会社経営者のための新型コロナウイルスに関する労務対応Q&A(休業から廃業・倒産まで)

2020年1月から始まった新型コロナウイルスの蔓延。会社としては,従業員が感染した場合に余儀なくされる感染予防策のみならず,緊急事態宣言の下で都道府県より休業要請がなされ,事業所や店舗を休業せざるを得ないなど事業に支障が生じています。感染した社員の出勤を禁じてよいのか?出勤を禁止している期間は休業手当を払う必要があるのか?休業による業績悪化により賃金削減や解雇ができるのか?などお悩みの会社・社長も多いのではないでしょうか。そこで,今回は,新型コロナウイルスに関連した会社の対応全般について分かりやすく説明したいと思います。

コロナ感染と会社の対応

コロナ感染者と休業命令の可否・休業手当の要否

社員が、新型コロナに感染したことが判明した場合、休業を命ずることはできるか?賃金や休業手当を支払う必要はあるか?
感染者であることが判明している当該社員は休業させることができる 休業期間中,賃金や休業手当(労基法26条)は共に支払は不要 ただし,社員が有給休暇を取得した場合は賃金を支払う。 被用者保険に加入している場合,傷病手当金の受給を検討する。
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1 社員が既に新型コロナに感染している場合の対応

1.1 社員が自ら就業しない場合

社員が病院や保健所のPCR検査の結果,新型コロナへの感染が判明した場合,都道府県知事より,入院や代替施設への隔離,自宅療養及び就業制限などの勧告がなされます。このような勧告を受け,社員は自ら入院等を行い出社に及ばない(欠勤)のが通常です。

社員が入院等により欠勤する期間は,私傷病による欠勤ですので雇用契約上の賃金は原則として発生しません(ノーワークノーペイの原則)。ただし,社員が有給休暇を取得する場合は賃金が発生します。それゆえ,有給休暇を取得するか否かを当該社員に確認した方がよいでしょう。また,後述のとおり休業手当(労基法26条)の支払いも不要です。

1.2 出社禁止命令(休業命令)を出せる

新型コロナに感染した社員が,行政の勧告を無視して出社しようとする場合,会社はコロナが治るまでの間,出社禁止・自宅療養(休業)を命ずることが出来ます

会社は,新型コロナに感染し不完全な健康状態の社員の労務提供を拒否することができますし,他の社員の健康・安全に配慮し,事業の継続性も維持することは正当な理由といえるからです。

1.3 休業期間中の賃金・休業手当

会社は,休業・出社禁止を命じた社員に対して,賃金はもちろん,休業手当も支払う必要はありません

当該社員が保健所や医師より新型コロナに感染し外出が禁止されている以上,「使用者の責に帰すべき事由」(労基法26条)及び「債権者の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)のいずれも認められないといえるからです。

なお,もちろん社員が有給休暇を取得する場合は有給処理となります。実際には有給を取得する場合は殆どでしょう。

なお,上記のとおり休業手当の支給が不要であっても,4日以上の欠勤など当該社員が加入する被用者保険(健康保険)の要件を満たせば、傷病手当金が支給されます。そこで,会社は,当該社員に傷病手当金について手続案内することが通常です。

2 他の社員との関係での対応

以上は感染した社員本人との関係での会社の対応ですが,感染者と同じ職場で働く社員がいわゆる濃厚接触者に該当する場合も多くあります。その場合は,保健所に設置された「帰国者・接触者相談センター」に相談の上,濃厚接触者に該当する社員に対し在宅勤務や自宅待機を命じ,場合によっては事業場の閉鎖を行う場合もあります。 濃厚接触者に対する対応は後記をご参照ください。

コロナ感染疑惑者と休業命令の可否・休業手当の要否

社員が,咳や発熱等の症状が出ており,新型コロナ感染が疑わしい場合,自宅待機を命ずることはできるか?また,休業中の賃金・休業手当の支払いの必要はあるか?
新型コロナ感染の疑いがある段階でも自宅待機を命ずることは可能。 自宅待機期間中,賃金又は休業手当を支払う必要がある
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新型コロナ感染の疑いがある社員への対応

社員が,新型コロナに感染したことが医師の診断等によって確定していないが,当該社員が訴えている症状(高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感等)から感染の疑いがある場合,以下のような対応となります。

1.1 医師への受診及び結果の報告を命ずる

⑴ 医師への受診の勧奨

まずは,新型コロナ感染の疑いのある社員について,医師の診療を受けるよう勧奨します。感染したか否かは医師の診断によらざるを得ないからです。

まずは,命令ではなく,社員の自主性に任せて,医師への受診を勧めるという点がポイントです。また,医師への受診した結果も任意に報告するよう求めるようにしましょう。

⑵ 医師の受診及び結果報告命令

しかし,会社の勧めに応じず,社員が医師の診察を受けない場合は,会社は新型コロナの疑いのある社員に対して,医師への受診を命ずることは可能です。

ただし,その為には就業規則上の根拠が必要です。会社が社員の健康状態を把握する為に必要と認める場合に(会社指定の)医師への受診命令及び結果報告義務について,就業規則で定めておくことが必要になります。

就業規則の規程例
会社は,定期健康診断以外にも,従業員に対し,健康診断の受診ないし会社の指定する医師への受診及びその結果を報告することを命ずることができる。

医師の受診の結果,新型コロナに感染したことが確認された場合は,上記「社員が既に新型コロナに感染している場合の対応」のとおりです。

2.2 出社せず休養するよう勧奨する

新型コロナの疑いのある社員が会社に出社すると,万が一新型コロナに感染している場合,他の社員へ新型コロナの感染が拡がる可能性が非常に高くなります。そこで,まずは,感染した疑いのある社員に対し,出社しないで自主的に休む(病欠・有給休暇の消化)よう勧奨します

これは,会社からの「命令」ではなく,あくまでも社員が自主的に休むことを促す点がポイントです。

社員がこれに応じて欠勤する期間は,私傷病による欠勤ですので賃金は原則として発生しません(ノーワークノーペイの原則)。また,社員が自主的に休む場合は,有給休暇を取得する場合が殆どです。なお,休業ではないので休業手当の支払いは不要です。

2.3 自宅待機命令を出す

新型コロナに感染した疑いのある社員の中には「単なる風邪であって新型コロナではない」「仕事を中断したくないので休みたくない」などと言って出社しようとする者もいます。

このように自主的に休みをとらない社員に対して,会社は,新型コロナの疑いが無くなるまでの間,自宅待機を命令することが出来ます

会社は,新型コロナに感染した疑いがあるに過ぎない場合であっても,高熱等の症状のある不完全な健康状態の社員の労務提供を拒否することができるからです。また,この場合,他の社員の健康・安全に配慮するという観点もあります。そこで,会社は新型コロナの疑いが無くなるまで,または,病状が治るまでの期間,自宅待機を命ずることが出来ます。

2.4 自宅待機期間中,賃金・休業手当を支払う必要があるか?

