無断欠勤,遅刻を理由にいかなる懲戒処分ができるか?

5219f421037086909865dbc3f70f1109_s-min.jpg

ご質問

当社の社員で,遅刻や欠勤が著しく多い者がいます。具体的には,6カ月の間に,24回の遅刻と14日間の無断欠勤を行っており,半年で完全な就労をしたのは勤務日の69%程度に過ぎません。そこで,当該社員を懲戒解雇したいと考えておりますが,可能でしょうか?

回答

社員の欠勤や遅刻は,労務提供という労働者としての基本的義務を怠る重大な債務不履行となります。そして,会社の人員配置にも影響を与え,企業秩序を乱す場合は懲戒処分の対象にもなり得ます。
ただし,無断欠勤に加え,事前に再三にわたる注意・指導並びに譴責・戒告の懲戒処分を行うなどの警告がない場合は懲戒解雇処分や諭旨解雇処分が無効となる場合もあります。また,そもそも懲戒解雇処分や諭旨解雇処分は極めて重い処分である為,無効となるリスクがあります。そこで,無断欠勤や遅刻などの勤怠不良の場合は,普通解雇を行う又は懲戒解雇や諭旨解雇より軽い懲戒処分に留めるという選択肢も検討した方がよいでしょう。
ご相談のケースでは,事前に注意や戒告等の懲戒処分を行っているのであれば懲戒解雇も可能なケースであると思われますが,一定のリスクは残ります。そこで,普通解雇を行うことも検討した方がよいでしょう。

法律相談受付 TEL:0120-3131-45

POINT

  • 無断欠勤・遅刻などにより,職場の秩序を乱している場合は懲戒処分を行える
  • 懲戒解雇や諭旨解雇を行う為には,注意・指導や譴責・戒告の懲戒処分を行う必要がある
  • リスク回避の為に普通解雇を行うことも検討するべき

解説

1 無断欠勤・遅刻等と懲戒処分の考え方

労働契約関係において,所定労働日に所定労働時間に過不足なく労務提供を提供することは,労働者の基本的な義務です。それゆえ,所定労働日に無断で出勤せずに労務を提供しないこと(無断欠勤)や,所定労働時間に満たない労務提供しかしないこと(遅刻や早退)は,労働者としての基本的義務を怠ることに外ならず,重大な債務不履行になります。そして,重大な債務不履行は普通解雇の対象となります。のみならず,無断欠勤や遅刻等は,会社の人員配置にも影響を与え,企業秩序を乱す場合は懲戒処分の対象にもなり得ます。

もっとも,無断欠勤や遅刻があったとしても,懲戒解雇や諭旨解雇などの重い処分を行う場合は慎重な検討が必要です。裁判例では,事前に注意・指導や戒告・譴責等の懲戒処分による警告を行った上でなければ,無断欠勤や遅刻があったとしても懲戒解雇や諭旨解雇を認めないとするものもあります。

そこで,無断欠勤や遅刻などの勤怠不良の場合は,懲戒解雇や諭旨解雇を行う前に,普通解雇を行う又は懲戒解雇や諭旨解雇より軽い懲戒処分に留めるという選択肢も検討した方がよいでしょう。懲戒解雇や諭旨解雇を選択する場合は,同時に,予備的普通解雇を行うこともお勧めします。

以下,無断欠勤,遅刻等について,参考裁判例及びデータを整理しましたので,処分決定の際に参照してください。

2 無断欠勤に関する懲戒処分

2.1 無断欠勤の範囲について

「無断欠勤」は,①文字どおり,労働者より何らの連絡もない欠勤のみを「無断欠勤」を意味するのが通常です。さらに,②労働者より連絡があっても正当な理由がない場合や,③届出はしているものの許可されていない場合も「無断欠勤」に含むのかが問題となることがあります。

