国立大学法人大阪大学事件(大阪地裁平成年29年2月25日判決)

実母を暴行して死亡させたとする傷害致死の公訴事実で起訴されて起訴休職中であった労働者につき,起訴休職期間の上限を2年とする就業規則には合理性があり,起訴休職期間満了後に普通解雇事由である「雇用関係を維持しがたい場合」に当たるとしてされた解雇は有効であると判断した例

1 国立大学法人大阪大学事件判例のポイント

1.1 起訴休職期間の合理性(普通解雇事由としての合理性)

就業規則上,起訴休職の期間満了が普通解雇事由となっていることを前提に,起訴休職制度は,自己都合によって,物理的又は事実上労務の提供ができない状態に至った労働者につき,短期間でその状態が解消される可能性もあることから,直ちに労働契約を終了させるのではなく,一定期間,休職とすることで使用者の不利益を回避しつつ,解雇を猶予して労働者を保護することを目的とする。

このような起訴休職制度の趣旨に鑑みれば,使用者は,労務の提供ができない状態が短期間で解消されない場合についてまで,当該労働者との労働契約の継続を余儀なくされるべき理由はないから,不当に短い期間でない限り,就業規則において,起訴休職期間に上限を設けることができると解するのが相当である。

起訴休職期間が2年であることは,不当に短い期間であるとは言い難く,合理的な内容(労契法7条所定の「合理的な労働条件」に該当するもの)であると認められる。

1.2 長期間勾留され第一審で懲役8年の実刑判決を受けたことの普通解雇事由該当性

平成24年4月5日に傷害致死という重大な犯罪の嫌疑により,起訴され,勾留された状態が継続し,平成26年2月20日の一審判決の結果,再び勾留され,休職期間満了時も勾留されており,Yに対する労務の提供ができない状態が継続していた。そして,懲役8年の一審判決が出されたことにより,休職期間満了時以降も,少なくとも相当期間勾留が継続し,労務の提供ができない状態が継続することが見込まれていた。このようなYに対する労務の提供ができないXについて,降任,降格又は降給にとどめる余地がなかったことは明らかであって,Xについては,本件解雇時点において,Yとの「雇用関係を維持しがたい場合」という普通解雇事由に該当する

1.3 解雇の客観的合理性・社会的相当性の有無

本件解雇は,平成26年2月20日に宣告された懲役8年の一審判決から約2か月半後にされたものであるところ,その間に,控訴審の審理が行われるなどして,一審判決が破棄されることをうかがわせる新たな事情が生じたことを認めるに足りる的確な証拠はなく,Yが同破棄を予見することができたとは認められない。

このようなXに係る客観的な状況(Yに対する労務の提供が不可能ないし困難な状況の継続)及び本件起訴休職制度が合理性を有していることに鑑みれば,本件解雇には客観的に合理的な理由があり,社会通念上の相当性もある

1.4 吉村のコメント

本件は私生活上の非違行為(暴行・傷害)を理由とした解雇事案である。

一般に私生活上の非違行為については,懲戒処分の可否という形で議論になることが多い。実際にも,私生活上の暴行・傷害について懲戒解雇がなされた事案について,懲戒解雇が無効となった事案がある(後記アサノ運輸事件,東部生コンクリート事件参照)。

しかし,本件は,私生活上の非違行為を懲戒処分ではなく,刑事手続(逮捕・勾留)による労務不提供が「債務不履行」に該当するとして普通解雇を行っている点に特色がある。

一般に労働者が逮捕・勾留されている期間中は,欠勤を理由に解雇することは回避した方が良いというのが実務上の対応となっていた。

しかし,刑事手続の最終的な結論まで雇用関係の維持を強いられることは使用者にとって過度の負担となる。そこで,刑事手続による労務不提供を理由に普通解雇が出来ないかが問題となる。

この点について,本判決は,刑事手続による労務不提供は,「自己都合によって,物理的又は事実上労務の提供ができない状態」と判示し,自己都合による債務不履行であるとの判断を示していると読める。

そして,本判決は,「使用者は,労務の提供ができない状態が短期間で解消されない場合についてまで,当該労働者との労働契約の継続を余儀なくされるべき理由はない」「不当に短い期間でない限り」普通解雇事由に該当するとの判断を示している。

