労働判例INDEX(2020年3月)

2020年3月に公刊された判例雑誌(労判、判タ、労経速、判時、労判ジャーナル)から労働裁判例の目次を整理しました。

労働判例 2020年3月1日号 No.1214

学校法人北海道カトリック学園事件(札幌地裁令元.10.30判決)

定年後再雇用者に対するパワハラを理由の雇止めの適法性等(雇止め無効)

社会福祉法人北海道社会事業協会事件(札幌地裁令元.9.17判決)

HIV感染不告知を理由の採用内定取消しの適法性と損害賠償請求(慰謝料150万円認容)

※HIV感染の事実を告げる義務は無い
※事業者が採用に当たって応募者にHIV感染の有無を確認することは原則許されない
※採用前に被告病院でHIV感染を申告した記録を原告に無断で採用に利用することは許されない

大阪市(旧交通局職員ら)事件(大阪高裁令元.9.6判決,大阪地裁平31.1.16判決)

身だしなみ基準に基づく人事考課上の低評価と損害賠償請求(一部認容)

学校法人河合塾(文書提出命令・抗告)事件(東京高裁令元.8.21決定,東京地裁令元.6.17決定)

講師評価にかかる授業アンケート結果等の文書提出命令申立て(認容)

ハンターダグラスジャパン事件(東京地裁平30.6.8判決)

配転後の転居命令および転居命令拒否による解雇の有効性等(解雇無効)

労働判例 2020年3月15日号 No.1215

ジャパンビジネスラボ事件(東京高裁令元.11.28判決)

育休復帰後の有期契約への変更合意と雇止めの適法性等(請求棄却:雇止めは適法)

学校法人追手門学院(降格等)事件(大阪地裁令元.6.12判決)

人事評価に基づく降格およびそれに伴う賃金減額の有効性(請求棄却:降格は適法)

※人事権行使としての降格について,明確な根拠規定及び基準が存在し,権利濫用は無いと判断された。
※根拠規定・基準を明確に定めることが重要
※評価の根拠となる事実についても記録・証拠を残すことが重要

京王電鉄ほか1社事件(東京地裁平30.9.20判決)

バス運転士らの継匠社員制度に基づく労働契約の成否(請求棄却)

判例タイムズ 1469号 4月号 (2020年3月25日発売)

最高裁第一小法廷令元.11.7判決

有期労働契約を締結していた労働者が労働契約上の地位の確認等を求める訴訟において,契約期間の満了により当該契約の終了の効果が発生するか否かを判断せずに請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例

東京地裁平30.5.22判決

1 退職の際の不起訴の合意の効力が及ばないとされた事例
2 退職合意に係る錯誤が否定された事例
3 退職勧奨について不法行為の成立が否定された事例

東京地裁平30.2.26判決

1 救済命令のうち工事現場で労働者が負傷した出来事における使用者の労働者に対する安全配慮義務とその責任について労働組合が申し入れた団体交渉に応ずることを使用者に命じた部分について,その発令後に上記出来事における使用者の安全配慮義務違反を否定して労働者から使用者への損害賠償請求を棄却した判決が確定した後は,上記の安全配慮義務とその責任については,使用者と労働者が所属していた労働組合の間の団体交渉によって解決することが相当な事項とはいうことができず,上記部分によって命じられた義務の履行は,救済の手段・方法としての意味を失ったとして,上記救済命令を不服として使用者がした再審査の申立てを棄却した中央労働委員会の命令のうち上記部分に関する再審査の申立てを棄却した部分に係る取消しの訴えの利益を否定した事例
2 救済命令のうち労働組合が申し入れた上記1の団体交渉に応じなかったことが労働委員会において不当労働行為であると認められたこと等を記載した文書を速やかに労働組合に手交することを使用者に命じた部分について,その発令後に上記1の判決の確定などの事情変更があったとしても,労働組合が今後に使用者から雇用された労働者をその組合員として獲得する可能性が全く存在しないということはできず,その獲得に伴い,使用者と労働組合との間の集団的労使関係が生じ,その正常な秩序の回復,確保を図ることが可能となる場合もあり得るから,上記部分の履行が救済の手段・方法としての意義を失ったとまではいうことができないとして,上記救済命令を不服として使用者がした再審査の申立てを棄却した中央労働委員会の命令のうち上記部分に関する再審査の申立てを棄却した部分に係る取消しの訴えの利益を肯定した事例
3 救済命令のうち上記2の部分について,専ら労働組合が申し入れた上記1の団体交渉に使用者が応じなかったことによって生じた労働組合の組合活動一般に対する侵害の除去,予防を目的とするものと解されるとして,労働者が事後的に労働組合の組合員たる資格を喪失したとしても,労働組合がこれを求めることに影響を及ぼすものではないとして,救済の利益を肯定した事例

