労働判例INDEX(2020年4月)

2020年4月に公刊された判例雑誌(労判、判タ、労経速、判時、労判ジャーナル)から労働裁判例の目次を整理しました。

労働判例 2020年4月1日号 No.1216

ロピア事件 (横浜地裁令元.10.10判決)

持ち帰り行為による懲戒解雇の有効性と掲示行為の不法行為該当性等(懲戒解雇無効)

スーパーマーケットの精肉部門チーフとして勤務していた労働者が,精肉商品6点(時価合計約3000円相当)をレジで精算することなく持ち帰ったことを理由としてなされた懲戒解雇事案。
窃盗の嫌疑で警察で取り調べを受けたが「うっかり精算を忘れて帰ってしまった」との弁解により捜査は進められず,刑事処分はなされていない。
社内商品購入は退勤後に行うべきとする買い物ルールがあったが周知されていなかった。
諭旨解雇相当との社内見解が事前にあった。
懲戒事由該当性も疑問がある上,懲戒解雇は重すぎるとして無効とされた。
予備的普通解雇についても同様に無効と判断された。

福井県・若狭町(町立中学校教員)事件 (福井地裁令元. 7.10判決)

恒常的な長時間労働等による精神疾患発症・自殺と公務起因性(公務起因性肯定,損害賠償義務あり)

自殺前6ヶ月の間の所定外労働は月平均で130時間

しんわコンビ事件 (横浜地裁令元. 6.27判決)

週6日・計48時間勤務の労働契約の適法性と割増賃金の算定方法等

使用者側は,1日8時間✕週6日=週48時間が所定労働時間であり,月給も週48時間勤務の対価として支払っている,それゆえ,週6日勤務した場合の6日目は請求できるのは割増分だけ(0.25部分)であり,仮に週40時間となるのであれば,算定基礎賃金は月給の6分の5だけであり,その余の6分の1は40時間を超えた分の固定残業代として充当するべきである,と主張した。
これに対し裁判所は,「原告らと被告との間で締結された本件労働契約は,いずれも1日8時間,週6日勤務に対してその給与を月給制で支払うことを内容とするものであるところ,これは週48時間の勤務を所定労働時間とする点で,労基法32条1項に違反することが明らかである。そのため,本件労働契約の内容は,労基法13条,32条1項により,一週間当たりの所定労働時間を48時間と定める部分が無効となり,これが40時間(1日8時間,週5日勤務)へと修正されるものと解されるところ,月給制は原則として,月当たりの通常所定労働時間の労働への対価として当該金額が支払われる旨の合意であるから,被告が原告らに支払った月給は,上記のとおり労基法に従って修正された所定労働時間に対する対価として支払われたものと解するのが相当である。」
「被告は,原告らに支払った給与は「1日8時間,週6日勤務」の対価として支払われたものである以上,①原告らが請求できるのは週1日(6日目)分のうち割増賃金分に限られ,仮に割増賃金分に限らない全額の賃金の支払を認めるのであれば,既に支払われた6分の1は労働の対価なく支払われたものとして不当利得になる,②基礎賃金についても6分の5の金額で計算し,残りの6分の1については,週1日の時間外労働に対する固定残業代の合意があったと解釈すべきである旨主張する。しかしながら,労基法13条により無効となるのは,同法の定める基準に達しない労働条件に限られるのであり,原告らの労働条件において,無効となる所定労働時間に応じて賃金の定めが修正され,被告から原告らに対し,時間外労働に対応した賃金が支払われたとみるべき事情はうかがわれない。また,原告らの労働条件について,これを定めた労働契約書や就業規則は存在しておらず,原告らとCの採用面接の際にも,給与の一部を固定残業代と解すべき合意等は何ら認められないことを踏まえると,原告らが支払を受けた賃金に,時間外労働に対応する賃金が含まれるとは認められず,被告の主張はいずれも採用できない。」として,被告の主張を退けた。
弁護士のコメント
使用者側で,法定労働時間を超える所定労時間が有効(一部有効)であるとのありがちな主張であり,理屈の上では認められないことは明白です。ただ,明白に論じた裁判例はほとんどなく,桶屋事件(大阪地判昭和40.5.22判タ178-174)以来の最近の判例という意味では貴重な判例だと思います。

