労働判例INDEX(2021年11月)

2021年11月に公刊された判例雑誌(労判、判タ、労経速、判時、労判ジャーナル)から労働裁判例の目次を整理しました。

労働判例 2021年11月1日号 No.1249

学校法人梅光学院(給与減額等)事件 山口地裁下関支部(令和3年2月2日)判決

給与規程・退職金規程変更の労契法10条違反該当性(変更は無効,請求認容)

国・大阪中央労基署長(リーヴスホーム)事件 大阪地裁(令和3年3月15日)判決日)判決

営業職のうつ病発病の業務起因性(業務起因性あり)

独立行政法人日本スポーツ振興センター事件 東京地裁(令和3年1月21日)判決

地域手当・住居手当支給における旧労契法20条違反該当性等(旧労契法20条違反該当性なし,請求棄却)

ELCジャパン事件 東京地裁(令和2年12月18日)判決

退職勧奨拒否後の人事評価・降格の有効性等(人事権濫用なし,請求棄却)

共立メンテナンス事件 中労委(令和3年4月7日)命令

組合が3回にわたって行った団交申入れについて,会社が,組合は労組法2条および5条の要件を満たしていないとして団交に応じないことを不当労働行為とした初審命令が維持された例

くれよん事件 中労委(令和3年3月3日)命令

組合に加入した新入社員を従業員名簿に記載して組合に交付する取扱いを停止した会社の対応を不当労働行為とした初審命令が維持された例

会社の総務部長らが組合脱退勧奨を行い,申立外C1組合の結成を行ったことを不当労働行為とした初審命令が維持された例

全日本海員組合(再雇用後雇用継続拒否)事件 東京都労委(令和元年12月17日)命令

定年退職後再雇用契約が満了した組合員A1及びA2の雇用契約を継続しなかった使用者の対応が不当労働行為とされた例

労働判例 2021年11月15日号 No.1250

A大学ハラスメント防止委員会委員長ら事件 札幌地裁(令和3年8月19日)判決

ハラスメント防止委員会決定の名誉感情侵害該当性等(請求棄却)

学校法人河合塾(雇止め)事件 東京地裁(令和3年8月5日)判決

予備校講師に対する雇止めの適法性(雇止めは適法

医療法人社団弘恵会(配転)事件 札幌地裁(令和3年7月16日)判決

介護老人保健施設における配転命令の有効性等(配転命令は無効,賃金及び慰謝料等請求を認容)

PwCあらた有限責任監査法人事件 東京高裁(令和3年7月14日)判決

諭旨免職ならびに降格を経て行われた普通解雇の有効性等(解雇は有効)

アートコーポレーションほか事件 東京高裁(令和3年3月24日)判決

未払残業代請求ならびに引越事故責任賠償金等の不当利得返還請求等(請求一部認容)

労働経済判例速報(11/10)2460号

オハラ樹脂工業事件 名古屋地裁(令和3年7月5日)決定

会社敷地内に労働組合が設置した横断幕及びのぼり旗の撤去の保全申立てが認められた例

社会福祉法人佐賀春光園事件 福岡高裁(令和3年5月27日)判決

労働組合の執行委員長に対する雇止めが不当労働行為に該当し無効とされ,同人及び労働組合への不法行為にも該当するとされた例

日東電工事件 大阪高裁(令和3年7月30日)判決

休職期間満了後の退職扱いが有効とされた例

労働経済判例速報(11/20)2461号

PwCあらた有限責任監査法人事件 東京高裁(令和3年7月14日)判決

原審判断を変更し,ストーカー行為による諭旨免職処分,同行為及び能力不足等による普通解雇が有効とされた例

ストーカー行為をしたことを理由とする諭旨解雇が有効とされた例
①Xが平成29年9月頃から約3か月間,職場で被害女性に視線を送り,被害女性の近くの座席を使用し,被害女性が退社して駅に向かうとその後を付け,あるいは駅で待ち伏せをしたり,被害女性が利用する乗換駅で被害女性を探したりしていたこと,②Xの行為を契機として,Y法人は警察への対応に追われ,また,Y法人自身もXに事情聴取を行う必要に迫られたこと,③本件ストーカー行為によって,被害女性は転職や転居を検討する等の相当に強い不安感・恐怖感を抱くようになったこと,④二審において,Xが本件ストーカー行為の存在を否定し,被害女性を攻撃する態度をみせる等,反省態度にも問題があることを指摘したうえで,本件ストーカー行為はY法人の就業規則上の諭旨免職事由に該当するうえ「その内容も相当程度に悪質であって看過できないものであった」として,本件諭旨免職処分は有効であると判断した

