労働判例INDEX(2020年7月)

2020年7月に公刊された判例雑誌(労判、判タ、労経速、判時、労判ジャーナル)から労働裁判例の目次を整理しました。

労働判例 2020年7月1日・15日合併号 No.1221

国・札幌東労基署長(紀文フレッシュシステム)事件(札幌地裁令 2.3.13判決)

アルバイト従業員に対するセクハラの存否とうつ病発病の業務起因性

La Tortuga(過労死)事件(大阪地裁令 2.2.21判決)

調理師の死亡と使用者の注意義務違反との相当因果関係の有無等

学校法人近畿大学(勤続手当等)事件(大阪地裁平31.4.24判決)

職員給与規程変更の有効性ならびに労働協約の有効性と規範的効力等

国立研究開発法人理化学研究所事件〈付 原審〉(東京高裁平30.10.24判決,さいたま地裁平30.3.23判決)

元中国事務所長に対する雇用関係不存在確認請求等と準拠法

労働経済判例速報(7/10)2414号

国際自動車(第2次上告審)事件 最高裁第一小法廷(令和2年3月30日)判決

歩合給の算定につき、所定内賃金と割増賃金との判別ができないとされた例

東京都(交通局)事件 東京地裁(令和元年12月2日)判決

年次有給休暇の取得につき、時季変更権の行使が適法とされた例

三田労基署長事件 東京地裁(令和元年10月30日)判決

うつ病の発病について業務起因性が否定された例

労働経済判例速報(7/20)2415号

博報堂事件 福岡地裁(令和2年3月17日)判決

有期雇用契約における5年の更新上限年数の設定に基づく雇止めが無効とされた例

争点(1)(労働契約終了の合意の有無)について
(1)被告は,平成25年4月1日付の雇用契約書において,平成30年3月31日以降は契約を更新しないことを明記し,そのことを原告が承知した上で,契約書に署名押印をし,その後も毎年同内容の契約書に署名押印をしていることや,転職支援会社への登録をしていることから,原告が平成30年3月31日をもって雇用契約を終了することについて同意していたのであり,本件労働契約は合意によって終了したと主張する。
確かに,原告は,平成25年から,平成30年3月31日以降に契約を更新しない旨が記載された雇用契約書に署名押印をし,最終更新時の平成29年4月1日時点でも,同様の記載がある雇用契約書に署名押印しているのであり,そのような記載の意味内容についても十分知悉していたものと考えられる。
(2)ところで,約30年にわたり本件雇用契約を更新してきた原告にとって,被告との有期雇用契約を終了させることは,その生活面のみならず,社会的な立場等にも大きな変化をもたらすものであり,その負担も少なくないものと考えられるから,原告と被告との間で本件雇用契約を終了させる合意を認定するには慎重を期す必要があり,これを肯定するには,原告の明確な意思が認められなければならないものというべきである。
しかるに,不更新条項が記載された雇用契約書への署名押印を拒否することは,原告にとって,本件雇用契約が更新できないことを意味するのであるから,このような条項のある雇用契約書に署名押印をしていたからといって,直ちに,原告が雇用契約を終了させる旨の明確な意思を表明したものとみることは相当ではない
また,平成29年5月17日に転職支援会社であるキャプコに氏名等の登録をした事実は認められるものの,平成30年3月31日をもって雇止めになるという不安から,やむなく登録をしたとも考えられるところであり,このような事情があるからといって,本件雇用契約を終了させる旨の原告の意思が明らかであったとまでいうことはできない。むしろ,原告は,平成29年5月にはεに対して雇止めは困ると述べ,同年6月には福岡労働局へ相談して,被告に対して契約が更新されないことの理由書を求めた上,被告の社長に対して雇用継続を求める手紙を送付するなどの行動をとっており,これらは,原告が労働契約の終了に同意したことと相反する事情であるということができる。
そして,他に,被告の上記主張を裏付けるに足る的確な証拠はない。
(3)以上からすれば,本件雇用契約が合意によって終了したものと認めることはできず,平成25年の契約書から5年間継続して記載された平成30年3月31日以降は更新しない旨の記載は,雇止めの予告とみるべきであるから,被告は,契約期間満了日である平成30年3月31日に原告を雇止めしたものというべきである。

