最低賃金2023年

【2023年】最低賃金の引上げが中小企業に与える影響と対策

2023年(令和5年)8月18日、厚生労働省は、2023年度の都道府県の最低賃金引き上げ額が出そろったことを発表しました。

前年度比の上げ幅は43円過去最大で、全国平均で伸び率は4.5%、全国平均で時給1004円となります。時給が43円引き上げられますと、会社の負担は月換算で7,021円以上(社保込みで8000円以上)の引上げとなります。

引き上げ後の金額は10月以降、順次適用されます。

ただでさえ原材料高等に苦しむ中小企業(特に地方)に与える影響は非常に重大です。

そこで今回は、この最低賃金引き上げが中小企業に与える影響と対策について、社会保険労務士が説明します。

2023年の最低賃金の引き上げはどうなる?いつから?

最低賃金の引き上げ決定

2022年の引上げ幅の目安は全国平均で43円と決まりました。これは昨年(2022年)の引上げ幅31円を上回り過去最高を更新しました。上昇率も4.3%で過去最大となりました。

これにより、例えば東京都でフルタイムで勤務するパート社員について、月額換算で7,021円以上(社会保険料の増額を合わせると約8000円以上)の引上げとなり、中小企業に与える人件費アップの影響は非常に大きいと考えられます。

計算式:43円 ✕ 163.3時間(月平均所定労働時間)=7,021.9円

目安通りに改定されれば最低賃金の全国平均は1004円(現在は960円)となります。

1000円超えとなるのは、東京都は1113円、神奈川県は1,112円、大阪府1064円となり、今年度初めて1000円台に到達するのは、埼玉県1028円、愛知県1027円、千葉県1026円、京都府1008円、兵庫県1001円となります。

【東京都】例:フルタイムのパート社員

  • 1,072円×163.3時間(月平均所定労働時間)=175,058円(最低月給)
  • 社会保険料+雇用保険料の会社負担分 = 27,133円
  • 合計 202,191円

  最低賃金引上げ後

  • 1,113円×163.3時間(月平均所定労働時間)=181,753円(最低月給)
  • 社会保険料+雇用保険料の会社負担分 = 27,196円
  • 合計 208,949円

 賃金(社会保険料込み)で、1ヶ月6,758円増額、1年81,095円増額

【岩手県】例:フルタイムのパート社員

  • 854円×163.3時間(月平均所定労働時間)=139,458円(最低月給)
  • 社会保険料+雇用保険料の会社負担分 = 21,334
  • 合計 160,792円

  最低賃金引上げ後

  • 893円×163.3時間(月平均所定労働時間)=145,827円(最低月給)
  • 社会保険料+雇用保険料の会社負担分 = 22,337円
  • 合計 168,164円

 賃金(社会保険料込み)で、1ヶ月7,372円増額、1年88,464円増額

社長
ぎょえ~、43円UPというとイメージ沸きませんでしたが、月換算で一人6000円以上の賃金の増額になってしまいますね。賃金が増加すれば、必然的に社会保険料も上がります。社会保険料の増額分も合わせると一人8,000円以上の人件費の増額ですね。飲食店やコンビニエンスストアなど多数のパート社員さんを雇用している会社は痛手ですね。もともと時給が高い東京・神奈川・大阪でも痛手ですが、時給が低い地方都市では4.5%以上も賃金を増加させなければならないので大変ですね。40円アップの重みは首都圏と地方では全然違いますからね。

最新 2023年 最低賃金ランキング

【最低賃金のランキング】

順位2022年度最低賃金2023年引上げ額2023年引上後最低賃金上昇率
1東京1072411113103.82%
2神奈川1071411112103.83%
3大阪1023411064104.01%
4埼玉987411028104.15%
5愛知986411027104.16%
6千葉984421026104.27%
7京都968401008104.13%
8兵庫960411001104.27%
9静岡94440984104.24%
10三重93340973104.29%
11広島93040970104.30%
12滋賀92740967104.31%
13北海道92040960104.35%
14栃木91341954104.49%
15茨城91142953104.61%
16岐阜91040950104.40%
17長野90840948104.41%
17富山90840948104.41%
19福岡90041941104.56%
20山梨89840938104.45%
21奈良89640936104.46%
22群馬89540935104.47%
23石川89142933104.71%
24岡山89240932104.48%
25新潟89041931104.61%
25福井88843931104.84%
27和歌山88940929104.50%
28山口88840928104.50%
29宮城88340923104.53%
30香川87840918104.56%
31島根85747904105.48%
32福島85842900104.90%
32山形85446900105.39%
32鳥取85446900105.39%
32佐賀85347900105.51%
36大分85445899105.27%
37青森85345898105.28%
37長崎85345898105.28%
37熊本85345898105.28%
40愛媛85344897105.16%
40秋田85344897105.16%
40宮崎85344897105.16%
40鹿児島85344897105.16%
40高知85344897105.16%
45徳島85541896104.80%
45沖縄85343896105.04%
47岩手85439893104.57%