労働経済判例速報(3/10)2403号

朝日建物管理事件 最高裁第一小法廷(令和元年11月7日)判決

口頭弁論終結時に有期雇用契約の契約期間が満了していた事実を勘酌しなかった原判決が破棄された例

エアースタジオ事件 東京地裁(令和元年9月4日)判決

劇団員の裏方業務の遂行について労働基準法上の労働者性が肯定された例

関電工事件 東京地裁(令和元年7月11日)判決

社宅を退去させられた労働者が、社宅を貸与するとの就業規則に基づき新たな社宅の貸与を求める権利を有しないとされた例

一般社団法人日本貨物検数協会事件 東京地裁(令和元年9月24日)判決

出勤簿に記載した出勤時刻より前に出勤して労働した旨の労働者の主張が認められなかった例

※出勤簿の実態と異なる出勤時間を記載するよう命じられたりした事実の不存在
※他に客観的証拠がないこと

労働経済判例速報(3/20・30)2404号

品川労基署長事件 東京地裁(令和元年8月19日)判決

違法行為の強要や上司の暴言等を理由とする業務災害が否定された例

三田労基署長事件 東京地裁(令和元年8月26日)判決

入社前の説明と異なる処遇に関する是正要求の拒否を理由とした労災請求が否定された例

エーザイ事件 東京地裁(令和元年9月5日)判決

希望退職制度の優遇措置の適用から除外する取扱いが適法とされた例

判例時報 No.2430 2020年3月1日号

福岡高裁(令和元年8月2日)判決

じん肺管理区分4の決定を受けていた元炭鉱労働者が,30年以上にわたって療養を続けた後,胃がんを併発した上,肺炎で死亡したことについて,業務起因性が否定された事例

労働判例ジャーナル 96号(2020年・3月)

経済産業省職員(性同一性障害)事件 東京地裁(令和元年12月12日)判決

性同一性障害者の性自認に対応するトイレの自由利用に対する制限の違法性(違法,慰謝料132万円請求認容)

日本郵便事件 徳島地裁(令和2年1月20日)判決

セクハラ等行為に基づく損害賠償等請求(セクハラ違法 慰謝料合計40万円認容)

税経コンサルティング事件 大阪地裁(令和元年12月27日)判決

最低賃金法に基づく未払賃金等支払請求(最低賃金との差額約120万円認容)

公立大学法人広島市立大学事件 広島地裁(令和元年12月25日)判決(懲戒解雇有効)

研修滞在先虚偽報告等を理由とする懲戒解雇の有効性

※大学准教授が英国の大学で研修を行わず韓国に滞在していたこと,研修の報告を求められ搭乗券等を偽造して報告したこと,旅費34万円を不正受給したこと,刑事事件(不起訴)になったこと

大阪産業技術研究所事件 大阪地裁(令和元年12月25日)判決

研究室長らを降格する就業規則の不利益変更の有効性(就業規則変更は有効)

北九州市事件 福岡高裁(令和元年12月23日)判決(請求棄却)

自殺した亡非常勤職員の慰謝料等請求

はなまる事件 大阪地裁(令和元年12月20日)判決(請求認容)

割増賃金の支払請求と管理監督者該当性

※退勤指示を無視して残業をしていたとの被告の主張は認められない。
※通勤に使用していたレンタカーのコインパーキング記録から労働時間を立証

伊東商事事件 大阪地裁(令和元年12月20日)判決

準消費貸借契約等に基づく貸金返還請求(請求認容)

一般社団法人竹田市医師会事件 大分地裁(令和元年12月19日)判決(請求認容)

病院元院長の懲戒解雇無効地位確認請求

北海道二十一世紀総合研究所事件 札幌高裁(令和元年12月19日)判決(請求棄却)

うつ病発症に関する安全配慮義務に基づく損害賠償等請求

※うつ病発症前6ヶ月の残業時間が月100時間を超えていたが,業務内容の過重性がないとして安全配慮義務違反がないと判断した。

ダイナス製靴事件 大阪地裁(令和元年12月16日)判決(請求棄却)

通勤手当の不当認定等に基づく損害賠償等請求

富士化学工業事件 大阪地裁(令和元年12月12日)判決(解雇無効,請求認容)

営業先不訪問等を理由とする懲戒解雇の有効性

泉大津労基署長(末梢神経障害性疼痛等発症)事件 大阪地裁(令和元年11月27日)判決(請求棄却)

末梢神経障害性疼痛等発症の業務起因性(業務起因性なし)

京都市事件 大阪地裁(令和元年11月27日)判決

配転させず復職させたことを理由とする損害賠償等請求(請求棄却)

ノーリツ事件 神戸地裁(令和元年11月27日)判決(請求認容)

PC上の私的閲覧を理由とする降格前の地位確認等請求

※約5ヶ月半のうち合計86日,1日15分から17分程度私的閲覧したこと
※注意指導はない
※降格処分は重すぎるとの判断

スーパー・コート事件 大阪地裁(令和元年11月26日)判決(請求棄却)

不当な配転等及び雇止めを理由とする損害賠償等請求

労働問題に関する相談受付中

営業時間:平日(月曜日~金曜日)10:00~18:00 /土日祝日は休業