高知県公立大学法人事件 高知地裁(令和2年3月17日)判決

特定のプロジェクトのために雇用された職員の雇止めが無効とされ、無期雇用への転換が認められた例

労働者 システムエンジニア
使用者 高知大学
【時系列】
H25.11. 1 雇用契約締結(期間H26.3.31まで 更新する場合あり)
H26. 4. 1 契約更新(期間H28.3.31まで 更新する場合あり)
H29. 4. 1 契約更新(期間H30.3.31まで 更新しない)
H30. 3.31 雇止め
H30. 4.13 訴訟提起
H31. 3.31 までに無期雇用契約の締結申込みの意思表示なし
【判断】
1 労契法19条1号・2号該当姓
→19条1号は該当しないが、2号に該当する。
2 雇止めの相当性
→大学は財政状況の悪化及びプロジェクト終了を理由としたが、整理解雇4要素に照らし、また、無期転換回避の趣旨から、相当性なし。
3 無期転換の有無
→H31. 3.31 までに無期雇用契約の締結申込みの意思表示はないが、訴訟を提起して争い、18条1項に基づいて無期転換した旨の主張もしていることから、無期雇用労働契約締結の申込みを行ったと認める。
弁護士のコメント
労働契約法18条1項は、無期雇用契約の転換の要件として無期雇用契約の締結申込みを要件としています。しかし、この事案では、労働者側が無期転換権発生後に契約期間満了までに無期雇用契約の締結申込みをしていませんでした。ところが、裁判所は、訴訟提起して争っていたこと等から無期雇用契約の締結申込みがあったものと認めました。これはかなり労働者を救済するような解釈で公平性を失していると思います。

労働経済判例速報(7/30)2416号

ライフ・イズ・アート事件 神戸地裁(令和2年3月13日)判決

労働者派遣法40条の6の労働契約申込みみなしが否定された事例

被告との間で業務請負契約を締結した有限会社ライフ・イズ・アート(以下「ライフ社」という。)の社員(原告) らが、被告の工場の構内請負において偽装請負等の状態にあり、労働者派遣法の労働契約申込みみなし制度に基づく契約申込みがあったとみなされるとして、労働契約上の地位確認等を請求した事案である。
労働者派遣の役務の提供を受ける者が、派遣法等の規定の適用を免れるH的で(以下「偽装請負等の目的」という。)、請負等の名目で契約を締結して、必要とされる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けたこと(以下「偽装請負等の状態」という。)に該当する行為を行った場合、派遣先から派遣労働者に対し労働契約(直接雇用)の申込みがあったものとみなされる(派遣法40条の6第1項5号)。
本判決は、偽装請負等の状態にあったか否かについて、「労働者派遣事業と請負に行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号。以下「区分基準」)を参照しながら、判断を行った。
裁判所は,本件では,
・ ライフ社,から現場責任者が配置され被告が機械の保守等を除いてライフ社の個々の従業員に対し業務遂行上の指示をしていなかったこと、
・ 労働時間の管理等はライフ社が行っていたこと、
・ ライフ社がその従業員に対し服務規律に関する指示や配置を決めていたこと、
・ ライフ社内において工程内教育を行ったり、製造ラインの使用料等の支払いを行う等事業の独立性も認められること
などから、遅くとも平成29年3月頃には、偽装請負等の状態にあったとまではいえないと認定した。

