休職・復職に関する就業規則規定例

休職・復職に関する就業規則の規程例、就業規則で規定・定めるべき事項について、労働問題専門の弁護士が分かりやすく解説します。

目次

就業規則で定めるべき休職の規定

休職とは,ある従業員について労務に従事させることが不能又は不適当な事由が生じた場合に,使用者がその従業員に対し,就労を免除すること又は禁止することをいいます。

休職に関しては、採用に際して労働条件明示義務に「休職に関する事項」(労基法15条、同法規則5条1項11号)があるだけで,労基法上,就業規則の必要的記載事項にはなっていません

つまり、法律的に定めることが義務付けられた制度ではなく、休職制度を設けるかどうかは使用者の自由です。定めないことも許されます。

定める場合も休職は会社が自由に制度設計することができます。法律的にこのような制度にしなければならないというルールはありません。

また、休職制度を定める場合は就業規則で定める必要があります(相対的必要記載事項 労基法89条10号)。

就業規則では,

  1. 休職の種類・事由
  2. 休職期間
  3. 休職中の取り扱い
  4. 復職時の取り扱い
  5. 復職しないまま休職期間満了となったときの取り扱い

などを定めます。

以下、具体的に見ていきましょう。

休職の事由・種類の規程例

規定例

第●条(休職)

1 従業員が次の各号のいずれかに該当すると会社が判断したときは、休職を命ずることがある。但し、試用期間中の者に関しては適用しない。また、休職事由が業務外の傷病(以下「私傷病」という。)を原因とする場合には、その傷病が休職期間中に治癒する可能性が高いと会社が認めるものに限る。

(1) 業務外の傷病により欠勤が、継続又は断続を問わず日常業務に支障をきたす程度に続く(欠勤開始日から休日・休暇を含む暦日で1ヶ月程度を目安とする。)と認められるとき。なお、日常業務に支障をきたすとは、従来の業務を健康時と同様に通常業務遂行することが困難であることを意味する。

(2) (1)のほか、身体及び精神の傷病に関連して労務提供が不完全である場合。

(3) 出向等により、他の会社又は団体の業務に従事するとき。

(4) その他業務上の必要性又は特別の事情があって休職させることを適当と認めたとき。

2 従業員は私傷病に関連して休職を希望する場合は、主治医作成の診断書を添付の上、所定の休職願を提出する。

3 従業員が休職する場合、会社は、従業員に対し休職事由を証明する書類を提出させることができる。また、当該書類に有効期間の定めがある場合は、有効期間満了の都度再提出させることができる。

4 休職事由が私傷病を原因とすると認められる場合、休職命令の判断の前提として、休職させる必要性の判断をするために、会社は以下の対応を従業員に命ずることが出来、従業員は協力しなければならない。
(1) 主治医作成の診断書・意見書を提出すること。診断書に記された就業禁止期間満了の都度再提出すること。
(2) 会社が前号の診断書を作成した医師に対する面談による事情聴取を求めた場合、従業員は、同意書の提出などその実現の為に協力すること。
(3) 従業員に会社の指定する医師の診察を受けさせ診断書の提出をすること。また、診断書に記された就業禁止期間満了の都度再提出すること。

5 従業員が前項の診断書の提出等に応じない場合は、会社は休職を認めない、期間を短縮する、又は、発令した休職を打ち切り、休職期間が満了したものとみなすことが出来る。

6 休職期間、起算日、休職事由等は、休職命令書により通知する。

私傷病休職の具体的な内容等については、下記をご参照ください。ここでは、処分の簡単な説明と規定例を説明します。

参考記事

傷病休職を開始する際の進め方・注意点【ひな形・書式あり】

5分で分かる!傷病・病気による休職の進め方

休職は会社が命令すること(1項本文、7項)

休職はあくまでも会社が「恩恵的措置」「福利措置」として行う制度であり、労働者の権利ではなりません。

ただし、休職に関しては、「労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする」(厚労省のモデル就業規則)という定めをする場合があり、この規定だと、休業事由に該当する場合は当然に休職できると誤解されるおそれがあります。

