行政通達

いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項(令和4年1月7日 厚生労働省)

令和4年1月7日
厚生労働省

いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項

 

 

1 趣旨

人手不足や労働者のニーズの多様化、季節的な需要の繁閑への対処等を背景として、パートタイム労働者やアルバイトを中心に、労働日や労働時間を一定期間ごとに調整し、特定するような働き方が取り入れられています。典型的なケースでは、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態が取られています。

このような形態には、その時々の事情に応じて柔軟に労働日・労働時間を設定できるという点で契約当事者双方にメリットがあり得る一方、使用者の都合により、労働日がほとんど設定されなかったり、労働者の希望を超える労働日数が設定されたりすることにより、労働紛争が発生することもあります。

労働紛争を未然に防止し、上記のような形態を契約当事者双方にとってメリットのあるものとするため、使用者が現行の労働関係法令等に照らして留意すべき事項を、一覧性をもってとりまとめましたので、使用者においては当該事項を踏まえて、適切な雇用管理を行うことが望まれます。

なお、本留意事項においては、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など。以下同様。)ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態※を「シフト制」シフト制を内容とする労働契約を「シフト制労働契約」シフト制労働契約に基づき就労する労働者を「シフト制労働者」とそれぞれ称することとします。

※ 本留意事項においては、近年、パートタイム労働者やアルバイトで広がっている、あらかじめ具体的な労働日、労働時間を決めず、シフト表等により柔軟に労働日、労働時間が決まる勤務形態を想定しており、従前から見られた、いわゆる交替勤務(年や月などの一定期間における労働日数や労働時間数が決まっており、その上で、就業規則等に定められた勤務時間のパターンを組み合わせて勤務する形態)を除きます。

2 シフト制労働契約に関する留意事項

⑴ 労働契約とは

労働契約法第6条において、「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」と規定されています。

労働契約の基本的な考え方としては、「労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきもの」とされています(労働契約法第3条第1項)。

また、「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければなら」ず(労働契約法第3条第4項)、さらに、「労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」とされています(同条第5項)。

⑵ 労働契約の締結

ア 労働契約の締結時に明示すべき労働条件

労働条件をあいまいにしたまま労働契約を締結したために、労働者が不本意な労働条件で働かされ、使用者及び労働者間のトラブルとなるといった事態を未然に防止する観点から、労働基準法においては、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して「始業及び終業の時刻」や「休日」に関する事項などを書面により(※)明示しなければならないこととされています(労働基準法第15 条第1項、労働基準法施行規則第5条第1項第2号等、第3項、第4項柱書本文)。

※ 労働者の希望に応じて、電子メールの送信等電子的な方法により明示することも可能です(労働基準法施行規則第5条第4項柱書但書各号)。

この点、シフト制労働契約についても、労働契約の締結時に労働基準法所定の事項を明示しなければなりませんが、その中でも特に問題となりやすい「始業及び終業の時刻」や「休日」に関する事項については、以下の点に留意する必要があります。

(ア) 「始業及び終業の時刻」に関する事項

労働契約の締結時点において、すでに始業及び終業時刻が確定している日(※本ブログ筆者注)については、その日の始業及び終業時刻を明示しなければなりませんので、労働条件通知書等には、単に「シフトによる」と記載するのでは足りず、労働日ごとの始業及び終業時刻を明記するか、原則的な始業及び終業時刻を記載した上で労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等をあわせて労働者に交付するなどの対応が必要です

弁護士吉村雄二郎
【注釈】この記載の反対解釈として、労働契約の締結時点において、始業及び終業時刻が確定していない場合(おそらく大部分のシフト制がこれに該当する)は、始業及び終業時刻を明示しなくてもよく、労働条件通知書等には、単に「シフトによる」と記載でも足り、労働日ごとの始業及び終業時刻を明記したり、原則的な始業及び終業時刻を記載した上で労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等をあわせて労働者に交付するなどの対応は不要です。
(イ) 「休日」に関する事項

労働契約の締結時に休日が定まっている場合(※本ブログ筆者注)は、これを明示しなければなりません。また、具体的な曜日等が確定していない場合は、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明示しなければなりません

労働基準法では、使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1 回又は4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないこととされています(労働基準法第35 条)ので、最低でもこうした内容を満たすような考え方を明示する必要があります

なお、4週間を通じて4日以上の休日とする場合には、4週間の起算日を就業規則等において明らかにしておくことが必要です(労働基準法施行規則第12 条の2第2項)。

弁護士吉村雄二郎
この記載の反対解釈として、具体的な休日の日数、曜日などは明示は不要です。また、具体的な曜日等が確定していない場合は、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明示しておけば足ります。

