タイムカードなどの客観的証拠が重視される
1 労働時間の立証
時間外手当等を請求する場合に、時間外労働又は休日労働をしたことの主張立証責任は、労働者の側にあるので、労働者は労務提供の事実について立証をしなければなりません。実務上は、時間管理がなされていなかったり、これが困難である場合に、純然たる事実認定の問題である実労働時間の主張・立証のあり方が問題となることが多くあります。
立証方法としては、タイムカード、ICカード等の他、日報の類、入退室記録、警備会社の記録、パソコンのログインログアウト履歴、メールの送受信記録、労働者の作成したメモ等があげられます。証明するべき実労働時間(〇時間〇分間)は、日ごと(〇年〇月〇日)に始点(〇時〇分から)と終点(〇時〇分まで)を特定して主張・立証することが必要になります。
タイムカード、ICカード等の客観的な記録によって時間管理がなされている場合には、それによって立証が可能です。また,客観的な記録が存在する場合は,残業時間について当事者間で争いがなくなる場合もあります。
これに対して,タイムカードのような実労働時間を客観的に認定できる証拠資料がない場合,日報,手帳などの証拠資料で立証を行う必要があります。時間外労働をしたことの立証は、基本的には非常にハードルが高いと考えられます。従って,タイムカードなどの客観的証拠がない場合,労働者側の立証は非常に苦労が多いといえると思います。
ただ、被告である使用者が、労働時間適正把握義務を怠って、労働時間を適切に管理していなかったために、そうした事態が生じている場合には、使用者側が、主張・立証責任を問題にして、単に「残業はしていなかった!」という対応を訴訟の場面でして済むかというと、そうもいきません。当該労働者がどういう働き方をしていたか、残業の実態があったのか否かというような、通常の勤務実態については、実際雇用主や上司が把握しているのが通常だと思いますから、使用者側の方でも、職場の実態を証拠化するなどして、証拠を精査していただいて、少なくともこれ以上の労働はしていないはずだという事実を主張・反証していく必要があります。
2 各種証拠
タイムカード
手帳の記載
パソコンのログイン・ログアウトデータ
グループウエアの記録
警備記録
タコグラフ