そこで、休職はあくまでも会社の「命令」によって発生すること、そして、命ずるか否かは会社に決定権限があることを明らかにする必要があります。

そのため、「従業員が次の各号のいずれかに該当すると会社が判断したときは休職を命ずることがある」という規定にしています。

また、休職命令書を従業員に交付・送付します(7項)。

私傷病休職は休職期間内に治癒する可能性が高い場合に限定する(1項ただし書き)

私傷病休職は、解雇を猶予して傷病からの回復を待つ制度です。休職期間中に治癒して復職する可能性がない(低い)場合には認める必要性はありません。

そこで、私傷病休職は、休職期間内に治癒する可能性が高い場合に限定して認める旨の定めを置きます。

弁護士吉村雄二郎
ただ、実際にはこの規定を使う場面は少ないと思われます。というのも、傷病休職を適用しない場合は解雇を検討することになりますが、解雇はリスクが格段に高まるからです。休職期間満了までに治癒する可能性が低くとも、休職を適用し、治癒しない場合は退職処理をして解雇を回避した方がよい場合が多いのが実際です。

私傷病の休職事由(1項1号)

私傷病の場合の休職事由

私傷病の休職事由(原因)を明確に定義します。本質的には、私傷病によって労働契約上の労務の提供ができない又は不完全にしかできないことが休職の要件となります。

そこで、「業務外の傷病により欠勤が、継続又は断続を問わず日常業務に支障をきたす程度に続く(概ね欠勤日から休日・休暇を含む暦日で30日程度を目安とする。)と認められるとき。」を休職事由と設定します。

また、労務提供の不能又は不完全であることが要件ですので、それを「日常業務に支障をきたすとは、従来の業務を健康時と同様に通常業務遂行することが困難であることを意味する。」と定義しています。なお、後述の復職の要件である「治癒」の定義とも共通しています。

一定期間の欠勤はマストとしない

一般的には「業務外の傷病による欠勤が6か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき」というように、私傷病による一定期間(1ヶ月~6ヶ月程度)の連続欠勤を要件とする例が多くあります。

しかし、誰から見ても当分の間欠勤が必要な大けがをした場合や医師の診断書等に基づいて休養させなければならないことが明らかな場合もありますので、一定期間の連続欠勤をマストの要件とすることは、柔軟な対応を阻害します。そこで、一定期間をマストの要件とはしない方がよいでしょう。

もっとも、全く基準がないと、判断の合理性が疑われる場合があるので、おおよその目安となる欠勤期間は記載します。休日を含む暦日としたのは、この日数を「営業日ベース」であると誤解して休職を拒否する労働者がいるからです。

また、特にメンタルヘルス不調者のように出勤と欠勤を交互に繰り返す「まだら出勤」をする者もいますので「連続」とするだけでなく「断続」して欠勤している場合も要件とします。

私傷病による不完全な労務提供(1項2号)

欠勤を前提としない不完全な労務提供しかできない場合を包括的に休職事由と定義します。

特にメンタルヘルス不調者の場合、連続して欠勤となる場合もあれば, 1日出勤して3日休むといったような断続欠勤を繰り返す者がいます。

また、外形では通常出勤するものの実際はほとんど仕事ができない状態になる場合も実務上多々見られます。

このような場合、欠勤を前提とする1号の規定だけではカバーできない場合があります。

そこで、不完全労務提供を休職事由と定義します。

出向(1項3号)

出向の場合、出向元における労務不提供については,休職として処理する取扱いが一般的です。そこで, 本条1項3号では出向による労務不提供を休職事由とするための規定を定めています。

包括規定(1項4号)

上記以外の事由であっても会社の判断で休職を命じることができるように.包括的な休職事由を定めます。

私傷病休職について休職願を提出することを求める(2項)

