害補償などに関すること
⑦表彰や制裁に関すること
⑧休職に関すること

労働条件を明示するタイミング

労働条件を明示すべき時期は、労働契約の締結のタイミングです。労働者の募集時点において必要ありません(ただし、職業安定法上の明示義務はあります)。また、有期雇用契約の契約期間満了後、契約を更新する場合も含まれます。

なお、労働契約締結後に労働契約や就業規則の変更等により労働条件の変更がなされた場合は労基法15条の適用対象外です(京都市交通局事件 京都地判昭24.10.20、友定事件 大阪地判平成9.9.10)。

労働条件明示義務違反の効果

労働契約締結時の労働条件の明示義務違反については,30万円以下の罰金が定められています(労基法120条1号)。
しかし,私法上の効果は別問題であって,この義務を怠ったからといって,労働契約が直ちに無効となる訳ではありません。なお,明示された労働条件と事実が相違する場合においては,労働者は直ちに労働契約を解除することができます(労基法15条2項)。

シフト制に関する記載事項

シフト制の場合の記載事項について、解説します。

始業・終業の時間

基本的な考え方

労働基準法第15条(同法施行規則5条)により、始業・終業の時間は労働条件通知書へ記載することが必須とされています。

では、シフト制の場合、どのように記載すればよいでしょうか。

この点、厚労省はシフト制について、「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」という解説(以下「留意事項」といいます。)を定めています(行政通達、告示・指針ではありません。)。その中で、始業・終業時間については、以下のような記載がなされています。

(ア) 「始業及び終業の時刻」に関する事項
労働契約の締結時点において、すでに始業及び終業時刻が確定している日については、その日の始業及び終業時刻を明示しなければなりませんので、労働条件通知書等には、単に「シフトによる」と記載するのでは足りず労働日ごとの始業及び終業時刻を明記するか、原則的な始業及び終業時刻を記載した上で労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等をあわせて労働者に交付するなどの対応が必要です。

留意事項のこの記載から、一部の弁護士や社会保険労務の中には、「シフトによる」という記載だけでは不十分であり「労働日ごとの始業及び終業時刻を明記するか、原則的な始業及び終業時刻を記載した上で労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等をあわせて労働者に交付するなどの対応が必要」などと説明している人もいます(例:労働新聞2023年6月29日家永 勲「留意事項を踏まえたシフト制雇用管理の実務」など)。

しかし、かかる見解は不正確であり、依然として、「シフトによる」との記載は可能であると考えます。

留意事項の上記記載は、あくまでも「労働契約の締結時点において、すでに始業及び終業時刻が確定している日」に関する記載です。

この記載の反対解釈として、「労働契約の締結時点において、始業及び終業時刻が確定していない場合(おそらく大部分のシフト制がこれに該当します)」は、始業及び終業時刻を明示しなくてもよく、労働条件通知書等には、単に「シフトによる」と記載でも足り、労働日ごとの始業及び終業時刻を明記したり、原則的な始業及び終業時刻を記載した上で労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等をあわせて労働者に交付するなどの対応は不要であると解釈するべきです。

最もシンプルな記載

従って、始業・終業時間については、以下のような記載でも問題ありません。

就業時間等

 

1.   始業・終業の時刻等

会社が定めるシフト表による。

シフト作成ルールを記載する場合

留意事項では、「シフト表などの作成に当たり、事前に労働者の意見を聴取すること」「確定したシフト表などを労働者に通知する期限や方法」を定めることを推奨しています(必須ではありません。)。

就業時間等

 

1.   始業・終業の時刻等

会社が定めるシフト表による。シフトは、毎月25日までに翌月分のシフトを定め、各事業所内に掲示して周知する。

勤務時間のパターンが決まっている場合

始業・終業時間のパターンが既に決まっている場合は、雇用契約書兼労働条件通知書に記載する場合もあります。ただし、パターンがある程度決まっている場合であっても、記載が必須という訳ではなく「シフトによる」との記載だけでも問題ありません。

就業時間等

 

