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雇い止めとは?

ご質問

当社は電子部品メーカーですが、Yを期間半年間と定めて嘱託社員として雇用し、以降5回の契約更新を経て現在は3年目です。Yの採用の際に、採用担当の者が「契約期間が満了しても、まじめに働いていれば解雇されることはない。安心して長く働いて欲しい。」などと説明し、また、Yの業務内容は、正社員と同じ内容の業務でした。しかし、先日、当社はYに対し、期間満了で契約は終了し、契約の更新はしない旨告げました。これはいわゆる雇い止めだと思いますが,そもそも雇い止めとはどの様なものですか?

回答

期間を定めた労働契約(有期労働契約)の期間が満了した時点で、契約を更新せずに打ち切ることを「雇止め」といいます。有期労働契約においては,労働契約は期間満了とともに自動的に終了するのが原則です。しかし、正社員と同様の内容の業務に就いていた場合や、更新を何回も続けて相当長期間にわたって働いていた場合、あるいは、「ずっと働いて欲しい。」と言われていた場合など一定の条件があれば、雇止めをしたとしても,法律上契約が更新される場合があります。

  • 有期雇用契約は、期間満了により終了するのが原則である。
  • しかし、更新回数が多数回に及び期間も長期となり、業務内容も正社員と同じで、契約更新も厳格になされておらず、採用の際に契約継続を期待させる言動がなされていたような場合は、労働者の期待は法的に保護され、法律上契約が更新される場合がある。

解説

1 雇い止めとは

雇止めとは,期間を定めた労働契約の期間満了に際し,使用者が契約の更新を拒絶することです。期間の定めのある労働契約においては,契約は期間満了とともに自動的に終了するのが原則です。

期間が満了する場合であっても,合意によって雇用契約を更新することも可能です。契約が更新されたときは,新しい契約に定められた雇用期間の満了をもって雇用契約は終了します。

ところが,何回も契約の更新を行い,雇用された期間も長期に及び,業務内容も正社員と変わらず,契約更新も新しい契約書の取り交わしなどをしていないような場合,労働者は「契約はこのまま続く」と期待することがあります。

そして,このような雇用契約の継続に関する労働者の期待は「法的に保護」される場合があり,その場合は更新拒絶が出来なくなります。

2 雇止めが認められない場合があるか?

上記雇用契約の継続に関する労働者の期待は「法的に保護」される場合は,労働契約法第19条に定めがあります。同条の要件を満たした場合は,法律上の更新が認められます。

【労働契約法第19条の要件】

① 有期契約労働者が契約更新の申込みをした場合又は期間満了後遅滞なく有期労働契約の申込みをした場合

② 過去に反復して更新されたものであって、雇い止めをすることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められること(1号)
または、
有期労働契約の契約期間満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと認められること(2号)

③ 使用者が当該申込みを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき

>>詳細は,「雇止めが許されない場合とは?」をご参照ください。

3 不更新条項を定めれば雇止めは常に認められるか?

上記のような労働契約法第19条の規定を回避する為に,「契約を更新しない」旨のいわゆる不更新条項を定めることがあります。このような不更新条項によって労働契約法第19条の適用を回避できるのでしょうか?

不更新条項を定めることで,更新に対する合理的な期待が無いとして雇止めが肯定される場合もありますが,実際に期間満了時までに労働者に契約更新に対する合理的な期待が発生している場合は,労働契約法第19条の適用を受けることがあります。

