セクハラ行為に対していかなる懲戒処分ができるか?

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ご質問

当社の男性社員Yが社内で同僚女性社員Aに対し「まだ痩せてないな」などと体型を誹謗する言動や、「服装がダサい」などと身体的特徴や服装について指摘する言動を繰り返していました。当社としては、Yの言動はセクシャルハラスメントに該当するものと考えていますが、この事案でYをいかなる懲戒処分にできるでしょうか?

回答

発言によるセクハラが問題となった場合に,セクハラが事実なのか、被害者と加害者の言い分が食い違った場合にどちらの供述を正しいと認定するか、仮に発言があったと認められる場合、その発言がセクシュアルハラスメントに該当するかが重要となります。
身体的接触を伴いその態様が悪質であり,また,企業秩序が大きく乱されたようなケースにおいては,懲戒解雇もあり得ます。
ご相談のケースでは、Yの言動はセクハラに該当するといえますが、懲戒処分の量定としては、その内容・程度に鑑み、初犯であれば戒告・譴責程度、すでに注意・指導を受けているにもかかわらず行った場合は減給処分程度が相当であると考えます。

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POINT

  • セクハラの事実認定は被害者の意向を踏まえて慎重に行う
  • セクハラは懲戒事由に該当するが、懲戒処分の量刑はセクハラの程度に応じて行う

解説

1 セクハラ行為が懲戒処分の対象となるか?

職場におけるセクシャルハラスメント(セクハラ)とは,「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」であり,それに対する労働者の対応による労働者が労働条件について不利益を受けたり(対価型セクハラ),「性的な言動」により職場環境が害されることを意味します。

【男女雇用機会均等法11条1項】
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

セクハラは,被害従業員に対して身体的又は精神的苦痛を与え,職場における具体的職務遂行能力を阻害し,企業秩序を乱す行為であることから,企業としても加害者に対して厳しい処分を行う必要があり,懲戒処分の対象となり得ます

2 セクハラの事実認定

2.1 被害者の意向確認

セクハラ被害は,被害者からの申告によって明らかとなることが多くあります。この場合,調査等を行うのに先立ち,被害者に対し,会社にどのような対応を望むかを確認します。

また,事実確認のために加害者にも事情を聞いてもよいかの意思確認を行います。事情を加害者に開けば,被害者が申告したことが加害者に判明する可能性が高くなるところ,それを被害者が望まないこともあるからです。

ただ,加害者の言い分を聴取しない場合は,原則として加害者の懲戒処分を行うことは難しくなります。その場合は,人事異動によって,職場において被害者と加害者が接触する場面が少なくなるようにしたり,加害者の言動に対して一般的注意を行い,言動の改善を期待するといった対応にとどまることになります。

2.2 事実認定

セクハラ言動は第三者がいないところで行われることが多く,被害者と加害者以外は目撃者・事情を知る者がいない,また,客観的な証拠がない,といったことも多くあります。その為,事実認定においでは,被害者および加害者の事情聴取が大きな意味を持ちます。

しかし,たとえば,そもそも被害者が主張するセクハラ言動の存否について,両者の言い分が異なる,あるいは,性的言動や関係があったことには争いはないとしても,その言動や行為について,被害者の同意の有無が争点となることもあります。

このように被害者と加害者の言い分が異なる場合には,どちらの供述が信用できるかを見極める必要があります。供述の信用性は,客観的な裏付け証拠(メール,SNSのやりとり履歴,画像等)の有無,供述の具体性の有無,自分に都合の悪いところを「記憶にない」などと述べて誤魔化しているか否かなどを総合考慮して判断するしかありません。
懲戒処分の前提としてのセクハラ言動の有無については,最終的には会社側に立証責任(証明出来ない場合は敗訴する)があることも視野に入れて慎重に事実認定を行う必要があります。

3 セクハラ行為の懲戒処分の量定は?