ただ,本判決は「不当な短期間」については特に論じておらず,少なくとも2年間は「不当な短期間」に該当しないとの判断に留まる。

また,本判決は刑事手続の第一審で懲役8年の実刑判決が下され,控訴審においても第一審判決を覆す特段の事情が無かったことを,解雇の合理的理由・社会的相当性の事情として斟酌している。

つまり,本判決は刑事手続による労務不提供の状態が2年を経過し,かつ,第一判決で懲役の実刑判決を受けている場合,使用者はそこまで雇用契約を継続しなくても良いとして普通解雇を認めたに過ぎない。

これは,使用者としては,「長すぎる」「そこまで待たないといけないのか?」と考えてもおかしく無い。

筆者としては,逮捕・勾留され,労務提供不能な状態が1ヶ月以上継続し,そのことに労働者に帰責事由がある場合(労働者が犯罪の一部を認めている場合,嫌疑をかけられることに労働者の落ち度があった場合。えん罪・無罪を主張している場合を除く。)であれば,債務不履行を理由に普通解雇することも可能ではないかと考える。

いずれにしても,今後は,逮捕された社員への処分として,規律違反としての「懲戒解雇」ではなく,労務不提供を理由とした「普通解雇」による対応も検討してもよいのではないかと考える。

2国立大学法人大阪大学事件の関連情報

2.1判決情報

  • 裁判官:内藤裕之 ,甲斐雄次,大寄悦加
  • 掲載誌:労経速2327号3頁

2.2 関連裁判例

  • アサノ運輸事件(東京地裁八王子支部 昭46.10.16判決)
  • 東部生コンクリート事件(高知地裁 昭53.11.13判決)

2.3 参考記事

3国立大学法人大阪大学事件の判例の具体的内容

3.1 結論

Xの請求棄却(全面敗訴)

3.2 事案の概要等

1 本件事案の概要

(1) 国立大学法人であるYの歯学研究科の助教として勤務していたXは,平成24年4月5日,傷害致死の公訴事実により起訴されたことで,Yの定める起訴休職制度に基づき休職処分を受け,その後,2年の休職期間が満了したことを理由に,平成26年5月2日付けで分限解雇となった。

(2) 本件は,Xが,①主位的に,上記解雇は無効であると主張して,Yとの間の雇用契約に基づき,同契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,身柄拘束を解かれた後である平成27年4月から本判決確定の日までの賃金(訴状送達の日の翌日である平成27年9月16日から支払済みまで民法所定の遅延損害金を含む。)の支払を求め,②予備的に,Yとの間でXを再雇用させる旨の合意が成立していたのにこれに違反したと主張し,債務不履行に基づく損害賠償として,平成27年4月から17か月分の賃金相当額(訴状送達の日の翌日である平成27年9月16日から支払済みまで民法所定の遅延損害金を含む。)の支払を求める事案である。

2 前提事実(争いのない事実等)

(1) 当事者
ア Y
Yは,平成16年4月に法人化された国立大学法人である。

イ X
Xは,平成5年4月にYの歯学部附属病院の教員(国家公務員)として任用され,平成16年4月にYが法人化されたことに伴い,Yとの間で雇用契約を締結し,平成19年4月には,歯学研究科の助教となり,同病院における診療業務に従事していた。

(2) 法人化以前のYにおける起訴休職制度

Yが平成16年4月に法人化される前は,Xを含む教職員には国家公務員法が適用されていたところ,同法によれば,「刑事事件に関し起訴された場合」には休職させることができ,その期間は「その事件が裁判所に係属する間」とされていた(国家公務員法79条2号,80条2項)。

(3) 法人化後のYにおける起訴休職制度及び解雇に関する規定

Yは,平成16年4月に法人化された際,「国立大学法人A大学教職員就業規則」(以下「本件就業規則」という。)において,以下の内容の起訴休職制度及び解雇に関する各規定を定めた。

ア 「教職員が次の各号のいずれかに該当する場合は,休職とする。」(本件就業規則14条1項柱書)
「刑事事件に関し起訴され,職務の正常な遂行に支障をきたすとき。」(同項2号)

