労働審判調停ポイント

10分で分かる!会社が労働審判手続の調停で検討するべき4つのポイント

会社が労働審判手続の調停で検討するべき4つのポイント
労働審判手続は,約70%が調停という話し合いで終わると聞いた
しかし,会社・社長としては,労働審判手続の調停において,一体どのような事項を検討するのかが分からず不安だ!

このようなことでお悩みの会社・社長も多いかと思います。

そこで,今回は,労働審判手続の調停において,会社が検討するべきポイントについて分かりやすく説明したいと思います。

1 労働審判手続の調停とは?

労働審判手続における代表的な解決方法(手続の終局事由)は,

①調停

②裁判所(労働審判委員会)のよる労働審判

の2つがあります。

調停は,当事者同士の合意によって紛争の解決を図ることを目的とした手続であり,労働審判手続期日において合意が成立した場合は調書に記載され,その記載には強制執行等が可能となる効力が与えられます(労働審判法29条,民事調停法16条,民事訴訟法267条,民事執行法22条7号)。

これに対し,労働審判は,裁判所(労働審判委員会)が,審理の結果認められる当事者間の権利関係及び労働審判手続の経過を踏まえて行う裁判であり,当事者の合意は前提とされません(労働審判法20条)。また,労働審判は異議申し立てがないときに確定し,強制執行等が可能となる効力が与えられます(労働審判法21条4項,民事訴訟法267条,民事執行法22条7号)。

つまり,調停はいわば話し合いによる解決,労働審判は裁判所(労働審判委員会)が言い渡す裁判であり,どちらも強制執行可能な効力が与えられるといういことになります。

このように労働審判手続では2つの解決方法がありますが,およそ70%超が調停で事件が終結しており,労働審判による終結は約15%程度に過ぎません。

そして,裁判所(労働審判委員会)は,第1回労働審判手続期日から調停の話を進めてきます。

※ 労働審判手続の過程で、調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試みることとされています(労働審判法1条,労働審判規則22条)。

よって,労働審判手続期日に応ずる会社・社長側としては,第1回労働審判期日の前から調停による解決を検討する必要があります。

では,会社・社長は,労働審判手続における調停に関して,いかなる検討をするべきなのでしょうか?

会社側にて労働審判手続において調停に応ずるか否かを以下の4つの事項を総合的に考慮して検討することが一般です。

①労働審判・訴訟で争った場合に勝てる見込み
②経済的コスト(社員・労働者側に支払う金額)
③弁護士費用
④人的負担・コスト

2 ①労働審判・訴訟で争った場合に勝てる見込み

会社側が調停に応じない場合,裁判所(労働審判委員会)は原則として労働審判を行います。

そして,裁判所(労働審判委員会)の労働審判に会社側が納得せずに不服がある場合は,異議申立を行うことにより労働審判の確定を妨げることができます。ただし,その場合は,手続は,訴訟手続に自動的に移行し,訴訟手続において改めて会社側の主張や立証を行い,判決により最終的な判断がなされます。

このように,調停に応じない場合は,労働審判や訴訟の判決において結論が出ますが,会社側にとって(特に調停で提示される条件と比べて)有利な結論となるのか否かが重要となります。

すなわち,労働審判や訴訟の判決が,会社にとって有利な結論が出る見込みが高いのであれば,敢えて妥協して調停に応ずる意味は乏しいことになります。

これに対して,労働審判や訴訟の判決が,会社にとって不利な結論が出るのであれば,むしろ労働審判手続において調停に応じた方が合理的ということになります。

それゆえ,まずは調停を許否して争った場合に,会社側にとって有利な労働審判や判決がどの程度の確率で出るのかを見定める必要があります。

ただ,この判断(特に,訴訟における判決の見込みの判断)は,事案の内容や証拠内容によってケースバイケースで判断することになりますが,一般的には難しい判断となります。というのも,事案や証拠の内容のみならず,担当する裁判官や弁護士の個性や力量・経験値などによっても結論が微妙に左右されることがあるからです。

