管理監督者

管理監督者に関する裁判例一覧表(まとめ)

管理監督者性について裁判例を一覧表で整理しました。

参考記事

【徹底解説】残業代のいらない「管理監督者」とは

事件名結論勤務内容・責任・権限勤務態様賃金等の待遇
橘屋事件
大阪地裁S40.5.22
判タ178号174頁
菓子製造を行う株式会社
否定取締役工場長の立場にあったが,役員会に一度も招かれず,役員報酬も支給されていない。現場の業務に従事し,給与も他の従業員と同じ取扱いを受けていた。
実質的な管理監督権が常務にあった。
出社退社について,他の従業員と同じ制限を受けていた。他の従業員と同じ賃金体系による給与を受けていた。
静岡銀行事件
静岡地裁S53.3.28
労民集29巻3号273頁
否定金融機関の本社融資管理部調査役補(支店長代理相当)として,調査役の下,担保管理業務に携わっていた。
部下の人事及びその考課には関与しておらず,担保管理業務の具体的内容について,上司(部長調査役,次長)の手足となって部下を指導育成していたにすぎない。
出勤時に出勤簿に押印し,30分超過の遅刻・早退3回で欠勤1日,30分以内の遅刻・早退5回で欠勤1日の扱いを受けていた。
欠勤・遅刻・早退をするには,事前又は事後に上司(調査役)に届け出なければならず,正当な事由のない遅刻・早退は,人事考課に反映され,場合によっては懲戒処分の対象になっていた。
サンド事件
大阪地裁S58.7.12
労判414号63頁
大阪工場(従業員約40名,課長以上の役職者は約10名)を経営。
否定大阪工場の課長。課長昇進の際工場長代理兼製造部次長の職務の補佐,工場の管理に関する各種会議への出席,工場の生産計画・人事に関する事項につき意見の具申,という職務が加わったが,これによる仕事の質量の変化はほとんどなかった。
課長昇進後も労働組合員であった。
所定就業時間は,役職者を含め,午前8時30分~午後5時10分であり,時間外勤務につき所属長の許可を要するとされていた。
所属長を除き,タイムカードを打刻しており,遅刻,早退については,懲戒処分や口頭注意になることがある以外は,通常の場合は,給与,賞与に影響がでない取扱いがされていた。
課長昇進後の給与面での待遇は,さほど変わらず,時間外手当等が支給されなくなり,役職手当が支給されるようになったが,差引すれば,むしろ収入減になったと推認される。
ケー・アンド・エル事件
東京地裁S59.5.29
労判431号57頁
日本企業の外国向けの広告(新聞,雑誌コマーシャルフィルム)制作業。
否定アートディレクター(外国人)として雇用され,広告の視覚に訴える部面の制作を担当。
コピーライターとアートディレクターは,コピー部長から広告の製作を命じられ,コピーライターが文案を,アートディレクターが部面の作成をそれぞれ担当し,協力して広告を製作する。アートディレクターは,自己の考案した写真,絵画,図案等の構想に基づき,技術者を指揮して,写真の撮影,作画等に当たらせる。
勤務時間(平日の午前9時~午後5時30分)を定められ,出社,退社の際にタイムカードの打刻を命じられ,実際に打刻していた。
休日出勤の際,タイムカードの欄に出勤と押捺されていた。遅刻した場合,コピー部長から注意され,遅刻の回数がタイムカードに記載されていた。
月給58万7000円であったが,月給額は,原告が,入社当時,アートディレクターとして得ていた収入額を考慮して定められた。
レストラン「ビュッフェ」事件
大阪地裁S61.7.30
労判481号51頁
個人でファミリーレストラン(本件店舗)を経営。
否定本件店舗の店長として,店舗従業員6,7名を統括し,ウェイターの採用に一部関与したことがあり,材料の仕入れ,店の売上金の管理等を任せられていた。本件店舗の営業時間(午前11時~午後10時)に拘束されていた。給与額から残業手当及び家族手当を控除した額は,月額18万円~20万円前後。
残業手当として月額5万4000円前後が支給。
徳洲会事件
大阪地裁S62.3.31
労判497号65頁
病院経営,医療業務を目的とする医療法人。
肯定大阪本部に在籍し,人事第二課長として,看護士募集業務を1人で担当し,新設病院で勤務する看護士を確保するため,西日本一帯において募集活動(求人活動病院見学・アルバイト学生の案内等)を行った。出張を除く出勤日の出退勤時刻についてタイムカードの打刻を義務づけられていたが,給与計算上の便宜にすぎず,出勤日における実際の労働時間は,自己の責任と判断に基づき,自由裁量で決定することができた。基本給月額15万円~16万円前後,責任手当月額2万5000円又は3万円,特別調整手当月額3万円又は5万円。
日本プレジデントクラブ事件
東京地裁S63.4.27
労判517号18頁
旅行を目的とする会員制クラブの運営,従業員は社員4,5名,アルバイト数名程度。
肯定原告の在職期間は1か月程度。
社長は,組織全体の総務全般(人事経理関係)を処理できる者として,原告を面接して採用した。原告は,総務局次長として,経理,人事庶務全般にわたる事務を管掌することを委ねられていた。
在職した1か月間における時間外労働は84時間50分,深夜労働は13時間10分。年令給15万0800円,職能給7万9600円,役職手当3万円,職務手当5万円,家族手当2万円。
京都福田事件
大阪高裁H元.2.21
労判538号63頁
生コンクリートの製造販売等。従業員数約120名。
否定1名は,本社総務課主任→城陽工場管理課課長→本社企画管理部主任の職にあり,他の1名は,本社営業部営業第二課主任の職にあった。役職手当は月額4万円。
賃金規定上,役職手当は時間外勤務手当の算定基礎に含まれており,時間外手当を含むものではない。
(京都福田事件 原判決)
京都地裁S62.10.1
労判506号81頁
1名は,総務課では交通事故処理について,関係者との示談交渉等に従事し,企画管理部では,スポーツ用品展示即売会の開催に従事し,他の1名は,保険業務に従事していた。会社は,担当業務について,具体的な指示を与えて,所定労働時間外の労働を命じたり,各業務において一定の処理基準を定め,その基準によれば当然に所定労働時間外の労働を行わなければならないような労働を命じることが多くあり,恒常的に残業がされていた。
三栄珈琲事件
大阪地裁H3.2.26
労判586号80頁
珈琲豆,喫茶材料の卸売,喫茶店の経営。
否定会社が経営する喫茶店を1人で運営。
パートの採用,労務指揮権を有し,売上金の管理を任され,材料の仕入れ,メニューの決定について,その一部を決める権限を有していた。
欠勤早退私用による外出をする場合は,必ず会社に連絡しており,無断で店舗を閉める権限はなかった。基本給は月額11万円~13万円,責任手当は1万円,賞与は基本給の1.5か月分~2か月分。
彌榮自動車事件
京都地裁H4.2.4
労判606号24頁
タクシー会社従業員数約850名(うちタクシー乗務員約750名)。各営業センターには,所長,副所長が各1名,係長及び係長補佐が数名,乗務員が200名程度配置されていた。
否定原告らは,営業センターの係長又は係長補佐として,担当乗務員に対する事故防止,サービス向上を指導,タクシー運行業務の監視(出勤点呼,配車割当,出庫・入庫時の点検等),外部からの苦情対応を担当していた。係長,係長補佐は,24時間の運行管理業務を遂行するため,会社が定めた勤務ローテーションに従い,午前昼間に2,3名,深夜・未明に1名が稼働しており,定刻の出勤・退社時刻はない。出勤時間は1か月に概ね270時間ないし290時間程度に上っていた。原告らの給与は,1名は月額26万円~28万円程度,他の1名は月額30万円~32万円程度であり,歩合給が多い乗務員と異なり,本給,諸手当は一定額であり,ベースアップがあった。
退職金は,乗務員に支給されない加算金が支給されるため,乗務員より多額であった。
国民金融公庫事件
東京地裁H7.9.25
労判683号30頁
否定金融機関支店の業務役(総務課長に次ぐ職位)として,支店長から総務課長の権限の一部につき委任を受け,検認業務,使途確認業務に従事していた。業務役には57歳を過ぎた職員が就任していた。一般職員と同様に,出勤簿及び年休簿により,出退勤の管理を受けていた。
なお,途中から業務役も時間外手当の支給対象とされた。
本俸月額64万円程度,役職手当月額2万3000円。
インターパシフィック事件
大阪地裁H8.9.6
労判712号94頁
食料品,衣料品,日用雑貨等の輸出入・卸売業,イベント出店,貨物運送取扱業等を目的とする株式会社
否定ベーカリー・喫茶部門の店長。
売上金の管理,アルバイト採用の権限はなかった。
勤務時間の定めがあり,出退勤時刻をタイムカードに打刻し,会社に報告していた。通常の従業員としての賃金以外の手当はなし。
日本コンベンションサービス事件
大阪地裁H8.12.25
労判712号32頁
国際会議,学会,イベントの企画・運営等。関西支社(統括支社),名古屋支店,京都支店がある。
否定管理監督者性が問題となった原告らは,関西支社管理課の係長→課長補佐,京都支店総務課の課長補佐→課長,名古屋支店の係長補佐→係長,関西支社会議課の係長補佐,関西支社通訳課の係長補佐。
原告らの中には,部下の勤務・勤怠の届書に承認を与え,また,一次考課者又は二次考課者として部下の人事考課に関与した者がいたが,原告らが従事する業務内容は,他の従業員と異ならない。
部下の人事考課に関与していた原告らは,役職に就いた後,タイムカードに打刻しなくてもよいとの扱いを受けていた。
(日本コンベンションサービス事件 控訴審)
大阪高裁H12.6.30
労判792号103頁
否定管理監督者性が問題となった原告らの業務内容は,他の従業員と変わらない。関西支社の業務量の増大に伴い,残業を余儀なくされていた。
パルシングオー事件
東京地裁H9.1.28
労判725号89頁(要旨)
写真植字による印字制作,イラストレーション,グラフィックデザインの制作等。
肯定原告らは,経営企画室のMDSS(マネジメント・ディシジョン・サポート・スタッフ=経営・意思決定支援構成員)又は営業部のマネージャー。
経営企画室では,MDSSは取締役に次ぐマネージャーのうち上位の管理職として位置づけられ,営業部では,マネージャーは最高責任者として位置づけられていた。
経営企画室は,被告の重要事項(年間スケジュール,夏期・冬期の各賞与の査定,昇進・昇格等)につき,審議・上申していた。
経営企画室MDSS又は営業部マネージャーは,タイムカードによる管理がされ,欠勤や遅刻につき賃金減額がされていた。MDSSには,経営給が支給され,マネージャーには,管理給が支給され,また,固定残業給として, MDSSには月額1万円,マネージャーには月額2万円がそれぞれ支給されていた(固定残業給は,被告の業務内容を時間の上で厳密に管理することが困難であることに鑑み,残業に対する手当を固定化したものであった。)。
日本アイティーアイ事件
東京地裁H9.7.28
労判724号30頁