自宅待機期間中,感染の疑いがあるに過ぎない段階では,会社は出社禁止を命じた社員に対して,休業手当を支払う必要があります

当該社員が新型コロナに感染した疑いがあるだけの段階において,会社の判断で出社を禁ずることは,いわば会社都合による出勤禁止となります。この場合は「使用者の責に帰すべき事由」(労基法26条)による休業と認められるといえるからです。

また、「債権者の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)により休業させると認められるため,基本的には賃金全額を支払う必要があります。ただし、就業規則等により民法536条2項の適用が排除されている場合は支払う必要はありません。

なお,社員が任意に有給休暇を取得する場合は有給処理となりますが,無理に有給休暇を取得させることは出来ません

コロナ濃厚接触者と休業命令の可否・休業手当の要否

社員がいわゆる濃厚接触者である場合,自宅待機を命ずることはできるか?自宅待機期間中,賃金又は休業手当を支払う必要があるか?
従業員が濃厚接触者である場合,自宅待機を命ずることができる。 自宅待機期間中,賃金又は休業手当を支払う必要がある。ただし,「帰国者・接触者相談センター」に相談の結果,職務の継続が出来ないと判断される場合は,賃金及び休業手当を支払う必要はない。
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1 基本的な考え方

濃厚接触者も前記「感染の疑いがある場合」と同じの対応をすることになります。

2 濃厚接触者とは?

「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)臨床的特徴等から新型コロナウイルス感染症が疑われ、かつ検査により新型コロナウイルス感染症と診断された者」が感染を疑う症状を呈した2日前から隔離開始までの間に接触した者のうち、次の範囲に該当するものとされています(なお、上記症状は発熱、咳、呼吸困難、全身倦怠感、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、頭痛、筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐などを指します)。 ・患者(確定例)と同居又は長時間の接触(社内、航空機内等を含む)があった者 ・適切な感染防護無しに,患者を診察、看護若しくは看護していた者 ・患者(確定例)の気道分泌若しくは退役等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者 ・手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で,必要な感染予防策なしで,「患者 (確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する) 参照:国立感染症研究所感染症疫学センター・「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2020年4月20日暫定版)」

コロナ休業者と職場復帰の判断基準

上記新型コロナに感染した者、感染の疑いがある者、又は濃厚接触者である者を、休業または自宅待機させた場合、職場への復帰の可否をどのように判断するか?
保健所「帰国者・接触者相談センター」や医師(主治医,産業医)の指示に基づいて、会社が就労可能と判断したときをもって職場復帰させる。
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1 感染した社員の職場復帰

保健所「帰国者・接触者相談センター」や医師(主治医,産業医)に相談の上,会社が就労可能と判断したときをもって職場復帰させます。詳細は厚労省のHP等を参照してください。

<退院基準の改定>
1.有症状者の場合
①発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合、退院可能(期間を短縮)
②症状軽快後24時間経過後、24時間以上間隔をあけ、2回のPCR検査で陰性を確認できれば退院可能
2.無症状病原体保有者の場合
①検体採取日から7日間経過した場合、退院可能(期間を短縮)
検体採取日から6日間経過後、24時間以上間隔をあけ、2回のPCR検査で陰性を確認できれば退院可能(新規に条件設定)
<入院者の職場復帰目安>
(1)退院基準を満たし、主治医の指示により退院していること
(2)職場復帰に際して、 1 週間程度の在宅勤務(あるいは自宅待機)を行ってから出社することが望ましい。
(3)在宅勤務での取り扱いが困難な場合は、復帰後は、毎日の健康観察、マスクの着用、他人との距離を 2m程度に保つなどの感染予防対策を行い、体調不良を認める際には出社はしない。
(4)会社が復帰する社員に、医療機関の「陰性証明書や治癒証明書」の提出を求めないこと※退院後に PCR 検査の陽性が持続する場合がありますが、 PCR 検査陽性であることが「感染性がある」ことを意味するわけではありません。
※感染性は、発症2-3日前から発生し発症直後に最大になり、7日程度で急激に感染性が低下すると言われています。

参照:退院基準・解除基準の改定 (厚生労働省)

2 感染が疑われる社員の職場復帰

職場復帰の目安は、各種薬剤の内服のない状態で、発熱・咳・喀痰・蹴り・全身倦怠感などが消失してから48時間以降が望ましい(症状消失日を0日として、3日目以降)。

参照:退院基準・解除基準の改定 (厚生労働省)

3 濃厚接触者の職場復帰

濃厚接触者については、感染者との最終接触日を0日として 7日間の外出自粛、健康観察が必要。

参照:退院基準・解除基準の改定 (厚生労働省)

コロナ感染を理由とした解雇

当社の社員が会社の業務とは関係なく高熱と咳の症状で病欠していました。その後,PCR検査で陽性の結果が出て入院していることが分かりました。当初は年休を消化していましたが,その後も欠勤が2週間以上続き,復帰の目処が立っていません。このような社員を解雇してもよいでしょうか?
私傷病休職制度がある場合は休職(通常無給)を適用する。休職期間満了までに復帰できない場合は通常は自然退職となる。休職制度がない場合は,重篤な症状で職務復帰の目処が立たないような場合は解雇も可能だが,欠勤から1ヶ月程度で職務復帰できる程度の症状では解雇は難しい。なお,医療従事者のように業務に関連して感染して休業する場合は業務災害となるので,休業期間中に解雇できない
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1 傷病による労務提供の不能(不完全履行)は解雇事由になる