一般的には,事案の内容や証拠の内容等から,80%~90%の確率で明らかに会社側の勝算が高いと認められる場合以外は,調停による解決も検討します。

3 ②経済的コスト(社員・労働者側に支払う金額)

また,以下のコストについても検討する必要があります。

調停,労働審判,訴訟の各段階において社員(労働者)側に支払う可能性のある金額が,会社側の経済的コストとして重要となります。

3.1 例:解雇無効・地位確認等請求事件

会社側が負ける場合,最終的な解決に至るまでの賃金(バックペイ)が発生してします。

例えば,月給30万円の社員(労働者)の場合,

①労働審判手続の調停:月給の6ヶ月分=180万円

②労働審判手続の労働審判:月給の6ヶ月分~8ヶ月分=180万円~240万円

③訴訟の判決:月給の1年分~2年分=360万円~720万円

3.2 例:残業代請求事件

会社が負ける場合,遅延損害金(退職前6%,退職後14.6%)

例えば,未払残業代が500万円の場合

①労働審判手続の調停:元金500万円のみ or 減額もあり得る=200万円~500万円

②労働審判手続の労働審判:元金500万円(+遅延損害金)=500万円~600万円

③訴訟の判決:元金500万円+遅延損害金(1年で約70万円)+付加金500万円+遅延損害金(5%)=1100万円~

※特に,遅延損害金の利率が退職後はサラ金並の14.6%であることと,付加金として倍額が追加される点が大きい!

以上のように,会社側が負ける場合,経済的負担額が増大していくのが通常です。

前記の勝てる見込みとも関係しますが,労働審判や訴訟ではゼロサム的に結論が出てしまいますので,労働審判手続での調停でコントロール可能な範囲で,かつ,コストを最小化して事件を終結させることには,経済的合理性がある場合が多いのが実情です。

4 ③弁護士費用

また,弁護士費用についても,手続が増える分,増大していくのが普通です。

例えば,

①労働審判手続の調停:労働審判手続の着手金+報酬金

②労働審判手続の労働審判:労働審判手続の着手金+報酬金

③訴訟の判決:労働審判手続の着手金+報酬金+訴訟手続の着手金+報酬金

費用の金額は各弁護士との契約内容によりますが,手続が長引く分,増大していくのが普通です。

特に,大手法律事務所はタイムチャージ制をとる弁護士も多く,アソシエイト弁護士・パートナー弁護士の費用で,訴訟が終わるまで軽く2000万円~3000万円を超えることもあります。

5 ④人的負担・コスト

労働審判手続や訴訟手続の対応には,会社側の関係者(社長,直属の上司,人事担当者等)の協力が不可欠です。答弁書の作成や証拠書類の収集などについて,会社側の関係者の労力は膨大なものになります。

特に,労働審判手続における会社側の準備は,「第1回労働審判手続期日呼出状及び答弁書催告」が届いてから1ヶ月程度で行う必要があり,短期間に準備作業が集中してしまいます。

会社側の関係者は,労働審判手続だけに専念できる訳ではなく,本業に従事しながら,それに加えて労働審判手続の準備をしなければなりません。これは,精神的にも肉体的にも非常に負担となります。

そして,訴訟手続に移行した場合は,さらに1年から1年半にわたり,弁護士との打ち合わせや書面の確認,さらには,法廷に出廷して証言をする必要があります。この負担感は相当なものです。

このような労働審判手続や訴訟手続に関する負担によって,本業にも影響が出ることがあります。会社側の人によっては,退職したいとまで考える者もいると聞きます。

よって,人的負担についても考慮することが必要となります。

6 まとめ

いかがだったでしょうか?

今回は,今回は,労働審判手続の調停において,会社が検討するべきポイントについて分かりやすく説明をしました。

①労働審判・訴訟で争った場合に勝てる見込み,② 経済的コスト,③弁護士費用,④人的負担などを総合的に検討して,労働審判手続における調停に応ずるか否かを決定することがポイントになります。

労働審判手続に悩まれている会社・社長のご参考になれば幸いです。

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