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労働判例INDEX(2020年8月)

2020年8月に公刊された判例雑誌(労判、判タ、労経速、判時、労判ジャーナル)から労働裁判例の目次を整理しました。

労働判例 2020年8月1日・15日合併号 No.1222

豊和事件 大阪地裁(令和2年3月4日)判決

長時間労働によりうつ病を発症した従業員による損害賠償等請求

学校法人日本学園事件 東京地裁(令和2年2月26日)判決

事務職員に対する営繕室への配転命令の有効性

社会福祉法人青い鳥事件 横浜地裁(令和2年2月13日)判決

有期・無期契約社員の出産休暇・手当金相違と労契法20条違反の有無

北海道二十一世紀総合研究所ほか事件〈付 原審〉 札幌高裁(令和元年12月19日)判決,札幌地裁(平成31年3月25日)判決

研究員のうつ病発症と安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求

みんなで伊勢を良くし本気で日本と世界を変える人達が集まる事件〈付 原審〉 名古屋高裁(令和元年10月25日)判決,津地裁伊勢支部(平成31年3月28日)判決

書面のない労働契約と会社批判を理由とする解雇の有効性等

【解雇の意思表示の有無について】
上記(1)の認定に対し,被控訴人らは,解雇の意思表示はなかった旨主張し,控訴人作成の平成29年8月8日付けの被控訴人らに係る退職証明書(甲5,6)には,退職理由がいずれも「退職勧奨」と記載されている。しかしながら,Bは,上記各面談において,被控訴人らに対し,それぞれ明日から出社しなくてよい旨を最終的に明示しており,その発言に至る面談の内容が,被控訴人らが退職勧奨に応じるか否かのやりとりとなっていたことや,被控訴人X1については退職勧奨の条件となっていた給与の1か月分の支払が併せて告げられていること,出社しなくてよい日数や期間等について何も述べられていないことを踏まえると,上記発言の趣旨が,単なる出勤停止を告げるものではなく,確定的・一方的に被控訴人らとの間の雇用関係を終了させる意思表示であったことは明らかというべきである。控訴人が平成29年7月25日に口座振込の方法で支払った金額のうち被控訴人らの各1か月分の月額給与に相当する金額が,同月分の給与の明細書(甲3の6,4の5)で「その他支給→解雇予告手当1ヶ月分」と記載されていることは,控訴人において被控訴人らに対する解雇の意思表示をしたことを推認させるものであり,他方,上記退職証明書で退職理由がいずれも「退職勧奨」と記載されていることは,控訴人において被控訴人らが対外的に使用することもある退職証明書に「解雇」と明示することを避けたものとして理解可能であるから,解雇の意思表示があったとの認定を妨げるものではない。
(3)したがって,平成29年6月30日に被控訴人らに対する解雇の意思表示がされたと認められるから,その各解雇(前記2(2),(3)で判示したとおり,被控訴人らについて既に試用期間は経過していることから,試用期間満了に伴う解雇ではない。)が,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないことによって無効となるか否かが問題となる。