2023年最低賃金引き上げはいつから

2023年度の最低賃金の引き上げは、2023年10月から適用されます。

最低賃金を下回る時給・月給はどうなる?

会社は、最低賃金の適用を受ける社員に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません(最低賃金法4条1項)。試用期間中であっても、最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。

会社と社員とで締結した労働契約において最低賃金額に達しない賃金を定めて合意したとしても、合意は無効となります。そして無効となった部分については低賃金額を同様の定めをしたものとみなされます(最低賃金法4条2項)

例えば、最低賃金は1,113円であるにもかかわらず、時給1,072円で契約書を作っても、合意は無効となり、自動的に1,113円が契約上の時給額になってしまいます。

最低賃金額以上の賃金を支払っていない場合、差額を支払う義務が生じます。未払い賃金は3年間は時効消滅しません(労基法115条)。また、未払い賃金には在職中は年3%、退職後は年14.6%遅延利息が発生します。例えば、フルタイムで働くパート社員に最低賃金を下回る賃金しか支払っていない場合は、3年後に、過去3年分の差額合計額(例えば、1ヶ月で合計5000円の未払い ✕ 36ヶ月 = 18万円)+年3%の利息を請求される可能性があるのです。

労働基準監督署の是正勧告の対象となります。是正勧告が出された場合、遡って差額を支払うよう命じられる場合もあります。労働者が弁護士労働組合に依頼する場合もあります。

さらに、最低賃金法違反には罰則も定められています。

地域別最低賃金額(船員については特定最低賃金額)以上の賃金を支払わなかった使用者は、50万円以下の罰金に処せられます(最賃法40条)。

特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法により30万円以下の罰金が科せられる可能性があります(労基法24条、120条1号)。

最低賃金を下回っているか否かの確認方法

最低賃金を下回っているか否かは、以下の計算式で確認します。

なお、最低賃金の対象となるのは、実際にに支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。

  1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  2. 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3. 時間外・休日・深夜割増賃金
  4. 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

最低賃金対象

(1) 時間給制の場合

時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)

(2) 日給制の場合

日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、
日給 ≧ 最低賃金額(日額)

(3) 月給制の場合

月給 ÷ 1箇月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)

1箇月平均所定労働時間 = { 1年の歴日数(365日or366日) ー 所定休日日数(例:土日祝日+年末年始4日など)} ✕ 1日の所定労働時間(例:8時間) ÷ 12

(4) 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合

出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。

(5) 上記(1)、(2)、(3)、(4)の組み合わせの場合

例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記(2)、(3)の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。

最低賃金引き上げが与える影響・デメリット

人件費が増える

従業員の最低賃金が上がることにより、企業が負担する人件費は増大します。

現時点で、2023年10月の最低賃金引上げ後の金額よりも高い賃金を設定している企業は、賃金を増額する必要はありません。

例えば、現時点で東京都内でパート社員の時給を1,113円以上に設定している会社は、2023年10月以降も賃金を増額変更しなくとも最低賃金法に違反しません。

これに対して、現時点でパート社員の時給を最低賃金ギリギリの1,072円に設定している会社は、2023年10月以降は41円増額して1,113円に変更しなければなりません。

フルタイムのパートの場合は、時給41円の増額は、月換算で6,500円以上(社会保険料の増額を合わせると8000円以上)の引上げとなり、中小企業に与える人件費アップの影響は非常に大きいと考えられます。

計算式:41円 ✕ 163.3時間(月平均所定労働時間)=6,695.3円

非正規労働者の多い飲食業やコンビニチェーン店などにとっては、大きな痛手となるでしょう。

企業の利益が減る・設備投資が抑制される

最低賃金の増額は、上記のとおり人件費を増額させることになりますので、その帰結として、企業の利益が減少します。この傾向は、飲食業・小売店などのサービス業など企業の販管費に占める人件費の割合が高い中小企業に顕著に表れるといわれています 1