協同組合つばさほか事件〈付 原審〉 (東京高裁令元. 5. 8判決,水戸地裁平30.11. 9判決)

外国人技能実習生による未払残業代請求ならびにセクハラの有無等(残業代請求認容,それ以外は棄却)

就業規則等により懲戒事由の定めがないにもなされた懲戒解雇は無効であるが,懲戒解雇に固執せず,労働者の地位を不当に不安定にしない限り,普通解雇の意思表示と解することも可能(洋書センター事件二審判決東京高判昭和61.5.29労判489-89)として,普通解雇を有効と判断した。

労働判例 2020年4月15日号 No.1217

日本郵便(北海道支社・本訴)事件〈付 抗告・仮処分〉 (札幌地裁令 2. 1.23判決,札幌高裁令元.10.25決定,札幌地裁平31. 3.27決定)

100回以上にわたる旅費等の不正受給を理由とする懲戒解雇の有効性(懲戒解雇有効)

100回,合計52万1400円を不正受給して詐取した事案。

狩野ジャパン事件 (長崎地裁大村支部令元. 9.26判決)

固定残業代制度の有効性および長時間労働の不法行為該当性等(残業代請求肯定,慰謝料30万肯定)

退職前2年間で月100時間以上の残業をさせていたことは安全配慮義務に違反し,仮に病気にならなかったとしても,慰謝料30万円が認められるとした。

京都市(児童相談所職員)事件 (京都地裁令元. 8. 8判決)

公益通報をめぐる内部資料の持ち出し行為等に対する懲戒処分の適法性(停職3日の懲戒処分無効)

児童相談所に勤務していた職員が,児童虐待事案に対して同相談所が適切な対応を行っていないとの公益通報を行い,そのために児童記録データ等を持ち出したことに対して,停職3日の懲戒処分がなされた。
これについて,公益通報目的として行われた内部通報に付随して行われた資料持ち出し行為は,証拠保全という重要な目的を有するので,その動機において強く非難することはできない,と判断した。

判例タイムズ 1470号 5月号 (2020年4月25日発売)

福岡高裁令元.8.22判決

じん肺管理区分4の決定を受けていた元炭鉱労働者が,30年以上にわたって療養を続けた後,胃がんを併発した上,肺炎で死亡したことについて,業務起因性が否定された事例

東京地裁平30.6.12判決

1 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に沿って継続雇用制度を定めた就業規則等の趣旨に基づき,定年後に締結された再雇用契約が65歳まで継続するとの期待に合理的理由があると認めた事例
2 定年後に締結された再雇用契約の不更新が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上不相当であるとして,労働契約法19条2号に基づき,再雇用契約が従前と同一の労働条件で更新されたものと認めた事例
3 使用者による達成度評価が不当であることを理由とした賞与請求及び雇止め後の期間に係る賞与請求がいずれも認められなかった事例

労働経済判例速報(4/10)2405号

ヤマダコーポレーション事件 東京地裁(令和元年9月18日)判決

試用期間満了時まで指導を継続せず決定した本採用拒否が有効と判断された例

ドリームエクスチェンジ事件 東京地裁(令和元年8月7日)判決

再就職先の試用期間満了時点で被告における就労意思が失われたと判断された例

【時系列】
2016年12月02日 2017年1月1日付入社の内定通知
2016年12月 前職の勤務状況調査(バックグラウンド調査)
2017年01月4日 バックグラウンド調査終了まで出勤禁止
2017年01月11日 内定取り消し
2017年04月10日 別会社で勤務開始(但し,賃金は被告の8割に満たない)
2017年07月10日 別会社での使用期間満了
【判断】
・内定取り消しは無効
・バックペイについて,「原告は、現在までZ3において就労を継続していることが認められるところ、同社における業務が被告の業務と類似するものである反面、同社の給与水準は、被告の本件採用内定時の条件(月額賃金35万円)の8割にも満たない金額であることからすれば、上記のとおり、同社での就労開始後、直ちに原告が被告における就労意思を喪失したとは認められないものの(上記(1))、同社での原告の就労は、本訴訟の口頭弁論終結時点ですでに2年2か月以上に及んでおり、遅くとも、試用期間満了後の平成29年7月10日時点では原告の雇用状況は一応安定していたと認められ、原告の被告における就労意思は失われたと評価するのが相当である。」として,2017年1月1日から7月9日までのバックペイ(6割相当額)に限り請求出来ると判断した。