イ 上記アによる「休職の期間は,その事件が裁判所に係属する間とする。ただし,その係属期間が2年を超えるときは,2年とする。」(本件就業規則15条3項。以下「本件上限規定」という。)

ウ 「教職員が次の各号のいずれかに該当し,かつ,大学との間で雇用関係を維持しがたい場合には,これを解雇する。ただし,その程度に至らない場合には,これを降任,降格又は降給にとどめることがある。」(本件就業規則21条1項柱書)
「第14条第1項第1号から第3号まで及び第5号に掲げる事由により休職とした者について,第15条に定める休職の期間が満了したにもかかわらず,なお休職事由が消滅していないとき」(同項3号)

(4) Xに対する起訴休職

ア X及びその妻(以下,併せて「Xら」ともいう。)は,平成24年3月15日,Xの実母に対する傷害致死の被疑事実により逮捕され,その後,勾留されて,同年4月5日,以下の公訴事実により,大阪地方裁判所に起訴された(甲1。以下「本件刑事事件」という。)。
「Y人両名は,共謀の上,平成23年6月19日午後11時頃から同月20日午前2時頃までの間に,大阪市a区bc丁目d番eY人両名方において,Y人Bの実母であるC(当時80歳)に対し,代わる代わる平手又は握り拳でその顔面などを多数回殴り付け,その前胸部を足で踏み付けるなどの暴行を加え,その結果,同女に全身にわたる多発外傷等の傷害を負わせ,同日午後6時頃までの間に,同所において,同女を上記傷害による外傷性ショックにより死亡させたものである。」

イ Xは,同年5月3日付けで,上記起訴休職規定に基づき,休職となった。

(5) 本件刑事事件の審理及び一審判決

ア Xらは,本件刑事事件の審理において,公訴事実記載の暴行を加えた事実はない旨主張していた。

イ 大阪地方裁判所は,平成26年2月20日,本件刑事事件について,Xらが,共謀の上,実母に対し,「代わる代わる平手などでその顔面等を多数回殴り付けた上,体をつかんで揺さぶって家具等に押し付け,更にその前胸部に何らかの方法で強い力を作用させるなどの暴行を加え,その結果,Cに全身にわたる多発外傷等の傷害を負わせ,同日午後6時30分頃までの間に,同所において,上記傷害による外傷性ショックにより死亡させた」と認定して,傷害致死罪により,Xらをそれぞれ懲役8年に処する旨の判決を言い渡した。

ウ Xらは,上記イの判決に対して,控訴した。

(6) 解雇

Yは,平成26年3月19日付け通知書により,Xに対し,休職期間満了を理由として,同年5月2日限りで解雇する旨を通知した(甲3。以下「本件解雇」という。)。

(7) 本件刑事事件の控訴審判決

大阪高等裁判所は,平成27年3月11日,本件刑事事件につき,Xらが,共謀の上,Xの実母に対し,「それぞれ平手で顔面を何回か叩いた上,体をつかんで揺さぶり家具等に押し付けるなどの暴行を加えた」と認定して,暴行罪により,Xらをそれぞれ罰金20万円に処する旨の判決を言い渡し,Xらは,同日,釈放された。

(8) Xに対する賃金額

ア YのXに対する月例賃金は,毎月末日締めで,当月17日(ただし,17日が日曜日に当たるときは15日。15日も休日に当たるときは18日。17日が土曜日に当たるときは16日。17日が月曜日かつ休日に当たるときは18日。)に支給することとされていた(乙19)。
イ Yは,Xに対し,上記休職前3か月間につき,平成24年2月分の賃金として55万2459円(通勤手当1万3700円を含む。),同年3月分の賃金として52万1307円(通勤手当1万3700円を含む。),同年4月分の賃金として50万4112円を支払った(乙9)。
ウ 上記イによれば,上記休職直前の賃金の締切日から遡って3か月間に得た月例賃金の平均は月額52万5959円である。

3 本件の争点

  1. ① 起訴休職期間について,本件上限規定を定めたことが,就業規則による労働条件の不利益変更に当たり,労働契約法(以下「労契法」という。)10条所定の合理性を有するか(争点1)
  2. ② 本件上限規定に係る労契法7条所定の合理性の有無(争点2)
  3. ③ 「雇用関係を維持しがたい場合」(就業規則21条)に当たるか(争点3)
  4. ④ 本件解雇に係る客観的合理性及び社会通念上の相当性の有無(争点4)