従業員が傷病によって雇用契約の本旨に従った労務提供が全くできなくなった場合(履行不能)や一部しかできなくなった場合(不完全履行)は,契約上の債務が不履行となっていますので,これらは原則として普通解雇事由に該当します。 多くの会社の就業規則では,「身体の障害により業務に堪えられないとき」を普通解雇事由として定めています。

2 業務災害の場合

業務が原因で傷病が発症し,従来の業務が遂行できなくなった場合労基法19条1項本文の解雇制限の規定が適用されますので,療養のために休業する期間およびその後30日間は,原則として解雇することができません。例外的に療養開始後3年を経過して使用者が打切補償を支払った場合,または傷病補償年金が支給されている場合には,労基法19条1項の解雇制限の規定が適用されなくなるので,業務災害により休業中の労働者でも,法律上解雇は可能となります。

3 私傷病の場合

(1) 休職制度がある場合

現在多くの企業では,私傷病休職制度を導入しています。私傷病休職制度は,私傷病で欠勤ないし不完全な労務提供が2~3カ月間続いた場合に,就業規則の規定に基づいて,勤続年数に応じた一定期間の休職期間を与え,休職期間満了時に治癒していれば復職を認め,治癒していなければ労働契約を解消するというシステムです。 解雇を一定期間猶予する機能を有します。

そして,就業規則により休職制度を導入しており,かつ,休職制度の適用条件を満たす場合は,原則として所定の期間休職させて回復の機会を与えることが必要であり,休職を経ない解雇は,解雇回避措置をとらない不相当な処分として解雇権の濫用(労働契約法16条)となる可能性が高いと言えます。よって,私傷病休職制度がある場合は同制度の適用を検討する必要があります。

ただし,所定の休職期間中に治癒することが客観的に困難である場合は,休職を経ることなく解雇をすることも可能です(参考:岡田運送事件東京地裁平成14.4.24判決労働判例828号22頁)。

(2) 休職制度のない場合,または適用がない場合

この場合は解雇を検討します。本人の領域に属する傷病(私傷病)の場合は業務災害の場合とは異なり法律上の解雇制限はありません。普通解雇事由に該当します。多くの企業が,就業規則に普通解雇事由として,「身体,精神の故障で業務に耐えないとき」と履行不能を想定して規定しています。

ただし,病気により一時的に職場に堪えられない場合にも解雇できるわけではなく,解雇が有効であるためには病気によりある程度長期間にわたり労務提供ができない状態となっていることが必要です。そして,労務提供が不能か否かは,労働者の担当する職務内容につき,医学的観点も考慮して判断されます。

この点,新型コロナに感染した場合,感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、14%が重症、6%が重篤となっています。しかし、重症化した人も、約半数は回復しています(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の見解」)。

よって,新型コロナ陽性で入院していたとしても,余程重篤な場合で職務復帰も相当長期間難しいと客観的に認められる場合以外,解雇はすることは難しいでしょう。

(3) 退職勧奨による円満解決

私傷病休職制度の適用や普通解雇による対応は,いずれにしても退職という効果が問題となる為,紛争となるリスクが伴います。また,社員が私傷病により十分な労務提供を出来ない場合であっても,私傷病休職制度や普通解雇の要件との関係で,必ずしも退職を導くことが出来る訳ではありません。

そこで,実務的には,退職勧奨により社員と合意の上での退職を実現することも可能です。退職勧奨に際しては,あくまでも労働者の自由な意思による退職の合意を得ることに配慮しなければなりません。労働者が明白に拒絶しているにもかかわらず執拗に退職を求める,労働者の人格を損ねるような言動を行うという態様は厳禁です。

コロナ休業者と治癒証明書の要否

職場復帰には,新型コロナに感染していないことを証明書や治癒証明書の提出を求めることができるか?
法的には可能だが,治癒証明書の提出の意味は乏しく,医療機関に不要な負担をかけるので,提出を求めるべきではない。
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法的には,就業規則等に明記することにより,治癒証明書の提出を求めることは可能です。 しかし,新型コロナは,PCR検査でしか感染の有無は確実には判定できない上に、現在の我が国の検査体制・キャパシティからすると,希望すればPCR検査を受けられるものではありません。 加えて,治癒証明書を取るために病院に通院させることは当該社員の時間・体力を奪うことになり,再感染のリスクもあります。のみならず,病院の医師の時間をも奪い,本当に治療が必要な患者の妨げになって,病院・医師に無駄な負担をかけるという意味でも社会的損失といえます。治癒証明書の提出の意味は乏しく,医療機関に不要な負担をかけるので,提出を求めるべきではありません

コロナ休業と休業手当

休業手当が必要となる場合とは?

休業手当はどのような場合に支払う必要があるか?
労基法26条で、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合には、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
詳細はこちらの記事をご参照ください
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コロナ感染者に休業手当を支払う必要性

新型コロナに感染した社員,感染が疑われる社員,濃厚接触者に該当する社員を自宅待機させる場合,休業手当を支払う必要があるか?
感染した社員に対しては支払う必要はない 感染が確定していないが,感染が疑われる社員濃厚接触者に該当する社員を自宅待機させる場合は,休業手当を支払う必要がある
詳細はこちらの記事をご参照ください
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コロナ禍で会社・店舗休業の場合,休業手当を支払う必要あるか?

新型コロナの影響で,事業の休止を余儀なくされ,休業とした場合に休業手当を支払う必要があるのか?
不可抗力による休業の場合は休業手当を支払う必要はない。不可抗力か否かはケースバイケースで判断する。
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例えば,主要な取引先が新型コロナウイルス感染症を受け事業を休止したことにより,原材料の仕入、製品の納入等が不可能となり,再開の目処が立たず,他に行うことが可能な事業がおない場合,不可抗力といえ,休業手当の支払いは必要ありません。 しかし,取引先を代えるなどして事業継続は可能であるが,経営者の判断で休業とする場合は,不可抗力とは言えず,休業手当の支払いが必要です。緊急事態宣言を受けて休業する場合は後述します。

緊急事態宣言で会社・店舗を休業する場合,休業手当を支払う必要があるか?