えびす自動車事件 東京地裁(令和元年7月3日)判決

度重なる交通事故等を理由としたタクシー運転手としての就労拒否につき使用者の帰責性がないと判断された例

【時系列】
2012年8月25日 タクシー運転手として雇用契約
2014年2月~2016年1月 交通事故5件
2013年8月~2016年1月 交通違反,2014年8月に免停30日,2016年3月に120日の免停
2016年4月 事務職への職種変更を提案,以後,出勤せず
2016年9月 被告タクシー会社の商標を勝手に被告名義で商標登録し,被告グループ会社との面会を要求
2017年4月 解雇予告
2017年5月18日 退職届提出
【判断】
雇用契約上の地位確認は,退職届提出うにより棄却
バックペイについては,2016年4月から退職までは,労務提供は履行不能な状態となっていたと認定しつつも,民法536条2項の「使用者責めに帰すべき事由」の有無に関しては,
「度重なる指導にもかかわらず重大な事故を繰り返し発生させ反省する様子を見せない原告を、このままタクシー運転手として勤務させ続けることは危険であるとしてその就労を拒否し、事務職への転換を提案したZ1所長の判断は、安全性を最も重視すべきタクシー会社として合理的理由に基づく相当なものであったというべきであり、本件免許停止処分の期間が満了した後も、原告が事故防止に向けた具体的取組を被告に説明することはおろか、タクシー運転手として勤務を希望する旨を申し出ることすら一度もなかったことをも踏まえると、被告が本件免許停止処分以降、約1年間にわたって原告の就労を拒否し続け、原告が労務を提供することができなかったことについて、被告の責めに帰すべき事由があると認めることはできない。」
と判示して,請求を退けた。

労働経済判例速報(4/20)2406号

ビックカメラ事件 東京地裁(令和元年8月1日)判決

休職命令等の措置をとらずに行った解雇が有効とされた例

マルハン事件 東京地裁(令和元年6月26日)判決

セクハラ、パワハラ、不倫等を理由とする懲戒解雇が無効とされた例

労働経済判例速報(4/30)2407号

学校法人A学園(試用期間満了)事件 那覇地裁(令和元年11月18日)決定

コミュニケーション能力不足等を理由とした試用期間満了時の解雇が有効とされた例

学校法人A学園(雇止め)事件 那覇地裁(令和元年11月27日)決定

雇用継続の合理的期待がないとして有期労働契約の期間満了時の雇止めが有効とされた例

グローバルコミュニケーションズ事件 東京地裁(令和元年9月26日)判決

原告の疾病の業務起因性及び労働基準法19条1項本文の類推適用が否定され、休職期間満了による自然退職が有効とされた例

判例時報 No.2433 2020年4月1日号

大阪地裁(令和元年5月15日)判決

長期間にわたって1か月当たり250時間を超える時間外労働に従事していた調理師が,ウイルス性の劇症型心筋炎を発症したことについて,業務起因性が認められた事例

福井地裁(令和元年7月10日)判決

地方公共団体の設置する中学校に勤めていた教員が過重業務等により精神疾患を発症し自殺したことにつき,同中学校の校長の安全配慮義務違反を認めた事例

判例時報 No.2434 2020年4月11日号

東京高裁(平成31年3月28日)判決 〈原審〉水戸地裁土浦支部(平成29年4月13日)判決

1 始業時刻及び終業時刻につき,シフト表に加え,PCのメール送信時刻,ログオフログ時刻などを使って認定した事例
2 定額残業代(固定残業代)の定めが公序良俗に反し無効であるとする1審原告の主張を排斥して,その効力を認めた事例