裁判例では,欠勤には所属上長の許可を要するとされていたケースで,届出をしたが許可が得られない場合,または虚偽の理由を届け出て,いったん許可を得た後,それが虚偽と判明して取り消された場合には「無断欠勤」の一態様となるとした裁判例があります(三菱重工業長崎造船所事件(福岡高裁昭和55年4月15日判決(労判342号25頁))。

もっとも,就業規則上,「無断欠勤」について,上記①のみならず,②,③も含む旨を明記しておけば,上記解釈上の問題も未然に予防できます。そこで,就業規則上,懲戒事由として「無断欠勤(正当な理由のない欠勤・許可を得ない欠勤を含む)が〇日以上に及んだとき」と明記することも一案です。

2.2 無断欠勤と懲戒処分に関する裁判例

神田運送事件(東京地裁昭和50年9月11日決定 労判236号36頁) 

1年に欠勤27日,遅刻早退が99回あった労働者を諭旨解雇した事案について,「正当な理由なしに遅刻,早退または欠勤が重なるもの」という懲戒事由に該当することは認めながらも,諭旨解雇に至るまでには,直近に職場内で注意をしたにとどまり,譴責・出勤停止・減給などの懲戒処分を行って警告した事実は全くなく,当該労働者から反省の機会を奪い,企業から排除する処分を科すことは過酷であるとして,諭旨解雇を無効とした。
東京プレス工業事件(横浜地判昭57.2.25判タ477-167
従業員が,6カ月の間に,24回の遅刻と14日間の無断欠勤を行った(当該6カ月の間に完全な就労をしたのは就労すべき日数の69%程度にとどまっていた)ことを理由として懲戒解雇された事案において,裁判所は,懲戒解雇を有効であると判断した。
日立製作所事件(東京地判平23.11.24労経速2131-16
私傷病欠勤についての手続も怠ったまま約9カ月間の欠勤を継続していた(病気療養を理由として,出身国である中国に帰国していた)従業員に対して,譴責,出勤停止1日,同5日と順を追って行われた懲戒処分の後に,約1年間の無断欠勤を理由としてなされた懲戒解雇処分を有効であると判断した。
日本郵便事件(東京地判平25.3.28労経速2175-20
従業員が無断欠勤等を理由に懲戒解雇された事案において,1カ月以上もの間(26出勤日)欠勤を続けたこと,再三にわたって電話や出勤命令を受けながら無視し続けたこと,欠勤期間中に就業規則で禁止されている無許可アルバイトを行っていたこと等理由として,懲戒解雇を有効と判断した。

2.3 民間データ

【無断欠勤が2週間に及んだ場合】

1位 懲戒解雇(53.5%)
2位 諭旨解雇(38.4%)
3位 出勤停止(14.5%)