新型インフルエンザ等対策特別措置法による都道府県の緊急事態宣言により、協力依頼や要請などを受けて営業を自粛し、労働者を休業させる場合、休業手当の支払いは必要か?
緊急事態宣言期間中における特措法45条2項に基づく休業の「要請」及び同3項の「指示」の対象事業に該当する場合は,不可抗力による休業といえ,休業手当の支払いは必要ない。これに対し,要請・指示の対象外となっている場合であるが,自主的に会社の判断で休業する場合は休業手当の支払いが必要である。
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1 緊急事態宣言の協力要請等について

1.1 新型インフルエンザ等緊急事態宣言とは?

新型インフルエンザ等緊急事態宣言とは、季節性インフルエンザに比べて重篤になる症例が国内で多く発生し、全国的な急速なまん延により、国民生活や国民経済に甚大な影響を及ぼす場合に、政府対策本部長(内閣総理大臣)が、①期間、②区域、③事案の概要を特定して宣言するものです。この宣言の後、都道府県知事は、より具体的な期間や区域を定め、不要不急の外出自粛や施設の使用制限の要請といった緊急事態措置を講ずることができるようになります。

ただし,新型インフルエンザ等緊急事態宣言が行われた場合、欧米におけるロックダウンのように強制的に罰則を伴って都市が封鎖される訳ではありません。都道府県知事により外出自粛要請、施設の使用制限に係る要請・指示・公表等がなされるだけであり,確かに,罰則等の強制力はありません。もっとも,段階を経て公表がなされるため,村社会の我が国では事実上の強制力(いわば社会的制裁)があるといえます。 従って,企業としては,都道府県により公表がなされる休業の要請・指示の対象となる事業を行っている場合は,その事業を休業せざるを得ないといえます。

1.2 特措法に基づく措置

特措法に基づく都道府県の措置は以下のとおりです。

① 緊急事態宣言前から可能な基づく施設の利用停止・催物開催の停止の「協力の要請」のレベル(特措法24条9項) ② 緊急事態宣言期間中における施設の使用の停止等の要請のレベル(特措法45条2項)③ 特措法45条2項の要請に対して施設管理者等が「正当な理由」なく従わなかった場合であって「まん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り」認められる「指示」のレベル(特措法45条3項)

いずれも罰則等の制裁はありませんが,レベル②以降は具体的な施設名や所在地が公表されます。公表により,対象施設はマスコミやSNSに拡散され,一般国民より有形無形の非難を受けるなど社会的制裁を受けることになります。従って,レベル②以上の段階では,事実上の強制力(社会的制裁)はあるので,休業せざるを得ないということができます。

2 休業手当の支払い義務について

前記のとおり②緊急事態宣言期間中における施設の使用の停止等の要請(特措法45条2項)がなされた場合や③指示(特措法45条3項)がなされた場合は休業せざるを得ません。この場合は「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。この場合であっても,配置転換や在宅勤務により勤務継続できるなど休業を全部又は一部回避できるのであれば,そのような対応をせずに休業させた場合,「使用者の責に帰すべき事由による休業」として休業手当を支払う必要があります。

次に,①特措法24条9項の企業に対する要請や住民に対する不要不急の外出をしない要請がなされたに過ぎない場合は,企業の判断による休業であるので,「使用者の責に帰すべき事由による休業」として休業手当を支払う必要があります

休業手当の支払義務がない場合,何も払わないでよいのか?

労基法26条の休業手当の支払い義務がない場合,従業員には一切賃金や手当を支払わなくてもよいのか?
法的には支払い義務がないとしても,従業員の生活を守るべく,雇用調整助成金等を利用して可能な範囲で支払うことが相当です。
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1 雇用維持のための施策

限定的ではありますが休業手当の支払い義務がない場合があります。その場合,法的には賃金はもちろん休業手当すらも支払う義務はありません。しかし,従業員は賃金を生活の糧としていますので,休業手当すら支払われない場合,生活が維持できずに困窮する事態となる場合もあります。新型コロナウイルスの関係の関係では生活困窮者に対する行政の対応もありますが(→詳細はこちら(厚労省HP)を参照してください。),一般的には不十分であるとされています。また,経営的観点でも,このコロナ禍が過ぎた後,信頼できる従業員が残っていなければ経営再建も困難となります。法的な義務がないとして従業員を見捨てるのでは,従業員との信頼関係も損なわれます。そこで,企業の財務余力との関係もありますが,法律上の義務はなくとも,可能な範囲で賃金・休業手当を支払うよう努力することが道義的に要請されます。

2 雇用調整助成金について

雇用調整助成金は、景気変動などによって、企業の業績に悪影響があった場合に、企業側が行った雇用調整(休業・教育訓練・出向などの措置)に対して助成金を支給することにより、従業員の雇用を維持することを支援する制度です。

今回の特例措置は、新型コロナウイルスの影響により業績が悪化したなどの理由によって、事業主が休業手当を支給して従業員を休ませた場合に、その費用の一部を政府が助成することとされています。

制度や手続の詳細は こちら (厚労省HP)をご参照ください。

ポイントは 雇用保険の適用事業主である企業・個人事業主(全業種) 新型コロナウイルスの影響で事業活動が縮小(前年同月比5%以上減少) 労使間の協定により雇用調整を実施 法律が定める休業手当以上の額を支払うこと 助成率は,4/5(中小),2/3(大企業),解雇等を行わない場合は,9/10(中小),3/4(大企業)…但し,上限1日8,330

コロナ原因で休業・時短営業する場合,パートのシフトを減らしてよいか?