ハマキョウレックス(無期転換)事件 大阪高裁(令和3年7月9日)判決

無期契約転換後の労働者に,正社員の就業規則の適用を認めなかった原審判断が維持された例

Y市教育委員会事件 秋田地裁(令和3年7月9日)判決

保護者女性へセクシュアル・ハラスメントに準ずる行為をした教員への懲戒免職処分が有効とされた例

「〔1〕原告は、本件高校の前期選抜における本件生徒の合否の判定に深く関与することができる地位にあり、保護者女性もそのことを認識していたこと、〔2〕原告は、本件生徒の入試、部活について話したいという理由で保護者女性を食事に誘ったこと、〔3〕保護者女性は、二人だけの食事になることを避けようとして友人を同伴させることを提案したが、原告が「話しにくい話題もある」としてこれを受け容れなかったこと、〔4〕食事後、保護者女性は、原告から送って行くと言われ、一度は断わったが、原告から更に送って行くと言われてこれを受け容れたものの、原告が車の鍵を探して店内に戻った間に、友人にLINEメッセージを送り、職場からの電話を装って自分の携帯電話に電話をかけてほしいと頼んでいること、〔5〕保護者女性が予めボイスレコーダーを準備し、実際にこれを起動させていること、〔6〕それまで、原告と保護者女性との間に一対一の私的交際はなかったところ、保護者女性は、車内で原告から交際を申し込まれたが、即座に断っていることが認められる。
上記〔1〕ないし〔6〕の事実を総合すると、本件生徒の前期選抜の合否に深く関与するという優越的立場にある原告が、消極的な姿勢を示している保護者女性を二人きりの食事に応じさせたのみならず、更に、消極的姿勢を示している保護者女性を自車に乗るよう促し、車内において保護者女性の意に添わないキス行為に及び、更に不倫交際を申し込んだということができる。」
「原告の本件各行為の態様は相応に悪質で、その動機に特段酌むべき事情はなく、結果も重大で本件各行為が公務内外に及ぼす影響も軽視できないものであるから、原告がレスリング部監督として高い指導実績を上げていたこと、原告には懲戒処分歴がないことなど、原告に有利な事情を勘案しても、免職処分を選択した被告市教委の判断は、その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとはいえない。」
秋田市教育委員会は19日、自分が勤める高校を受験する予定だった中学3年の生徒の母親にキスしたり、交際を求めたりするなどわいせつ行為をしたとして、市立秋田商業高の教諭を懲戒免職処分にした。レスリング協会関係者への取材で、アテネ五輪のレスリングに出場した●●●●教諭(46)であることが、分かった。生徒はショックを受け、受験を辞退した。●●教諭は同校の体育教諭をしながら、2004年アテネ五輪の男子フリースタイル84キロ級に出場し10位だった。1996年アトランタ五輪にも出た。同校によると、レスリング部の顧問。市教委によると、横山教諭は昨年12月4日夜、受験を理由に生徒の母親を誘い、市内の飲食店で食事した後、近くの駐車場に止めた車内で抱き付きキスするなどして交際を求めた。母親は申し出を断り、同月22日に学校に相談したため発覚。生徒は同校の前期選抜試験を受ける予定だった。(産経新聞2018.1.20)

労働経済判例速報(11/30)2462号

Y社事件 広島高裁(令和2年12月25日)判決

定年後暫定的な労働条件で1年再雇用後,契約更新時に新条件の合意の不成立による雇止めを無効とした原審の判断が維持された例

京丹後市事件 京都地裁(令和3年5月27日)判決

幼稚園の園長のパワハラ行為は否定されたが,被告の調査過程に違法が認められた例

判例時報 No.2493 2021年11月1日号

大阪高裁(令和2年10月1日)判決

長時間労働等と劇症型心筋炎との間の因果関係は認められず,また治療機会喪失により劇症型心筋炎を発症したとも認められないとして業務起因性を否定し,業務起因性を認めて不支給処分を取り消した原審判決を控訴審が取り消した事例