※参照元:「労政時報」第3949号(2018年4月13日発行)P38~「懲戒制度の最新実態」

2.4 公務員データ

10以内の正当な理由なき欠勤:減給又は戒告
11日〜20日の正当な理由なき欠勤:停職又は減給
21日以上の正当な理由なき欠勤:免職又は停職

※参照元:「懲戒処分の指針について」(人事院)2016年9月30日改正

2.5 報道データ

>>最新情報詳細は「無断欠勤等による懲戒処分事例【報道】」(当サイトブログページ)をご参照ください。

3 遅刻・早退に関する懲戒処分

3.1 裁判例

三重近鉄タクシー事件(東京地判平8.8.15労判702-33)
従業員が,提出が義務づけられた「早退届」を提出せずに7回にわたり早退をくり返したこと,早退の度に会社から早退届を提出するように注意・説得された上,2回にわたって文書での注意を受けたにもかかわらず,早退届を提出せずに退社していたこと,過去にも同様の問題を起こして3回も乗務停止の懲戒処分を受けたことがあったことを理由として,早退をくり返していたことを理由に解雇された事案において,懲戒処分としての解雇を有効と判断した。
ヤマイチテクノス事件(大阪地判平14.5.9労経速1810-23)
従業員が,遅刻を繰り返したとの理由で懲戒解雇された事案において,裁判所は,3年余りにわたって恒常的に遅刻をくり返していたにもかかわらず,定例の会議等には出席していたところ,当該従業員の勤怠について,会社としても従前は問題視しておらず,本件懲戒解雇に至るまでの間何らの懲戒処分も行っていないこと等を理由として,懲戒解雇を無効と判断した。
日光産業ほか1社事件(大阪地堺支判平22.5.14労判1013-127)
(1)社員が,無断欠勤に対する始末書を作成し訓戒処分を受けたにもかかわらず,その後,約5カ月の間に欠勤扱いを1回,遅刻を4回したことに対する減給処分,(2)度重なる無断欠勤・遅刻に対して始末書を作成した後も,約2年9カ月の問に欠勤扱いを1回,遅刻を4回したことに対する減給処分について,裁判所は,懲戒処分の程度として重きに失するということはできないと判断した(ただし,結論として,減給額が労基法91条に違反するため各減給処分を無効であると判断した)
(3)社員が,無断欠勤をしたことを理由に7日間の出勤停止処分とされた事案において,裁判所は,約半年の間に,無断欠勤1回,欠勤扱い1回という勤怠状況に過ぎないこと,これまでに懲戒処分を受けたことがないことという事情から,処分の相当性を欠き,懲戒権の濫用として7日間の出勤停止処分を無効であると判断した。

対応方法

1 調査(事実及び証拠の確認)

まずは,以下の事実及び証拠を調査・確認する必要があります。

調査するべき事実関係

□ 欠勤・早退・遅刻等の日数・回数
□ 届出の有無,無届けの理由
□ 届出がなされている場合,その正当性の有無,会社の許可不許可
□ 業務に与えた影響
□ 注意指導や戒告・譴責の有無,回数
□ 注意等の後の社員の態度
□ 通常の勤務状況・成績

調査の際に収集する資料

□ 出退勤記録,タイムカード
□ 欠勤届
□ 注意指導を行った文書,メール
□ 懲戒処分通知書,始末書

量刑・情状酌量事情

□ 欠勤・遅刻の動機・経緯に酌量の余地があるか
□ 欠勤・遅刻による業務上の支障の程度の軽重
□ 懲戒処分の事情聴取への対応・協力の誠実さ
□ 反省の態度の有無
□ 入社後の勤務態度
□ 欠勤・遅刻が他の社員に与える影響の大小
□ 会社における過去の同種事案での処分例との比較
□ 他社及び裁判例における同種事案との処分例との比較

2 適正手続の履行

弁明の機会の付与

事情聴取と共に,当該社員に対して弁明の機会を付与します。面談又は弁明書の提出の機会を与えます。

懲戒委員会の開催

就業規則等において懲戒委員会を開催することが必要な場合は,同手続を行います。

3 処分の決定及び通告

決定した処分を当該社員に対して通告します。
明確にするために文書によって通告することが一般です。

4 労働者との交渉

懲戒処分に不服のある労働者は異議を唱えて争う姿勢を示すことがあります。具体的には処分の撤回や賃金の請求を行うことがあります。この場合,まずは,法的措置に進む前に,労働者と交渉して,貴社の望む結果が得られるようにします。裁判に訴えられる前の交渉の時点で解決できれば,貴社にとっても早期解決のメリットがあります。

5 裁判対応

労働者との間で交渉による解決が図れない場合は,労働者は自己の権利の実現を求めて裁判を起こす可能性が高いと言えます。具体的には,仮処分手続,労働審判手続,訴訟手続などがありますが,労働者が事案に応じて手続を選択して,自己の請求の実現を目指すことになります。貴社としては,かかる労働者の法的請求に適切に対応する必要があります。