イ 就業規則に規定すべき事項

常時10 人以上の労働者を使用する使用者は、「始業及び終業の時刻」や「休日」に関する事項などについて、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法第89 条第1号等)。

同一事業場において、労働者の勤務態様、職種等によって始業及び終業の時刻や休日が異なる場合には、勤務態様、職種等の別ごとに始業及び終業の時刻等を規定しなければなりません

シフト制労働者に関して、就業規則上「個別の労働契約による」、「シフトによる」との記載のみにとどめた場合、就業規則の作成義務を果たしたことになりませんが、基本となる始業及び終業の時刻や休日を定めた上で、「具体的には個別の労働契約で定める」、「具体的にはシフトによる」旨を定めることは差し支えありません

※ シフト制労働者に対して、一か月単位の変形労働時間制(労働基準法第32 条の2)を導入しようとする場合には、就業規則において、変形労働時間制導入時の具体的な労働日や各日の始業及び終業時刻(月ごとにシフトを作成する必要がある場合には、全ての始業及び終業時刻のパターンとその組み合わせの考え方、シフト表の作成手続及びその周知方法等)を定めておかなければなりません(昭和63 年3月14 日基発150 号参照)。

ウ 労働契約に定めることが考えられる事項

(ア) シフト作成・変更の手続

使用者及び労働者双方の立場から労働条件の予見可能性を高め、労働紛争を防止するという観点から、シフト制労働者の場合であっても、使用者が一方的にシフトを決めることは望ましくなく、使用者と労働者で話し合ってシフトの決定に関するルールを定めておくことが考えられます

a. シフトの作成に関するルール

具体的な労働日、労働時間などをシフトにより定めることとする場合には、これらが労働条件の重要な要素となっていることに鑑み、シフト作成に関するルールとして、例えば、以下の事項について、あらかじめ使用者と労働者で話し合って定めておくことが考えられます

  • シフト表などの作成に当たり、事前に労働者の意見を聴取すること
  • 確定したシフト表などを労働者に通知する期限や方法

b. シフトの変更に関するルール

基本的に、一旦シフトを確定させた後に当該シフト上の労働日や労働時間等を変更することは、労働条件の変更に該当します。

労働契約法第8条では、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」とされていることを踏まえ、確定した労働日、労働時間等の変更は、使用者及び労働者双方が合意した上で行うようにしてください。

こうした変更が円滑にできるようにするために、シフトの変更に関するルールとして、例えば、以下の事項について、あらかじめ使用者と労働者で話し合って、合意しておくことが考えられます

  • シフトの期間開始前に、確定したシフト表などにおける労働日、労働時間等の変更を使用者又は労働者が申し出る場合の期限や手続
  • シフトの期間開始後に、使用者又は労働者の都合で、確定したシフト表などにおける労働日、労働時間等を変更する場合の期限や手続

なお、これらのルールについては、就業規則に定める等して、一律に設けることも考えられます。

(イ) 労働日、労働時間などの設定に関する基本的な考え方

労働者の労働契約の内容に関する理解を深めるためには、シフトにより具体的な労働日、労働時間や始業及び終業時刻を定めることとしている場合であっても、その基本的な考え方を労働契約においてあらかじめ取り決めておくことが望まれます

例えば、労働者の希望に応じて以下の事項について、あらかじめ使用者と労働者で話し合って合意しておくことが考えられます

  • 一定の期間において、労働する可能性がある最大の日数、時間数、時間帯
    (例:「毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する」など)
  • 一定の期間において、目安となる労働日数、労働時間数
    (例:「1か月○日程度勤務」、「1週間当たり平均○時間勤務」など)
  • これらに併せる等して、一定の期間において最低限労働する日数、時間数などについて定めることも考えられます
    (例:「1か月○日以上勤務」、「少なくとも毎週月曜日はシフトに入る」など)

エ 労働契約の確認

労働契約法では、「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。」(労働契約法第4条第1項)、「労働者及び使用者は、労働契約の内容…について、できる限り書面により確認するものとする。」(同条第2項)とされていることから、労働契約の内容の理解の促進のため、前記2⑵ウの内容を使用者と労働者で合意した場合には、前記2⑵アの書面により明示すべき労働条件に加えて、これらの合意内容についても、当事者間でできる限り書面により確認しておくことが望まれます。