大阪地裁(令和2年2月25日)判決

有期派遣労働者と派遣元の無期労働契約社員との間における通勤手当の支給の有無に係る労働条件の相違につき,労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの)の適用があり,期間の定めがあることによる相違に当たるが,支給の趣旨・目的,職務の内容等の相違のほか,その他の事情(派遣先における均衡待遇等に係る労働者派遣法の規律や労働者による就労条件の選択可能性等の派遣就労の特殊性,原告自身が派遣就労ごとに就労条件を吟味し決定していたこと,原告に支給されていた時給額が通勤交通費を自己負担するのに不足はなかったこと等)を勘案して,同条の「不合理と認められるもの」とはいえないとした事例

東京地裁(令和2年9月28日)判決

就業規則に根拠規定がない場合であっても労働者の同意を得て試用期間を延長し得るものの就業規則の最低基準効に反する事情を認めて試用期間延長を無効とし(解雇無効),退職勧奨の違法性を一部認め,労働者の損害賠償請求等を一部認容した事例

判例時報 No.2494 2021年11月11日号

最高裁第一小法廷(令和2年10月15日)判決 ①②③事件

1 無期契約労働者に対しては夏期休暇及び冬期休暇を与える一方で有期契約労働者に対してはこれを与えないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(①事件)

2 私傷病による病気休暇として無期契約労働者に対して有給休暇を与えるものとする一方で有期契約労働者に対して無給の休暇のみを与えるものとするという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(②事件)

3 無期契約労働者に対して年末年始勤務手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(③事件)

4 無期契約労働者に対して祝日を除く1月1日から同月3日までの期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で有期契約労働者に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(③事件)

5 無期契約労働者に対して扶養手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例(③事件)

労働判例ジャーナル 116号(2021年・11月)

Zemax Japan事件 東京地裁(令和3年7月8日)判決

能力不足を理由とする解雇の適法性(解雇は有効)

リコオテクノ事件 東京地裁(令和3年7月19日)判決

労働契約成立に基づく地位確認等請求(労働契約は不成立,請求棄却)

いづみや岡本鉄工事件 大阪地裁(令和3年7月16日)判決

正社員としての退職金規程に基づく未払退職金等支払請求(請求棄却)

米八グループ事件 東京地裁(令和3年7月14日)判決

雇用契約締結に基づく地位確認等請求(労働契約は不成立,委任契約解除による損害賠償請求一部認容)

クリエーション事件 東京地裁(令和3年7月13日)判決

労働契約の成否と解雇無効地位確認等請求(労働契約が成立,解雇は無効)

ビソー工業事件 東京地裁(令和3年7月8日)判決

雇止め無効地位確認等請求(雇止めは有効)

学校法人法政大学事件 東京地裁(令和3年7月1日)判決

大学教授の定年延長を前提とする地位確認請求(請求棄却)

宇和島市事件 松山地裁(令和3年7月1日)判決

市立病院医師の更新拒絶無効地位確認等請求(地位確認請求棄却,慰謝料請求一部認容)

しまむら事件 東京地裁(令和3年6月30日)判決

同僚らの嫌がらせ等に基づく慰謝料等請求(慰謝料請求一部認容)

三誠産業事件 東京地裁(令和3年6月30日)判決

年休取得分の未払賃金等支払請求(請求認容)

京丹後市事件 京都地裁(令和3年5月27日)判決

幼稚園元教諭のパワハラ等に基づく損害賠償等請求(パワハラなしと認定,調査方法につき慰謝料請求一部認容)

岸良海産興業事件 札幌地裁(令和3年5月25日)判決

外国人技能実習生の退職無効地位確認等請求(自主退職は有効,請求棄却)

ネオユニット事件 札幌高裁(令和3年4月28日)判決

指定就労継続支援A型事業所の施設閉鎖に伴う解雇の有効性(利用者とスタッフに対する解雇は無効)

学校法人東京富士大学事件 東京高裁(令和3年4月22日)判決

監督のセクハラ行為に基づく損害賠償等請求(セクハラを認定,慰謝料請求一部認容)

レスメド事件 東京地裁(令和3年4月14日)判決

勤務成績不良等を理由とする解雇の有効性(解雇は無効)

ノミック事件 東京地裁(令和3年4月13日)判決

固定残業代の同意の有無(同意なし,未払賃金請求一部認容)

クニエ事件 東京地裁(令和3年3月26日)判決

繰り返し発出された出社命令拒否を理由とする解雇等の有効性(解雇は有効)

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