2.1 基本的な懲戒処分の考え方

では、セクハラ行為の事案でいかなる懲戒処分を行うべきでしょうか?その処分量定が問題となります。

懲戒処分の量定を考えるにあたっては,社員のセクハラ行為が①刑法上の強制わいせつ等犯罪行為に該当するレベルなのか,②着衣の上からお尻を触るという民法上の不法行為(損害賠償)が生ずるレベルなのか,③①,②には該当しないが被害者の職務遂行能力や職場環境を阻害するレベルなのか,ということが1つの重要な基準となります。

また,行為の悪質さ,被害者の処罰感情の有無,加害者の謝罪の有無等を総合的に考慮した上で最終的な処分を決定する必要があります。

以下,①犯罪行為レベルのセクハラ,②民法上の不法行為レベルのセクハラ,③職場環境阻害レベルのセクハラに分けて説明します。

2.2 ①犯罪行為レベルのセクハラ

まず,強姦や強制わいせつに該当する犯罪行為を行った従業員に対する懲戒は,懲戒解雇を含む労働契約の解消しかありません。特に,同僚や部下が被害者である場合には企業秩序が保てませんから,懲戒解雇以外はないでしょう。

コンピューター・メンテナンス・サービス事件(東京地裁平10.12.7判決労判751号18頁)

A社に派遺されて、コンピュータの管理業務に従事していたY社のXが、派遣先の女性社員Bと残業時に長話をするようになり、Bの肩を揉んだり、手をBの身体の前に持ってきたり、ブラジャーに手をかけるような行為をするなどして、残業を終えて帰ろうとするBを追いかけて同じエレベーターに乗り、降りようとしたところで物陰に引きずり込んで抱きつきながら胸に触る、残業を終えて出ようとしたBに抱きつくなどの行為を約5カ月にわたって行ったことに対して、強制わいせつ的行為があったものと認定して懲戒解雇に処した事件で,裁判所は,Xの行為は、Bが不快感を示していたにもかかわらずなされたもので、その態様も執拗かつ悪質で、Bに相当程度の苦痛と恐怖を与え、Xの行為が、A社においてその職場内の風紀秩序を著しく乱し、ひいては、Y社の名誉や信用を著しく傷つけたとして、懲戒解雇処分を有効と判断した。

大阪観光バス〔懲戒解雇〕事件(大阪地判平12.4.28労判789-15)

観光バス運転手が女性バスガイドに抱きつく,でん部・脚部・胸などを触るなどの行為を繰り返していたことを理由になされた懲戒解雇について,裁判所は懲戒解雇を有効と判断した。

2.3 ②民法上の不法行為レベルのセクハラ

着衣の上から胸やでん部を触るといった行為は,刑法上の強制わいせつ罪に問うのは難しいですが,民法上の不法行為は成立するといえます。
懲戒処分としては,初犯の場合には懲戒解雇や諭旨解雇することはできないと考えられ,普通解雇も一般的には難しいと考えられます。
そこで,処分としては,降格(職位を外す)や出勤停止等の懲戒処分が相当といえます。もっとも,過去に同様の行為を行い,譴責・戒告等の懲戒処分を受けている場合は,事案によっては普通解雇できる可能性が高いと思われます。

Y社(セクハラ・懲戒解雇)事件(東京地裁平21.4.2 4判決 労判987号48頁)

支店長が部下の女性に宴会の席でセクハラをした事案において,裁判所は,セクハラを防止すべき立場にありながらの行為で情状は芳しくないとしながら,宴会での手を握ったり肩を抱くという程度の一連の行為が,いわゆる強制わいせつ的なものとは一線を画すものであり,気の緩みがちな宴会で一定量の飲酒の上歓談の流れの中で調子に乗ってされた言動としてとらえることができ,また秘密裏というより多数の従業員の目もあるところで開けっぴろげになされたもので,おのずとその限界があるとして,懲戒解雇を無効と判示した。