名古屋地裁(令和元年7月30日)判決

私立大学の大学教授の65歳定年後の再雇用に関して,再雇用による雇用継続を期待することに合理性が認められ,大学の再雇用拒否は許されず,定年後も再雇用規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものと判断した事例

判例時報 No.2435 2020年4月21日号

最高裁判所第一小法廷(令和元年11月7日)判決

有期労働契約を締結していた労働者が労働契約上の地位の確認等を求める訴訟において,契約期間の満了により当該契約の終了の効果が発生するか否かを判断せずに請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例

福岡高裁(平成31年3月26日)判決 〈原審〉福岡地裁(平成30年9月14日)判決

1 就業規則と異なる労働条件である出来高払制の合意をしたとの会社側の主張が排斥された事例
2 労働者に対するパワーハラスメントが認められるとして,事実上の取締役の不法行為責任及び会社の会社法350条の類推適用による責任が肯定された事例

労働判例ジャーナル 97号(2020年・4月)

福山通運事件 最高裁第二小法廷(令和2年2月28日)判決

従業員の業務中の事故に対する賠償と使用者に対する求償(逆求償肯定)

被用者が使用者の事業の執行について第三者に加えた損害を賠償した場合,被用者は相当と認められる額を使用者に求償することができるとして,原審に差し戻した。

アクセスメディア事件 大阪地裁(令和2年1月31日)判決

安全配慮義務違反に基づく損害賠償等請求(残業代・損害賠償肯定)

病気発症前6ヶ月間,残業時間は100時間を超過していた。

日本郵便事件 大阪地裁(令和2年1月31日)判決

金員の不正授受を理由とする懲戒解雇の有効性(懲戒解雇有効)

原告は、郵便局長採用試験を経て大阪市南部地区の郵便局長に採用された者合計9名に対し、同試験の受験時又は採用通知後に、紹介料と称して金員の支払等を要求し、商品券合計210万円分を受け取ったほか、ある団体の会費として現金を原告指定口座に振り込ませるなどしたこと(本件行為)が認められ、これら行為は、本件就業規則81条1項14号に準ずる程度の不適切な行為として、同項17号の懲戒事由に当たるものというべきであり、また、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠くとはいえず、また、社会通念上も相当であると認められるから、これが権利を濫用したものとして無効になるとはいえない

学校法人関西外国語大学事件 大阪地裁(令和2年1月29日)判決

業務命令拒否を理由とするけん責処分無効確認等請求(処分有効)

青森三菱ふそう自動車販売事件 仙台高裁(令和2年1月28日)判決

精神疾患発症後の自殺に基づく損害賠償等請求(請求認容・原審変更)

適応障害発症前6か月間の総労働時間及び時間外労働時間
平成27年7月6日から同年8月4日 267時間及び99時間
同月5日から同年9月3日までが252時間及び76時間
同月4日から同年10月3日までが253時間50分及び86時間50分
同月4日から同年11月2日までが265時間30分及び105時間30分
同月3日から同年12月2日までが238時間10分及び70時間10分
同月3日から平成28年1月1日までが209時間30分及び65時間
平成27年7月以降,業務上の役割・地位の変化及び仕事量・質の大きな変化と長時間労働とが相まって,平成28年1月上旬に適応障害を発症したところ,その後も月100時間を超える時間外労働をしたことにより出来事に対する心因性の反応が強くなっていた中,同年4月16日,先輩従業員であるf(以下「f」という。)の叱責に過敏に反応して,自殺を図るに至った。

加賀金属事件 大阪地裁(令和2年1月24日)判決

取締就任等による雇用契約終了の成否(雇用契約は終了し,退職金規程に基づく退職金請求が認められた)

