能力不足かつ余剰人員

勤務成績不良を理由とする余剰人員の整理解雇

社長
当社は,外資系コンサルタント会社です。当社はIB部門(インベストメント・バンキング部門)を強化するため,数年前にIB部門のマネージャーとして社員を採用しました。当社は2年前までは黒字でしたが,それ以降利益が激減し,直近では大幅な赤字を計上する状況となりました。この赤字は,世界的な投資不況による投資需要の大幅な低落と,人員の過多に原因がありましたので,IB部門を閉鎖し,コンサルティング事業部における人員の増強をする必要がありました。ところが,2年前にIB部門のマネージャーとして採用した従業員は,コンサルティング事業部で要求される能力に欠けるところがあり,また,他の部門においても求める専門知識・能力を持ち合わせていないため,他の事業部へ配置することが困難です。ですから,就業規則の整理解雇事由及び勤務成績不良を理由として解雇したところ,解雇無効として提訴されてしまいました。この解雇は無効でしょうか?
弁護士吉村雄二郎
勤務成績不良による解雇については,一般的には,雇用関係の維持ができないといえるような重大な能力不足がなければ解雇するはことできません。そして,労働者が人事考課の評価において平均以下であったとしても,必ずしも重大な能力不足となる訳ではありません。また,会社内で教育訓練を実施,又は配置転換を行うなどして労働者の能力を発揮する機会を与えたかも重要なポイントとなります。ご質問のケースでは,不採算部門の廃止に伴い余剰となった勤務成績不良社員を,整理解雇と勤務成績不良の2つを解雇事由として解雇したとのことですが,経営判断として同部門を閉鎖し,余剰人員を削減する必要性には,合理的な理由があると考えられます。ですが,余剰人員を削減することは整理解雇に当たりますにので,以下の4つの要素において検討する必要があります。①人員削減の必要性が存在すること②解雇回避努力が尽くされていること③解雇される者の選定に合理性があること④協議説明をし尽くしたこと,これらの要素を総合して解雇の有効性が判断されます。この点が不十分ですと,解雇無効と判断されるリスクが高まると言えます。

 

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