銀行,ホテル等の両替商に対する紙幣の偽造鑑別機の販売及び保守を業とする会社
否定営業職,課長。
営業部の従業員を統括する立場にあった。
平成5年9月分から12月分までは,原告Aについては,基本給15万5250円に役職手当3万円,営業手当16万8000円等の手当を付加して,原告Bについては,基本給18万0875円に役職手当3万円,営業手当16万円等の手当を付加して支給された。また,平成6年1月分から7月分までは,原告Aについては,基本給20万円に役職手当3万円,業務手当14万3250円等の手当を付加して,原告Bについては,基本給19万円に役職手当3万円,業務手当17万0875円等の手当を付加して支給された。
ほるぷ事件
東京地裁H9.8.1
労判722号62頁
書籍の訪問販売業。従業員約500名。
否定営業社員で,東京南支店(支店統合後は東京支店)の販売主任を務めた。
東京南支店では,部下として課長2名等の社員がいた。支店長が常駐しない時期に,売上集計等を行って支店長に報告し,支店内において,会議の打合せのまとめ,資料作成等を行い,朝礼を主宰して,支店長からの指示事項を伝達し,また,地区支店長会議に出席したこともあった。
原告も,他の従業員とともに,タイムカードにより勤怠管理を受けていた。
新入社員のタイムカードにつき確認印を押したことはあったが,課長等のタイムカードは,各自が確認印を押していた。
支店長在職時の資格給等は月額6万円前後。
関西事務センター事件
大阪地裁H11.6.25
労判774号71頁
一般企業の財務書類の作成,指導及び会計事務代行等を行う会社。
否定課長。
課長が従業員の労務管理等について何らかの権限を与えられていたとの会社の主張立証はなく,役職手当が支給されたりあるいは休暇取得や勤務時間等について多少の優遇措置が採られるようになったことは認められるものの,これらのみでは,監督管理者に該当するとはいい難い。
原告も,他の従業員同様,出勤簿に出退勤時刻を記載して会社に提出していた。
従業員に,概ね一週間単位で割り当てられる30分早出の掃除当番(火曜日から月曜日)と1時間残業の電話当番(月曜日から金曜日)を原告も行っており,毎週土曜日午前9時~午後3時の勤務を命じられていた。
役職手当月額6万円。
キャスコ事件
大阪地裁H12.4.28
労判787号30頁
消費者金融業,全国に50の営業店舗,5つの管理室を有し,従業員数約500名。
否定大阪管理室(従業員約20名)において,主任として,室長,班長の下で,債務者への訪問による債権回収等の業務に従事。
原告の下に一般職の部下はいない。
出退勤は,タイムカード又は出退社記録で管理されていた。基本給は月額19万円~20万円前後,職能手当は月額6万円~7万円前後,職位手当は月額4万円又は5万円。
ザ・スポーツコネクション事件
東京地裁H12.8.7
労判804号81頁
スポーツクラブの経営等を目的とする株式会社。
否定総括部経理課長代理。
原告は経理課に所属する従業員を管理監督する立場にあった。
課長代理の役職以上の者の出退社時間はタイムレコーダーによって管理されていなかった。課長という役職に対する手当として1か月当たり約3万円程度の支給を受けていた。
マハラジャ事件
東京地裁H12.12.22
労判809号89頁(要旨)
インド料理店等を経営し,都内に10店舗以上を有する。
否定インド人店長として,店舗内で,日本人店長,数名又は数十名のアルバイトと就労。接客,店内・厨房の管理(点検,掃除,後片づけ等)等の業務に従事。
店舗従業員の採用,労働条件に関する決定権は有していない。
午前10時ころに出勤し,店舗の営業時間(午前11時~午後10時)に業務に従事。出退勤時にタイムカードを打刻していた。給与は月額26万円から諸費用を控除された残額。役職手当の支給はない。
風月荘事件
大阪地裁H13.3.26
労判810号41頁
カラオケ店,喫茶店麻雀店,パチンコ店を経営。正社員数約200名。
否定喫茶店及びカラオケ店(4階建建物の全部)の店長として,店舗運営の全般(店舗従業員の勤務表の作成,営業状況の把握等)に従事。
全社的な重要事項は社長会議重役会議等で決定され,会社の営業方針は本社営業促進部で決定されていた。原告は,店長会議には出席したが,店長会議は店舗運営の意見交換や被告からの指示伝達がされる場であった。
会社から店長に対し,月間指示事項や従業員に対する指導要領が示され,会社の内勤営業社員が,各店舗を巡回してその遵守状況等を査定し,店長は,この査定により店長に対する手当の減額等がされていた。
本件店舗において,会社の決定で,一部が閉鎖され,営業時間が短縮された。
所定就業時間は午前10時~午後8時であったが,実際には,他の店舗従業員の勤務状況に照らして,自分の勤務時間を決めていた。
店舗従業員は,原告を含めて,タイムカードで出退勤時刻を打刻していた。タイムカードは,毎月,本社に送付され,出退勤管理,時間外手当の算定資料にされていた(原告は,店長であった際も,途中の時期まで時間外手当を支給されていた。)。
月額で基本給10万円,店長手当9万円,風紀手当23万円。
店舗内で原告に次ぐ地位にあった係長(厨房担当)は,月額で基本給7万5000円,役職手当7万1100円,風紀手当13万円。
光安建設事件
大阪地裁H13,7.19
労判812号13頁
土木工事業。取締役は,代表者及びその父母であり,小規模会社。
否定現場監督として,工事現場での施工管理・監督等,工事の見積り等に従事し,取引先から請求された費用等の決済,他の現場従業員に対する指導監督,工事の進行管理等をしていた。勤務時間は,午前8時~午後5時と定められていた。基本給は50万円で,諸手当は支給されていない。
東建ジオテック事件
東京地裁H14.3.28
労判847号74頁
地質調査会社,従業員数約240名。
否定原告ら7名は,支店技術部門に所属し,支店の調査役として,現場管理(顧客折衝,地質調査) ,調査データの整理・解析・報告書作成等に従事。原告らの職位は次長,次長待遇,課長待遇,課長補佐,係長等にわたる。
課長補佐以上の者は,支店の管理職会議に出席し,次長は,支部の幹部会議に出席し,原告らの5名は部下の人事評価に関与した。
管理職については,タイムカードによる時間管理が廃止されていた。次長であった原告は,基本給月額約40数万円,職務手当月額9万3000円を受給。
育英舎事件
札幌地裁H14.4.18
労判839号58頁
学習塾経営。正社員28名,時間講師,パート約150名。
否定営業第3課長として,課担当教室の管理運営に従事。社長,各営業課長,事務局によるチーフミーティングに参加し,課担当教室における社員の可否,課内職員の人事管理等について,社長に意見を上申していた。各教室の状況について,社長から日報での報告を求められていた。市内に点在する5教室を回る際の勤務の場所,方法は裁量に委ねられていた。
他の従業員と同様に,出退勤につきタイムカードへの記録が求められ,勤務日数,勤務時間の管理が行われていた。休日を除き,毎日出勤していた。
基本給は月額21万円前後,課長手当は月額4万円(課長昇進により月額1万2000円増額)。
ジャパンネットワークサービス事件
東京地裁H14.11.11
労判843号27頁
スクリーン印刷機械の製造等を業とする株式会社。
否定新規事業開発部長として,コンピュータによるデザインワーク,製造の業務に従事。役員以外は,タイムカードで出退勤時刻を打刻していた。
所定勤務時間を厳格に守らず,かなり遅く出社することもあったが,特に注意されなかった。退社時刻は,常務の自家用車に同乗して帰宅することから,常務の勤務が終わるまで残っていることが多かった。
基本給は月額40万円で,常務より高額であったが,これは,新規事業立上げのために迎え入れられたことから,従前の収入を下回らないように優遇したもの。部長手当は支給されていない。
南大阪マイホームサービス(急性心臓死損害賠償)事件
大阪地裁堺支部H15.4.4
労判854号64頁
建物の増改築工事(リフォーム工事)等を目的とする株式会社。
否定資材業務課長。
資材の仕入れ及び在庫管理などの業務及び、他の者が受注した工事の工事管理業務を行っていた。また、その他にも、他の部署の業務の応援をすることもあった。
従業員の勤務時間の管理は,タイムカードにより行っていた。
出退勤の自由はなく(遅刻の場合,賃金の減額がされている。),また,部下の人事や考課に関与したり,会社の機密事項に関与したりするなど,経営者と一体となって会社の経営を左右する事項の決定に携わっていたと認めるに足りる証拠はない。
役職手当月額15万円。
ユニコン・エンジニアリング事件
東京地裁H16.6.25
労経速報1882号3頁
防衛施設局が発注する土木・建築の調査検討及び設計監理。
否定技術第三部副部長として,防衛施設周辺の民間住宅に関する防音関係工事の設計管理業務に従事した後,米軍施設の基本設計業務に従事。
各業務とも,原則として原告のみが従事し,具体的な業務態様は原告に委ねられていた。基本設計業務の際,途中から部下が配置されたが,部下に対する勤怠管理に関する原告の意識は希薄であった。
労働時間(出勤・退勤時間,休暇等)について,上司による管理は行われず,週末の業務も,原告の判断で遂行されていた。
管理表(出退勤時間,午前午後の作業内容等を記載したもの)を総務部に提出し,部長の在職中は,部長の承認印を受けていた。
休日勤務,代休との関係は,総務部によって管理,把握されており,原告から休日勤務に関する賃金精算を求められた際,会社は,日数の間違いを指摘した上で,これに応じる旨回答した。
本俸月額29万7000円,役職手当月額5万5000円,技能手当月額5万円。
リゾートトラスト事件
大阪地裁H17.3.25
労経速報1907号28頁
ホテル,レストラン等の経営,ホテル会員権等の販売等。
否定大阪管理部経理課係責係長に在職。同部経理課の職員構成は,原告の他,係長主任,一般社員の4名。
担当業務は,大阪管理部における伝票の照合,決済業務,会員権解約に伴う経理処理等。
所定就業時間は午前9時~午後5時。係責係長は,タイムカードによる管理の対象でなかった。通常の労働時間の賃金の他に,係責職給として月額4万円を支給。
神代学園事件
東京高裁H17.3.30
労判905号7頁
(原判決)
東京地裁H15.12.9
労働経済判例速報1908号3頁
音楽家を養成する専門学校を経営する学校法人。
否定原告Hは,事業部長として,広報業務,経理業務に従事し,部内従業員の採用面接・人選等,経理支出に関与していた。
原告G (音楽家)は,教務部長として,従業員の採用につき学院長に意見を述べ,部内従業員に対して指揮する立場にあり,音楽講師の雇用につき人選に従事し,部内従業員,音楽講師の人事評価を学院長に報告していた。
他の従業貝と同様に,タイムカードで出退勤時刻が記録されており,出勤時刻は午前8時30分の少し前であった。G, Hとも, 請求期間において,基本給月額約30万円,役職手当月額約10万円。