原告の取締役就任等によって本件雇用契約が終了したか否かについて、原告と被告の間に、原告が常務取締役に就任した際、本件雇用契約を終了させる旨の黙示的な合意が成立したものと認定することができ、この認定を覆すに足りる証拠はない
被告がした取締役解任に係る正当な理由(会社法339条2項)の有無について、原告を取り巻く被告内の状況や原告がした言動等に照らせば、原告と被告の委任関係の前提となるべき信頼関係が維持できないものとなっており、原告の取締役解任については「正当な理由」(会社法339条2項)があると認定することが相当である
本件雇用契約は、原告が常務取締役に就任した際、終了したと認められることからすれば、被告は、原告に対し、本件雇用契約の内容となるものというべき同退職金規則に基づき、退職金支払義務を負うべきことになるとして、原告の主位的請求を棄却し、予備的請求のうち退職金の支払について一部認容し、その余を棄却した

思いやり整骨院事件 大阪地裁(令和2年1月17日)判決

整骨院院長の雇用契約成立に基づく未払賃金等支払請求(請求認容)

中村工業事件 大阪地裁(令和2年1月16日)判決

解雇の意思表示と解雇予告手当等支払請求(請求認容)

医療法人貴生会事件 大阪地裁(令和2年1月16日)判決

強迫による合意解約無効地位確認等請求(請求棄却)

カワニシ食品事件 大阪地裁(令和2年1月10日)判決

辞職の申出事実不存在と地位確認等請求(請求認容)

エコシステム事件 東京地裁(令和元年11月27日)判決

過払い給与の不当利得返還請求と未払割増賃金支払請求(過払いがそもそも無し,請求棄却)

幻冬舎メディアコンサルティング事件 東京地裁(令和元年11月27日)判決

労基法19条1項の「業務上の疾病」該当性(請求棄却)

アメリカン・エキスプレス事件 東京地裁(令和元年11月13日)判決

育休等取得を理由とする「不利益取扱い」の成否(否定)

辻・本郷税理士法人事件 東京地裁(令和元年11月7日)判決

懲戒処分の無効確認請求と損害賠償等請求(請求棄却)

VERDAD事件 東京地裁(令和元年10月30日)判決

合意解約成立の可否と解雇無効地位確認等請求(請求認容)

原告は,解雇無効を争いながら,解雇予告手当を請求するという謎の構成を取っていた。これに対し,「解雇予告について定める労基法20条は,解雇による労働者の生活への脅威を防止し,再就職などの準備の時間的余裕を与える趣旨であると解されるところ,解雇が無効である場合には労働契約が存続することから,同条は解雇が有効であることを前提とした規定であると解される。したがって,原告の主張は,主張自体失当である。」と判示した。

西京信用金庫事件 東京地裁(令和元年10月29日)判決

上司のパワハラに基づく損害賠償等請求(パワハラ不存在,請求棄却)

芝海事件 東京地裁(令和元年10月17日)判決

労働契約に基づく未払退職手当等支払請求(請求一部認容)

就業規則上,退職金の支給について,会社の同意を得て退職しなかったことが不支給事由として定められ,会社の同意を得ずに辞職した原告らが,未払の退職金の請求を求めて提訴した。裁判所は,「就業規則54条は退職しようとするときは被告の同意を得なければならない旨定めるところ,この規定にかかわらず辞職の意思表示が被告に到達すれば雇用契約終了の効果が生ずるのであるから(民法627条1項),就業規則54条の退職手続をしなかったことを退職手当の不支給事由と定めても直接的に退職の自由が制限されるものとはいい難い。しかしながら,被告の給与規程上,退職手当の額は,定年退職の場合と自己都合退職の場合とで異なるものの,職勤続年数に概ね比例するように定められていることに照らすと(前提事実(3)イ),被告における退職手当は功労報償的な性格を有するのみならず,賃金の後払い的性格を有するものであるということができる。このような退職手当の性格に鑑みると,就業規則54条に定める退職手続によらないということのみを退職手当の不支給事由とすることは,労働条件として合理性を欠くものというほかない(労働契約法7条参照)。したがって,給与規程12条1号ただし書のうち就業規則54条の退職手続をしなかったことを退職手当の不支給事由とする部分は無効である」と判示した。

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