休業や時短営業をする関係で,パート・アルバイト社員のシフトを減らした場合,休業手当を支払う必要があるのか?
雇用契約上,勤務日数や勤務時間が特定されていない場合は,将来の未確定のシフトを従来に比べて削減することは可能であり,減らした分について休業手当を支払う必要はない
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1 雇用契約上,勤務日数や勤務時間の定めがない場合

パート・アルバイト社員は,雇用契約上,毎月・毎週の勤務日数や勤務時間を具体的に定めず,毎月作成する翌月分の勤務シフトにより具体的に勤務日数や勤務時間が決められることがよくあります。

この場合,既に確定したシフトについては,雇用契約上の勤務日・勤務時間となりますので,労働者の同意を得ずに,使用者が一方的に削減することはできません。確定したシフトを休ませる場合は,不可抗力による休業では無い限り,休業手当(労基法26条)を支払う必要があります。

これに対して,将来の未確定のシフトについては,使用者にて削減することも可能です。シフトが削減されれば,その分,時給や日給が発生しないことになりますが,所定労働日・所定労働時間を休ませる「休業」には該当しませんので,休業手当の支払いは不要です。

2 雇用契約上,勤務日数や勤務時間の定めがある場合

雇用契約上,勤務日数や勤務時間の定めがある場合(例えば,「週3日・1回4時間勤務」,「最低週4日勤務」などの定めがある場合),それらは雇用契約上の勤務日・勤務時間となりますので,労働者の同意を得ずに,使用者が一方的に削減することはできません。休ませる場合は,不可抗力による休業では無い限り,休業手当(労基法26条)を支払う必要があります。

コロナによる業績悪化とリストラ

コロナによる業績悪化と賃金カット

コロナによる営業自粛により,業績の大幅な落ち込みが当面続くと想定される状況ですが,社員の賃金カットをすることはできるのでしょうか。
社員の同意がある場合か,就業規則の合理的な変更手続によれば可能。ただし,合理的な経費削減策を行い,現状の賃金水準では経営が維持できない状況があり,社員に説明することが前提。
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1 社員の賃金カット

コロナ不況により,業績の大幅な落ち込みが当面続くと想定される状況では,企業があらゆる努力を尽くしてもなお,資金繰りその他の面で厳しい状況にいたることが考えられます。 その場合の一方策として,賃金カットをすることも考えられます。しかし,休業や欠勤等を前提としない賃金カットは,使用者が一方的に自由になしうるものではなく従業員の合意がある場合(労働契約法8条)か合意がない場合は就業規則(賃金規定)の合理的な変更手続(同法10条)によることが必要です。また,賃金カットは従業員の生活にダイレクトに影響を与えますので,他の方策を取った後に,整理解雇と並ぶ最終手段の一つと位置づけるべきです。整理解雇による人員削減を優先すべき場合もありますので,専門家に相談の上,慎重に行うべきです。

2 社員の合意による労働条件の変更

まず、労働契約法8条は「労働者及び使用者は,その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」と定め,賃金といった労働条件に関し,労働者の合意があれば変更することができる旨を規定しています。ただ,この点については,以下の2点に注意する必要があります。

(1) 就業規則(賃金規程)も同時に変更

合意内容が,就業規則(賃金規程)を下回るようであれば,当該合意が無効とされてしまう可能性があるため(労働契約法12条)、合意に合わせて就業規則(賃金規程)を変更すべきです(最判平成15 ・12・18労働判例866号14頁)。

(2) 客観的合理的理由

労働条件の不利益変更に関する合意は労働者の自由な意思に基づいてなされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときに限り,有効とされています(山梨県民信用組合事件 最二小判平成28年2月19日 労判1136号6頁)。したがって,不利益変更を行う必要性がある中で,少なくとも,十分な説明を尽くしたうえで,従業員が任意に合意できる状況の中で合意書を取り交わすことが肝要です。一方的に合意書にサインさせるだけでは無効となるリスクが高まります。

3 就業規則(賃金規定)の合理的な変更

労働契約法10条は、「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において変更後の就業規則を労働者に周知させ,かつ,就業規則の変更が,労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要,変更後の就業規則の内容の相当性,労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは,労働契約の内容である労働条件は,当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」と定めています。したがって,2の従業員の合意がなくとも,就業規則の変更が労働契約法10条の定める要件に合致すれば賃金カットは有効となります。なお,必ず就業規則(賃金規程)の変更手続が必要である点に留意するとともに,たとえば附則で1年間の時限措置にするなどして不利益の度合を制限するという方策も一案です。

コロナによる業績悪化と整理解雇

コロナの影響で業績の落ち込みが激しく,著しい経営の悪化に至った場合従業員の整理解雇ができますか?
会社の経営事情からやむを得ない場合は,整理解雇は可能。ただし,あくまでも最終手段の一つであり,①人員削減の必要性,②人選の妥当性,③ 解雇回避努力,④解続の相当性という4つのファクターに照らし慎重に対応する必要がある。
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1 整理解雇の4要素

緊急時に事業継続を図るため従業員の最大限の協力を得るには,従業員の安全や雇用を守るという姿勢を見せることが必要です。また,雇用確保のために経費削減策はもとより,各種助成措置を積極的に活用するべきです。しかしながら、著しい経営の悪化等による従業員の解雇を検討せざるをえない場合も考えられます。このような整理解雇は,従業員の帰責事由に基づくものではないため,その有効性は,①人員削減の必要性,②人選の妥当性,③ 解雇回避努力,④解続の相当性の4つの要素を総合考慮して,厳格に判断されます(労働契約法16条)。

2 ①人員削減の必要性

企業の合理的運営上やむをえない必要があること(当該人数の削減の必要性が認められること)を意味します。コロナによる業績悪化により余剰人員が生じているような場合はこれに該当します。

3 ②解雇回避努力

企業の置かれた個別具体的状況のなかで、解雇を回避するための真摯かつ合理的な経営上の努力を尽くすことが必要とされます。 例えば,以下の措置が典型的な解雇回避措置となります。

広告費・交際費等の経費削減 役員報酬の削減 残業規制 従業員の昇給停止や賞与の減額・不支給 労働時間短縮や一時帰休(休業) 配転・出向・転籍による余剰人員吸収 非正規社員(有期・派遣・業務委託)との間の労働契約の解消 希望退職者の募集

