休職

休職とは?

社長
当社は中規模の建築会社ですが、当社従業員に建築工事現場で長年にわたり現場監督業務に従事して参ったYがおります。しかし,Yは、持病であるバセドウ病のため現場作業はできないので事務作業をさせること、午後六時以降の残業はできないこと、日曜、祭日等の休日出勤はできないことの三点を要望して参りました。また,担当医の診断書(病名はバセドウ病で、「現在内服薬にて治療中であり、今後厳重な経過観察を要する。」と記載されていた。)も提出されました。そこで、当社は、Yに対し、「自宅治療命令」を発し、復帰までの約四カ月間を欠勤扱いとして、賃金を支給せず、冬期一時金も減額しました。このような当社の措置は問題でしょうか?
弁護士吉村雄二郎
貴社の「自宅治療命令」は休職命令にあたると解されます。休職命令の有効性は,労働者が真に労務を提供できない健康状態にあるか否かによって決められます。休職命令が有効な場合は,就業規則等で別段の定め(休職期間中でも賃金を支払うなど)がない限り,休職期間中の賃金は請求できません。これに対し,休職命令が違法である場合は,賃金請求を失いません(民法536条2項)。
ご相談のケースでは,従前から行ってきた現場監督業務はできないが,事務作業はできるということですので,職種を特定して雇用された場合はともかく,労務の提供ができないとは必ずしも言い難いと言えます。従って,休職命令は違法となる可能性があります。
傷病により休職できるかは、これを認める就業規則等の定めの有無、内容・趣旨による。
現在の業務ができなくとも、他の業務での労務提供を申し出られた場合、これが債務の本旨に従ったものであれば、休職命令を命じても、労働者が賃金請求権を失わない。
合理的な理由があれば、使用者は休職させるか否かの判断にあたり、労働者に受診を命ずることができる。

1 休職とは

休職とは,ある従業員について労務に従事させることが不能又は不適当な事由が生じた場合に,使用者がその従業員に対し,労働契約関係そのものは維持させながら労務への従事を免除すること又は禁止することをいいます。そのうちで「傷病休職」とは就業規則で私傷病に基づく欠勤が長期間にわたる場合「休職」処分とし,「休職期間中に休職事由が消滅せず復職しないときは自動退職(当然退職又は解雇)とする」旨定めているケースです。これは一種の解雇猶予の制度であり(同旨東京地裁H16.3.26独立行政法人N事件),休職期間中は,従業員との労働契約関係を維持しながら労務への従事を免除するものであり,退職を猶予して傷病の回復を待つことにより労働者を保護する制度であると解する(札幌地裁H11.9.21北産機工事件)のが一般です。
休職は労働協約や就業規則の定めに基づく使用者の一方的な意思表示(形成行為)によってなされるのが普通ですが,労働者との合意によってなされることもあります。

2 休職制度の趣旨

傷病休職制度は,本来は普通解雇事由の「傷病により長期にわたり業務に耐えないとき」といった正常な勤務,すなわち労働契約の本旨に従った労務の給付が長期にわたってできない状態(労働者側の事由による債務不履行)が生じたわけであるから,契約関係の通例として一般の契約解除(雇用契約の場合は解雇)事由となるものです。そこで,本来は,直ちに解雇事由となるべきところを一定の猶予期間を置いて回復状況を待つという制度ですので,休職期間が満了しても復職できないときは,解雇ないし退職の猶予期間が経過したので,期間満了時に退職又は解雇となります。就業規則で私傷病に基づく欠勤が長期にわたる場合「休職」処分とし,「休職期間中に休職事由が消滅せず復職しないときには自動退職(当然退職)とする」旨の定めはこのことを想定しているわけです。

3 要件・効果

裁判所は,休職制度を,その目的,機能,合理性,労働者が受ける不利益の内容等を勘案して,就業規則の合理的解釈という手法で規制しています。
そして,傷病休職については,①期間満了の翌日等一定の日に雇用契約が自動終了することを,②明白に就業規則に定めて明示し,③かつその取り扱いについて規則どおり実施し,例外的な運用や裁量がなされていないならば,定年と同じように終期の到来による労働契約の終了となり「解雇の問題は生じない」とされている(S27.7.25基収1628号通達,同旨東京地裁S30.9.23電機学園事件)。

4 休職を命ずることの可否

労働者が就労を求めているのに,労務に耐えられないとして使用者が休職を命じることがあります。休職命令の有効性は,労働者が真に労務を提供できない健康状態にあるか否かによって決められます。休職命令が有効な場合は,就業規則等で別段の定め(休職期間中でも賃金を支払うなど)がない限り,休職期間中の賃金は請求できません。これに対し,休職命令が違法である場合は,賃金請求を失いません(民法536条2項)。

5 労務提供に必要な健康状態を判断する際の「業務」とは?

では,労務提供に必要な健康状態か否かは,いかなる「業務」について判断されるのでしょうか?つまり,私傷病により従来従事していた業務はできない場合でも,他の業務ならできる場合,労務提供に必要な健康状態ではないと言えるのでしょうか?

5.1 ゼネラリストの場合

この点,裁判例では,「労働者が,職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては,現に就業を命じられた特定の業務について労務提供が十全にはできないとしても,その能力,経験,地位,当該企業の規模・業績,当該企業における労働者の配置・異動の実績及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務提供をすることができ,かつ,その提供を申し出ているならば,なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。」(片山組事件 最判H10.4.9労判736-15)と判断しています。

5.2 スペシャリストの場合

これに対し,職種を特定して採用された労働者(スペシャリスト)は業務が特定されているので,その業務を支障なく遂行できる状態になっているかが基準となります。
ただし,スペシャリストの場合でも,職種変更を予定している場合は注意を要します。すなわち,「労働者がその職種を特定して雇用された場合において,その労働者が従前の業務を通常の程度に遂行することができなくなった場合には,原則として,労働契約に基づく債務の本旨に従った履行の提供,すなわち特定された職種の職務に応じた労務の提供をすることはできない状況にあるものと解される(もっとも,他に現実に配置可能な部署内氏担当できる業務が存在し,会社の経営上もその業務を担当させることにそれほど問題がないときは,債務の本旨に従った履行の提供が出来ない状況にあるとはいえないものと考えられる)」とされています(カントラ事件 大阪地判H13.11.9労判824-70
大阪高判H14.6.19労判839-47)。

労働問題に関する相談受付中

営業時間:平日(月曜日~金曜日)10:00~18:00 /土日祝日は休業