休職命令の前提として、私傷病休職を求める労働者より休職願及び診断書を提出する手続を定めます。

最終的には会社が命令という形で休職を開始しますが、従業員の中には「会社が一方的に休職を命じたのは納得いかない」などと主張する者もいます(休職は無給なので、収入が減ることを嫌ってこのような主張を行うと思われます。)。

そこで、このような批判を回避するために、休職命令は従業員側からの申出によって行ったことを手続の中に組み込むことが適当です。

診断書提出・産業医受診の命令の根拠(4項)

休職命令は、医学的な根拠・情報に基づいて行われる必要があります。

通常は休職する従業員が任意に診断書を提出しますが、中には診断書等を提出せずに欠勤を続ける者もいます。

その場合、休職命令の前提として、会社が医学的な根拠・情報にアクセスできずに、対応ができない事態になることもあります。

そこで、医学的な情報にアクセスするための会社側の権限を定めます。

診断書等を提出しない場合は休職は認めない(5項)

従業員が診断書の提出等に協力しない場合は、恩恵的措置である休職を認める必要はありません。その場合は、休職事由はない = 無断欠勤となることを明記します。この状態が続いた場合は、病気で欠勤したことを理由に解雇するのではなく、無断欠勤が続いたことを理由に解雇をすることを検討します。

起訴休職は規定しない

休職事由として「刑事事件で起訴されたとき」など起訴された事実を休職事由とする例があります。

従業員が刑事事件で身柄拘束された場合、労務提供はできなくなります。その場合に休職させて、一定期間又は判決確定まで解雇を猶予する役割を果たすのが起訴休職です。

しかし、起訴休職は定めるべきではありません。

そもそも起訴されて労務提供が出来ないのは、会社には全く責任がなく、労働者側の事情であると言えます。にもかかわらず、起訴休職の定めをすると、それを理由に有罪判決が出されるまでは解雇をすることができなくなり、会社側の選択肢が制限されるからです。

もっとも、会社側で、起訴されている間を休職とすることは可能です。こういうイレギュラーな事案で解雇を猶予する場合に包括的な休職事由(1項4号)を適用します。

その他の休職事由

そのほかにも、以下のような休職事由を定める場合があります。

しかし、基本的には、いずれも敢えて規定する必要はありません。包括的な休職事由(1項4号)を適用すれば足りるからです。

私事休職

私傷病以外の自己都合による場合で, 本人からの申請にもとづき許可制とするものとそうでないものがあります。

たとえば「私事により,本人からの申請にもとづき会社が許可したとき」「私事により欠勤が連続して1カ月以上に達したとき」に休職とするような規定例があります。

しかし、私事休職は規定するべきではありません。私事による労務提供が出来ない場合に、解雇を猶予する必要はありません。余程の事情で認める場合は、包括的な休職事由(1項4号)を適用すれば足ります。わざわざ私事による休職制度を設定する必要はありません。

公職就任休職

労働者が議員等の公職に就任し,会社業務に支障をきたす場合の休職です。これも包括的な休職事由(1項4号)を適用すれば足りますので、規定する必要はありません。

留学休職

社内留学制度により留学する場合ですが、規定の必要ないことは上記同様です。

待命休職

使用者の経営上の都合による休職です。これは使用者による労務の受領拒否ともいえるので休業手当(労基法26条)あるいは賃金支払い義務が発生する(民法536条2項)のが原則であるから,特に休職制度として設ける必要はありません。

組合専従休職

労働組合との労働協約等にもとづき組合員がもっぱら組合業務を行なう場合の休職です。労働協約で定めればたりますので、敢えて規定する必要貼りません。

休職期間

規程例

第●条(休職期間)

1 前条の休職期間は、休職事由を考慮の上、次の期間(暦日)を限度として会社が定める(書面により会社が休職期間の始期として指定した日を起算日とする。)。ただし、第●条に定める退職事由の規定が優先し、休職期間中に退職事由が生じたときは、その日をもって休職期間が満了したものとみなす。