1.   始業・終業の時刻等

会社が以下の3パターンの中から定めるシフト表による。シフトは、毎月25日までに翌月分のシフトを定め、各事業所内に掲示して周知する。

【パターン1】 始業 12時 終業 18時 休憩 15時から16時までの1時間
【パターン2】 始業  8時 終業 16時 休憩 12時から13時までの1時間
【パターン3】 始業 12時 終業 20時 休憩 15時から16時までの1時間
※会社の都合により他のパターンのシフトを定めることができる

最低勤務日数・時間を定める場合

具体的な始業・終業時間はシフトで定めるとしても、最低限勤務する日数や時間数を定める場合があります。

例えば、労働者からすると、収入を安定させたいので最低限度の勤務日数や勤務時間を定めることを望む場合があります。会社側からも、特に人手不足の業界(飲食業、配送業、介護施設、保育園など)では、最低減勤務してもらいたい日数や勤務時間を定めることがあります。

留意事項でも、以下のような 労働日、労働時間などの設定に関する基本的な考え方を定めることを推奨しています。

しかし、あくまでも「推奨」に過ぎませんので、必須ではありません。会社にとって必要な場合だけ記載するようにしてください。

  • 一定の期間において、労働する可能性がある最大の日数、時間数、時間帯
    (例:「毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する」など)
  • 一定の期間において、目安となる労働日数、労働時間数
    (例:「1か月○日程度勤務」、「1週間当たり平均○時間勤務」など)
  • これらに併せる等して、一定の期間において最低限労働する日数、時間数などについて定めることも考えられます
    (例:「1か月○日以上勤務」、「少なくとも毎週月曜日はシフトに入る」など)
就業時間等

 

1.   始業・終業の時刻等

週3日(1日6時間)以上とし、会社が定めるシフト表による。シフトは、毎月25日までに翌月分のシフトを定め、各事業所内に掲示して周知する。

労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与える。

 

弁護士吉村雄二郎
週の最低労働時間や労働日数を記載することは可能ですが、それを定めてしまうと例えばコロナ禍等が発生し、勤務させられない状況になっても、雇用契約書に記載した週の最低労働時間や労働日数は保障しなければならなくなります(具体的には、シフトを組まなくても、最低保障した分について休業手当や賃金を払う必要があります)。人手不足で最低限度の勤務日数・時間を定める必要があるのであれば別ですが、基本的には柔軟なシフト調整をするためには出来れば記載しない方がよいでしょう。

休憩時間

休憩時間についてもシフトが定まっていない以上、具体的に記載することはできません。労働基準法の定める最低限の内容を記載すれば足ります。

就業時間等

 

1.   始業・終業の時刻等

会社が定めるシフト表による。

労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与える。

休日

休日については、労働契約の締結時に休日が定まっている場合は、これを明示しなければならないとされています(留意事項)。ただし、始業・終業時間と同様に、雇用契約の締結時には具体的に定まっておらず、シフトで具体的に定める必要があるのが通常です。

その場合は、「シフトによる」との記載のほか、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明示しなければなりません

もっとも、明示するのは、「毎週少なくとも1回又は4週間を通じて4日以上を休日とする」といった労働基準法が定める最低限の内容を記載すれば十分です。何も難しいことはありません。

最もシンプルな記載

休日・休暇1.       休日:シフト表による(毎週少なくとも1回又は4週間を通じて4日以上を休日とする)

基本的な休日が決まっている場合

休日・休暇1.       休日:土日祝日その他シフトによる

※この場合は、土日祝日を基本的な休日としていますので、「毎週少なくとも1回又は4週間を通じて4日以上を休日とする」との労基法の最低基準をクリアすることは明らかですので、その記載をする必要はありません。

その他、雇用契約書兼労働条件通知書の記載事項

雇用契約書兼労働条件通知書について、記載事項について具体的に説明していきます。

雇用期間 必須

□ 期間の定めの有無(必須)
□ 期間の定めがある場合はその期間(必須)

労働契約の期間に関する事項は書面による労働条件明示の必須の事項です(労基法15条1項後段、労基則5条)ので、必ず記載する必要があります。

期間の定めのある労働契約の場合はその期間、期間の定めのない労働契約の場合はその旨を記載する必要があります(平11・1・29基発第45号)。

(有期の場合)更新する場合の基準に関する事項 必須

□ 契約更新の有無(必須)
□ 契約更新・不更新の基準(必須)