日本HP社セクハラ解雇事件(東京地裁平17.1 .31判決判タ1185号214頁)

社員Xは、Y社の金融営業本部長の職位にあったところ,部下の女性従業員Aに対して「Aちゃん、やらせてよお」との発言を行い、無理やりキスをしたり、深夜に自宅付近まで自動車で押し掛けてその自動車に乗せ車中で手を握る、他の部下である女性従業員Bに対しては、「おまえ、いつやらせてくれるんだよ」などと日常的に発言をし、自分の膝の上に座らせた上、胸をわしづかみするように触るなどしたことを理由にY社が懲戒解雇処分とした事案について,裁判所はXの行為は悪質なものであり、Y社においてXの地位は役員に次ぐ地位にあり、約80人の従業員を管理監督する立場にあったにもかかわらず、立場上拒絶することが難しいAとBに対してセクハラ行為を行ったもので、その責任は重く,また,Y社では、セクハラ行為を含む差別や嫌がらせに対してこれを禁止しており、これに違反した場合は懲戒解扉を含む厳罰を科するとの方針を明示し,教育を行っていたこと等を踏まえれば,懲戒解雇は有効であると判断した。

実務ポイント

職場での部下の背部を触るというようなセクハラ行為を行った場合は,上記のとおり一般的には降格等の懲戒処分にしかできません。しかし,実務的には仮に初犯であっても退職届の提出を求めて雇用契約を終了させることが相当でしょう。体を触るという破廉恥なセクハラ行為を行った場合,その労働者は基本的には職場における信頼を失い,会社における未来はありません。退職して別の企業での再起を促したほうが本人のためでもあります。また,被害者が,行為者だけでなく会社に対しても損害賠償請求を求めるおそれがあります。損害賠償をせずとも職場環境は著しく乱れます。そこで,懲戒処分を受けて会社に残るよりも退職したほうが,行為者と会社の双方にとって賢明な選択といえる場合が多いのです。

2.4 ③職場環境を阻害するレベルのセクハラ

職場環境を阻害するレベルのセクハラ行為者については,譴責や減給,悪質な態様のものは降格等の懲戒処分とすることになります。管理職などの立場の場合は,職務適性がないとして普通解雇も許容される場合もありえます。
また,それ以下のレベルのセクハラ行為者については,懲戒ではなく,まず注意・指導を与え,是正されない場合には譴責等の懲戒処分とすることが相当であると思われます。

X市事件(大阪地裁平成18年4月26日判決(労経速1946号3頁))

保健センター所長代理であった男性職員Xが,複数の女性職員に対して体型を誹謗する(「まだやせてないな」というなど),「とっちゃん」と呼ぶ,身体的特徴や服装について指摘するなど言動を行っていたことを理由に減給の懲戒処分がなされた事案において,裁判所は,セクハラにあたる行為はあったものの,その内容程度からすれば,何らの注意を経ることなくいきなり減給の懲戒処分を加えたのは重すぎるとして無効と判断された。

L館事件(最高裁一小平27.2.26判決労判1109号5頁)

Y社の男性従業員Xらが、それぞれ複数の女性従業員に対しで性的な発言等を行ったことを懲戒事由として、Y社から出勤停止の懲戒処分を受けるとともに下位の等級に降格された事案において,裁判所は,X1は、営業部サービスチームの責任者の立場にありながら、女性従業員Aが精算室において1人で勤務している際に、同人に対し、自らの不貞相手に関する性的な事柄や自らの性器、性欲等についてことさらに具体的な話をするなど、極めて露骨で卑猥な発言等を繰り返すなどしたもので、X2は、従業員Aの年齢や従業貝Aらがいまだ結婚をしていないことなどをことさらに取り上げて著しく侮蔑的ないし下品な言辞で同人らを侮辱しまたは困惑させる発言を繰り返し、派遣社員である従業員Aの給与が少なく夜間の副業が必要であるなどと椰楡する発言をするなどしたことは,いずれも女性従業員に対して強い不快感や嫌悪感ないし屈辱感等を与えるもので、職場における女性従業員に対する言動として極めて不適切なものであって、その執務環境を著しく害するものであったというべきであり、当該従業員らの就業意欲の低下や能力発揮の阻害を招来するものであり,懲戒処分を有効と判断した。
なお,裁判所は,Xらの行為は従業員Aから明白な拒否の姿勢を示されていないとしても,「職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも、職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられる」ことから,被害者が拒否していなかったとしてもそのことは加害者に有利に斟酌するべきではないと判示した。