(1) 前条第1号及び第2号の事由によるもの

勤続年数 休職期間
1年未満 30日
1年以上3年未満 90日
3年以上 180日

なお、休職期間の途中に他の傷病が発生しても起算日は変更せずに先行する傷病の休職起算日による。

(2) 前条第3号及び第4号の事由によるもの

会社が必要と認める期間

2 私傷病を理由に休職した従業員が、復職後1年(暦日)以内に同一又は類似の事由により欠勤ないし完全な労務提供ができない状況に至ったときは、復職を取り消し直ちに休職させる。この場合の休職期間は、復職前の休職期間の残存期間とする。なお、残存期間が30日未満のときは、休職期間を30日とする。但し、病気を理由とする普通解雇規定の適用を排除するものではない。

3 私傷病を理由とした休職は、前項の場合を除き、同一又は類似の傷病について1回限りとする。 

休職期間(1項)

休職期間の設定

休職期間の設定は会社側にて自由に設定可能です。ただし、休職期間中に治癒せずに復職できない場合は当然退職という効果が生ずることを考えますと、あまりに短い期間を設定することは避けた方がよいでしょう。

規程例の期間は、中小企業の中でも規模の小さい企業を想定しています。

休職期間は、勤続年数にかかわらず一律に定めてもよいですし、規定例のように勤続年数に応じて設定してもよいです。

休職期間の参考データ(労政時報17.9.22第3937号「私傷病欠勤・休職制度の最新実態」)

勤続1年
1位 6ヶ月(27.7%)
2位 6ヶ月未満(21.8%)
3位 12ヶ月(17.7%)
勤続5年
1位 18ヶ月(23.6%)
2位 12ヶ月(19.5%)
3位 6ヶ月(15.5%)
勤続10年
1位 24ヶ月(21.8%)
2位 18ヶ月(19.5%)
3位 12ヶ月(14.1%)
勤続20年
1位 24ヶ月(21.8%)
2位 18ヶ月(18.2%)
3位 12ヶ月(13.2%)

※ このデータは大企業も含めたデータになりますので、中小企業はこの水準より短い期間も許容されると考えます。

勤続1年未満の社員については、休職期間を認めない例もあります。しかし、そうだとすると本人が自主的に退職しない限り解雇をしなければならなくなりリスクが高まります。そこで、勤続1年未満であっても1ヶ月程度の短期間をもって休職期間を適用することも一案です。

ただし、試用期間中の社員については休職制度の適用はせずに、本採用拒否で対応するべきです。試用期間中の社員は前条文で対象除外としています。

病気が再発した場合の再度の休職等(2項)

従業員によっては、休職期間満了間近にかかりつけの医師の診断書を提出して復職したが、1~2か月後に再び病気欠勤となり、再度休職となるケースがあります。復職によりリセットされ、再度の休職が可能になる場合があるのです。

そこで、傷病休職から復職後、短期間で同一又は類似の傷病で欠勤をするような場合には、

  • 直ちに復職を取消し休職を命ずる権限
  • 再休職した場合の休職期間は前休職期間と通算(残存期間) or 最小休職期間の適用

を規定し、休職が繰り返されることを防ぎます。

傷病休職の回数制限(3項)

メンタルヘルス不調の場合、診断書によっても治る(寛解)時期がわからないことが多く,また復職後の再発.増悪により再度,長期欠勤する例も少なくありません。そこで,休職が繰り返されることを予防するための合理的な取り扱いとして,次のパターンで規定することが考えられます。

パターン1

  • 休職後の再発の場合の通算規定
  • 同一又は類似傷病につき休職の適用は1回と定める(例外は休職後の再発の場合のみ)

→ 上記規定例2項及び3項のとおりです。

パターン2

  • 回数ではなく、休職から復職後の相当期間(2年~5年)内での同一又は類似傷病による再発の場合の通算規定のみ定める

→ 再発期間を比較的長期(2年~5年)とすることで、回数制限をせずとも休職が繰り返されることを予防します。

【パターン2の規定例】
2 私傷病を理由に休職した従業員が、復職後5年(暦日)以内に同一又は類似の事由により欠勤ないし完全な労務提供ができない状況に至ったときは、休職を命ずる。この場合の休職期間は、復職前の休職期間の残存期間とする。なお、残存期間が30日未満のときは、休職期間を30日(暦日)とする。但し、病気を理由とする普通解雇規定の適用を排除するものではない。