3.3 争点に関する当裁判所の判断

1 争点1(省略 なお,不利益変更にはあたらない)

2 争点2(本件上限規定に係る労契法7条所定の合理性の有無)について

(1) 一般に,労働者が起訴された場合,勾留等の事情により,当該労働者が物理的に労務の継続的給付ができなくなる場合があるほか,勾留されなかった場合でも,犯罪の嫌疑が客観化した当該労働者を業務に従事させることにより,使用者の対外的信用が失墜し,職場秩序の維持に障害が生じるおそれがある場合には,事実上,労務提供をさせることができなくなる。起訴休職制度は,このように,自己都合によって,物理的又は事実上労務の提供ができない状態に至った労働者につき,短期間でその状態が解消される可能性もあることから,直ちに労働契約を終了させるのではなく,一定期間,休職とすることで使用者の上記不利益を回避しつつ,解雇を猶予して労働者を保護することを目的とするものであると解される。 

 以上のような起訴休職制度の趣旨に鑑みれば,使用者は,労務の提供ができない状態が短期間で解消されない場合についてまで,当該労働者との労働契約の継続を余儀なくされるべき理由はないから,不当に短い期間でない限り,就業規則において,起訴休職期間に上限を設けることができると解するのが相当である。 

(2) 以上を踏まえて,本件起訴休職規定についてみると,同規定は,労働者が「刑事事件に関し起訴され,職務の正常な遂行に支障をきたすとき」に限り,当該労働者を休職とする旨定めたものであるから,上記(1)の一般的な起訴休職制度の趣旨及び目的に沿うものであると認められ,かかる趣旨及び目的に照らせば,上限を2年間とする本件上限規定が,不当に短い期間であるとは言い難い上,Yは,人件費の多くを国から支給される運営費交付金で賄っており,その財源に応じて,雇用すべき教授,准教授,助教などの教員数を部局毎に設定,管理していると認められること、多くの国立大学法人において,起訴休職期間の上限は2年間と定められていること,以上の点に鑑みれば,起訴休職期間の上限を2年間とする本件上限規定は,合理的な内容(労契法7条所定の「合理的な労働条件」に該当するもの)であると認められる。

(3) Xは,起訴休職期間中,Xは給料を支払われておらず,ポストについても,有期雇用契約を利用して一時的に人員を補充するなど柔軟に対応する方法もあることの事情を挙げて,本件上限規定には合理性がない旨主張する。
しかし,Yは,起訴休職期間中の賃金を支払う義務を負わないとしても,その間,休職となった当該職員による労務の提供を受けることができない不利益が生じることは明らかである上,これを補填するために臨時的に新たな職員を補充することが不可能ではないとしても,起訴休職事由が解消されるかどうかや,いつ解消されるかどうかも不明のまま,Xとの雇用関係を維持するために,Yが臨時的雇用を継続しなければならない義務を負うと解すべき理由はない。したがって,Xの主張は採用できない。

3 争点3(「雇用関係を維持しがたい場合」に当たるか)について

(1) 本件就業規則21条1項は,以下のとおり規定している(乙1)。
「教職員が次の各号のいずれかに該当し,かつ,大学との間で雇用関係を維持しがたい場合には,これを解雇する。ただし,その程度に至らない場合には,これを降任,降格又は降給にとどめることがある。

  • 勤務成績が不良なとき。
  • 心身の故障のため職務の遂行に支障があり,又はこれに堪えないとき。
  • 第14条第1項第1号から第3号まで及び第5号に掲げる事由により休職とした者について,第15条に定める休職の期間が満了したにもかかわらず,なお休職事由が消滅していないとき。
  • その他職務を遂行するために必要な資格又は適格性を欠くとき。
  • 経営上又は業務上やむを得ない事由によるとき。