モルガン・スタンレー・ジャパン(超過勤務手当)事件
東京地裁H17.10.19
労判905号5頁
国際的な総合金融サービスグループであるモルガン・スタンレーの日本拠点として,企業・機関投資家を対象とした株式・債券のセールス及びトレーディング業務並びに資金調達やM&Aアドバイザリー業務を中心とする投資銀行業務,投資関連情報の提供サービスなど幅広い金融サービスを提供している外資系証券会社。
プロフェッショナル社員のうちのED(エグゼクティブ・ディレクター)の資格を有するものとして,外国為替本部において外国為替関連取引,就中フラット為替(フラット為替とは,先物相場の性格を利用して,一定期間内に一定のレートで外貨を売買する取引であり,これにより為替変動リスクを回避することができる)を中心とした営業に従事していた。会社は原告の勤務時間を管理しておらず,原告の仕事の性質上,原告は自分の判断で営業活動や行動計画を決め,会社はこれに対し何らの制約も加えていない。
会社が原告に対し入社の際交付したオファーレターによれば,所定時間を超えて労働した場合に報酬が支払われるとの記載はされていなかった。
原告の給与は高額であり,原告が本件で超過勤務手当を請求している平成14年度から同16年度までの間,基本給だけでも月額183万3333円(2200万円÷12=183万3333円)以上が支払われていた。
原告が所定時間外に労働した対価は,基本給の中に含まれていると解するのが相当。
岡部製作所事件
東京地裁H18.5.26
労判918号頁
プラスチックの成形・加工等を業とする株式会社で,数か所の工場を運営。
否定1工場の営業開発部長として,営業商品開発等を担当。業務をほぼ1人で遂行し,直属の部下はいない。
各部門の状況報告等が行われる経営者会議には参加していたが,経営方針等の決定は取締役会でされていた。
他の多くの従業員と異なり,タイムカードは使用されていなかったが,これは,通勤時間との関係で出退勤時刻を他の従業員より30分ほど遅らせており,タイムカードの自動処理になじまなかったため。休日出勤の際は,事前に工場長の許可を得るように指示されていた。基本給月額34万円(但し,請求期間中に減額),管理職手当11万円.。
アクト事件
東京地裁H18.8.7
労判924号50頁
運営する関連企業数社が各飲食店を経営。本件店舗には店長,マネージャー,サブチーフ,料理長アルバイトがいた。
否定店舗マネージャーとして, 店舗アルバイトの採用・シフト等につき決定権を有していたが,店長を補佐するに留まり,最終的な決定権限を有していなかった。
下位従業員の賞与等の査定に関与していたが,意見を述べるに留まり,最終決定権はなかった。
会社の定例幹部会に参加していたが,代表者等による報告が大半を占め,会社の人事・経営に関する重要な決定に参画していたとはいえない。
店舗でのメニューの決定,売上目標について,意見を述べることはあったが,最終的には会社代表者の意見が尊重されていた。
店舗の営業時間は, 会社が決定しており,各店舗で変更することは可能であったが,マネージャーに決定権限はなかった。
マネージャーの勤務時間従業員のシフトは,店長又はマネージャーが決定していた。
店長,マネージャーは,営業時間中,いずれかが店舗にいる必要があり,早番又は遅番で勤務していた。
基本給は,管理職でも,一般職上位者より低額の者がいた。
役職手当は,月額9万5000円であったが,一般職に支給される定額の時間外深夜手当との差は月額1万円~2万5000円であり,マネージャーとサブチーフとの差は月額1万円~1万5000円であった。
職能手当は,月額5万円であったが,一般職との差は平均的にみて2万円程度であった。
PE&ER事件
東京地裁H18.11.10
労判931号65頁
投資・経営コンサルタント業を行う株式会社。従業員数10名に満たない規模の会社
否定パートナー。パートナー以外の一般従業員は存在しない。
部下はいない。ライン管理職ではないスタッフ職。
会社の管理部門の仕事としては経理・労務担当,営業部門の仕事としてはオフィス担当。
就業規則なく各人が会社の仕事を分担。
管理者と事務担当者の職分が未分化の勤務実態。
出退勤時刻の厳密な管理はなされていないが,出勤日には社員全員が集まりミーティングでお互いの出勤と当日の予定を確認し合う実態から勤務面における時間の自由の幅は余りないか狭い。月額28万円で管理職手当等の特別の手当なし。他にプロジェクトインセンテイブとあるが原告への給与支給実績は上記28万円のみ。
新卒者の月額給与が25万円とされていることとの比較から管理監督職に見合うものといえない。
ネットブレーン事件
東京地裁H18.12.8
労判941号77頁
情報産業(コンピュータ,関連機器の設計,導入,運用に関するコンサルティングやソフトウェアの輸入,開発,販売及び情報処理)を行う株式会社。本社のほか2事業所あり。
否定課長補佐の役職にあり,技術部オープンシステム課のシステム開発を担当していた。
会社の経営方針の決定に参画する立場になし。
被告の中核事業である某社とのプロジェクトの統括者として請け負い作業の配分,スケジュール調整等の労務管理上の指揮について一定の権限を有していたものの,従業員の採用権限までを有していたとは認めがたい。
出退勤を管理するコンピュータソフトに毎日入力を求められていた。
出退勤について厳格な規制は受けていないものの,自己の勤務時間についての裁量権があるとはいえない。
役付手当3万円。特別加算金(退職金相当額) 1万円。月例賃金合計38万円
課長補佐になりそれ以前の毎月の時間外手当額を上回る9万円基本給の増額
被告との間で役付手当及び基本給の大幅な増額を条件に時間外割増賃金は請求しない旨の合意あり。しかし,権限と責任も重くなっているから差額9万円がそれを含むとは解されない。
センチュリー・オート事件
東京地裁H19.3.22
労判938号85頁
オートサービス業,自動車の修理及び整備点検,損害保険代理業を行う有限会社。
肯定営業部長の役職にあり,営業部には原告を含めて9名の社員がいた。
営業部に所属する従業員の出欠勤の調整,出勤表の作成,出退勤の管理といった管理業務担当。
経営会議やリーダー会議のメンバーとして出席していたが,代表者と各部門責任者(5~6名)のみ構成員。
営業部長という重要な職務と責任を有し,営業部門の労務管理等につき経営者と一体的な立場にあった。
最終的な人事権が原告に委ねられていたとはいえないものの,営業部に関しては部門長の原告の意見が反映され,手続・判断の過程に関与していた。
(会議で意見を発した場合の影響力の有無などの事情はさほど重視すべきでない。)
遅刻・早退等を理由として原告の基本給が減額されることはなかった。
タイムカード打刻していたとの事実のみから労働時間が管理されていたとはいえない。
給与の額は,代表者,工場長に次ぐ高い金額であった。
基本給37万7500円~38万円,役付手当3万円,資格手当3万円。
経営幹部として処遇されていた。
セントラル・パーク事件
岡山地裁H19.3.27
労判941号23頁
ホテル業を行う同族株式会社。駐車場や軽食喫茶店も一時経営していた。
否定料理長として,ホテルレストラン等の料理の企画,実行及び他の料理人の指揮・監督。料理人は原告含めて5人であった。
営業時間に合わせて原告が各料理人の勤務時間割を定めてシフト表作成するも,料理長としてのほか,自己作成のシフト表に基づき料理の仕事もした。
料理人の募集や採用手続には関与していたが,採用や解雇の権限・実績はなく,社長の判断による。
専務,宿泊責任者及び料理長原告の3人による営業会議に参加していたものの,各料理人の昇給決定や被告の労務管理方針の決定に参画していた形跡はなく,同族会社の経営者と一体的な立場にあったとは認めがたい。
料理人の人員体制から自由に出退勤時間を決めたりすることは実質的には困難であり自由裁量が認められない。基本給11万4400円,職能給20万2200円,役職手当2万円,資格手当1万円の計34万6600円。従業員中では最高額。
給与面の待遇は被告内においては高いものであったがその故をもって管理監督者に該当するとはいえない。
姪浜タクシー事件
福岡地裁H19.4.26
労判948号41頁
旅客運送業を営む株式会社。
肯定営業次長の役職にあり,被告における3人の営業次長のうち筆頭次長で,営業部にはそのもとに200名余りのタクシー乗務員が管理される体制であった。
営業部次長として勤務シフト作成して終業点呼や出庫点呼等を通じて多数の乗務員を直接に指導・監督する立場にあった(乗務員の労務ないし乗務の管理は営業次長が判断)。乗務員の募集も面接に携わって採否に重要な役割を果たし,出退勤も唯一の上司B専務から何らの指示も受けていない。経営協議会のメンバーで,被告の代表として会議等へ出席していた。これらを総合考慮して管理監督者に該当すると認めるのが相当である。
出退勤時間について特段の制限を受けていない。会社への連絡のみで退社ができる状況にあったもので出退勤時間の自由があった。相応の責任ある地位に就いていた。
月額39万4000円(基本給36万4000円役職手当3万円),年収700万円余りで従業員の中で最高額。
山本デザイン事務所事件
東京地裁H19.6.15
労判944号42頁
広告・印刷に関する企画・製作及び販売業を営む有限会社。
否定コピーライター。
被告の業務のほとんどがA株式会社の発注する広告製作。A会社が広告代理店に発注し,被告が下請していた。原告は広告代理店の指示に従っていた (被告の業務命令ゆえ指揮監督下)。
遅くとも10時までに出社することとされていた。
自己の裁量があったとはいえない。
タイムカードあり。
役付手当3万円。時間外手当分として控除
マイクリックス事件
大阪地裁H19.8.31
労判950号86頁
コンピュータのハードウェア及びソフトウェアの企画開発製造及び販売等を行う株式会社。代表者のほか原告ら3名の技師と営業職従業員1名からなる。
否定原告Aはプロジェクトリーダー,原告Bはソフトウェアの開発業務を行い,原告はA技術開発部技師,原告Bはソリューション技術部技師として勤務していた。
各従業員の年俸額賞与の支給時期とその割合等は,被告代表者が決定し,原告らの関与なし。
業務の性質上,時間管理は比較的緩やかで,遅刻や早退が減給の対象にされることはなかったが,自由裁量を有する立場にあるとはいえない。代表者の給与が30万円,原告Aが42万円以上,原告Bが36万円以上。給与が比較的高額であることのみをもって,労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にあるということはできない。
ハヤシ(くも膜下出血死)事件
福岡地裁H19.10.24
労判956号44頁
産業用ロボットの製作等を目的とする資本金2000万円の株式会社であり,本社の事務所及び工場以外に,筑後工場,吉塚工場を有している。