⑶ 労働者の安全と健康の確保

労働安全衛生関係法令は、職場における労働者の安全と健康を確保するため、事業場の規模に応じた安全衛生管理体制の確立や労働者に対する安全衛生教育の実施、作業場所や使用する機械設備、化学物質等による危険や健康障害を防止するための措置、健康診断等の労働者の健康を確保するための措置等を事業者に義務付けています。

これらの措置は、シフト制労働者であることをもって適用対象外となるものではありません。特に、健康診断やストレスチェックについては、定期にこれを実施することにより、労働者の心身の健康状態を把握し、その結果を踏まえた対策を実施することが重要であるため、業務量の変動により、勤務日数や労働時間数が一時的に減少したシフト制労働者についても、実施対象に含めることが望まれます。

⑷ 労働者を実際に労働させるに当たっての労働時間等の扱い

ア 労働時間

シフト制労働者の場合であっても、1 日8時間以内、1週40 時間以内の法定労働時間を遵守する必要があります(労働基準法第32 条)。法定労働時間を超えて労働させる場合や労働基準法第35 条の法定休日(週1日又は4週4日の休日)に労働させる場合には、事前に労働者の過半数で組織する労働組合等と書面による協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります(労働基準法第36 条)。また、変形労働時間制を導入して1日又は週の法定労働時間を超えて労働させる場合は、あらかじめ書面による労使協定を締結するなどの手続が必要です(労働基準法第32 条の2、第32 条の5)。

イ 休憩

シフト制労働者の場合であっても、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45 分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません(労働基準法第34 条第1項)。

休憩時間とは、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいいます。そのため、労働者が現実に作業をしていないとしても、使用者からいつ就労の要求があるかもしれない状態で待機している、いわゆる「手待時間」は、休憩時間には該当しません。また、例えば来客対応などで労働者が実際に労働した場合には、その時間も休憩時間として取り扱うことはできません。

よって、「休憩時間」とされた時間中に手待時間や来客対応などの時間が含まれる場合は、これらの時間を除いて少なくとも45 分(労働時間が6時間を超える場合)又は1時間(労働時間が8時間を超える場合)の休憩時間を与えることが必要になります。なお、労働基準法上、休憩時間は必ずしも連続して与える必要はありません。

ウ 年次有給休暇

シフト制労働者の場合であっても、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤したときは、労働基準法所定の日数の年次有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法第39 条第1項、第2項)。たとえ雇用契約の契約期間が6か月未満であっても、契約が更新されて6か月以上に及んでいる場合には、6か月間継続勤務の要件を満たすこととなります。

また、所定労働日数が少ない労働者についても、労働日数に応じた日数分の年次有給休暇を与えなければなりません(労働基準法第39 条第3項)。シフト制労働者の場合であっても、年次有給休暇については、原則として労働者の請求する時季に与えなければなりません(労働基準法第39 条第5項)。労働者が年次有給休暇を取得した日については、労働者の就労義務が消滅する
一方で、使用者は、通常通り勤務した場合と同等の賃金など、一定の賃金を支払わなければなりません(労働基準法第39 条第9項)。シフト制労働者の場合であっても、法定の年次有給休暇の付与日数が10 日以上である場合には、そのうち5日(既に取得した日数があれば、5日から既に取得した日数を控除した日数)について、法所定の基準日から1年以内に時季を定めて取得させなければなりません(労働基準法第39 条第7項)。

エ 休業

労働基準法においては、使用者は、使用者の責に帰すべき事由により労働者を休業させた場合、当該休業期間中、当該労働者に対し、平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならないこととされています(労働基準法第26条)。

これは、労働者が使用者の責に帰すべき事由によって就業できなかった場合に使用者に休業手当の支払を義務付けることにより、労働者の生活を保護しようとするものです。「使用者の責に帰すべき事由」は、使用者の故意や過失に限定されず、使用者側に起因する経営、管理上の障害なども含まれます。ただし、不可抗力による場合はこれに当たりません。

一般的には、

  1. その原因が事業の外部より発生した事故であること
  2.  事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること

という要素をいずれも満たす場合は、不可抗力による場合に該当することとなりますが、②の要素を満たすためには、使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要があります。

具体的な努力を尽くしたと言えるか否かは、例えば、

  • 自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか
  • 労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか

といった事情から判断されることとなります。

シフト制労働者の場合であっても、使用者の責に帰すべき事由により労働者を休業させた場合には、休業手当の支払が必要になります。

⑸ その他

ア 労働契約の終了

(ア) 解雇

シフト制労働者が期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」といいます。)の労働者である場合は、労働契約法第17 条第1項により、「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、…解雇することができ」ません。

また、シフト制労働者が期間の定めのない労働契約の労働者である場合、労働契約法第16 条により、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には無効となります。なお、やむを得ず労働者を解雇しようとする場合、シフト制労働者であっても、少なくとも30 日前にその予告を行うことや、予告を行わない場合には平均賃金の30 日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要です(労働基準法第20 条第1項)。

(イ) 雇止め

有期労働契約における雇止め(労働者からの有期労働契約の更新等の申込みを使用者が拒絶すること)については、シフト制労働者の場合であっても、過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが期間の定めのない労働契約における解雇と社会通念上同視できると認められる場合や、有期労働契約の契約期間の満了時に、労働者がその有期労働契約が更新されるものと期待することに合理的な理由があると認められる場合において、使用者が雇止めをすることが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないとき」には、労働契約法第19 条により、従前と同一の労働条件で有期労働契約が更新されます。

なお、有期労働契約が3回以上更新されているか、雇入れの日から1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、有期労働契約を更新しない場合には、シフト制労働者であっても、少なくとも契約の満了する日の30日前までに、その旨の予告を行うことが必要です(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第1条)。

イ 期間の定めのない労働契約への転換

シフト制労働者であっても、有期労働契約が繰り返し更新されて契約期間が通算5年を超えた場合において、労働者が使用者に対して期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、両者間に期間の定めのない労働契約が成立することになります(労働契約法第18 条)。

使用者においては、シフト制労働者が期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたことを理由に、当該労働者のシフトの頻度を一方的に減らすことのないようにしてください。

ウ 不合理な待遇差の禁止

シフト制労働者がパートタイム労働者又は有期労働契約の労働者である場合、労働条件を設定する際、パートタイム・有期雇用労働法第8条(不合理な待遇の禁止)にも留意する必要があります。
例えば、通勤手当の支給やシフト減に伴う手当の支払に当たっては、不合理な待遇差に該当しないように留意してください。

なお、不合理な待遇差を生じさせないために、比較対象となる通常の労働者の待遇を労使で合意することなく引き下げることは望ましい対応とはいえないことにも留意してください。

3 労働者の募集等

労働者の募集等に当たっては、労働者となろうとする者等に対して、業務内容・賃金・労働時間等の労働条件を明示することが必要です(職業安定法第5条の3第1項及び第2項)。求人票等を記載する時点においても、前記2の⑵、⑷の趣旨を踏まえた記載とすることが望まれます。

なお、募集時の労働条件を、労働契約締結までに変更する場合は、変更内容の明示が必要です(職業安定法第5条の3第3項)。労働条件は可能な限り具体的かつ詳細に明示するよう配慮が必要です。労働条件の明示に当たっては、職業安定法に基づく指針等を遵守することが必要です。

4 その他

⑴ シフト制に関するご相談

シフトに関するトラブルを未然に防止したい場合や、仮にトラブル(例:「シフトが以前より少なくなった」、「シフトを一方的に減らされた」など)が生じた場合、その解決方法の一つとして、個別労働紛争解決制度があります。

まずは、お近くの都道府県労働局、各労働基準監督署内などに設置されている総合労働相談コーナーにご相談ください。

⑵ 社会保険、労働保険の加入等

ア 労災保険

労災保険は、労働者の保護を図るための制度であり、労働者を使用する事業は適用事業1となります(労働者災害補償保険法第3条)。シフト制労働者の場合であっても、労災保険給付の対象となります。

イ 雇用保険

次の(ア)及び(イ)のいずれにも該当するときは、雇用保険の被保険者となります。

(ア) 1週間の所定労働時間が20 時間以上であること。

1週間の所定労働時間については、2(2)ウ(イ)に記載の基本的な考え方が労働契約書等に定められている場合は、それに沿って判断します。一方で、そうした定めがなくシフトが直前にならないと判明しない場合や、労働契約書等の内容と実際の勤務時間に乖離がある場合は、実際の勤務時間に基づき平均の労働時間を算定します。

なお、シフトの減少により臨時的・一時的に20 時間を下回った場合でも、直ちに被保険者でなくなることはありませんが、恒常的に20 時間を下回る見込みとなった場合は、その時点で被保険者でなくなります。

