解雇理由の追加

解雇理由を裁判で追加主張できる?

  • 2021年8月8日
  • 2021年8月8日
  • 解雇
社長
当社には、問題社員AとBがおりました。Aは、職務遂行能力が著しく低く、何度注意しても改善がみられなかったため、普通解雇と致しました。Aにはその他にも勤怠不良で協調性に欠けるといったところがあったのですが、特に能力不足である点が際立っていたため、Aには、能力不足を理由とする解雇理由証明書を発行致しました。他方で、Bは、女性問題が多く、取引先の女性を酔わせてホテルに連れ込み、不適切な行為を行ったとのことで、女性より準強姦行為をされたとして取引先会社を通じてクレームが入りました。Bは合意の下でそのような経緯となったと弁解しております。当社の調査では、確かにBは取引先の女性とホテルに入ったとの目撃証言を得ましたが、他方で、Bも女性も特にひどく酔っている様子はなく、腕を組みながら仲良く歩いていたとの目撃証言も得ました。当社としては、女性の言い分が正しいのか、Bの言い分が正しいのか、判然としなかったものの、Bは過去にも女性問題が多く、同僚の女性と不倫関係を持つなど何かとトラブルの絶えない者であったことに鑑み、Bを懲戒解雇処分としました。
すると、A及びBは弁護士を立てて上記解雇が無効であるとして、地位確認等の労働審判を申し立ててきました。
当社としては、Aとの関係で、解雇理由証明書に書いていなかった勤怠不良や協調性不足の点を、裁判で解雇理由として追加主張することは可能でしょうか?また、Bとの関係で、懲戒解雇と同時に普通解雇も行っていたと主張し、併せてBの過去のトラブルも解雇理由として追加主張することは可能でしょうか?
弁護士吉村雄二郎
普通解雇を行ったAとの関係では、解雇理由を事後的に裁判の場で追加主張することは可能であると解されます。もっとも、裁判官によっては、追加主張した解雇理由は、少なくとも解雇当時会社が重視していなかったと認定され、追加した解雇理由だけで解雇を正当化することは一般的には難しいと思われます。
懲戒解雇を行ったBとの関係では、会社側が懲戒当時認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、事後的に裁判で追加主張することは出来ません。また、労働契約の債務不履行を理由とする普通解雇と企業秩序違反に対する一種の制裁罰である懲戒解雇は性質が異なるため、基本的には、懲戒解雇として言い渡した以上、それを事後的普通解雇の意思表示も含むと主張することは難しいと考えた方がよいでしょう。
普通解雇の場合、解雇の際に告げていなかった理由を、事後的に裁判で追加主張することは可能である。もっとも、後出しの感は否めず、裁判官は解雇理由として重要視してくれないと考えた方がよい。
懲戒解雇の場合、解雇当時、会社で把握していなかった事実を事後的に裁判で追加主張することはできない。
懲戒解雇を普通解雇に流用することは出来ないと考えるべき。懲戒解雇の有効性に自信がない場合は、予備的に普通解雇を併せて行った方が無難である。

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