肯定製造部部長。代表者,工場長次ぐ三番目の役職。
具体的業務は,主に見積業務及び生産管理業務であり,製造部部長として製造部全体を指揮監督し,製造一課の従業員の労務管理を行うことであった。また,時期によっては品質管理の基準書の作成や品質管理の内部監査という業務を行っていた。
出退社時にタイムカードを打刻し,日報に毎日の勤務時間を記録していた。毎月12万円の管理職手当支給,年収718万余円等。
トップ(カレーハウスココ壱番屋店長)事件
大阪地裁H19.10.25
労判953号27頁
飲食店経営を行う株式会社で,フランチャイズ・チェーン展開するフランチャイザー会社とフランチャイズ契約を締結してフランチャイズ店数店を経営。
否定フランチャイズ店店長。
店長会議が定期的に開催されていたが,原告の出席率は悪かった。
スーパーバイザーの監督を受けていた。BS等級基準表改訂の前後を通じて原告の業務内容に変化が認められない。
BS等級基準表の改訂前後を通じて労働時間の管理を受けていた。店長になる前は独立を支援するBS(ブルームシステム)等級11級からスタートし,6等級に進級。店長になって5等級にその後3等級に進級。
会社はBS社員等級4級以上の社員に定額ではあるが当該基準表改訂前は残業手当を支給していたのに,改訂後は支給しないことにした。本部直属のスーパーバイザーがフランチャイジーの経営する店舗を抜き打ち視察し, BS等級の認定が相当かどうかチェックしていた。
丸栄西野事件
大阪地裁H20.1.11
労判957号5頁
衣料品等のブランドのロゴ開発,タグのデザイン,製造,販売業を行う株式会社。
否定デザイナー職として,本社(従業員20~25名)の企業営業グループ(4名)に所属していた。
採用面接担当,企業営業グループ所属従業員の昇給について意見を述べ,有給休暇を取りまとめ。アートディレクターの地位。総合考慮しても管理監督者性を否定。
原告の業務が時間管理が困難なものとはいえない。 タイムカードや勤怠管理表が導入され,日報として被告のGMに送信されていた。他の社員が8.5万~12.4万円に対し,高額の職制手当15万4000円,基本給11万5700円で合計26万9700円。
しかし月々の時間外労働の時間数に見合うほどに高額とはいえない。賃金のみが管理監督者性を基礎付けるものではない。
日本構造技術事件
東京地裁H20.1.25
労判961号56頁
建設コンサルタント業の株式会社。従業員30余名。
否定原告Aは取締役技術本部長であった。
その他の原告らは技術部長,次長課長,課長補佐支店技術部次長,課長。
原告Aは取締役会のメンバーとして会社の経営に深く関与。当時の経営の重要事項であるリストラクチュアリングの方針決定に原告Aは参画。その他の原告は参画していない。
原告A以外の者は出退勤管理にタイムカードや労働時間のデータ管理がされていて,時間的拘束を受けている。原告Aは給与につき従業貝分と役員分あり。課長補佐以上には管理職手当が付く。
原告Aも技術本部長に降格後は管理監督者性を否定。
日本マクドナルド事件
東京地裁H20.1.28
労判953号10頁
飲食業(ファーストフードチェーン店経営)を営む株式会社。店舗数3802店(内直営店2785店)。
否定店長。
店長より上位の社員277名,店長1715人,アシスタントマネージャー及びマネージャートレーニー2555人,スウィングマネージャー1万9870人,クルー10万1152人。
店長はクルーの採用,昇格,昇給権限を有し,店舗勤務社員の人事考課の1次評価を行うなど労務管理の一端を担っているが,各店舗の勤務スケジュール作成,三六協定や就業規則変更時の意見聴取における使用者側担当者,店舗の損益計画や販促活動,一定範囲の支出などに決済権限あるといっても店舗内に限られている。経営者と一体的な立場の権限と責任を付与されているとは認められない。
自らスケジュール決定権限,早退・遅刻に上司の許可必要ないなど形式的には労働時間決定に裁量があるといっても,勤務体制上の必要性から自らシフトマネージャーとして勤務するなど長時間の時間外労働を余儀なくされているから労働時間に関する自由裁量性があったとは認められない。
時間外労働が月100時間を超える場合もある。
基準給31万円(固定),S (店長全体の20%),A (30%),B (40%),C(10%)の4段階評価手当がS10万,A6万,B3万,CO円。年収がS評価779万2000円,A評価696万2000円,B評価635万2000円,C評価579万2000円。他に一定の業績達成条件にインセンテイブプラン支給があるが店長に限らない。店長の平均年収が非管理職の下位職制より約117万円高いといっても店長全体の10%の年収は下位職制の平均を下回り,40%は44万円上回るに留まる。
播州信用金庫事件
神戸地裁姫路支部H20.2.8
労判958号12頁
信用金庫(支店)
否定K支店代理職(支店には支店長,代理職及び調査役の3人が管理職),渉外担当の総合職7名,内勤担当の営業職4名,内勤担当のパート従業員2名の16名。
店舗外に出て行う預金受入れ,貸付け等の渉外業務の責任者。部下である渉外担当職員に対する指示・相談。人事評価を支店長に意見できるも書面として残らず重要性低く制度的組織的なものといえない。
支店長不在の時は支店長会議に参加するも支店は60店舗あり,報告会に過ぎない。参加していた経営者会議は懇親会の色彩。支店の経営方針の決定や労務管理に関し,経営者と一体的な立場にあったとはいえない。
職員全員にタイムカードなし。一般職には出勤簿(出退勤時刻記載なし)あるが管理職にはなし。
金庫を調査役と2人で開閉のため出勤時刻が午前7時30分前後退勤は午後7時30分前後。 自由な中抜けできず自由裁量なし。
役付手当3.5万円。特別残業手当3万円。
調査役には時間外勤務手当あり。
調査役との給与差が7000円に過ぎず,管理監督者たる地位にふさわしい給与が支給されているとは評価できない。
日本ファースト証券事件
大阪地裁H20.2.8
労判959号168頁
証券会社,従業員349名。本社のほか8支店。
肯定支店長として,大阪支店の30名以上の部下を統括する地位にあった。
従業員349名中,執行役員3名,部長1号11名,副部長1号2名で,原告の職責は上位15ないし16番目に当たる。
営業計画・予算案・支店内業務分掌の立案,要員補充の申請,係長以下の社員に対する人事考課の実施,支店内規律維持・管理。1件10万円以下の資産購入・修理,証拠金請求や不良債権管理など各種の営業管理,信用取引行う顧客調査など各種顧客管理等。
自らの経営方針や営業方針に沿うように社員配置や支店内組織変更を実施,毎月各支店長と役員が出席する責任者会議へ出席,事業経営上重要な上位職責にあり,支店の経営方針を定め,部下を指導監督する権限を有し,中途採用者の実質的採否権限あり,人事考課を行い,係長以下の人事を原告の裁量で決することができ,昇格降格に相当な影響力を有していた。
原告の出欠の有無や労働時間は報告や管理の対象外であった。基本給33万円,職務給8.5万円,役務給8.5万円,職責手当(副部長1号)25万円,営業手当7万円で月給82万円となり,店長以下のそれより格段に高い。
副参事1号の職階は全従業員中上位7ないし9番目に当たる。
職責手当は係長以上に支給され,原告の部下の店長が20万円,次長が10万円,課長が2万円の上限となっている。
月額80万円以上の給与は職務と権限に見合った待遇である。
エイテイズ事件
神戸地裁尼崎支部H20.3.27
労判968号94頁
衣料品等のデザイン,製造,販売業を営む株式会社。
否定生産統轄本部の技術課課長,技術課には課長のほかに平社員3名,パート5名が所属していた。
被告に役職者は部長1名課長2名(原告含む。)しか存在せず。
原告も現場のプリント作業を直接担当していた。業務量に応じ一部を外注する先の業者の選定,部下の第1次的な人事考課から,原告は現場の職長という立場に過ぎず,職務内容,権限及び責任などに照らし,管理監督者とはいえない。
経営会議において,原告が会社の経営についての重要事項に関して何らかの積極的な役割を果たしたと認められる証拠はない。
就業規則の始業午前9時,終業午後6時とあり,原告はこの時間帯には会社にいるか,製品の発注のため取引業者との打ち合わせなどの業務に従事していた。基本給11万6800円~11万8800円,役職手当12万円で月例給与38万5200円~39万3200円。
バズ(美容室副店長)事件
東京地裁H20.4.22
労判963号88頁
美容室の営業を行う有限会社。
否定副店長。
店長不在が多く代表者と副店長の原告で店舗を経営し,代表者不在のときは従業員の先頭に立ち会社の業務運営を執り仕切っていた。
代表者,店長,副店長,チーフ,サブチーフ,アシスタントチーフが参加する幹部会議に参加。従業員の採用や昇格の是非を決し,業務状況について報告を受けていた。
賃金の改定につき代表者から諮問受けたことがあった。副店長に新人採用の権限はなく,最終的には代表者が決めていた。
会社の経営,人事,労務管理等への関与は限定的であった。
美容室の営業時間と予約の最終受付時間によらず,顧客の予約をふまえ,出退勤時刻を調整していたが,出社時にはタイムカードに刻印あり,遅刻罰金制度の対象となっていた。パソコンで勤怠実績一覧表を作成していた。
自らの労働時間について会社による出退勤管理を受けていた。
職務手当2万円,家族手当4万円。原告を含むスタイリストは基本給のほか売上によって左右される歩合給あり。職務手当はアシスタントリーダー(1万ないし1万5000円)や経理担当者も支給を受けていた。
職務手当2万円の支給は格別の金銭的処遇を受けていたとはいえない。
ゲートウェイ21事件
東京地裁H20.9.30
労判977号74頁
留学・海外生活体験商品の企画・開発・販売等を業とする株式会社。
否定支社長。
支社の人員は従業員8名ないし時期によっては最大17名程度。
勤務シフトの作成業務等にも従事で一応部門全体の統括的な立場にはあると認定した。
支社長は被告で部長相当で,営業部門で最上位の職階。取締役会は機能しておらず社長が一切の決定権,原告はそれを補佐する存在の支店長会議に出席するも業務報告中心で決定権限なし。支社の組織編成等は支社には決定権なく本社から指示。支社の従業員採用では面接に立ち会うなど一定権限はあったが,支社長単独では決定できず本社の稟議決裁による。物品購入も同様。勤務シフト作成等労務管理上の決定権あるも勤務番の割り振りが中心で,裁量権は狭い。人事考課の権限なし。
タイムカードによる勤務時間管理はなされていない。
事実上社長から時間管理されており,出退勤について十分な裁量権があったとは認められない。
基本給21万円前後でさほど多いといえない。資格手当2万円,お客様評価給3万~70万円と大きく変動で成績見合の歩合給で時間外手当見合のものではなく,給与支給総額も27万~100万円前後と大きく変動。