しかし,経費削減や役員報酬の削減以外の措置は,これらを常に行わなければ整理解雇が許されない訳ではありません。例えば,中小零細企業では,資金繰りが逼迫し希望退職者の募集を行う時間的・経済的ゆとりがない場合も多く,業務量が減らない場合は残業規制が出来ず,関連会社がないので出向・転籍による余剰人員吸収も出来ない場合も多いでしょう。企業の規模や財務状況(資金繰り)に応じて,可能な範囲で合理的な対応を取ればよいと考えることが実践的です。

4 ③人選の合理性

整理解雇の対象者を窓意的でない客観的・合理的基準で選定することが必要とされます。全員を解雇する場合でなければ,被解雇者を選定する基準が必要となります。この点、人選基準としては,原則として企業への貢献度が基準とされるべきですが,第二次的な基準として,扶養家族の有無など,経済的打撃の大小を基準とすることも考えられます。いずれにしても, 客観的・合理的基準を定立する必要がある点に留意が必要です。なおすでに就労している従業員に先行して,採用内定取消しをすることは合理的だとする裁判例もあります(東京地決平成9.10.31判例時報1629号145頁)。

5 ④手続の相当性

整理解雇をするにあたり,会社の状況(人員削減の必要性),経緯(解雇回避努力),人選基準等について,従業員に十分な説明をし,協議をすることが要請されます。

コロナによる業績悪化と雇止め

コロナの影響で業績の落ち込みが激しく,著しい経営の悪化にいたった場合,契約社員,パート,アルバイトなどの期間雇用者の雇い止めや期間途中の整理解雇ができますか。
期間満了による雇止めは可能。ただし,契約期間が長期間,更新回数が多数回,契約更新手続が厳密に行われていない等の事情がある場合は,整理解雇に準じて慎重な対応が必要。また,期間途中の解雇は正社員以上に厳しい条件となる。
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1 期間満了に伴う雇い止め

期間を定めた労働契約を締結している契約社員,パート,アルバイトなどの有期雇用契約者は,期間満了で契約を終了させられることが原則です。しかし,更新回数が多数回に及び期間も長期となり,業務内容も正社員と同じで,契約更新も厳格になされていないような場合は,労働者の契約更新に対する期待は法的に保護され,正社員の解雇に準じた正当な理由がなければ,雇止めが許されません(労働契約法19条)。

雇止めの理由は正社員の整理解雇理由よりは若干緩やかに解されていますが,就労実態が正社員と異ならない場合は,正社員の整理解雇理由と同程度の雇止めの理由が必要とされます。いずれにしても前記正社員の整理解雇の要素である①人員削減の必要性,②人選の妥当性,③ 解雇回避努力,④解続の相当性に照らしに準じた慎重な対応が必要です。

なお,③に関して、正社員と有期雇用契約社員とでは,会社との結び付きの程度に差があり、そのことは人選基準の設定でも考慮されるべきとした裁半例(高松重機事件・高松地判 平10.6.2,アイレックス事件・横浜地判平18.9.26)があります。つまり、正社員より有期雇用契約社員を優先的に整理対象とすることにも合理性が認められる場合もあります。ただし,企業の財務状況や業務継続性との関係で,同じ業務を担えるのであれば,賃金の高い正社員よりも賃金の安い契約社員・パートアルバイトを残す(つまり正社員を整理解雇する)という判断も合理的な場合もありますので,ケースバイケースに判断をする必要があります。

2 期間途中の解雇

有期雇用契約の契約期間中であっても,解雇を行うことは可能です。ただし,解雇をするためには,「やむを得ない事由」(民法628条,労働契約法17条)が必要とされ,期間の定めのない正社員の場合以上に解雇は厳格に審査されます。

よって,期間途中の解雇は出来るだけ避け,説得の上で退職・合意解約を行うか,期間満了による契約終了を行う方が適当な場合も多いです。

コロナによる業績悪化と派遣契約の中途解約・解除

コロナの影響で業績の落ち込みが激しく,著しい経営の悪化に至った場合,当社が受け入れている派遣社員の労働者派遣契約を中途解約出来ますか?その場合の派遣料金の支払いや,派遣社員の休業手当は誰が支払う必要がありますか?
労働者派遣契約に中途解約事由として派遣先の業績悪化等の定めがある場合は中途解約可能だが,なければ派遣元との合意がなければ契約期間中は一方的に解約出来ない。ただし,派遣元と交渉し派遣料金の一定割合を支払うことによる解約の合意をすることも一案である。派遣社員の休業手当は派遣元が支払義務を負うが,休業手当相当額の損害賠償を派遣元から請求される場合がある。
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1 派遣契約の終了時期

派遣先が,派遣先・派遣元間の派遣契約を終了させることが,いわゆる「派遣切り」として論じられることが多い。もっとも,派遣契約終了には,①契約期間満了型と②中途解約型の2種類があります。

この点,①の期間満了型の場合は,派遣契約期間の満了時に,派遣契約を更新しない(新たな派遣契約を締結しない)というだけですので,法的リスクは相当程度低いといえます。派遣契約の不更新は有期雇用解約の雇止め法理のような法理はない為,コロナ不況による業績悪化のタイミングで派遣解約期間が満了するのであれば,更新せずに終了させればよいです。 問題になるのは,②の中途解約型の場合です。

2 ②派遣契約の中途解約

労働者派遣契約は,派遣先と派遣元で締結され,契約の解除には,①債務不履行による法定解除,②契約に定めた解除権の行使,③合意解除のいずれかの方法が考えられます。

この点,コロナ不況による業績悪化・業務縮小により派遣社員の受け入れを停止したいという場合は,派遣元(派遣社員)に落ち度はありませんので①の債務不履行に該当しません。よって,②の「業績悪化による業務縮小で派遣受け入れの必要がなくなった」場合に解除できることが派遣契約に定められている場合は③派遣元と派遣先の合意による場合で無い限り,派遣契約は中途解約(解除)できません