「雇用期間」について「期間の定めあり」とした場合には、契約を更新する場合の基準に関する事項は労働条件明示の必須の事項です(労基法15条1項後段、労基則5条)ので、必ず記載する必要があります。

具体的には、契約の更新の有無及び更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示する必要があります。

書面の交付により明示しなければならないこととされる更新の基準の内容は、有期労働契約を締結する労働者が、契約期間満了後の自らの雇用継続の可能性について一定程度予見することが可能となるものであることを要するとされています(平24.10.26基発1026第2号)。

例えば、「更新の有無」として、

a 自動的に更新する
b 更新する場合があり得る
c 契約の更新はしない

例えば「契約更新の判断基準」として、

a 契約期間満了時の業務量により判断する
b 労働者の勤務成績、態度により判断する
c 労働者の能力により判断する
d 会社の経営状況により判断する
e 従事している業務の進捗状況により判断する

等を明示する必要があります(平24.10.26基発1026第2号)。

就業場所 必須

基本的な記載事項

□ 当初の就業場所(必須)
□ 勤務地限定の有無(必須ではないが推奨)

就業場所に関する事項は書面による労働条件明示の必須の事項です(労基法15条1項後段、労基則5条)ので、必ず記載する必要があります。

雇入れ直後の就業の場所を明示すれば足りますが、将来の就業場所を併せ網羅的に明示することは差し支えないとされています平11・1・29基発第45号)。

勤務地限定の有無

なお、就業場所には雇い入れ当初の就業場所として特定の事業場を記載することがよくあります。特定の事業場を記載したとしても、特に勤務地限定とした事情がなく、就業規則に「会社が業務の都合により異動を命ずることがある」という配転の規定がある場合は、配転をすることが可能です。

ところが、労働者が、特定の事業場が記載されていることを理由に「勤務地限定の特約があった」として、配転命令を拒否する場合があります。このような労働者の主張を排除するために、勤務地限定ではないことを明示することをお勧めします。

これとは反対に、異動を予定していない「勤務地限定社員」や現地採用のパート社員などは勤務地限定であることを明示するべきです。勤務地限定である場合は、その事業場が閉鎖された場合は基本的に他の事業所への異動をさせずに解雇することができます。

業務内容 必須

基本的な記載事項

□ 当初の業務内容(必須)
□ 職務・職種の限定の有無(必須ではないが推奨)

従事する業務に関する事項は書面による労働条件明示の必須の事項です(労基法15条1項後段、労基則5条)ので、必ず記載する必要があります。

雇入れ直後の従事すべき業務を明示すれば足りますが、将来の従事させる業務を併せ網羅的に明示することは差し支えないとされています平11・1・29基発第45号

職務・職種の限定の有無

なお、業務内容には雇い入れ当初の業務内容・職種として特定の業務内容・職種を記載することがよくあります。特定の業務内容・職種を記載したとしても、特に業務・職種限定とした事情がなく、就業規則に「会社が業務の都合により異動を命ずることがある」という配転規定や「会社が業務の都合により業務内容・職種の変更を命ずることがある」という職務・職種変更の規定がある場合は、当初の業務内容・職種を変更することが可能です。

ところが、労働者が、特定の業務内容・職種が記載されていることを理由に「職務・職種限定の特約があった」として、業務・職種の変更命令を拒否する場合があります。このような労働者の主張を排除するために、職務・職種限定ではないことを明示することをお勧めします。

これとは反対に、特定の職務・職種を特定して即戦力のスペシャリストとして中途採用した場合や特定の単純作業のために採用したパート社員などは、職務・職種限定であることを明示するべきです。

職務・職種限定のスペシャリストとして採用された場合は、その職務・職種の適性がないこをもって普通解雇事由となります。また、特定の単純作業のために採用されたパートについて、その事業場で職務が消滅した場合は、解雇や雇止めの理由となります。

労働時間・休日・休暇等 必須

基本的な記載事項

□ 始業及び終業の時刻(必須)
□ 所定労働時間を超える労働の有無(必須)
□ 休憩時間(必須)
□ 休日(必須)
□ 休暇(必須)

始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇に関する事項は書面による労働条件明示の必須の事項です(労基法15条1項後段、労基則5条)ので、必ず記載する必要があります。