スライド制と称して部下に上司の分のお客様評価給がまわるなど,職責や高い地位に見合ったものとする性格付与されていない。
時間外手当が支給されないことを十分に補うだけの待遇を受けていない。
アイマージ事件
大阪地裁H20.11.14
労経速2036号14頁
カラーコピーサービス業務及びコンピュータのプリントアウトサービス,広告,出版及び印刷業等を営む株式会社。
否定店長として勤務。
入出金の管理は行っていたが,従業員の採用,従業員の給料の決定を行っていた事実はない。原告が従業員の採用面接を行ったことはあるが,採用決定は,上司が行っており,給料の決定は,被告代表者が行っていた。
タイムカードにより勤務時間管理を行っていたが、原告が打刻をしないことも多かった。
自由に出退勤していた事実はない。
基本給月額20万円,職務手当月額1万円,営業手当月額5万円。
他の従業員らに比べると好待遇であるとはいえ,店長であることを超えて管理監督者としての地位にあることを裏付けるものとしては不十分。
JFEスチール(JFEシステムズ)事件
東京地裁H20.12.8
労判981号76頁
自動車メーカー向けのシステム開発等を行う株式会社。
否定プロジェクトマネージャー。
単に開発計画,実行予算の見直し案を立案しうるにすぎず,その決定権限は上司が有していた。
労働時間の申告義務は課せられていなかったものの,業務量及び労働時間を自己の裁量で調整する権限を有していなかった。格別の賃金等の待遇を受けていた事実は認められない。
ニュース証券事件
東京地裁H21.1.30
労判980号18頁
証券会社,株式会社。
否定会社は時間外手当が支給されないことは証券営業マンの慣行と主張。
試用期間中の営業職。
営業担当部署であるウエルスマネージメント本部で肩書は課長とされた。
経営会議に出席するなどして会社の人事や経営に関与する権限なし。新卒従業員の採用や部下の人事考課権を有していたとの事情もない。その職務の内容,権限,責任等に照らすと,労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者とは認められない。
午後7時10分ころに終わる終礼の時刻以前に勤務が終わることはなかった。給与は当初65万円,その後営業成績不振を理由に25万円に減額。
賃金は就業規則によれば基本給と業績給。
京電工事件
仙台地裁H21.4.23
労判988号53頁
電気工事業・通信設備工事業・配管工事業及びこれに付随する一切の業務を業とする株式会社。当時の労働者数は46名であり,主に携帯電話の屋外鉄塔の工事を営業内容としていた。
否定技術管理職,係長。
東北6県及び新潟県の現場で電気通信設備工事に従事していた。
労働時間管理はタイムカードで行われており,原告は,出退勤時にタイムカードを打刻していた。基本給のほかに時間外手当が定額で実際に支払われていた。
シン・コーポレーション事件
大阪地裁H21.6.12
労判988号28頁
カラオケボックス等娯楽遊技施設を経営する株式会社。1500ないし1700名程度の正社員及びアルバイトが在籍。
否定カラオケ店の店長。
各店舗には通常,店長である正社員が1名,アルバイト従業員が10~20名。アルバイト従業員の地位にありながら店長の地位にある者もあった。
経営方針は週1回の代表者とエリアリーダーが集まる会議で決定。
店舗における金銭管理(被告ではPOSシステム機能付レジスタで出退勤管理),在庫の仕入及び管理顧客管理等の責任者の地位にあったが,経営事項への関与は相当程度限定的。
店舗賃料,人件費は本社管理,メニュー決定権,備品購入は会社。エリア会議や全国営業会議への参加あるも経営参加の要素なし。全社的経営に関与なし。
労務管理ではアルバイトの人事権(募集要否判断,募集広告掲出,求人計画策定権,応募者採用面接,採否,シフト作成,教育,昇給上申といった権限)あるも,労務管理の権限も限定的。時給決定の最終決裁は本社,原告は意見上申に留まる。
就業規則や基本シフトによって勤務が原則として固定され,罰金制による強い強制の下で月間の所定労働時間が210時間と決められていたから,原告の裁量は相当に制限されていた。基本給17万2000円~21万円,店長手当3万円,見倣残業手当6万円で支給合計が29万3500円~41万3500円。
アルバイト従業員の給与と比較しても時間外手当や深夜手当を支給されていない管理監督者にふさわしい処遇か疑問。
ディバイスリレーションズ事件
京都地裁H20.9.17
労判994号89頁
飲食店の経営を目的とする株式会社。
否定原告6名は被告店舗の調理場で勤務。
原告のうち1名は料理長として,同店舗従業員のシフト表作成等を行っていた。アルバイトの採用については面接を行っていたが,採否の最終的な決定は原告の報告を基に統括料理長が行っていた。また,正社員の採用や昇給について原告が面接をしたり,決定することはなかった。なお,店舗の金銭管理は店長が行っていた。
パソコン上の就業月報やタイムカードに出勤時刻・退勤時刻,休憩時間を打刻していた。
休日は1か月に6日と定められ,長時間の勤務を行っていた。
料理長の賃金は他の従業員に比べると多いが,他の従業員も時間外・深夜労働に対する割増賃金がない前提であり単純に比較するのは相当でない。
ボス事件
東京地裁H21.10.21
労判1000号65頁
コンビニエンスストアを経営する株式会社。
否定店長ないし副店長。
社内で店長7名,その中で中位。
正社員だけでなくアルバイトの募集採用,解雇について実質的な権限なし。人事考課,労務管理も同様。
店舗勤務のシフト表作成するも,実際に勤務管理するのは本部。
自らの出退勤もタイムカードによって会社に管理され,遅刻によって不利益な処分を受けたこともある。基本給15万円,職務手当は店長時10万円,副店長時5万円。
賃金面での待遇が,その勤務時間及び金額に照らし,役職者以外の者と比べ時間外手当を支払わなくとも十分といえるほど厚遇されているともいいがたい。
稲沢市(消防吏員)事件
(第2審)
1審判断に付加して維持
名古屋高裁H21.11.11
労判1003号48頁
公務員(消防吏員),地方公共団体(市)
否定管理職員として主幹・副主幹の地位にあった。
被告の給与条例上「管理又は監督の地位にある職員」とは労基法上の管理監督者と同義と解される。
組織上管理職の一端を担い,自ら指揮命令を行った。
人事関係等の決裁権限を有さず,重要な意思決定に関与なし。むしろ,部下である一般職の消防吏員と一体となって同様の職務に従事。
実際の勤務態様や職務内容・職責の重さにおいて管理監督者には該当しない。
タイムカード等による出退勤管理を受けていないが,24時間の拘束を受ける一般の消防吏員と同じ勤務形態で交替制に従事するなど所定勤務時間が厳格に定められ,場所的にも一定の拘束受けるので労働時間規制になじむもの。管理職手当の額は管理監督者としての職務内容や職責に見合った額であるものの,管理職手当の額は一般職員と比べてさほど優遇されているとはいえない。
報酬の額の多寡によって管理監督者該当いかんが左右されるものではなく,他との比較において十分でない。
ことぶき事件
深夜割増賃金も含めて管理監督者性を肯定して請求棄却した原審破棄差戻し
最高裁H21.12.18
労判1000号5頁
理美容店を経営する株式会社。
肯定総店長で,代表取締役に次ぐ,ナンバー2の地位にあり,会社の経営する5店舗の店長を統括していた。
(第1審):毎月店長会議に出席。特殊技能を要する職業であって,顧客がいない場合実質的には休憩時間となることも少なくない理美容業の勤務形態から特段の事情がない限り会社が原告に時間外手当を支払っていなかったとしても不当な事情に当たらない。
(第2審):総店長として,名実ともに労務管理について経営者と一体的な立場にあった。労基法に定められた規制の枠を超えて活動することが要請されざるをえない重要な職務と責任を有していて規制になじまない立場にあったとして管理監督者に該当する。
原則午前10時に出勤午後8時に退社していた。
(第1審) : 1日当たり1ないし2時間程度の時間外労働をしていて,当該時間外労働手当を支払っていなかったとしても不当とする特段の事情はない。
店長手当3万円,賃金は他の店長の1.5倍程度。月額給与43万4000円,その後39万0600円。
店長手当として他の店長の3倍に当たる月額3万円の手当。基本給も1.5倍で,総店長として不十分とはいえない待遇であった。
グルメ杵屋事件
大阪地裁H21.12.21
労判1003号16頁
和食・洋食レストランの企画・経営を事業内容とする株式会社。
否定飲食店店長。
店舗全体の確認,パートらへの指示・指導,年間・月間・日割予算の作成,損益計算書の作成,基本シフトの作成,原材料の仕入れ,仕込み・廃棄処分・清掃・整備の指示と確認,接客の先頭に立ち苦情処理を行うこと,伝票整理・日報の記載・レジ精算のチェック,月に一度の本社での店長会議に出席すること,月に一度の棚卸しなどの店長業務を行っていた。また,パートらの採用やシフトの決定等の労務管理を行う権限を有していた。
自己申告による出勤表を会社に提出していた。
東和システム事件
(第2審)
管理監督者性については1審判断維持
東京高裁H21.12.25
労判998号5頁
ソフトウエア会社。

株式会社で,従業員約430名。
否定課長代理職(システムエンジニア)で,課長代理以上の職位にあった者は約120名。
新職制で課長と副長に別れたが原告は副長として従前通り課長代理の地位にある。
被告は職制上の地位ではなく特定業務における地位であるプロジェクトリーダーとしての権限,地位を主張する。
原告が常にプロジェクトリーダーの地位にあるわけでないので当該地位の管理監督者性を検討するのは疑問。プロジェクトチームの構成員を決定する権限はなく,パートナーと呼ばれる下請会社を決定する権限もなく,それらは職制上上位にある統括部長,部長,次長等が決定している。原告はプロジェクトのスケジュールを決定することもできず,顧客先会社が決定し,作業指示も同社の決定した計画表によるから,この程度では部門の統括者とはいえない。
部下であるチーム構成員の人事考課,昇給,処分や解雇を含めた待遇の決定権限も認められない。
自己の出退勤についての決定権限もなかった。課長代理としての職務手当1.5万円,特励手当(基本給の30パーセント)。
康正産業事件
鹿児島地裁H22.2.16
労判1004号77頁
飲食店及びレストランの経営等を目的とする株式会社で,鹿児島県内を中心とする九州地方において,飲食店約50店舗を経営。
否定支配人。
店舗全体の責任者として,勤務スケジュール表の作成,パート人員の募集及び面接,各種報告書作成,クレーム対応,宴会予約獲得のための訪問営業,支配人会議への出席等を行っていた。
しかし,原告が▽▽店に課せられた目標人件費率の枠を超えて自分の判断で自由に人件費を支出できるわけではなかったから,実質的にみれば,従業員の新規採用や従業員の勤務時間の延長に関する原告の裁量は,形骸化していた。また,店舗責任者である原告の要請にもかかわらず,正社員が補充されなかったことからすると,原告X1には▽▽店に配置する正社員の人数を決定するような権限は一切なかった。