休職期間中の取扱い

規定例

第●条(休職期間中の取扱い)

1 休職期間は、出向など会社の業務の都合による場合を除き、勤続期間に通算しない。ただし、年次有給休暇の付与に関する勤続期間については通算する。

2 休職期間中の健康保険料(介護保険料を含む)、厚生年金保険料、住民税等、本来従業員の賃金から控除されるものは、従業員は会社の指示に従って指定期限までに会社に支払わなければならない。

3 会社都合で休職する場合を除き、休職期間中の給与は無給とする。

4 私傷病休職の場合、従業員は当該傷病の治療に専念しなくてはならない。会社の規則・命令を遵守し、治療目的から逸脱する行動及び会社の信用を失墜させるような行為をしてはならない。また、病気療養中であることと矛盾する状況をSNSで公表するなど他の従業員に誤解を与える言動は慎まなければならない。

5 従業員は、私傷病による休職期間中、原則として1ヶ月に1回以上、会社が指定する書式により、療養経過や生活状況の報告書及び主治医の診断書の提出をしなければならない。ただし、会社が省略を認めた場合はこの限りではない。

6 会社は、私傷病による休職期間中、必要があると認める場合、会社担当者との面談及び会社指定医師の受診を命ずることができ、従業員はこれに応じなければならない。

7 主治医、家族その他社外の者からの情報収集又は情報提供は、復職の可否、復職後の職務・職種や勤務場所を決定することを目的に行い、原則として本人の同意を得て行うものとし、同意のあった目的以外に使用しない。

8 従業員が正当な理由なく本項の定めを遵守しない場合、または、休職事由が消滅したと認められる場合は、休職期間中であっても、会社は休職を取り消すことができる。

休職期間の勤続年数への参入・不算入(1項)

休職期間を勤続年数に算入するかしないかは,原則として使用者の判断で決められます。

そこで、原則不算入のルールを明確にします。年次有給休暇の付与日数算定のための勤続年数は,在籍期間を基準に考えますので,休職期間も勤続年数に算入することになります。

また, 出向休職の場合は,勤続年数に算入する取扱いの方が一般的ですので,勤続年数に算入することを明確にします。

年次有給休暇の出勤率算定との関係で、休職期間を「労働日」に含めるか否かは、就業規則で設定可能です(労働時間管理P584、就業規則P447)。

休職期間中の社会保険料等の負担(2項)

休職期間中は無給となりますが、社会保険料、厚生年金保険料などの毎月の賃金より控除していたものが控除できず、別途労働者から支払いを受ける必要があります。その点を明確にします。

休職期間中は無給であること(3項)

休職期間中は、出向など会社都合で休職する場合を除き、ノーワークノーペイの原則により無給であることが原則です。そのことを明らかにします。

なお,(ゆとりのある大企業など)有給の定めをすることも可能ですが、実務的にはお勧めしません。

休職期間中の療養専念義務(4項)

私傷病休職は,労務提供を免除又は拒否し,休職期間中に私傷病を治癒させることによって復職後の労務提供を可能にするための期間です。そのため,傷病により休職した従業員は, 当然休職期間中は療養に専念しなければなりませんので、その旨明記します。

傷病休職中に遊びに出かけるなど私生活上の様子をSNSに記載する従業員がいます。業務時間外の私的なSNSは会社の規律は及ばず自由です。しかし、特に休職期間中に休職者の業務をカバーしている同僚などが当該SNSを見た際、「休職者の業務のカバーのために職場はこんなに大変なのに、病気とは思わないくらいに楽しそうに出かけていて、納得いかない」という感情を持つ場合が現実的にはあります。このような感情から休職者が復職することを望まないという反応を示す場合があります。そこで、そのような現場の同僚にも配慮してSNSを投稿することを就業規則にも規定します。