圓満院事件 大津地裁(令和元年10月3日)判決

僧侶2名に対する転任・破門・解雇処分の有効性等ならびに建物明渡請求

すみれ交通事件 横浜地裁(令和元年9月26日)判決

タクシー運転手らに対する有休取得妨害の有無ならびに雇止めの適法性等

北海道・道労委(札幌交通・新賃金協定)事件〈付 原審〉 札幌高裁(令和元年8月2日)判決,札幌地裁(平成30年12月14日)判決

協定に同意しなかった労組の組合員に対する公休出勤禁止等の不当労働行為該当性

労働経済判例速報(8/10)2417号

学校法人明泉学園事件 東京地裁(令和元年12月12日)判決

長期間継続していた定期昇給の慣行が法的拘束力を有すると判断された例

【労働契約法20条関係】
専任教諭については調整手当が基本給の8%、常勤講師については5%と相違があることが労働契約法20条に反しないかが問題となった。
裁判所は、調整手当の性質を「基本給名目で支払われる額との合計で全体として支給される基本給の額を調整するための手当としての性質を有するものであった」と認定した上で、「一般に使用者が雇用する無期契約労働者の基本給について、新入社員から管理職員そして幹部社員に至るまでどのような水準に設定するか、また、有期契約労働者について基本給の額をどのような水準にするかを決定する際には、それぞれの場合において、長期間の雇用が制度上予定されているか否か、担当する可能性のある業務の範囲及び内容、雇用される期間を通じて期待される職責の範囲、予定される昇任昇格経路、その他の事情を総合考慮して決定されるものであるから、基本給の額を調整するための手当である調整手当について、常勤講師と専任教諭との間の相違が不合理であるか否かは、基本給が決定される際に考盧される前記各事情やその相違の程度等を踏まえて判断すべきである」とした。その上で、専任教諭と常勤講師とでは、制度上、長期間の雇用が予定されていたか否かが異なり、期待される職責の範囲及び予定される昇任昇格経路も相当の差異があり、重要業務は専任教諭が中心的役割を担っていたとして、基本給の設定において考盧すべき事情に相当な差異がある、さらに、両者の調整手当の差が基本給の3%にとどまることも考慮すれば、常勤講師が教科教育、クラス担任、クラブ活動の指導等について専任教諭と同様の職務に従事していたなどの事情を考慮しても、両者の同手当の相違は不合理とはいえないと判断した。
【定期昇給の労使慣行の法的効力】
常勤講師について毎年度少なくともl号俸ずつ定期昇給させるとの慣行が法的拘束力を有するものとして存在していたかが問題となった。
本件では定期昇給が長期間反復継続していたこと、定期昇給に関する内規の存在、新入生募集の妨害活動をしていた労働組合の組合員を平成10年度は定期昇給の対象から除外しなかったことを理由として、遅くとも同年度までは定期昇給の労使貫行が存在し、それが法的拘束力を有していたと判断した。

ザニドム事件 札幌地裁苫小牧支部(令和2年3月11日)判決

固定残業代に関する合意が有効と判断された例

日給制の雇用契約で、「基本日給」と「割増分日給」が分けられた「雇用契約書兼労働条件通知書」に原告が署名捺印していた事案で、「割増分日給」の固定残業代とする合意を有効と判断した。