A製薬(セクハラ解雇)事件( 東京地裁平12.8.29判決労判794号77頁)

約30人の部下を統括するデータ管理関係の室長として、東京で単身赴任をしていた男性社員が、①部下の女性社員や派遣社員に対して、たびたび「食事に行こう」「デートしよう」と誘ったり、「貴方を抱きたい」といったメールを送ったりし、②業務にかこつけて女性社員と個人面談を行い、「6年半もアプローチしているのに冷たいね」などと述べて交際を迫る、③担当者でない部下に出張を命じてそれに同行しようとする、④複数の男性社員に、夜の間だけ相手をする女性を紹介したら管理職にするなどの発言をしたことを理由に普通解雇された事案について,裁判所はセクハラの発言については、部下を困惑させ、その就業環境を著しく害するものであること、会社がセクハラを含む嫌がらせのない職場の提供等を行うため、まず、部下を預かる管理職者を実践の第一義的責任者と位置付けていたこと等から、当該社員が管理職としてのみならず、従業員としても必要な適格性を欠くと判断したことは相当の理由があるとして、普通解雇を有効と判断した。

実務ポイント

セクハラへの対応として配転等が行われることがありますが,被害者本人の希望がない限り被害者を異動させるべきではありません。仮に加害者が有能であっても,必ず加害者を異動させるべきです。被害者が泣きを見るのであれば,周囲の従業員の納得が得られず,会社の信用を失います。従業員の忠誠度が大きく下降することになり,その後の労務管理にも少なからず支障が生ずることになります。

3 民間データ

1位 出勤停止(41.5%)

2位 降格・諭旨解雇(31.6%)

3位 懲戒解雇(29.8%)

※「労政時報」第3949号(2018年4月13日発行)P38~「懲戒制度の最新実態」

4 公務員データ

① 強制わいせつ、上司等の影響力利用による性的関係・わいせつな行為:免職又は停職

② 意に反することを認識の上での性的な言動の繰り返し : 停職又は減給
但し,執拗な繰り返しにより被害者が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患した場合:免職又は停職

③ 意に反することを認識の上での性的な言動 : 減給又は戒告

※「懲戒処分の指針について」(人事院)2018年9月7日改正

5 報道データ

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対応方法

1 調査(事実及び証拠の確認)

まずは,以下の事実及び証拠を調査・確認する必要があります。

調査するべき事実関係

□ 被害者が申告するセクハラ行為の内容
□ セクハラ行為に至った経緯・被害者と加害者の関係
□ 被害者側の帰責事由(好意等)の有無
□ 加害者による謝罪や示談の有無
□ 注意指導や戒告・譴責の有無,回数
□ 注意等の後の社員の態度
□ 通常の勤務状況・成績

調査の際に収集する資料

□ メール・SNS等のやりとり
□ 被害者の診断書
□ 目撃者の証言
□ 注意指導を行った文書,メール
□ 懲戒処分通知書,始末書

量刑・情状酌量事情

□ セクハラ行為の具体的態様・悪質性
□ 被害者の被害の軽重
□ 会社の業務に与えた影響
□ セクハラ言動が行われた場所・時間帯
□ 謝罪・反省の態度の有無
□ 治療費等の弁償の有無
□ 示談の成否
□ 入社後の勤務態度
□ 他の社員に与える影響の大小
□ 会社における過去の同種事案での処分例との比較
□ 他社及び裁判例における同種事案との処分例との比較