休職期間中の療養経過の報告等(5項~7項)

復職の可否は、休職期間満了時の病状により判断しますが、休職期間中においても復職の見込みを把握する必要があります。復職の見込みがない場合は、期間満了時に退職となりますので、人員の補充などを事前に進める必要があるからです。

そこで、休職期間中の療養経過や診断書を提出すること、会社担当者が主治医と面談することへの協力などを、規定します。

なお、本人から取得する医療情報などは個人情報に該当するため、今人情報保護法17条・18条に基づき利用目的等を明確にします。

休職の取消し権限(8項)

私傷病休職は,使用者による恩恵的・福利的措置として、私傷病を治癒して復職する機会を与える制度であり、その制度趣旨にそぐわない状況が発覚した場合には、使用者の裁量で休職を取り消す権限を定めます。

復職時の取り扱い

規定例

第A条(復職一般)

1 従業員の休職事由が消滅したと会社が認めた場合は、原則として、休職前の職務への復職を命ずる。ただし、本人の健康状態、業務上の都合等を考慮し、旧職務への復帰が困難又は不適当と会社が認める場合、もしくは、会社の業務上の必要性がある場合は、旧職務とは異なる勤務場所・職務・職種へ転換することができる(労働契約上、勤務場所・職務・職種が限定されている場合を除く。)。その変更に応じて、賃金規程に定める基本給、手当等も変動する。

2 休職中の従業員が復職を希望する場合には、復職願の提出その他所定の手続により会社に申し出なければならない。ただし、出向等会社の業務上の都合による休職の場合はこの限りではない。

3 休職期間が満了したにもかかわらず、休職事由が消滅せず、あるいは復職をしなかったときには、休職期間満了日をもって自然退職とする。

第B条(私傷病休職の場合の復職)1 前条にかかわらず、私傷病を理由とした休職の場合は本条の規定を優先して適用する。

2 従業員は復職を希望する場合は、遅くとも休職期間満了日の1ヶ月前または会社が指定した期限までに、復職願及び本条4項(1)の診断書等を会社に提出しなければならない。

3 私傷病休職における「休職事由が消滅したと会社が認めた場合」とは、休職期間満了時において、次の各号のいずれにも該当し、傷病等が治癒したと会社が判断した場合を意味する。

治癒とは、休職前に行っていた従来の業務を健康時と同様に通常業務遂行できる程度に回復することをいう。

(1)会社が設定している勤務日に始業・終業時刻を守って所定労働時間(通常8時間)の就労が継続して可能であること。
(2)独力で安全に通勤ができること(配偶者等が車で送り迎えすることで代替は可能)
(3)通常の業務遂行にあたって必要となる機器(OA機器等)を支障なく操作できること
(4)投薬の影響等による昼間の眠気がないこと。
(5)業務遂行に必要な最低限度の注意力及び集中力が回復していること。
(6)他の従業員と円滑にコミュニケーションをとって協調して仕事ができること
(7)時間外労働ができること(月20時間程度)
(8)国内出張ができること

4 従業員は前項の会社の復職判断のために、次の各号の対応をしなければならない。

(1) 治癒したことを証明する、主治医の診断書・治癒に関する意見書、生活状況の報告書など、会社が指定する客観的な資料を提出しなければならない。

(2) 会社が診断書を作成した主治医に対する面談による事情聴取を求めた場合,従業員は,その実現に協力しなければならない。

(3) 前号の診断言が提出された場合でも,会社担当者との面談や会社は会社の指定する医師への受診を命ずることがあり、従業員はこれを正当な理由なく拒否してはならない。

(4) 従業員が前2号の対応に応じない場合は、第1号の主治医の診断書を判断材料として採用しない。また、主治医の意見と会社が指定する医師の意見が異なるときは、会社が指定する医師の意見を優先する。