労働経済判例速報(8/20)2418号

中労委(学校法人Y大学)事件 東京地裁(令和元年12月16日)判決

雇用主と同視できる程度の支配力を有していないため,労組法上の使用者には当たらないと判断された例

中労委(社会福祉法人祐愛会)事件 東京地裁(令和元年11月28日)判決

懲戒処分及び賞与不支給が労組法7条1号,3号の不当労働行為に該当すると認められた例

労働経済判例速報(8/30)2419号

地方公務員災害補償基金事件 熊本地裁(令和2年1月27日)判決

公務従事時間として自宅作業時間を認定しつつも,脳幹出血発症の公務起因性が否定された事例

教諭の本件発症前1か月間の時間外労働時間は,最大でも89時間54分であることが認められ,医学経験則上,対象疾患を発症させる可能性のある特に過重な職務に従事したと評価される100時間には至っておらず,また,本件発症前6か月間の時間外労働時間は,月平均57時間19分に止まり,医学経験則上,対象疾患を発症させる可能性のある特に過重な職務に従事したと評価される月80時間には至っておらず,さらに,本件発症前1か月間の公務の内容が,疲労の蓄積等による発症時における血管病変等をその自然的経過を超えて著しく増悪させ,脳幹部出血の発症に至らせるほどに過重なものであったとも認め難く,これらに加えて,本件発症前1か月間についても,1日単位の休暇を1回と4時間の休暇を4回取得していたこと等に鑑みれば,公務による負荷が,医学的経験則に照らし,脳血管疾患の発症の基礎となる血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得ることが客観的に認められるほどの負荷があったとは認めることはできず,本件発症が公務に内在する危険が現実化したものであるとは認められないから,本件発症と公務との間に相当因果関係は認められず,本件発症は公務上のものであると認めることはできないとされた
時間外労働時間
本件発症6ヶ月前79:50
本件発症5ヶ月前22:13
本件発症4ヶ月前51:15
本件発症3ヶ月前65:00
本件発症2ヶ月前35:45
本件発症1ヶ月前89:54
平均57:19
【持ち帰り残業の評価】
本判決では、①原告が自宅で作成していたファイルが公務に関連するものであること、②当該小学校では多くの教員が勤務時間内又は在勤時間中に職務上の執務が終えられない場合、執務内容によっては自宅に持ち帰って終わらせており、学校教育運営上、必要な作業として自宅で行っていたと認めざるを得ないこと等から、「自宅で公務に従事することを余儀なくされていた」と判断した。
その上で、具体的な労働時間の算定方法として、自宅作業時間につき、
①開始時刻を、「ⅰ )パソコンの起動又はスリープモードの終了時刻と文書ファイルの作成又は更新時刻の差が1時間未満である場合にはパソコンの起動又はスリープモードの終了時点、ii)これらの差が1時間以上である場合には、文書ファイルの作成又は更新時刻の1時間前」
②終了時刻を「最後のファイルの更新又は作成時点」
と認定して算出(推定計算)を行った。
弁護士のコメント
過重労働による労災事件に公務(業務)起因性の判断に際して、いわゆる「持ち帰り残業」が労働時間であると認められることがあります。
ただし、自宅で従事していた作業を具体的に認定でき、かつ、自宅での持ち帰り作業を余儀なくされていたと評価される場合に限られます。
【肯定例】
札幌東労基署長(北洋銀行)事件 札幌高判平20.2.28労判968.136
国・甲府労基署長(潤工社)事件 甲府地判平23.7.26労判1040.43
さいたま労基署長事件大阪地判平21.4.20 労経速2045.25
【否定例】
大阪地判平29. 3 .13 労働基準830.24
国・三田労働基準監督署長(へキストジャパン)事件 東京地判平23.11.10労判1042.43

岡地事件 東京地裁(令和2年1月15日)判決

商品先物取引の歩合登録外務員との契約が,労働基準法16条の「労働契約」に当たらないとされた事例

判例時報 No.2447 2020年8月21日号

札幌地裁(令和元年6月19日)判決

勤務開始の時点で既にうつ病にり患していた者が自殺した理由は、上司の発言及び要望に応じた業務量の増加を受けられなかったことを原因としてうつ病の程度が増悪したことによるものであると主張して、遺族が使用者に対してした損害賠償請求が棄却された事例

労働判例ジャーナル 101号(2020年・8月)

グリーントラストうつのみや事件 宇都宮地裁(令和2年6月20日)判決

人員整理目的の有期労働契約の雇止め

新潟市事件 新潟地裁(令和2年4月15日)判決

時間外勤務手当詐取による懲戒免職等処分取消請求

国・法務大臣事件 徳島地裁(令和2年4月15日)判決

パワハラ・セクハラ行為等を理由とする損害賠償等請求

学校法人明浄学院事件 東京地裁(令和2年3月26日)判決

教諭らに対する整理解雇の有効性

社会福祉法人敬人会(連合熊本ユニオンほか)事件 熊本地裁(令和2年3月18日)判決

団体交渉を求める地位確認請求

高知県公立大学法人事件 高知地裁(令和2年3月17日)判決

労契法18条1項適用直前の雇止め無効地位確認請求

社会福祉法人稲荷学園事件 大阪地裁(令和2年3月13日)判決

面接時の説明と未払賃金等支払請求

国・札幌東労基署長事件 東京地裁(令和2年3月13日)判決

上司のセクハラによるうつ病発症の業務起因性

豊和事件 大阪地裁(令和2年3月4日)判決

長時間労働によるうつ病発症に基づく損害賠償等請求

前原鎔断事件 大阪地裁(令和2年3月3日)判決

勉強会の労働基準法上の労働時間性

ビジネクスト事件 東京地裁(令和2年2月26日)判決

降格による賃金減額及び暴行を理由とする解雇の有効性

O・S・I事件 東京地裁(令和2年2月4日)判決

行方不明を理由とする退職無効地位確認等請求

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