労働問題.comの対応

1 経験豊富な弁護士に相談

労働問題は適用される法律が難解で事実関係が極めて複雑であり,また,貴社が採るべき対応策はケースバイケースで決めざるを得ません。貴社独自で調査の上でのご対応が,時に誤った方法であることも多分にございます。
そこで,まず,労働問題について豊富な経験実績を有する弁護士にご相談下さい。ご相談が早ければ早いほどとりうる手段は多いのが実際ですので,トラブルが少しでも生じましたら出来るだけ早期にご相談されることをお勧めいたします。
労働問題.COMでは,常に労働問題を専門的に取り扱う経験豊富な弁護士が直接対応させていただいております(原則的に代表弁護士である吉村が対応させて頂きます。)。裁判のリスクを踏まえながら,法律上の問題点を指摘しつつも,抽象的な法律論に終始することなく,貴社が採るべき具体的な対応策を助言いたします。早期のご相談により紛争を未然に防止することが出来た事例が多数ございます。また、その後の交渉・裁判対応においても有利な対応を取ることが出来ます。

2 継続的なご相談・コンサルティング

労使間のトラブルは一時的なものではなく,長期化することがしばしばあります。ケースバイケースに採るべき対応策や確保すべき証拠も異なりますし,時々刻々と状況が変わっていき,その都度適切な対応をとることが必要です。この対応が間違っていた為に,その後の交渉や法的措置の段階で不利な状況に立たされることもままあります。
労働問題.COMでは,経験豊富な弁護士が,継続的なご相談を受けコンサルティングを行います。初期の段階より貴社にとって有利な対応をアドバイスしていきます。それにより,その後の交渉・法的措置にとって有利な証拠を確保でき,適切な対応をとることで,万全の準備が出来ます。また,継続的に相談が出来ることにより安心して他の日常業務に専念していただくことができます。

3 貴社を代理して労働者(弁護士,労働組合)と交渉いたします。

労働者の対応は様々ですが,貴社へ要求を認めさせるために,様々な働きかけをする事が多いのが実情です。労働者が弁護士や労働組合を介して,会社に対し各種の請求を行い,交渉を求めることはよくあることです。弁護士や労働組合はこの種事案の交渉のプロですので,貴社独自で臨むことで,あらぬ言質や証拠をとられ,本来了承する必要のない要求まで認めさせられることもしばしばです。貴社独自でのご対応は,一般的には困難であることが多いといえます。
そこで,労働問題.COMでは,労使間の交渉対応に精通した弁護士が,貴社に代わって交渉の対応を致します。具体的には,貴社担当者から詳細なヒアリングを実施し,証拠の収集等の準備を行った上で,弁護士が法的根拠に基づいた通知書を出し,適切に交渉することで,貴社にとって有利な結論を,裁判を経ずに勝ち取ることも可能となります。

4 裁判対応

労働者が労働審判,仮処分,訴訟などの裁判を起こしてくる場合が近時急増しています。かかる裁判への対応は法律で訴訟代理権を独占する弁護士のみが対応することができます。
但し,労働問題を適切に対応することができるのは労働問題について豊富な経験実績を有する弁護士に他なりませんが,労働問題は極めて特殊専門領域であるため,経験実績がない又は乏しい弁護士が殆どである実情があります。
労働問題.COMでは,労働事件を専門分野とし,裁判対応の豊富な経験実績を有する弁護士が常時対応させていただいております。貴社に対し,最善の弁護活動をお約束いたします。

弁護士費用はこちら

参考裁判例

※本サイトに関する知的財産権その他一切の権利は、弁護士吉村雄二郎に帰属します。また、本サイトに掲載の記事・写真等の無断複製・転載を禁じます。

法律相談受付 TEL:0120-3131-45

ご挨拶 / 弁護士紹介 / 安心の費用 / 地図・アクセス / 無料法律相談 / 法律相談の流れ / よくある質問 / 解決実績 / お問い合わせ