当該労働者に適用される労働時間等に関する具体的な条件を明示しなければならないとされています平11・1・29基発第45号

もっとも、明示すべき事項の内容が膨大なものとなる場合は、省略も可能です。すなわち、「所定労働時間を超える労働の有無」以外の事項については、勤務の種類ごとの始業及び終業の時刻、休日等に関する考え方を示した上、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで足りるとされています平11・1・29基発第45号

賃金 必須

基本的な記載事項

□ 基本給の金額(歩合給の場合は、単価や保障給の額)(必須)
□ 手当の金額(必須)
□ 時間外・休日・深夜労働に対して特別の割増率を定めている場合はその率(必須)
□ 賃金締日と支払日(必須)

賃金(退職金を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項は、書面による労働条件明示の必須の事項です(労基法15条1項後段、労基則5条)ので、必ず記載する必要があります。

具体的には、基本給の金額(歩合給の場合は、単価や保障給の額)、手当の金額、時間外・休日・深夜労働に対して特別の割増率を定めている場合はその率、賃金締日と支払日を記載する必要があります(昭51.9.28基発第690号)。もっとも、就業規則等の規定と併せ、賃金に関する事項が当該労働者について確定し得るものであればよく、例えば、労働者の採用時に交付される辞令等であつて、就業規則等に規定されている賃金等級が表示されたものでも差し支えないとされています(具体的には、周知された就業規則に賃金テーブルが定めてあり、そのテーブルに該当する号俸を明示する場合など)。

任意的記載事項(一部必須事項)

□ 労使協定に基づく賃金支払時の控除の有無(任意)
□ 昇給の有無、時期等(有期・パートは必須、それ以外も任意だが記載推奨)
□ 賞与の有無、時期等(有期・パートは必須、任意だが記載推奨)
□ 退職金の有無、時期等(有期・パートは必須、任意だが記載推奨)

上記記載事項については、制度として設けている場合に記入することが望ましいとされていますが、必須ではありません。

ただし、有期契約社員及びパート社員については、「昇給の有無」、「賞与の有無」及び「退職金の有無」については必須記載事項となっています(有期パート労働法6条1項、同施行規則2条1項)ので注意が必要です。

もっとも、有期パート社員以外であっても、賞与と退職金については、労働者の関心も強いため、労働条件通知書に記載しておくことをお勧めします。また、昇給の有無についても、労働者の関心が強いといえますし、昇給のみならず「降給」の可能性も含めて記載しておく意味がありますので、記載を推奨します。

退職(解雇)に関する事項 必須

退職に関する事項(解雇事由を含む)は、書面による労働条件明示の必須の事項です(労基法15条1項後段、労基則5条)ので、必ず記載する必要があります。

退職の事由及び手続、解雇の事由等を明示しなければならないとされています平11・1・29基発第45号

もっとも、当該明示すべき事項の内容が膨大なものとなる場合は、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで足りるとされています平11・1・29基発第45号

なお、試用期間中に社員として不適格であると判定された場合は本採用を拒否(解雇)することが可能です。退職(解雇)に関する事項として、ここに本採用を拒否する事由を具体的に定める場合もあります。

有期・パート社員の相談窓口 必須

有期・パート社員については、雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口が必須記載事項となっています (有期パート労働法6条1項、同施行規則2条1項)。

雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口として、部署や連絡先を記載する必要があります。

その他 任意

以下の事項については、必須ではありませんが、労働条件通知書に記入することが望ましいとされています。

□ 社会保険の加入状況及び雇用保険の適用の有無
□ 中小企業退職金共済制度等の加入状況
□ 労働者に負担させるべきものに関する事項
□ 安全及び衛生に関する事項
□ 職業訓練に関する事項
□ 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
□ 表彰及び制裁に関する事項
□ 休職に関する事項等の制度

労働条件通知書の書式・フォーマット

雇用契約書兼労働条件通知書(有期_シフト制_パート社員)

パート社員を対象とした、労働条件明示義務(労基法第15条)を充足しながらも、必要最小限度のシンプルなバージョンです。

雇用契約書 兼 労働条件通知書

株式会社○○(以下「甲」という。)と末尾記載の労働者(以下「乙」という。)は、次の労働条件に基づいて雇用契約(以下「本契約」という。)を締結する。

雇用期間平成   年   月   日~平成   年   月   日までの期間
就業場所東京都○○区○○○○○○○○○ その他甲が指定する場所(ただし、○エリア限定)
職務内容○○、○○業務その他これに関連する業務その他,甲が指定する業務(職種限定あり)
就業時間等