2 適正手続の履行

弁明の機会の付与

事情聴取と共に,当該社員に対して弁明の機会を付与します。面談又は弁明書の提出の機会を与えます。

懲戒委員会の開催

就業規則等において懲戒委員会を開催することが必要な場合は,同手続を行います。

3 処分の決定及び通告

決定した処分を当該社員に対して通告します。
明確にするために文書によって通告することが一般です。

4 労働者との交渉

懲戒処分に不服のある労働者は異議を唱えて争う姿勢を示すことがあります。具体的には処分の撤回や賃金の請求を行うことがあります。この場合,まずは,法的措置に進む前に,労働者と交渉して,貴社の望む結果が得られるようにします。裁判に訴えられる前の交渉の時点で解決できれば,貴社にとっても早期解決のメリットがあります。

5 裁判対応

労働者との間で交渉による解決が図れない場合は,労働者は自己の権利の実現を求めて裁判を起こす可能性が高いと言えます。具体的には,仮処分手続,労働審判手続,訴訟手続などがありますが,労働者が事案に応じて手続を選択して,自己の請求の実現を目指すことになります。貴社としては,かかる労働者の法的請求に適切に対応する必要があります。

セクハラ行為による懲戒処分に関する裁判例

犯罪行為レベルのセクハラ

コンピューター・メンテナンス・サービス事件

東京地裁平10.12.7判決労判751号18頁

A社に派遺されて、コンピュータの管理業務に従事していたY社のXが、派遣先の女性社員Bと残業時に長話をするようになり、Bの肩を揉んだり、手をBの身体の前に持ってきたり、ブラジャーに手をかけるような行為をするなどして、残業を終えて帰ろうとするBを追いかけて同じエレベーターに乗り、降りようとしたところで物陰に引きずり込んで抱きつきながら胸に触る、残業を終えて出ようとしたBに抱きつくなどの行為を約5カ月にわたって行ったことに対して、強制わいせつ的行為があったものと認定して懲戒解雇に処した事件で,裁判所は,Xの行為は、Bが不快感を示していたにもかかわらずなされたもので、その態様も執拗かつ悪質で、Bに相当程度の苦痛と恐怖を与え、Xの行為が、A社においてその職場内の風紀秩序を著しく乱し、ひいては、Y社の名誉や信用を著しく傷つけたとして、懲戒解雇処分を有効と判断した。

大阪観光バス〔懲戒解雇〕事件

大阪地判平12.4.28労判789-15

観光バス運転手が女性バスガイドに抱きつく,でん部・脚部・胸などを触るなどの行為を繰り返していたことを理由になされた懲戒解雇について,裁判所は懲戒解雇を有効と判断した。

民法上の不法行為レベルのセクハラ

Y社(セクハラ・懲戒解雇)事件

東京地裁平21.4.2 4判決 労判987号48頁

支店長が部下の女性に宴会の席でセクハラをした事案において,裁判所は,セクハラを防止すべき立場にありながらの行為で情状は芳しくないとしながら,宴会での手を握ったり肩を抱くという程度の一連の行為が,いわゆる強制わいせつ的なものとは一線を画すものであり,気の緩みがちな宴会で一定量の飲酒の上歓談の流れの中で調子に乗ってされた言動としてとらえることができ,また秘密裏というより多数の従業員の目もあるところで開けっぴろげになされたもので,おのずとその限界があるとして,懲戒解雇を無効と判示した。