復職の可否の決定権限は会社にあることを明記(A条1項本文)

休職者の病状から本来復職の条件(治癒)を満たさないにもかかわらず、主治医に頼み込んで実態と異なる診断書を作成させ、復職を求める労働者がいます。

しかし、復職の条件(治癒)を満たすか否かは、医師の診断書等を踏まえながらも最終的には使用者が判断できるのが原則です。

そこで、復職の可否の決定権限は会社にあることを明記します。

休職から復職時の職務・職種・勤務場所(A条1項本文ただし書き)

休職からの復職の場合、原則としては原職復帰となります。

もっとも、休職期間満了時の健康状態や現職の人員配置によっては、必ずしも原職復帰が適当または可能とは限りません。

そこで、本人の健康状態、業務上の都合等を考慮し、旧職務への復帰が困難又は不適当と会社が認める場合、もしくは、会社の業務上の必要性がある場合は、旧職務とは異なる勤務場所・職務・職種へ転換することができることを明記します。

ただし、労働契約上、勤務場所・職務・職種が限定されている場合は、本人の同意なくして変更はできませんので、除外します。

勤務場所・職務・職種の変更に応じて、賃金規程に定める基本給、手当等も変動する場合もありますので、その旨も明記します。

復職時の手続について(A条2項)

復職時の手続は、休職事由に応じて定めます。

ポイントとしては、復職願の提出など休職者から復職の申出を条件とすることです。

私傷病休職の場合の復職(B条)

私傷病休職の場合の復職については、復職可否の基準、可否の判断に必要な診断書の提出その他情報の収集などについて詳細に定める必要があります。そこで、一般的な復職についての定め(A条)とは分けて、傷病休職からの復職プロパーの規定(B条)を置くことが明確でよいでしょう。

なお、規定の優先関係を念のために定めます(B条1項)。

休職願の提出(B条2項)

復職を希望する場合は、休職者にて休職願及び医師の診断書等を提出することを規定します。提出期限も定めた方が明確です。

復職(治癒)の基準(B条3項)

いかなる場合に傷病休職の休職事由が消滅したと判断するのか、その基準を明確にしておきます。

傷病休職から復職の条件は「治癒」ですので、それを「休職前に行っていた従来の業務を健康時と同様に通常業務遂行できる程度に回復すること」と明確に定義します。

あわせて治癒の判断要素も具体的に列挙します。これら全てを満たす場合に復職可の判断をします。

ただし、(7)時間外労働、(8)国内出張については、医師の診断書の診断書等を踏まえて、復職後2~3ヶ月程度は猶予する場合もあります。

医師の診断書等の情報提供を義務付ける(B条4項)

「治癒」をしたか否かの判断は最終的には会社が決定する権限がありあす。もっとも、その判断は自由裁量ではなく、医学的専門的知見に基づく合理的なものではなりません。

ただし、「治癒」の証明責任は、休職という解雇猶予措置の恩恵を受けている労働者側にあります。

そこで、診断書の提出義務、産業医への受診命令権限、主治医への意見聴取権限及びそれに協力する義務などを明確に定めます。

復職しないまま休職期間満了となったときの取り扱い

規定例

【自動退職とする例】
休職期間が満了したにもかかわらず、休職事由が消滅せず、あるいは復職をしなかったときには、休職期間満了日をもって自然退職とする。
【解雇とする例】
休職期間が満了したにもかかわらず、休職事由が消滅せず、あるいは復職をしなかったときには、休職期間満了日をもって解雇とする。

自動退職又は解雇

復職しないまま休職期間淌了となったときの取り扱いについては、特に私傷病休職の場合に問題となります。

方法としては、休職期間満了により普通解雇とする扱いと自動退職とする扱いがあります。

もっとも、解雇とすると解雇予告手続き(労基法20条)などの規制がありますし、自然退職とされるよりは解雇とされることの方が労働者が感情的になりトラブルに発展する可能性が高まる傾向にあるため、自動退職とすることがよいでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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