また、最低賃金引き上げによるコスト増による利益減少を懸念して、企業内の資産活用も停滞し、設備投資費が抑制されます。その結果、ますます国内の取引量が減ることになります。

雇用が縮小する

従業員の最低賃金が大幅に上がれば、従業員の賃金(収入)が増え、昨今の物価高も乗り越えられて皆ハッピーになる、と思いたいところですが、物事はそんなに単純ではありません。

過去の最低賃金引き上げの際の実証データ 2によれば、最低賃金が大幅に増額される場合、企業は雇用を縮小することが明らかになっています。つまり、企業は、最低賃金引き上げによる人件費増額という経済的不合理を回避するために、雇用を縮小するのです。

縮小する対象は次のような傾向があります。

地方が多い

賃金の水準が低い地方は、大幅な最低賃金額の上昇により「上昇率」が高くなります。2023年の引き上げにおいても、東京の上昇率は3.8%なのに比べて、岩手、鳥取、愛媛、佐賀、長崎、熊本、宮城、鹿児島、高知、沖縄といった地方は4.57%の上昇率になります。上昇率が高いがゆえに、企業にとってコスト増も大きく受け取られます。東京より地方の方が雇用が縮小される可能性が高いのです。

雇用抑制の対象は非正規労働者  

最低賃金引き上げに伴い賃金を上昇させる必要があるのは、非正規労働者の割合が高いのが通常です。正社員の賃金は、現時点でも引上げ後の最低賃金を上回っていることが多いの最低賃金が引き上げられてもダイレクトに賃金引き上げの影響は少ないです。これに対し、非正規労働者(特に、下記若年層・女性・高齢者)は現時点の賃金(時給)が最低賃金ギリギリか僅かに上回っているに過ぎないことが多いです。そうなると、必然的に、最低賃金引き上げにより賃金増額の必要があるのは非正規労働者ということになります。賃金増額を嫌う企業は、非正規労働者の雇用をまずは抑制します。新規採用の抑制、有期契約の雇止め等により、正社員に比べ雇用抑制をしやすいというのも理由になります。

雇用抑制の対象は若年層・女性・高齢者

非正規労働者の中でも、若年層・女性・高齢者については、賃金が低く設定されており、最低賃金ギリギリか僅かに上回る金額に設定されていることが多いです。その結果、最低賃金引き上げにより賃金増額の必要があるのは若年層・女性・高齢者ということになります。賃金増額を嫌う企業は、若年層・助成・高齢者の雇用を抑制することになります。

以上から、最低賃金引き上げによる影響として、地方の、若年層・女性・高齢者の非正規労働者の雇用が抑制される結果となることになります。

社長
ありゃ~、最低賃金引き上げというと弱者を守る為というイメージがありますが、結果として、地方の若年・女性・高齢者の非正規労働者という最も経済的弱者といえる人達の雇用が失われるのですね。政策として、最低賃金引き上げと同時に中小企業の助成がセットだといわれるのは、中小企業も助成しないと雇用が縮小されることが一因なのですね。

正社員の負担(労働時間等)が増加する

上記のとおり非正規労働者の雇用が抑制されるとしても、業務量は変わらないはずです。非正規労働者の穴埋めはどうするのでしょうか。

答えは、正社員が穴埋めすることになります。穴埋めするといっても正社員も自分の業務がありますので、正社員の時間外労働・休日労働の増加で対応することになります。

残業等をさせた場合は、もちろん正社員に対し時間外・深夜・休日割増賃金の支払い義務が発生します。通常は割増賃金を支払いますが、サービス残業として未払いになるケースも増加すると思われます。

このような場合、時間外・深夜・休日割増賃金の対象外となる管理監督者にしわ寄せがいくことが多くあります。例えば、飲食店の店長が、減ったパートの穴埋めをするということになるのです。