 

1.       始業・終業の時刻等

会社が定めるシフト表による。労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与える。

2.       所定外労働,休日労働(あり)

休日・休暇1.       休日:土日祝日のほか会社が指定するシフト表による

2.       休暇:法定の年次有給休暇(その他詳細はパート就業規則第○条~○条による)

賃金1.     時給 ○○ 円

2.     ○○手当 ○○ 円(詳細はパート賃金規程第○条)

3.     通勤手当 実費支給(上限○○円 詳細はパート賃金規程○条)

4.     割増賃金 法定割増率に従う(詳細はパート賃金規程第○条)

5.     締日・支払日:毎月末日締め翌月15日払い

6.     昇給・降給 あり(能力・業績による 詳細はパート賃金規程第○条)

7.     賞与 なし

8.     退職金 なし

契約更新の有無□更新しない

□更新する場合がある

契約の更新の

判断基準

・契約期間満了時の業務量

・従事している業務の進捗状況

・労働者の能力、業務成績、勤務態度

・会社の経営状況

・その他(              )

退職に関する事項1.  自己都合退職の手続き(退職する1ヶ月前に退職願提出 詳細はパート就業規則第○)

2.  試用期間 採用後○ヶ月間(パート就業規則第○条による。)

3.  解雇事由・手続:懲戒解雇・諭旨解雇(パート就業規則第○条~○条による),普通解雇(パート就業規則第○条による)

4.  その他退職関係(パート就業規則第○条~○条)

相談窓口雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口:本社人事部(電話○○ー○○○○ー○○○○)
その他乙は、甲が定めるパート就業規則、同賃金規程その他諸規程の内容が雇用契約の内容であることを確認し、それら諸規程を遵守し、誠実に勤務することを約束する。

本契約書は、2 通作成し、甲および乙の双方が各1 通を保管する。

年   月   日

甲 東京都千代田区○○○○○
株式会社○△商事株式会社
代表取締役 ○野△太郎

乙(労働者)
住所 東京都江東区○○○○○
氏名 甲野 太郎 印

雇用契約書兼労働条件通知書については労務専門の弁護士へご相談を

労務専門弁護士に事前に相談することの重要性

従業員の生涯年収は約2億円と言われています。従業員には労働法の保護が与えられていますので、一旦定められた労働契約は会社が一方的に変更することはできません。

つまり、従業員との間における、後で変更不可能な、2億円の契約、それが労働条件通知書なのです。10名の正社員を雇えば20億円の契約になります。

しかし、労働契約書や労働条件通知書を、取り交わしていない、取り交わしたが内容に不備があることから、後になってトラブルに発展している例は後を絶ちません。

世の中の人事労務トラブルは、労働契約書、労働条件通知書、就業規則さえ正しく作成していれば回避できたトラブルばかりなのです。

労働条件通知書や就業規則をおろそかにしたばかりに、後でトラブルになり、莫大な金額の未払残業代や損害賠償金を支払わされることもあるのです。

また、隙のある労働条件通知書や就業規則につけ込んで、労働組合や労働弁護士が介入されている事例も後を絶ちません。

リスクを回避するためには、労務専門の弁護士事前に相談することとお勧めします

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詳しくは

労務専門弁護士の顧問契約 をご参照ください。

まとめ

以上おわかりいただけましたでしょうか。

今回は、シフト制に関する労働契約書・労働条件通知書の記載事項と書式・フォーマットについて説明させて頂きました。

労働契約書や労働条件通知書は、まさに雇用関係のスタート地点において、労使双方が、雇用契約内容を確認するための文書です。

この地点で見解の相違や齟齬が生じますと、その後の良好な雇用関係ひいては信頼関係も危ういものとなってしまいます。

従業員との間で、無駄なトラブルを回避し、信頼関係を強固にして同じ方向に向かっていくには、雇用契約書兼労働条件通知書の適切な整備が必須であることをご理解頂ければ幸いです。

 

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