出勤時,休憩に入る時,休憩から戻る時,退勤時の1日4回,店舗備付けのパソコンに各自の社員コードを入力することになっており,これが当該従業員の出退勤及び休憩時間のデータとなる月3万円の役職給
デンタルリサーチ事件
東京地裁H22.9.7
労判1020号66頁
歯科を中心とした医療に関する情報処理サービス業及び情報提供サービス業等を目的とする株式会社。
否定不動産事業部部長。
不動産事業部には当初原告のみが所属し,独立開業を考えている歯科医師に対する不動産物件の紹介,同物件の賃貸借契約書の作成・チェック,市場調査や事業計画の策定,融資手続や開設に必要な書類作成,諸手続の代行等を一手に行っていた。不動産事業部には,平成14年ないし15年ころの間原告の他に1名従業員がおり,平成18年10月以降はCが在籍していたが,それ以外は原告1人で上記各業務に従事していた。原告が,Cなど不動産事業部所属の従業員の労務管理や,人事考課を担当していたことはない。
タイムカードで労働時間の管理がなされており,各従業員は出社時と退社時にそれぞれタイムカードを打刻することになっていた。営業の現場に直行したり,現場から直帰する場合にも申請書を提出する建前となっており,その労働時間に関し自由に決めることが許される立場であったともいえない。原告は,より勤続年数の長いGよりも多くの給与を受け取っていたもので,代表者に次いで多額の報酬を受け取っていたが,時間外手当が支給されないという面を十分に補うだけの待遇を受けていたかは疑問である。
シニアライフクリエイト事件
大阪地裁H22.10.14
労判1019号89頁
高齢者を対象とした弁当の宅配事業及び店舗における弁当総菜の小売り事業について,フランチャイズシステムの管理運営を業とする株式会社。
否定開発部開発課長,部下2,3名。
お弁当の宅配事業に係るフランチャイズ契約(加盟店)を獲得するための営業を行っていた。同営業活動とともに課長として,課内の政策及び実行施策を策定し,それを実行し,顧客管理をし,政策実行のための予算組みをしたりした。
勤怠管理簿で従業員の労働時間の管理を行っていた。月額44万円の基本給。
レイズ事件
東京地裁H22.10.27
労判1021号39頁
不動産業を営む法人。
否定営業本部長。
宅地建物取引主任者の資格を有しており,同資格を活用する形で,不動産の仲介,販売等の業務に従事していた。業務内容は他の一般社員(営業担当社員)と異なるところはなかった。部下の査定に実質的に関与していたと認めることはできない。
出退勤をタイムカードに打刻していた。基本給のほかに役付手当15万円を支給。
しかし,原告X1の基本給は23万円であり,他の従業員(ただし,月給制であって出勤日数が同程度の者)と比較しても,基本給はそれほど多いわけではない。
モリクロ(懲戒解雇等)事件
大阪地裁H23.3.4
労判1030号46頁
各種めっき加工及び金属表面処理業を主たる業務とする会社。
否定品質管理部課長(原告F)とクロム部門の課長(原告D)ではあるものの,同原告両名の上司としては,さらに,総括部長や製造部長・工場長が存在し,これら上司の指示を受ける立場にあった。経営会議への出席が可能だったとはいえ,部下に対する労務管理上の決定権等について一定の裁量権を有していたとは認められない。後輩の指導をしていたとはいえ,部下に対する人事考課等の重要な職務と権限が付与されていたとも認められない。タイムカードを打刻しており,就業時間が管理されていた。比較的高額の管理職手当が支給されていた。
エス・エー・ディー情報システムズ事件
東京地裁H23.3.9
労判1030号27頁
コンピューターのソフトウェア開発と販売,情報処理サービス業務及び情報提供サービス業務等を業とする株式会社。
否定「上級プロジェクトマネージャ」の肩書きで入社し,プロジェクトマネージャとしてソフトフェア開発業務に従事していた。危機的状況にあったA社業務における品質確保及び進捗管理(業務遅滞の軽減ないし解消)に関する業務にプロジェクトマネージャとして従事するために,被告に急遽入社したのであり,被告に長期間勤務する予定はなかった。従業員自身の申告(メール送信)によって行われていた。
原告も労働時間自己申告を取りまとめたもの(本件月間実績報告書)が作成され管理されていた。原告は,本件月間実績報告書の点検及び確認を行い,その際,本件月間実績報告書の欄外に押印していたが,形式的に点検・確認していたのが実情であった。原告を含む従業員は,作業の進捗状況等を踏まえて,可能な場合には,出勤時間等を適宜調整しており,そのことを被告及びA社(A社F)は事前ないし事後に了解していた。
原告が従業員の労務管理において広範な裁量権を有していたとは解し難く,A社から被告に対し,時間外労働の抑制が求められる状況にあった。
①基本給30万円,②職務手当12万5000円,③住宅手当2万円及び④食事手当5000円の合計45万円と,他の従業員(就業規則は,通常「主任手当」1万円の支給を予定している。)に比べて,相応の厚遇を受けていた。被告は,A社に対して委託料を請求する際,本件月間実績報告書を使用しており,A社に本件月間実績報告書を提出し,本件月間実績報告書に記載された「作業合計」時間に基づき,業務委託料の請求ないし調整を行っていた
技術翻訳事件
東京地裁H23.5.17
労判1033号42頁
翻訳,印刷及びその企画,制作等を行う株式会社。
否定制作部次長で,経理部長,営業部長と並ぶ高位の役職にあった。
制作部の業務は,受注した翻訳対象の原稿を翻訳者に割り振り,できあがった翻訳文をチェックし,発注者に納入する作業であるところ,原告は,制作部のトップとして当該業務を統括し,自らを含む制作部の5名の仕事の割り振りは原告が決めていた。また,原告は,依頼を受けた翻訳案件について,外部の翻訳者の中から適任者を選定した上,その者に対し翻訳料と納期を定めて翻訳を発注する責務を専属的に担っていた。さらに,原告は,制作部のトップとして,制作部員の採用,新規翻訳者の採用といった人事面についても相応の権限を有しており,殊に,後者については専門家である原告の判断が尊重されていた。
役職者全員(会長,社長,経理部長,営業部長,制作部次長)で構成される「代表者会議」が月1回開催され,原告はそのメンバーであったが,会社の経営に関する意思決定について,F営業部長や原告を交えた討議がされるというわけではなかった
出退勤の際にタイムカードを打刻していた。なお,E経理部長とF営業部長は,タイムカードの打刻を行っていなかった。
原告が遅刻した際には,遅刻1時間あたり1580円の減給処理がされていた。
基本給27万2600円,職務手当9万6000円,家族手当2万6800円,役職手当5万6000円,住宅手当3万円の合計48万1400円が支給されていた。
休日出勤をした際には,休日労働時間を基準に算定した休日手当が支給されていた。
原告の在職当時,役職のない従業員の中には,時間外手当を支給されることにより,原告以上の給与を支給されている者もいた。
シーディーシー事件
山形地裁H23.5.25
労判1034号47頁
居酒屋等の経営を目的とする会社。
否定調理場スタッフ。
本件店舗の調理場スタッフは原告を含め4名であったが,その中では,原告が最も経験が長く,技術的にも優れていたため,原告が作業の指示をしていた。人事について,ホール部門の従業員の面接はO店長が,調理場スタッフの面接は原告が行い,調理場スタッフについては調理師としての技能を含め,その採否の報告をそれぞれ本社に対してしていた。また,調理場スタッフのそれぞれ昇給などについては意見を述べることがあった。調理場スタッフのシフトは,原告を含む4名で話し合って決めており,そのとりまとめは原告が行っていた。
タイムカードを打刻しており,タイムカードをO店長が管理していた。基本給26万円,技能手当3万円,過勤手当2万円,家族手当6000円の合計31万6000円。
役職者には役職手当が技能手当とは別に支給されることが予定されているが,原告はこれを支給されていなかった。
九九プラス事件
東京地裁立川支部H23.5.31
労判1030号5頁
コンビニ型店舗をチェーン展開して経営する株式会社。直営店が約700店舗。
否定店長。
店長は,エリアマネージャーの指揮の下,そのうちの1つ(兼務している場合は複数)の店舗内の運営を任されているにすぎず,平成18年9月当時,店長は,少なくとも被告の正社員の3分の2を占めていた。店長は,パートアルバイトを採用する権限があったものの,一般社員の採用や昇格等については,何ら権限を有していなかった。店長がシフト作成を行っていたものの,PAの勤務可能な曜日及び時間帯があらかじめ定められているため,これに沿ったシフトを作成せざるを得ず,裁量にも制約があった。
また,月1回開催される店長会議やエリア会議等に出席していたが,各店長に本社の経営方針,経営戦略等が伝達されるのみで,店長からの意見聴取や経営方針について討論する機会はほとんどなかった。
WEB上の勤怠管理システムに記録していた。
パートアルバイトと同じ方法により出退勤時刻等が管理されており,店長の出退勤につき一般の労働者と比較して自由な裁量が認められているとはいえない。
年俸300万0004円(自己管理給・調整手当を含む。)。自己管理給は,1日2時間の時間外手当(年間520時間)のみなし時間外勤務手当相当額として支給。つまり,1日2時間の時間外手当を毎月固定給として設定し支給する手当のこと(年棒に含まれる。)。
河野臨牀医学研究所事件
東京地裁H23.7.26
労判1037号59頁
付属施設として附属第三北品川病院,附属北品川病院,附属北品川クリニック及び研究所を有する文部科学省・厚生労働省認可の財団法人。
否定電算課における課長心得という地位にあり,原告の上司は病院事務長であった。
具体的な電算課の業務は,システム関係全般や,患者や医療保険への請求関係や統計関係等多岐にわたるものであったが,その経常的な業務として,入院患者,外来患者に関する診療報酬請求明細書(いわゆるレセプト)発行の業務があった。同業務は,当日の診療が終了し,医事課における会計関係の事務が終了してから着手することになるため,その着手は当日の夕刻ないし夜になることが多かった。
また,部下であるEの人事考課に関与していた
タイムカードにより労働時間を管理し,休日労働等は命令票を提出して上司の決裁を仰ぐ立場にあった。役職給として月額5万円の支給を受けていたが,部長(事務長・看護部長)の役職給10万円と比較すると2分の1の金額にすぎない。
事務職員57名のうち4番目に高額な給与の支給(年額約650万円)を受けていたが,基準外賃金を含むことにより高額になっていたにすぎない。
スタジオツインク事件
東京地裁H23.10.25
労判1041号62頁