最低賃金引き上げに対する対策

自社の設定賃金が最低賃金を下回るか否かを確認

まず、2023年10月の最低賃金引き上げに先立ち、自社の社員の賃金が2023年10月引上げ後の最低賃金を下回ることにならないかを確認します。

確認方法については、上記解説 をご参照ください。

方針の決定

確認の結果、自社の賃金が引上げ後の最低賃金額を下回る場合は、2023年10月以降の賃金額の見直しを検討します。

具体的には、増額により事業所ごと又は会社全体で、どの程度の賃金額及び社会保険料等を含む人件費が増額となるのかを確認します。

増額した人件費を踏まえて、会社・事業所ごとの財務状況・資金繰りも試算します。

試算の結果、財務状況・資金繰りが厳しくなる場合は、人件費以外の経費削減(仕入単価減額、賃料等の減額、支払金利負担軽減、役員報酬の減額など)を検討します。

また、業務内容を見直して、合理化により業務量を削減し、またはアウトソーシングを利用するなどして、労働時間を短縮(残業を抑制)することも検討します。

それでも資金繰りが厳しい場合は、人員整理を検討します。

具体的には、賃金を増額しなければならない非正規労働者の雇用終了(期間満了での雇止め等)、採用抑制を検討します。

当社のパート社員は雇用契約書において勤務日や勤務時間について「毎月のシフトによる」とだけ記載し、実際にも会社の繁閑状況や本人の都合により、毎月の労働時間は一定ではありません。最低賃金増額を受けて、シフトを減らすことは、不利益変更となるのでしょうか?
不利益変更にはなりません。雇用契約書で「シフトによる」とだけ記載している場合は、具体的な所定労働時間は定められておらず、毎月のシフトの設定によって具体化することになっています。この場合、最低賃金増額を受けて、シフトを減らすことは不利益変更には該当しません。もっとも、実態として、例えば常時一定時間以上のシフトを組んでいた実績が、長期間(半年以上)ある場合は、黙示的に一定時間以上の勤務をすることが契約内容になっていたと認定されるリスクはあります。その場合は不利益変更には該当すると判断されるリスクがありますので、合意による変更が必要となると解されます。
最低賃金引き上げに伴う賃金増額を理由に雇止めできますか
資金繰りが厳しい状況の場合は可能です。もっとも、場合によっては整理解雇に準じた厳しい審査を受ける場合もあるので、慎重に判断してください。
参考記事

賃金額の変更

確認の結果、自社の賃金が引上げ後の最低賃金額を下回る場合は、2023年10月以降の賃金額を見直します。

まず、最低賃金額を下回る賃金額が就業規則・賃金規程に定められている場合は、該当する賃金テーブルなどの就業規則・賃金規程の規定を改定します

また、各社員との雇用契約内容については、変更することになります。方法としては、雇用契約書を締結し直してもよいですし、雇用契約内容の変更合意書を取り交わしてもよいです。

助成金の活用

国が用意している助成金制度を検討します。

ただし、各種助成金は、予算上限に達した時点で、当初の締め切りよりも前に終了することがありますので、ご注意ください。

業務改善助成金(通常コース)

業務改善助成金(通常コース)とは、生産性を向上させ、「事業場内で最も低い賃金」の引上げを図る中小企業・小規模事業者を支援する助成金です。大企業は支給対象となりません。

事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げ、設備投資(POSレジ、リフト付き特殊車両導入)、専門家のコンサルティングによる業務フローの見直しなどを行った場合に、その費用の一部が助成されます。

業務改善により労働時間の短縮を図ることで、人件費の増額を一定程度抑制することも可能です。

令和4年度の申請は現在(2023年4月1日)開始されています。申請期限は令和6年(2024年)1月31日です。

実施前交付申請書と計画書を提出(令和6年1月31日締切)し、助成金交付決定を受けてから、設備投資等と賃金引上を実施(令和6年2月28日までに)、実績を報告(令和6年2月28日締切)、実績に基づき助成金の金額を決定という流れになります。

 

業務改善助成金(通常コース)

(厚生労働省リーフレットから引用)

厚労省ホームページ 

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)は、生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業・小規模事業者を支援する助成金です。大企業は支給対象となりません。

36協定の時間外・休日労働時間数の削減や、年次有給休暇の計画的付与の導入、時間単位の年次有給休暇の導入、病気休暇やボランティア休暇等特別休暇の創設を行った場合、実施に要した経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて支給されます。また、労働者の時間当たりの賃金額を3%以上行うと、引き上げ人数に応じて加算を受けられます。

助成額:最大730万円

令和5年度の申請は現在(2023年7月)開始されています。申請期限は令和5年(2023年)11月30日です。

実施前に交付申請書と計画書を提出(令和5年11月30日締切)し、助成金交付決定を受けてから、計画に沿って取組を実施(令和6年1月31日までに)、実績を報告(令和6年2月9日締切)、実績に基づき助成金の金額を決定という流れになります。