>>詳細は「有期雇用契約の不更新条項により雇止めはできるか?」をご参照ください。

対応方法

1 事実の確認

雇止めの対応については,以下の事実を確認する必要があります。

□ 雇用契約の内容
□ 契約締結日,雇用期間,更新に関する約束,更新契約書の管理状況
□ 募集条件・採用手続
□ 雇止めの理由,経緯

2 証拠の確認・収集

□ 全期間の雇用契約書
□ 更新時に交わされた文書
□ 募集要項
□ 就業規則
□ 雇止めの理由に関わる書面
□ 雇止め後の交渉に係る文書

3 雇止めの実行

遅くとも期間満了1ヶ月前には,雇止めをする旨を労働者に伝えます。それを受け,労働者が異議を述べる場合は,理由を説明して説得します。場合によっては上乗せ退職金や解決金を提示して,合意により雇用契約を終了させます。交渉が決裂した場合は,雇止めを実行し,期間満了後は出社させないようにします。

4 示談交渉

雇止め後に,労働者が異議を唱える場合があります。この場合も理由を説明して説得します。場合によっては上乗せ退職金や解決金を提示して,合意により雇用契約を終了させます。

5 労働審判・訴訟対応

労働者が示談に応じず,労働審判や訴訟を提起した場合は,代理人を選任の上,適切に対応します。

参考裁判例

雇い止めが無効と判断された事例

東芝柳町工場事件

最一小判昭和49・7・22民集28巻5 -927

(事案の概要)

Yは,電気機器等の製造販売を目的とする株式会社であるが,その従業員には正規従業員(本工)(昭和37年3月現在49,750名)と臨時従業員(臨時工)の種別があり,後者は,基幹作業に従事する基幹臨時工(同じく19,460名)と附随作業を行うその他の臨時工(同じく1,470名)とに分かれていた。基幹臨時工は,景気の変動による需給にあわせて雇傭量の調整をはかる必要から雇傭されたものであって,その採用基準,給与体系,労働時間,適用される就業規則等においては本工と異なる取扱をされているが,その従事する仕事の種類,内容の点においては本工と差異はなかった。Yにおける基幹臨時工の数は,昭和25年以降漸次増加し,以後昭和37年3月までは必ずしも景気の変動とは関係なく増加の一途をたどり,特に昭和33年から同38年までは毎年相当多数が採用され,総工員数の平均30パーセントを占めていた。そして,基幹臨時工が2カ月の期間満了によって傭止めされた事例は見当らず,自ら希望して退職するものの外,そのほとんどが長期間にわたって継続雇傭されていた。また,Yの臨時従業員親別の年次有給休暇の規定は1年以上の雇僻を予定しており,1年以上継続して雇傭された臨時工は,試験を経て本工に登用することとなっているが,右試験で数回不合格となった者でも,相当数の者が引続き雇傭されていた。
Ⅹらは,いずれも,Yと契約期間を2カ月と記載してある臨時従業員としての労働契約書を取りかわして入社した基幹臨時工であるが,その採用に際しては,Y側に,Ⅹらに長期継続雇用,本工への登用を期待させるような言動があり,Ⅹらも,右期間の定めにかかわらず継続雇傭されるものと信じて前記契約書を取りかわしたのであり,また,本工に登用されることを強く希望していたものであって,その後,YとⅩらとの間の契約は,5回ないし23回にわたって更新を重ねたが,Yは,必ずしも契約期間満了の都度,直ちに新契約締結の手続をとっていなかった。

(裁判所の判断)

「原判決は,以上の事実関係からすれば,本件各労働契約においては,Yとしても景気変動等の原因による労働力の過剰状態を生じないかぎり契約が継続することを予定していたものであって,実質において,当事者双方とも,期間は一応2カ月と定められてはいるが,いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと解するのが相当であり,したがって,本件各労働契約は,期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず,本件各傭止めの意思表示は右のような契約を終了させる趣旨のもとにされたのであるから,実質において解雇の意思表示にあたる,とするのであり,また,そうである以上,本件各傭止めの効力の判断にあたっては,その実質にかんがみ,解雇に関する法理を類推すべきであるとするものであることが明らかであって,上記の事実関係のもとにおけるその認定判断は,正当として首肯することができ,その過程に所論の違法はない。」

(コメント)

