テレマート事件(大阪地方裁判所平成19年4月26日 判決)

整理解雇事案で,解雇に異議を申し立てない旨の誓約書を提出し,解雇予告手当および解雇一時金を受領した事実があっても,解雇無効の結論が左右されることはなく,仮に被告によって合意退職の主張がされても,そのような合意は無効であるとした裁判例

1 事案の概要

被告は,ラジオ,新聞などを広告媒体として,いわゆるテレフォンショッピングの方式により,健康食品などの各種商品の販売(通信販売)を業とする株式会社である。原告ら8名は,平成14年から平成17年にかけて被告に雇用された者である。平成17年6月に新設された食品事業部へ配転又は新規採用されたが,わずか3ヶ月足らずで業績不振を理由に食品事業部を閉鎖することを平成17年9月26日に告げられ,平成17年9月30日付けで食品事業部の閉鎖を理由に解雇された。なお,上記解雇は,原告らが労働組合を結成した平成17年9月20日の直後に行われた。会社は9月27日に原告らに対して解雇予告手当及び一時金を支払い,原告らの一部から「解雇を了解し,解雇に異議を申し立てない旨の誓約書」を受領した。原告らは被告による整理解雇は要件を具備しておらず,無効であると主張して,被告との間において労働契約上の権利の存することの確認と平成17年10月分からの賃金の支払を求めた。

2 テレマート事件判例のポイント

2.1 結論

被告による整理解雇は無効であり,原告ら8名が,被告に対し,労働契約上の権利を有するとし,平成17年11月から本判決確定の日まで,従前の賃金を支払うよう命じた。また,解雇に異議を申し立てない旨の誓約書を提出し,解雇予告手当および解雇一時金を受領した事実があっても,解雇無効の結論が左右されることはなく,仮に被告によって合意退職の主張がされても,そのような合意は無効であるとした。

2.2 理由

1 整理解雇の有効性

本件整理解雇自体は,いわゆる整理解雇4要素に照らして無効である。被告は食品事業部を平成17年6月に新設し,わずか3ヶ月も経たずに同年9月に閉鎖を決定した。閉鎖しなければならない経営上の理由は無く,解雇回避措置も取っていない(会社は求人募集を行うという典型的矛盾行為を行っている。)。また,従業員に対する説明もろくに行っていない。加えて,労組結成直後に無理矢理部門閉鎖及び解雇を行っており,不当労働行為という点でも無効である。

2 解雇に異議を述べない誓約書の意味

「原告B,原告A,原告Dを除く原告は,平成17年9月27日における会社の,食品事業部を閉鎖し,同事業部の従業員を全員解雇する旨の説明を了解し,解雇に異議を申し立てない旨の誓約書を提出し,解雇予告手当及び一時金を受領しているが,これらの事情によって,既に述べた理由による本件解雇が無効であるとの結論が左右されるわけではない(被告は,合意退職を主張していない。また,仮に合意退職が主張されたとしても,解雇が無効であると判断した理由に照らすと,そのような合意もまた無効というべきである。もっとも,解雇予告手当,一時金の取得は,法律上の原因を失い,不当利得となるというべきである。)。」

3 テレマート事件の関連情報

3.1判決情報

裁判官:山田 陽三

掲載誌:労判944号61頁

3.2 関連裁判例

日本システムワープ事件(東京地判平成19.9.10労判886号89頁)

O法律事務所(事務員解雇)事件(名古屋地判平成16.6.15労判909号72頁,名古屋高判平成17.2.23労判909号67頁)

3.3 参考記事

4 テレマート事件の判例の具体的内容

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