厚労省ホームページ

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

「勤務間インターバル」とは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るもので、2019年4月から、制度の導入が努力義務化されています。働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)は、勤務間インターバル制度の導入に取り組む中小企業・小規模事業者を支援する助成金です。大企業は支給対象となりません。

勤務間インターバル制度新規導入、適用範囲の拡大、休息時間の延長を行った場合、実施に要した経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて支給されます。なお、過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態のない事業主(元々残業が少ない会社)は、支給対象になりません。
また、労働者の時間当たりの賃金額を3%以上行うと、引き上げ人数に応じて加算を受けられます。

助成額:最大580万円

令和5年度の申請は現在(2023年7月29日)開始されています。申請期限は令和5年(2023年)11月30日です。

実施前に交付申請書と計画書を提出(令和4年11月30日締切)し、助成金交付決定を受けてから、計画に沿って取組を実施(令和5年1月31日までに)、実績を報告(令和5年2月10日締切)、実績に基づき助成金の金額を決定という流れになります。

厚労省ホームページ

働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)

働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)は、生産性を向上させ、労務・労働時間の適正管理の推進に向けた環境整備に取り組む中小企業・小規模事業者を支援する助成金です。大企業は支給対象となりません。

ネットワーク型タイムレコーダー等、勤怠管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成管理保存できるシステムを用いた労働時間管理方法を新たに採用した場合、賃金台帳等労務管理書類の5年間保存を就業規則に新たに規定した場合、労働時間の適正な把握のための研修を実施した場合に、実施に要した経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて支給されます。
また、労働者の時間当たりの賃金額を3%以上行うと、引き上げ人数に応じて加算を受けられます。

助成額:最大580万円

令和5年度の申請は現在(2023年7月29日)開始されています。申請期限は令和5年(2023年)11月30日です。

実施前に交付申請書と計画書を提出(令和5年11月30日締切)し、助成金交付決定を受けてから、計画に沿って取組を実施(令和6年1月31日までに)、実績を報告(令和5年2月9日締切)、実績に基づき助成金の金額を決定という流れになります。

厚労省ホームページ

キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成するものです。その中で「賃金規定等改定コース」は、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定し3%以上増額した事業主に対して助成されます。対象は、全ての事業主で、大企業も助成対象です。

すべてまたは雇用形態別や職種別など一部の有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を2%以上増額改定し、昇給させた場合、昇給した人数に応じて助成金を受けられます。

令和5年度の申請は現在(2023年7月29日)開始されています。

実施前に計画書を提出し、管轄労働局長の認定を受けてから、計画に沿って取組を実施し、増額改定後の6か月分の賃金を支給後、2か月以内に支給申請を行います。

キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長コース)

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成するものです。その中で「短時間労働者労働時間延長コース」とは、雇用する有期雇用労働者等について、週所定労働時間を3時間以上延長または週所定労働時間を1時間以上3時間未満延長するとともに処遇の改善を図り、当該措置により当該有期雇用労働者等を新たに社会保険の被保険者とした事業主に対して助成されます。対象は、全ての事業主で、大企業も助成対象です。

有期雇用労働者等について、週所定労働時間を3時間以上延長、または週所定労働時間を1時間以上3時間未満延長するとともに基本給を6%以上昇給、週所定労働時間を1時間以上2時間未満延長するとともに基本給を10%以上昇給し、当該措置により当該有期雇用労働者等を新たに社会保険の被保険者とした場合、対象労働者の人数に応じて助成金を受けられます。

令和5年度の申請は現在(2023年7月29日)開始されています。

実施前に計画書を提出し、管轄労働局長の認定を受けてから、計画に沿って取組を実施し、増額改定後の6か月分の賃金を支給後、2か月以内に支給申請を行います。

まとめ

以上お分かり頂けましたでしょうか。

ポイントとしては、

  • 2023年10月の最低賃金引き上げ額の確認
  • 自社が設定している賃金が最低賃金額を下回らないか確認
  • 最低賃金引き上げに伴い賃金・人件費増額内容の確認、資金繰り等を踏まえて方針を決定
  • 引上げ後の最低賃金額を下回る場合は就業規則・賃金規程・雇用契約の変更
  • 助成金の活用を検討

ということになります。

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

  1. 大竹文雄ほか「最低賃金改革」第4章(日本評論社2013年)
  2. 大竹文雄ほか「最低賃金改革」第2章(日本評論社2013年)

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