日本HP社セクハラ解雇事件

東京地裁平17.1 .31判決判タ1185号214頁

社員Xは、Y社の金融営業本部長の職位にあったところ,部下の女性従業員Aに対して「Aちゃん、やらせてよお」との発言を行い、無理やりキスをしたり、深夜に自宅付近まで自動車で押し掛けてその自動車に乗せ車中で手を握る、他の部下である女性従業員Bに対しては、「おまえ、いつやらせてくれるんだよ」などと日常的に発言をし、自分の膝の上に座らせた上、胸をわしづかみするように触るなどしたことを理由にY社が懲戒解雇処分とした事案について,裁判所はXの行為は悪質なものであり、Y社においてXの地位は役員に次ぐ地位にあり、約80人の従業員を管理監督する立場にあったにもかかわらず、立場上拒絶することが難しいAとBに対してセクハラ行為を行ったもので、その責任は重く,また,Y社では、セクハラ行為を含む差別や嫌がらせに対してこれを禁止しており、これに違反した場合は懲戒解扉を含む厳罰を科するとの方針を明示し,教育を行っていたこと等を踏まえれば,懲戒解雇は有効であると判断した。

職場環境を阻害するレベルのセクハラ

X市事件

大阪地裁平成18年4月26日判決(労経速1946号3頁)

保健センター所長代理であった男性職員Xが,複数の女性職員に対して体型を誹謗する(「まだやせてないな」というなど),「とっちゃん」と呼ぶ,身体的特徴や服装について指摘するなど言動を行っていたことを理由に減給の懲戒処分がなされた事案において,裁判所は,セクハラにあたる行為はあったものの,その内容程度からすれば,何らの注意を経ることなくいきなり減給の懲戒処分を加えたのは重すぎるとして無効と判断された。

L館事件

最高裁一小平27.2.26判決労判1109号5頁

Y社の男性従業員Xらが、それぞれ複数の女性従業員に対しで性的な発言等を行ったことを懲戒事由として、Y社から出勤停止の懲戒処分を受けるとともに下位の等級に降格された事案において,裁判所は,X1は、営業部サービスチームの責任者の立場にありながら、女性従業員Aが精算室において1人で勤務している際に、同人に対し、自らの不貞相手に関する性的な事柄や自らの性器、性欲等についてことさらに具体的な話をするなど、極めて露骨で卑猥な発言等を繰り返すなどしたもので、X2は、従業員Aの年齢や従業貝Aらがいまだ結婚をしていないことなどをことさらに取り上げて著しく侮蔑的ないし下品な言辞で同人らを侮辱しまたは困惑させる発言を繰り返し、派遣社員である従業員Aの給与が少なく夜間の副業が必要であるなどと椰楡する発言をするなどしたことは,いずれも女性従業員に対して強い不快感や嫌悪感ないし屈辱感等を与えるもので、職場における女性従業員に対する言動として極めて不適切なものであって、その執務環境を著しく害するものであったというべきであり、当該従業員らの就業意欲の低下や能力発揮の阻害を招来するものであり,懲戒処分を有効と判断した。
なお,裁判所は,Xらの行為は従業員Aから明白な拒否の姿勢を示されていないとしても,「職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも、職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられる」ことから,被害者が拒否していなかったとしてもそのことは加害者に有利に斟酌するべきではないと判示した。

A製薬(セクハラ解雇)事件

東京地裁平12.8.29判決労判794号77頁

約30人の部下を統括するデータ管理関係の室長として、東京で単身赴任をしていた男性社員が、①部下の女性社員や派遣社員に対して、たびたび「食事に行こう」「デートしよう」と誘ったり、「貴方を抱きたい」といったメールを送ったりし、②業務にかこつけて女性社員と個人面談を行い、「6年半もアプローチしているのに冷たいね」などと述べて交際を迫る、③担当者でない部下に出張を命じてそれに同行しようとする、④複数の男性社員に、夜の間だけ相手をする女性を紹介したら管理職にするなどの発言をしたことを理由に普通解雇された事案について,裁判所はセクハラの発言については、部下を困惑させ、その就業環境を著しく害するものであること、会社がセクハラを含む嫌がらせのない職場の提供等を行うため、まず、部下を預かる管理職者を実践の第一義的責任者と位置付けていたこと等から、当該社員が管理職としてのみならず、従業員としても必要な適格性を欠くと判断したことは相当の理由があるとして、普通解雇を有効と判断した。