(2) 上記規定は,その文言に照らすと,いわゆる解雇権濫用法理(労契法16条)を念頭に,1号から5号までを解雇理由として列挙した上で,これらに該当する場合については,その程度が大きく,「雇用関係を維持しがたい場合」,すなわち,解雇を回避する手段がない場合についてのみ,解雇を相当とし,その程度が比較的小さく,解雇以外の措置を執ることが可能な場合には,降任等の処分をすることができることを定めたものであると解される。

そして,前記前提事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によれば,Xは,平成24年4月5日に傷害致死という重大な犯罪の嫌疑により,起訴され,勾留された状態が継続し,平成26年2月7日に保釈許可決定が出されて,一時,釈放されたものの,同月20日の一審判決の結果,再び勾留され,休職期間満了時も勾留されていたのであって,Yに対する労務の提供ができない状態が継続していたこと,懲役8年の一審判決が出されたことにより,休職期間満了時以降も,少なくとも相当期間勾留が継続し,労務の提供ができない状態が継続することが見込まれていたこと,以上の点が認められ,これらの点に鑑みれば,以上のようなYに対する労務の提供ができないXについて,降任,降格又は降給にとどめる余地がなかったことは明らかであって,Xについては,本件解雇時点において,Yとの「雇用関係を維持しがたい場合」にあったと認めるのが相当である。

(3) Xは,①本件解雇時点において,Yが再度Xを採用できるよう欠員となるポストを空けたまま待ち続けていたから,「雇用関係を維持しがたい場合」には当たらない,②本件解雇時点で判決はまだ確定していなかったから,「雇用関係を継続しがたい場合」には当たらない,③「雇用関係を維持しがたい場合」とは,休職期間満了時に休職事由が消滅していない場合において,常に機械的に適用される条項ではないことを意味すると解すべきである旨主張する。
ア しかしながら,本件刑事事件の判決が確定していなかったという事情のほか,仮にYが再度Xを採用できるようにポストを空けたまま待ち続けていた事実があったとしても,Xについては,休職期間満了時に至ってもYに対する労務の提供ができない状態が解消していなかった以上,これらの事情が解雇以外の措置を執ることができるか否かの判断を左右するものとはいえず,上記①及び②の各主張はいずれも理由がない。
イ また,Xについては,単に,休職期間満了時に起訴休職事由が存続しているというだけでなく,上記説示したとおり,勾留が継続し,懲役8年の有罪判決を受けるなど,その後も少なくとも相当程度の期間勾留が継続することが見込まれる状態にあったのであり,機械的な適用か否かをみるまでもなく,実質的にも「雇用関係を維持しがたい場合」に当たると認められるから,上記③の主張についても理由がない。
ウ 以上によれば,Xの上記①ないし③の各主張は,いずれも理由がない。

4 争点4(本件解雇に係る客観的合理性及び社会通念上の相当性の有無)について

Xは,①事件とされる当日は,実際は,Xは激しく暴れていた実母を止めていただけであること,②一審判決がXの主張を容れなかったこと,③捜査機関が違法な逮捕・起訴をしたこと,④本件は無罪を裏付ける証拠があり,Yも一審破棄を予見できたこと,以上の点をもって,本件解雇には客観的に合理的な理由がなく,社会通念上の相当性もない旨主張する。

(1) しかしながら,上記3で認定説示したとおり,Xは,本件解雇時において,実母に対する傷害致死の容疑で勾留され,Yに対して労務の提供ができない状態が継続しており,一審において懲役8年の有罪判決を受けたことにより,その後も相当程度の期間,勾留が継続し,Yに対する労務の提供ができないということが見込まれる状態にあったと認められる。また,本件解雇は,平成26年2月20日に宣告された懲役8年の一審判決から約2か月半後にされたものであるところ,その間に,控訴審の審理が行われるなどして,一審判決が破棄されることをうかがわせる新たな事情が生じたことを認めるに足りる的確な証拠はなく,Yが同破棄を予見することができたとは認められない

(2) 以上のようなXに係る客観的な状況(Yに対する労務の提供が不可能ないし困難な状況の継続)及び本件起訴休職制度が合理性を有していることに鑑みれば,Xの上記各主張は,いずれも採用することができないといわざるを得ない。そうすると,本件解雇には客観的に合理的な理由があり,社会通念上の相当性もあると認めるのが相当である。