3 解除出来ないのに派遣就労を拒否した場合

上記のように派遣契約を解除できないが,派遣先企業の仕事が無い等の理由で派遣社員の就労を拒否した場合であっても,派遣先の都合によるため民法536条2項により遣料金は約定どおり発生します

ただし,派遣先が緊急事態宣言下における特措法45条2項に基づく休業の「要請」又は同3項の「指示」の対象事業に該当するため休業を余儀なくされている場合は,不可抗力による休業といえ,派遣料金は発生しません。

4 派遣元との間で合意解約する場合

上記3のとおり派遣就労を拒否しても派遣料金が発生するのであれば,派遣元と合意により解約をする他ありません。その場合は,以下の措置を取る必要があります。

(1) 労働者派遣契約の解除の事前の申入れ

派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって解除の申入れを行うこと

(2) 派遣先における就業機会の確保

派遣先は、派遣労働者の責めに帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、当該派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の碓保を図ること

(3) 損害賠償等に係る適切な措置

派遣先は、派遣先の責めに帰すべき事由により期間満了前に労働者派遣契約の解除をする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、損害賠償(休業手当、解雇予告手当等に相当する額以上の額)を行わなければならないこと

派遣先は、派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずること

派遣元事業主および派遣先の双方の責めに帰すべ事由がある場合には、派遣元事業主および派遣先のそれぞれの責めに帰すべき部分の割合についても十分に考慮すること

(4) 派遣契約解除理由の明示

派遣先は、期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行う場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行う理由を当該派遣元事業主に対し明らかにすること

5 実務的には

実務的には,上記3,4を踏まえて,派遣先から派遣元に一定の解決金(例えば,(派遣社員の休業手当相当額+派遣元会社の管理費用相当額)✕2~3ヶ月分)を支払うことにる示談で解決することもあります。また,その是非はともかく,派遣元と派遣先のビジネス上の力関係(今後の取引の継続)から,派遣先が派遣元に少額の解決金をもって対応する場合もあります。

6 派遣社員に対する休業手当の支払い義務

なお,派遣先が派遣就労を拒否した場合や派遣契約を中途解約した場合,派遣元にて他の派遣先をあっせんすることが出来れば別ですが,そうでなければ派遣社員は就労できずに休業状態となります。その場合でも,雇用主である派遣元は派遣社員に賃金又は休業手当を支払う義務があります。支払の要否は前記を参照にしてください。

コロナによる業績悪化と内定取り消し

コロナの影響で業績の落ち込みが激しく,著しい経営の悪化にいたった場合,採用内定の取消しができますか。
会社の経営事情からやむを得ない場合は,内定取り消しは可能。ただし,内定取り消しも正社員の整理解雇の場合と同様に,経費節減や雇用調整助成金の利用等の解雇回避努力を行った後の最終手段の一つとして対応する必要がある。なお,内定者を正社員に優先して整理解雇の対象とすることは許容される。
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1 採用内定取消しが許される場合

採用内定であっても,始期付き解約権留保付きの労働契約が成立するとされており,内定取消しは,解雇に準じて,労働契約法16条の解雇権濫用法理が適用されます。すなわち,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上の相当性がない場合は無効とされます。コロナに関連した業績悪化を理由に解雇をする場合は,整理解雇に準じた検討が必要とされます。

2 採用内定取消し回避努力

前述のとおり、採用内定取消しに関しては,整理解雇に準じた検討が必要ですから,まずは採用内定取消しを回避するための努力を尽くす必要があります。具体的には,前記正社員の整理解雇における対応のほか,採用内定取消しに関しては,以下の方策が考えられます。

(1) 自宅待機と雇用調整助成金の活用

採用内定取消し回避の為の方策として、入社予定日に入社させたうえで,実際には就業をさせずに自宅待機を命ずることが考えられます。もっとも,業績悪化に伴い会社の判断で自宅待機を命ずる場合は,事業者の責めに帰すべき事由による休業に当たるものとして,少なくとも労働基準法26条に定める休業手当を支払う必要があります。この場合は,雇用調整助成金を利用することが考えられます。

(2) 入社時期繰下げ

入社日自体を延期する措置(就労開始日の延期)を行う場合は,採用内定者への十分な説明をしたうえで.同意を得る必要があります。採用予定者の同意を得て入社日を変更した場合でも,採用内定者の不利益をできるだけ限定するため,延期期間はできるだけ短くするよう努めることが望まれます。

3 内定者を優先して整理対象とすることも可能

なお,整理解雇に際して,内定者を正社員より優先的に対象者とすることを不合理とはいえません(インフォミックス事件 東京地決平成9・10・31労判726号37頁)。

コロナによる業績悪化と廃業・倒産

コロナによる業績悪化と廃業

コロナにより業績が悪化し,経営の見通しが全く立ちません。このまま会社を存続させると資金が減る一方です。幸いにも債務超過にはなっておらず,資金が残っているうちに,会社をたたみたいと思いますが,そのようなことは可能でしょうか?
会社の廃業は経営者の自由。資金が残っているうちに無理をせずに会社をたたむことも合理的な選択肢の一つといえる。方法としては会社の解散・清算手続を行うが,社員との関係では十分に説明・協議をした上で退職してもらい,応じない場合は最終的に解雇を行う。この解雇は整理解雇ほどの厳格な要件は求められない
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1 会社廃業の自由

本来,会社の廃業・解散は資本主義社会では自由に行うことが前提となっています(憲法22条1項)。会社の経営は資本家(株式会社でいえば株主)の投下資本の運用の一手段であり,経営するメリットがないのであれば,会社を廃業・解散して投下資本を回収することも自由です。廃業・解散後に労使紛争に発展した場合であっても,株主総会の解散決議の内容自体に法令または定款違反の蝦庇がないならば,その決議が無効となるものではないことは最高裁判例も認めるところです(キネマ館事件=最判昭35.1.12裁判集民39-1)。