吉村労働再生法律事務所の対応

1 経験豊富な弁護士に相談

懲戒処分の有効性判断は,明確な基準が存在せず,かつ,判断が難解かつ複雑であり,また,貴社が採るべき対応策はケースバイケースで決めざるを得ません。貴社独自で調査の上でのご対応が,時に誤った方法であることも多分にございます。
そこで,まず,懲戒処分について豊富な経験実績を有する弁護士にご相談下さい。ご相談が早ければ早いほどとりうる手段は多いのが実際ですので,トラブルが少しでも生じましたら出来るだけ早期にご相談されることをお勧めいたします。
吉村労働再生法律事務所では,常に労働問題を専門的に取り扱う経験豊富な弁護士が直接対応させていただいております(原則的に代表弁護士である吉村が対応させて頂きます。)。裁判のリスクを踏まえながら,法律上の問題点を指摘しつつも,抽象的な法律論に終始することなく,貴社が採るべき具体的な対応策を助言いたします。早期のご相談により紛争を未然に防止することが出来た事例が多数ございます。また、その後の交渉・裁判対応においても有利な対応を取ることが出来ます。

法律相談受付 TEL:0120-3131-45

2 継続的なご相談・コンサルティング

懲戒処分に関する対応は,長期化することがしばしばあります。ケースバイケースに採るべき対応策や確保すべき証拠も異なりますし,時々刻々と状況が変わっていき,その都度適切な対応をとることが必要です。この対応が間違っていた為に,その後の交渉や法的措置の段階で不利な状況に立たされることもままあります。
吉村労働再生法律事務所では,経験豊富な弁護士が,継続的なご相談を受けコンサルティングを行います。初期の段階より貴社にとって有利な対応をアドバイスしていきます。それにより,その後の交渉・法的措置にとって有利な証拠を確保でき,適切な対応をとることで,万全の準備が出来ます。また,継続的に相談が出来ることにより安心して他の日常業務に専念していただくことができます。

3 貴社を代理して労働者(弁護士,労働組合)と交渉いたします。

懲戒処分を受けた労働者の対応は様々ですが,貴社へ要求を認めさせるために,様々な働きかけをする事が多いのが実情です。労働者が弁護士や労働組合を介して,会社に対し各種の請求を行い,交渉を求めることはよくあることです。弁護士や労働組合はこの種事案の交渉のプロですので,貴社独自で臨むことで,あらぬ言質や証拠をとられ,本来了承する必要のない要求まで認めさせられることもしばしばです。貴社独自でのご対応は,一般的には困難であることが多いといえます。
そこで,吉村労働再生法律事務所では,労使間の交渉対応に精通した弁護士が,貴社に代わって交渉の対応を致します。具体的には,貴社担当者から詳細なヒアリングを実施し,証拠の収集等の準備を行った上で,弁護士が法的根拠に基づいた通知書を出し,相手方と適切に交渉することで,貴社にとって有利な結論を,裁判を経ずに勝ち取ることも可能となります。

4 裁判対応

労働者が労働審判,仮処分,訴訟などの裁判を起こしてくる場合が近時急増しています。かかる裁判への対応は法律で訴訟代理権を独占する弁護士のみが対応することができます。
但し,労働問題を適切に対応することができるのは労働問題について豊富な経験実績を有する弁護士に他なりませんが,労働問題は極めて特殊専門領域であるため,経験実績がない又は乏しい弁護士が殆どである実情があります。
吉村労働再生法律事務所では,労働事件を専門分野とし,裁判対応の豊富な経験実績を有する弁護士が常時対応させていただいております。貴社に対し,最善の弁護活動をお約束いたします。

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