8ミリ,16ミリ及び35ミリフィルムを使用する記録映画,テレビコマーシャル,ピーアール映画等の企画,制作等を業務とする会社
否定原告Aはインフォマーシャル制作のプランナー,プロデューサー,取締役。
原告Bはインフォマーシャル制作のディレクター,課長。
具体的には,クライアントや広告代理店と企画打ち合わせ,台本作成,撮影に必要な道具の買い出し,撮影対象への連絡,撮影場所の確保,キャスティング,ロケーションハンティングなど撮影準備,実際の撮影,仮編集(オフライン編集),クライアントや広告代理店同席の下,試写を行い,チェックを受ける,テロップ入れや画像加工等の本編集を行いクライアント等の最終チェックを受け,BGMの選曲,編集,ナレーション作成・録音等の音入れ(MA)を行って,完成・納品となる。
原告Aはクリエイティブサービス部門の担当役員として,他の取締役とともに,毎月開催される被告の役員会に出席していた。
原告A原告Bはともに,従業員の労務管理・人事考課について格別の権限を有していたわけではなかった
タイムカードに記録していたが,原告A原告Bともに打刻漏れが多かった。
被告において,各従業員ごとに月次の労働時間,作業内容等を記載する月間作業報告書を作成しており,日ごとに日勤作業時間,夜勤作業時間(ただし午後11時以降),休憩時間,作業内容・備考欄があり,これに実際の労働時間,作業内容を記入するようになっているため,月間作業報告書の方が正確な労働時間の記録である。
原告Aは基本給15万2000円,能力給10万2500円,制作手当8万5500円,住宅手当1万円,役員手当5万円,通勤手当1万9250円の総支給金額41万9280円。
原告Bは基本給14万6000円,能力給11万円,役付手当6万5000円,制作手当4万円,住宅手当1万円,扶養手当1万円,通勤手当1万4880円の総支給金額39万5880円。
H会計事務所事件
東京高裁H23.12.20
労判1044号84頁
否定勤務税理士。タイムカードに打刻していた。管理者手当毎月2万円~4万円
HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド(賃金等請求)事件
東京地裁H23.12.27
労判1044号5頁
バハマ国法を準拠法として設立され,本店を肩書地に有する外国法人。A銀行東京支店(以下「A東京支店」という。)等の関連会社から委託を受け,労務管理業務,総務業務,経理業務,IT業務等を行っていた。
否定被告に在籍のままA東京支店に出向,A東京支店の汐留オフィスで勤務した。
A東京支店の個人金融サービス本部のマルチチャネル部門でインターネットバンキングサービスの立上げに係るプロジェクトマネジメントを行うVP(Vice President)としてインターネットバンキングの立上げに係るプロジェクト管理について相応の裁量権を有する業務を担当する地位にあった。
しかし,インターネットバンキング担当のVPが有する業務上の裁量権は,A東京支店の個人金融サービス本部の中に6つ存在する部門の一つにすぎないマルチチャネル部門の,更にその中でもインターネットバンキングサービスという限定された業務に関する裁量権にすぎず,同VPが,一定の部門を統括する職務を行っていたとは認められない上,原告は,上記マルチチャネル部門において最下層に位置する職員であって,部下に当たる職員はいなかったのであるから,部下に対する労務管理上の決定等についての裁量権は皆無であった。
労働時間管理の対象外とされており,タイムカード等による管理を受けていなかった。また,遅刻,早退,欠勤等についても賃金が減額されるような取扱いにはなっていなかった。年俸1250万円
日本機電事件
大阪地裁H24.3.9
労判1052号72頁
建築現場仮設資材の製造,販売,リースを主たる業務とする株式会社。
否定営業職として,被告が製造・販売する仮設材の販売やリースの営業に従事してきた。各ゼネコンの本社,支社,営業所,資材センター,現場事務所,機材商社等を日常的に訪問し,取引先の社員と面談し,被告製品(建築用仮設材)を建設現場で使用してもらうよう営業活動を行っていた。
支店長心得,営業部長,部長心得等の役職者として,被告において開催される戦略会議(幹部会議,本部会議),営業会議に出席していた。もっとも,営業会議には,被告幹部社員のみならず,営業担当従業員も出席していた。また,幹部会議や本部会議については,常に営業担当者が出席するというものではなかったものの,議題によっては営業担当者も出席することがあり,原告は,同営業社員の一人として同会議に出席していた。なお,各種会議において,原告が議事進行することはなく,また,積極的に発言するというようなこともなかった。むしろ,各会議においては,C会長及び乙山社長からの叱咤激励や被告の経営に関する既定方針の告知が主たるものであった。
さらに,原告が組織図上部下として表示されている従業員に関する人事査定を行っていたことを認めるに足りる的確な証拠(人事評定表等)は認められない。
営業担当社員については,タイムカードはなく,その他労働時間を明確にする資料は存しない。
原告の毎日の出勤時刻は午前8時30分であると推認でき,少なくとも,営業活動後の残務整理等のために,午後8時までは業務に従事していたと推認できる。毎週土曜日について,午前9時から午後5時まで業務に従事していたと推認できる。
なお,営業の現場に直行直帰する場合には,上司であるB取締役に事前に連絡をし,その了解を得ていた。また,病気によって欠勤した場合は,事後的に欠勤の申請をし,承認を受けることが必要とされていた。
基本給20万円,役職手当20万円,営業手当20万円
株式会社乙山事件
東京地裁H24.3.23
労判1054号47頁
一般乗用旅客自動車運送事業等を目的とする株式会社。
否定乗務員(タクシー運転手)として稼働していたが,平成19年3月15日ころから,内勤業務に転じ,乗務員の紹介,確保に努めるとともに,タクシーの運行管理業務も担当した。被告に入社した当初から乗務員の紹介,確保という点において,事実上とはいえ,かなり大きな権限ないしは影響力を有していたばかりか,「一斉休車」の件に見られるように経営者でなければ行い得ない権限を行使することがあり,また給与も東京営業所のC所長よりも高額であったが,重要な経営会議に参加していたことをうかがわせる証拠も提出されていない。勤務表に出勤日を記載した。
元々明確な所定労働時間に縛られた勤務体制下で業務に従事していたわけではなく,毎日,午前5時に東京営業所に出社し,会社に午後5時頃まで居残っていたものの,午後1時すなわち「8時間」を超えて被告の指揮命令下に置かれていたとはいい難い。
1か月57万6000円と定められ(以下「本件給与」という。),この金額が退職時まで維持された。その内訳は,基本給20万円,歩合給30万円,通勤補助2万4000円,残業手当5万円,研修手当2000円とかなり高額で,同僚のAはもとより,C所長のそれを上回っていた
霞アカウンティング事件
東京地裁H24.3.27
労判1053号64頁
経理事務代行業及びこれに附帯関連する一切の業務を目的とする会社。
否定業務第三課の課長職にあり,被告会社の中心的業務である顧客に対するコンサルティング,助言,会計書類の確認,作成等,多種多様な業務を網羅的に行っていた。部課長会議等に出席していたが,同会議は,役員会議で決定されたことの伝達や,課内会議で議論されていることの連絡等が主要な議題であって,原告Aが被告会社の経営にタッチしていたことを裏付ける的確な証拠がない。タイムカードで労働時間を管理され,直行直帰の場合にもタイムカードでその時間について報告を義務付けられていた700万円を超える年俸を支給されており,かなりの好待遇であったことは否定できない
セントラルスポーツ事件
京都地裁H24.4.17
労判1058号69頁
スポーツクラブの運営等を業とする株式会社。
肯定エリアディレクター。会社では,社長,副社長,取締役である営業本部長の下に営業部長がおり,その下に各エリアのエリアディレクター,各店舗にマネージャー(店長)がいるという構成になっていた。エリアディレクターとして計6スポーツクラブ(平成21年4月からは計5スポーツクラブ)の約40名(アルバイト142名を加えると約180名)の従業員を統括する地位にあった。
エリアディレクターは,自らが統括するエリアにおいて労務に従事する従業員の勤務状況を把握し,労働時間を管理する責任を負っており,従業員の遅刻,早退,欠勤については,エリアディレクターが承認し,勤務状況,勤務態度に問題があれば改善するように指導することが求められていた。エリアディレクターには,システムに入力された従業員の出退勤時刻を承認・修正する権限が与えられていた。総合職群等の新卒採用については,エリアディレクターには一切の権限はないが,インストラクター,レセプション及びその他の一般職員の第2次考課権限を有し,店長及びチーフインストラクターの第1次考課権限を有している。
エリアディレクターは,営業戦略会議に参加することが義務付けられており,営業戦略会議においては,営業実績をもとに,今後の経営強化策,スポーツクラブへの入会戦略,全社重点項目といった重大な事項に関する確認,意見交換が行われており,エリアディレクターはかかる営業戦略会議での決定事項をもとに,各担当スポーツクラブの長に施策を徹底させていた。エリアを統括する上で重要な会議であるということができ,エリアディレクターは,一定程度の経営事項に関与していたといえる。
原告が遅刻,早退,欠勤によって賃金が控除されたことはなかった。
原告は出退勤の時間を拘束されていたものとは認められず,自己の裁量で自由に勤務していたものと認められる。
平成21年度(平成21年6月から平成22年5月)の基本年俸額は,640万0800円(月の基本給は53万3400円)であった。これは,会社全体でみると執行役員(774万4800円),部長(729万6000円),室長(729万6000円又は684万8400円),次長(684万8400円),エリアディレクター1(684万8400円)に次ぐ高い賃金である。これに加え,業績に連動して支払われる年俸業績給等が支給されており,実際の原告の年俸は平成19年6月から平成20年5月までの1年間が886万4256円,平成20年6月から平成21年5月までが795万4000円,平成21年6月から原告が降格される同年9月までは767万4000円であった。
ピュアルネッサンス事件
東京地裁H24.5.16
労判1057号96頁
美容サロンの経営,化粧品等の販売を目的とする株式会社。