有限会社スイス事件 東京地裁(令和元年10月23日)判決

能力不足等による解雇が無効とされ、在職時の割増賃金算定のベースとして、GPS移動記録に基づく労働時間が認められた例

【解雇後のバックペイ請求について】
「原告は、本件解雇から1年2か月余りが経過した平成31年2月1日、他社に、被告での賃金とほぼ同水準の賃金で再就職し、同年6月からは役職を付されたことが認められる。
これらの事情に加え、本件解雇に至る経緯等を考慮すると、原告については、他社に再就職した同年2月1日の時点で、被告における就労意思を喪失するとともに、被告との間で原告が被告を退職することについて黙示の合意が成立した」と判示した。
【労働時間の算定について】
googlemapのタイムラインが労働時間の証拠として提出された。事後的に編集可能であり完全に客観的証拠とはいえないものの,タイムラインから算定される原告の被告店舗滞在時間は概ね店員供述やシフトにほぼ整合すること、寄り道等まで記録されており被告への賃金請求のために作ったデータとは考え難いこと、被告からこれを否定する客観的証拠が出されているわけでもないことからすれば、同記録には信用性が認められ、記録された店舗滞在時間をもって労働時間を算定するとした。

判例時報 No.2444 2020年7月21日号

東京高裁(平成31年2月13日)判決〈参考原審:東京地判平30・6・14掲載〉

1 期間の定めのない雇用契約が定年により終了した場合であっても、労働者からの申込みがあれば、それに応じて有期再雇用契約を締結することが就業規則等で明定され、又は確立した慣行となっていて、かつ、その場合の契約内容が特定されている場合には、労働者において雇用契約の定年による終了後も再雇用契約により雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由があるとして、使用者が有期再雇用契約を締結しない行為が権利濫用に該当し、労働契約法19条、解雇権濫用法理の趣旨ないし信義則に照らして、雇用契約が成立するとみる余地はあるものの、本件においては、前記の慣行等があったとまでは認め難く、また、成立するとみなされる契約内容が特定できないとして、雇用契約の成立を否定した事例

2 従業員らから残業代の支払を求めるために別件訴訟を提起されたことを主要な動機として行われた再雇用契約締結の拒否、又は更新拒絶(雇止め)、及びそれと相前後する一連の働きかけは、裁判を受ける権利に対する違法な侵害行為であるというべきであるとして、会社の、前記従業員ら及び同人らが所属する労働組合に対する不法行為を認めた事例

労働判例ジャーナル 100号(2020年・7月)

国・高松労基署長(富士通)事件 高松高裁(令和2年4月9日)判決

認定基準に満たない時間外労働と過労死の業務起因性判断

サンセイ事件 横浜地裁(令和2年3月27日)判決

長時間業務と脳出血死との相当因果関係

学校法人東桜学園事件 前橋地裁太田支部(令和2年3月25日)判決

打合せ等に対する未払時間外割増賃金等支払請求

学校法人日通学園事件 千葉地裁(令和2年3月25日)判決

准教授の事務職員職への職種変更命令の可否

国立大学法人岡山大学事件 広島高裁岡山支部(令和2年3月19日)判決

元薬学部長らの停職・解雇無効地位確認等請求

高幡消防組合事件 高知地裁(令和2年3月13日)判決

未払時間外等請求とパワハラに基づく損害賠償等請求

国・法務大臣(自衛隊員急性心筋梗塞死)事件 旭川地裁(令和2年3月13日)判決

亡自衛隊員のスキー訓練中の死亡の公務起因性

東備消防組合事件 広島高裁岡山支部(令和2年3月5日)判決

119番通報に対する不適切な対応に基づく停職処分の有効性

MASATOMO事件 東京地裁(令和2年1月24日)判決

賃金引下げ無効未払賃金等支払請求

MAIN SOURCE事件 東京地裁(令和元年12月20日)判決

試用期間中の解雇の有効性

PRESTIGE事件 東京地裁(令和元年12月17日)判決

私用電話等を理由とする解雇及び賃金減額の有効性

レインズインターナショナル事件 東京地裁(令和元年12月12日)判決

固定残業手当と未払割増賃金等支払請求

ソルト・コンソーシアム事件 東京地裁(令和元年12月6日)判決

固定残業手当の合意有無と配転命令の可否

本多通信工業事件 東京地裁(令和元年12月5日)判決

不正ダウンロード等を理由とする懲戒解雇等の有効性

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