これに対しては,「経営者であれば取引先・従業員に迷惑をかけてはいけない」,「ギリギリまで頑張るべきだ」という世の中の声もあります。また,経営者自らもそう考えている場合が少なくありません。しかし,経営の見通し(利益が出る見通し)もないのに経営を続け,借金を重ね,残っていた資金を溶かし,最後は会社を廃業する資金(会社をたたむ経費,社員への解雇予告手当,経営者の生活資金等)すら残らなかったら,それこそ取引先や従業員に迷惑をかけます。資金がまだ残っているうちに,弁護士に相談して会社の解散・清算手続を依頼し,テナントに解約予告を入れ,原状回復を行う段取りをつけ,社員へ手当(上乗せ退職金等)を払い,社員も転職活動の猶予期間が得られ(会社都合による離職票を直ちに発行し),取引先にも事前に伝えることで迷惑をかけず,解散・清算で残った資金は株主に配当し,キレイに会社をたたむ。これも十分合理的な方法の一つであることは間違いありません。

2 会社解散と解雇

会社の廃業・解散をする場合,会社自体が消滅します。解散が行われた場合,会社は清算手続に入り,清算が結了するまでに解雇も含めて従業員全員との労働契約を解消することになります。解雇をする場合は,会社の都合による解雇という意味で整理解雇と共通しますが,整理解雇と同様の厳格な要件は適用されません。仮に,整理解雇の4要素の枠組みが斟酌されるといっても,会社そのものが消滅するので「業務上の必要性」は肯定されますし,「解雇回避努力」についても考えられません。また,従業員全員が解雇されることになるため,その解雇が一斉に実施される限り「人選の合理性」という問題も発生しません。したがって,要件として考えるのは,従業員に対する十分な説明(労働組合がある場合は組合との協議)ということになります。

そこで,会社の廃業・解散を決定したら直ちに社員(労働組合)と協議を開始し,可能な範囲で退職金の上積みなどの解雇条件を提示するなどして交渉を行います。大抵の場合は同意が得られます。しかし,特に労組が介入している場合などで協議が整わない場合でも,一定の協議を尽くしたら,会社解散と同時に解雇を行って問題はありません。協議をどの程度行うのかは会社の余力にもよりますが,漫然と資金を減らしながら協議を続行することまでは求められません。

なお,会社の再生や倒産については,当事務所が運営する 「会社再生.COM」のサイト もご参照ください。

コロナによる業績悪化と倒産・破産

コロナにより業績が悪化し,経営の見通しが全く立ちません。会社は負債が多く債務超過状態にありますし,このまま会社を存続させると資金が数ヶ月後にはショートしてしまいます。会社の再生の見通しがたたないので,会社を廃業したいと思いますが,負債がある場合はどのような手続になるのでしょうか?
会社の廃業は経営者の自由。債務超過の会社は,最終的には破産手続を使うのが一般。破産はネガティブなイメージが強いが,最もメジャーな債務整理手続であり,一旦法的に債務をリセットして関係者の法律関係を整理し,新たに立ち直るために国が用意した制度である。社長が連帯保証している場合は社長も自己破産手続をとることが多いが,借金を免責し再生してもらう制度である。従業員との関係では会社が破産すれば解雇は有効となる。
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1 破産は“悲惨”ではない

「破産・倒産は悲惨である。」

このような考えにとらわれて、経営者の中には、夜逃げ、家族離散、精神破綻、病気、最悪は自殺や犯罪行為に至る・・・、このような悲劇的な結末は巷に溢れています。

しかし、破産・倒産は決して悲惨ではありませんし、恐いものでもありません。むしろ、再生の為にスタートするためのきかけなのです。

法律もその趣旨を明記しています。

(目的) 第1条  この法律は、~(略)~ 債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。

つまり、破産手続は、適正かつ公平な清算と債務者が立ち直って再生してもらうことを究極の目的としているのです。

2 会社の破産手続で会社はどうなる?

(1) 破産手続により借金は消滅する。

まず、破産手続は弁護士に依頼して行うことになりますが、裁判所に破産を申し立てる前であっても、弁護士に依頼し、債権者へそのことを伝えた段階で、会社へ直接の取り立ては行われなくなります。

そして、破産手続を裁判所へ申し立て、破産手続が終了すると、破産した会社も原則として消滅します。もちろん、借金も消滅することになります。

(2) 経営者は、債権者からの取り立て等の心配をしなくてよい。

加重債務に陥った会社の場合、銀行、クレジット会社等から支払の遅れている返済の催促が多くなされます。また、資金繰りに日夜奔走しなければならなくなっているでしょう。

破産手続を行うことを決意して、破産手続の依頼をすれば、最速で、その日から債権者からの取り立てや催促が会社や経営者に対してなされなくなります。

(3) 会社の資産は現金化して債権者へ配られる

会社に残っている会社名義の資産(不動産、自動車、什器備品類、保険、有価証券、売掛金など)は、破産手続を申し立てた後、破産管財人の管理に移ります。破産管財人は裁判所が破産手続を進める為に雇う弁護士です。

破産管財人は、会社に残った資産を確保して、現金に換える作業を行います。そして、現金化が終了した後に、債権者へ配当する手続を行います。

3 会社破産と従業員の処遇

(1) 退職・解雇

会社は,破産手続開始の決定がなされた時に解散し,破産手続の終了時に法人格が消滅します。その場合,会社(法人)そのものがなくなりますので,そこに雇用されていた労働者も解雇されることになりますが,その解雇は有効となります。

(2) 未払賃金

従業員への給料の未払いがある場合、従業員は未払分の最大80%を労働者健康福祉機構(厚生労働省所管の独立行政法人)から立替払いを受けることができます。つまり、最大80%は国の保障を受けることができるのです。

詳細は、未払賃金立替制度の詳細は、こちらをご参照ください。

国の補償を受けられなかった部分(20%の部分)については、破産手続の中で支払を受けることが出来ます。但し、支払の原資はあくまでも会社に残っていた資産になりますので、それが乏しい場合は、支払や配当を受けることはできないでしょう。

(3) 失業保険

雇用保険に加入している場合、従業員は、離職票などを持ってハローワークで手続きをとれば、速やかに失業保険を受けることができます。会社としては、退職に際して、離職票などを従業員に交付することが重要です。

なお,会社の再生や倒産については,当事務所が運営する 「会社再生.COM」のサイト もご参照ください。

 

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