期間が定められていても、反復して更新され、実質上期間の定めのない契約と異ならない状態に至っている常用的臨時労働者の場合は、雇い止めを行なう際に、正規従業員に対して適用される「解雇権濫用の法理」(社会通念上認められる合理的理由がないと解雇権の濫用となり、解雇が無効となるとする原則)が適用されるとし、「余剰人員の発生等従来の取扱い(契約期間の更新)を変更してもやむを得ないと認められる特別の事情」がなければ雇い止めはできない、と述べています。

雇い止めが有効と判断された事例

日立メディコ事件

最一小判昭和61・12・4労判486-6

(事案の概要)

Ⅹは,昭和45年12月1日から同月20日までの期間を定めてYのA工場に臨時員として雇用され,同月21日以降,期間2カ月の労働契約が5回更新された。A工場の臨時員制度は,景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で設けられたものであり,臨時員の採用にあたっては,各種試験を行わず,面接において健康状態,経歴等を尋ねるのみで採用を決定するという筒易な方法をとっていた。Yが昭和45年8月から12月までの間に採用したA工場の臨時貝90名のうち,翌46年10月20日まで雇用関係が継続した者は,本工採用者を除けば,Ⅹを含む14名であった。A工場においては,臨時員に対し,原則として軽易な作業に従事させる方針をとっており,Ⅹも比較的簡易な作業に従事していた。Yは,臨時員の契約更新にあたっては,更新期間の約1週間前に本人の意思を確認し,当初に作成された労働契約書の「4雇用期間」欄に順次雇用期間を記入し,臨時員の印を押印させていた(もっとも,Xが属する機械組においては,本人の意思が確認されたときは,給料の受領のために預かってある印を庶務係が本人に代わって押印していた。)ものであり,ⅩとYとの間の5回にわたる本件労働契約の更新は,いずれも期間満了の都度新たな契約を締結する旨を合意することによってされてきたものであった。Ⅹは同年10月21日以降,不況を理由に雇止めとされた。

(判決概要)

「事実関係の下においては,...5回にわたる契約の更新によって,...ⅩとYとの間に期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできない・・・所論引用の判例(東芝柳町工場事件=最判昭49.7.22)は,事案を異にし,本件に適切でない。」「A工場の臨時貝は,...臨時的作業のために雇用されるものではなく,その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり,Ⅹとの間においても5回にわたり契約が更新されているのであるから,...雇止めにするに当たっては,解雇に関する法理が類推され,解雇であれば解雇権の濫用,信義則違反又は不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかったとするならば,期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。しかし,右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上,雇止めの効力を判断すべき基準は,いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。したがって,...独立採算制がとられているYのA工場において,事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり,その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく,臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には」,「期間の定めなく雇用されている従業員」の「希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。」との原判決の判断を引用し,これを正当としてⅩの上告を棄却した。

(コメント)

①本判決は、本件では、前記東芝柳町工場事件のように、期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたとはいえないとしたうえで、それでもⅩらは非臨時的な作業のために雇用されていること、雇用関係のある程度の継続が期待されていること、実際に数回の契約が更新されていることを理由に、雇止めについて解雇に関する法理(労契法16条)が類推適用されると述べています。
②この判決により、雇止め制限の法理は、契約更新により雇用の継続に合理的な期待がある場合にも適用されるという理解が広がっていくことになりました(龍神タクシー事件一大阪高判平成3年1月16日労判581号36頁など)。
③また、雇止め制限の法理を適用した結果、雇止めが無効と判断されれば、従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係が生じ、一種の法定更新であると解されます。
④雇止めが経営上の理由による場合には、整理解雇の4要件(要素)が類推適用されることになりますが、有効性の判断は、正社員に対するよりも緩やかに行われることになると示唆しています。
⑤本件では、事例的判断として、解雇回避努力として、正社員に対する希望退職を募集せずに、臨時員に対する雇止めをしたとしても、それは不当・不合理ではないと判断されました。

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