(イ) 31 日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。

具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます。

  • 期間の定めがなく雇用される場合
  • 雇用期間が31 日以上である場合
  • 雇用期間が31 日未満であるが、雇用契約書その他の書面で更新される場合があることが明示されている場合
  • 雇用期間が31 日未満であり、更新の明示はないが、同様の雇用契約により雇用された労働者が更新等により31 日以上雇用された実績がある場合

なお、当初の雇入時には31 日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31 日以上雇用される見込みとなった場合は、その時点から雇用保険の被保険者となります。

事業主は、雇入や労働時間の増加により労働者が雇用保険の被保険者となった場合は、被保険者となった日の属する月の翌月10 日までに、「雇用保険被保険者資格取得届」を事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出してください。また、離職や労働時間の減少により労働者が雇用保険の被保険者でなくなった場合は、当該事実が生じた日の翌日から10 日以内に、「雇用保険被保険者資格喪失届」を事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出してください。

雇用保険の被保険者が離職した場合に、次の要件を満たすことにより、再就職に向けた求職活動を支援するための給付である基本手当を受給することができます。

  • 離職の日以前2年間に12 か月以上被保険者期間(※)があること
  • 労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態であること
  • ※ 倒産・解雇等による離職の場合(特定受給資格者に該当)、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由による離職の場合(特定理由離職者に該当)は、離職の日以前1年間に6か月以上被保険者期間があること

シフト制労働者が次に該当する理由により離職した場合、「特定理由離職者」又は「特定受給資格者」と認められ、給付制限を受けないほか、基本手当の所定給付日数が手厚くなる場合 2があります。

  • 具体的な就労日数が労働条件として明示されている一方で、シフトを減らされた場合
  • 契約更新時に従前の労働条件からシフトを減らした労働条件を提示されたため、更新を希望せずに離職した場合

また、シフト制労働者が次に該当する理由により離職した場合、「特定理由離職者」と認められ、給付制限を受けません。

  • 新型コロナウイルス感染症の影響により、シフトが減少し、概ね1か月以上の期間、労働時間が20 時間を下回った、又は下回ることが明らかになったことにより離職した場合

ウ 健康保険・厚生年金保険

次のいずれかに該当するときは、厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。所定労働時間については、雇用保険と同様の取扱いとなります。

(ア) 1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である者(パートタイム労働者・アルバイト等)

(イ) 正社員の4分の3未満であっても、

  1. 週の所定労働時間が20 時間以上
  2. 勤務期間が1年以上見込まれること
  3. 月額賃金が8.8 万円以上
  4. 学生以外
  5. 従業員501 人以上の企業又は500 人以下で労使合意をしている企業に勤務していること

の5つの要件を満たす者

(注1)②について、期間の定めがなく使用される場合及び使用期間が1年以上である場合は、継続して1年以上使用されることが見込まれることとして取り扱うこととしています。

また、使用期間が1年未満である場合であっても、次のいずれかに該当するときは、継続して1年以上使用されることが見込まれることとして取り扱うこととしています。

  • 就業規則、雇用契約書等その他書面においてその契約が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されていること
  • 同一の事業所において同様の雇用契約に基づき使用されている者が更新等により1年以上使用された実績があること

なお、令和4年10 月1日以降は②の要件が撤廃され、2か月を超えて使用される見込みがある場合に適用されます。

(注2)③について、 報酬が、日給、時間給、出来高給又は請負給の場合は、被保険者の資格を取得した月前1か月間に同一の事業所において、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額を報酬月額とすることを原則としています。

(注3)⑤について、令和4年10 月1日以降は101 人以上、令和6年10 月1日以降は51 人以上となります。

事業主は、雇入や労働時間の増加により労働者が健康保険・厚生年金保険の被保険者となった場合は、当該事実があった日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を事業所の所在地を管轄する年金事務所(又は健康保険組合)に提出してください。

また、離職や労働時間の減少により労働者が健康保険・厚生年金保険の被保険者でなくなった場合は、当該事実があった日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を事業所の所在地を管轄する年金事務所(又は健康保険組合)に提出してください。詳しい届出の方法や必要な書類などは、年金事務所へお問い合わせ下さい。

 

  1. 個人経営の農林水産業の事業で、その使用する労働者数が5人未満である事業の一部については、暫定的に任意適用事業となっています。
  2. 受給資格に係る離職理由、年齢、被保険者であった期間(加入期間)に基づき基本手当の所定給付日数が決定されます。被保険者であった期間(加入期間)が短い場合など、通常の離職者と所定給付日数が変わらないこともあります。

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