肯定管理職(部長)として入社し,平成18年5月31日付けで取締役,平成19年6月5日付けで常務取締役,平成20年12月1日付けで専務取締役に選任された。原告は,イベントの企画・製作業務において,これを統括する地位にあり,事前にイベントの企画書を作成して企画会議にかけ,徐々に詳細を詰めていったり,使用するパワーポイントや映像,進行予定表を作成するといった業務を行っていた。また,原告は,イベント当日,舞台監督,音響及び照明を担当し,裏方としてイベントの進行業務を担当し,イベントの模様を撮影して編集する作業を行っていた。原告は,平成21年ころ,Qサロンの開設にあたり,責任者とされており,工事の見積もり確認をしたり,現地調査して役員会議で報告したり,備品の購入指示を出すなどしている。
被告の取締役会や経営会議,役員会議に出席していた。会社の経営方針は,乙山会長の意向が強く働き,特に実質的な討議や多数決が行われることはなかったものといえるが,このことは被告が小規模な企業であることからするとやむを得ないところがある。むしろ,原告は,取締役としての地位を有しており,こうした重要な会議に出席していたのであるから,意思決定へ参画する機会は与えられていたといえる。
原告については,厳密なタイムカードによる労務管理がされていたとはいえない。原告の業務内容は,業務日報では,雑務,通常,労務関連業務,VTR編集,書類作成等と記載されていることが多く,必ずしも明確ではなく,日中の勤務時間中,個人的な用事で出かけたり,昼寝をしていた。
原告は,被告の従業員やスタッフの勤務時間を表にまとめて報告するなど,被告の労務担当として,被告の従業員,スタッフの勤務環境の整備,従業員等の出退勤の管理等を行う労務管理を行う権限を一定程度有していたといえる。
基本給として月額30万円から35万円,役職手当として5万円から10万円が支払われており,これ以外に特別手当,調整手当の支払を受けており,合計すると多いときは月額60万円になっていた。
国・佐賀労基署長(サンクスジャパン)事件
福岡地裁H24.5.16
労判1058号59頁
日用雑貨,化粧雑貨,衣料品,磁気テープ,スポーツ用品,食料品,文房具,日曜大工用品,ペット用品,カー用品,家庭園芸用品,家電製品,薬品,酒類,灯油などの販売を目的とする株式会社。
否定商品部第4課長。
家電,音響製品,カメラ類,時計・ライター等を担当し,仕入れる商品の選択,その仕入値及び数量並びに店舗での販売価格を決める権限が与えられていた。業者と商談をして商品を仕入れ,これを各店舗に納めていた。
予算会議に出席していたものの,会社の予算策定に関し,その前提となるヒアリングを行うにすぎず,予算策定に直接的に関与してはいない。
部下として,係長1名,主任1名(いずれもバイヤー),社員2名(1名はバイヤーのアシスタント,1名は書類作成などの事務を担当)が配置されていたが,人事考課,勤務時間の管理及び給与等の待遇の決定など,労務管理上の指揮監督権限を有し,これを行使していたことを認めるに足りる客観的な証拠は見当たらない
タイムカード等の客観的な方法による労働時間の把握,管理をしていなかった(役職に就いていないバイヤーについても同様)。
社会保険や労災保険等の関係で出勤日数を把握する必要があったため,出勤簿に押印させることにより,本社勤務の社員の出勤状況を把握していた。
係長から課長へ昇進・昇給する前後の給与の額を比較すると,基本給はわずか2000円,合計額も7000円増えているだけである。管理監督者に対する待遇としては,十分であるとは言い難い。
ロア・アドバタイジング事件
東京地裁H24.7.27
労判1059号26頁
広告制作,広告代理業等を事業内容とする,役員を含め従業員数23,4名の株式会社。
否定企画営業部部長,上司として乙山社長が同部の本部長を兼務していた。
新聞・雑誌・交通媒体等のペーパーメディア広告企画・制作,TV,ラジオ等電波媒体の企画・制作,カタログ,パンフレット,マニュアル等の企画・制作,POP等店頭販売ツール等映像全般の企画・制作等の業務に従事した。
被告の決算,人事その他重要な経営方針に関する最高の意思決定機関は,代表取締役,取締役及び監査役から構成される役員会であり,原告は,この役員会のメンバーではなく,意見等を述べるため出席を求められることもなかった。
企画営業部長に就任後,部下である若手営業マンの教育を任されていたことから,部下職員に対し,仕事上の指示命令を行うとともに,部下従業員の直行・直帰や代休取得を差配したほか,企画制作部長のN取締役とともに,現金伝票,有休等申請書,出張申請書,出張精算書,新規取引先申請書等の実質決裁にも関与したが,人事考課,賞与の査定,部下社員の昇任・昇格も実質的には乙山社長ないし役員会が決定しており,原告は,平成22年度の賞与の査定に当たって,一度だけ人事考課表の作成に関与することがあったものの,多くは意見聴取ないしはその意向打診程度にとどまり,これは基本的に部下の昇任・昇格においても同様であった。
タイムカードにより従業員の勤怠管理を行っていた。現場への直行・直帰が行われた場合には出退勤時刻と行き先を,また未打刻が生じた場合にはその理由を,休日出勤の場合には出退勤時刻と業務内容を,さらに出張の場合には出退勤時刻と得意先・業務内容等を,それぞれ直接本件タイムカードに手書きにより記載し,提出するよう会社が指示し,原告もこれに従っていた。役職手当月額8万円,付加手当12万7000円。
企画制作部長と企画推進室室長が役職手当(8万円)のほかに20万円を優に超える取締役手当の支給を受けていることと比較すると,同じ役職者として些か見劣りがする手当等の支給状況であった。
エーディーディー事件
大阪高裁H24.7.27
労判1062号63頁
平成13年5月に成立した,コンピュータシステムおよびプログラムの企画,設計,開発,販売,受託等を主な業務とする株式会社。
否定成立当初から原告の従業員であった。
課長,Fチームの責任者兼担当窓口。課長としての日常業務は,顧客の窓口対応.納品後の不具合対応,プログラミング.詳細設計作業,部下の管理などであった。部下8,9人の監督をする地位にあったが,会社の経営方針については,幹部会議に出席して意見を述べることができる程度の立場にあったにとどまり,企業の事業経営に関する重要事項に関与していたとは認めることができない。また,正社貞の採用権限を有していたことを認めるに足
りる証拠はない。
出退勤について厳格な規制を受けていなかった。役職手当としては月額5000円であり,とうてい管理監督者に対する手当としては十分なものとはいえない。
アクティリンク事件
東京地裁H24.8.28
労判1058号5頁
不動産売買,賃貸,管理及びこれらの仲介業を目的とする会社。
否定課長または班長。
売買事業部に所属して投資用マンションの販売に従事していた。
反面,被告の経営に参画し,自らの部下らに対する労務管理上の決定権を有していたとまでは認めることができない。
少なくとも業務開始時刻については,タイムカードによる出退勤管理を受けていた。班長手当月額3万円,役職手当月額5万円~7万円。
VESTA事件
東京地裁H24.8.30
労判1059号91頁
不動産の調査,鑑定および資料収集業務,賃貸契約に対する保証業務等を目的とする株式会社。
原告Aは否定
原告Bは肯定
原告Aは支店長。
職務内容は,他の従業員と同様に,督促及び営業業務が中心であり,支店長としての職務内容も,支店の業務内容のとりまとめ及びその報告等にとどまり,人事に係る決裁権もなかった。
原告Bは,一時,取締役,その後,営業部長の地位にあった。
会社の常勤取締役は,人事・管理一般を担当する代表取締役丙川三郎,債権回収を担当する取締役G,営業を担当する原告Bの3名であり,従業員の採否,退職等の人事を含む会社の経営方針は,上記3名の合議によって決定されていた。原告Bは本社のみならず,全国の支店の営業全般を統括する立場にあり,営業方針を決定して関係部門に指示したり,営業担当の従業員に対して業務改善命令を発したり,営業担当の従業員を構成員とする会議を主催したり,全国の支店等から提出される棄議書を最終的に決裁したりする権限を有していた。
タイムカードの打刻等が義務付けられていた形跡はなく,必ずしも厳格な労働時間管理がされていたとは認められないものの,その点は,他の従業員についても同様であった。
原告Aが出社時間.退社時間に裁量を有していたとまでは認められないが,原告Bは裁量を有していた。
全従業員の平均賃金額は,月額33万円から36万円程度であった。
原告Aは,平均貸金額よりも月額15万円前後高額の賃金を取得していたことが認められるもの
の,他の従業員と同様に督促及び営業業務を担当しながら,支店長としての業務も遂行していたことに照らすと,その貸金額も必ずしも高額であるということはできない。
原告Bの報酬又は賃金は,月額54万2000円から62万5000円であり,代表取締役に準ずる水準にあった。
フォロインプレンディ事件
東京地裁H25.1.11
労判1074号83頁
飲食店の経営等を目的とする株式会社。直営の飲食店を経営しているほか,同社のフランチャイズ事業に加盟する飲食店に対するコンサルティング事業等を営んでおり,直営店舗・フランチャイズ店舗が当時,55店舗あった。
否定店長または店長代理として,店舗に勤務した。担当する店舗で,毎日,営業時間のほとんどの間,配下のアルバイト従業員と同様の仕事をするのが通常であるほか,営業日報・営業月報の作成,毎月のシフトの作成と各従業員の実労働時間の報告,年度ごとの事業計画書の作成等をしていた。2か月に一度行われる店長会議に出席していたほか,毎年度末の経営者会議への出席も義務づけられていたが,これらの会議は報告会であり,会社の経営上事項を決定する会議ではない。配下のアルバイト従業員の採用権限はあったものの,正社員についての権限はなかった。労働時間について,自由に決定することができる状況にあったとは認められない。基本給月額22万円,役職に対する手当が支給されていない。
学校法人修道学園事件
広島地裁H25.2.27
労働判例ジャーナル14号20頁
私立大学であるA大学をはじめ,A大学大学院,法科大学院,及びB中学校・同高等学校を運営する学校法人。
否定A大学事務局財務課長及び法人本部事務局財務課長の職を兼務していた。
被告の予算関係事務,財政計画の策定,施設設備の維持・保全計画の策定,資金管理,会計監査への対応等を担当する財務課の責任者の地位にあるとともに,被告の出納責任者とされていた。上司に事務局長と事務局次長がいる一方で,部下として3人の担当課長(会計係,財務係,管財係)とその下に専任職員,定期臨時職員,派遣職員が所属する。財務課長は,課や課員の目標を定めるなど課全体の事務を掌理し,課員を指揮監督していた外,人事考課における2次考課(1次考課は担当課長が担当する。)を担当しており,財務課に所属する職員の昇任,昇格について推薦をする取扱いがされていた。ただし,必ずしも推薦したとおりの昇任,昇格がされるものではなく,原告が推薦した昇任及び昇格がされなかった例もあった。
また,財務課長は,財務課の臨時職員の採用面接に立ち会い,人事課長に意見を述べるなどの関与をすることがあった一方で,専任職員の採用には関与しておらず,職員の昇任,昇格の決定や人事異動には関与していなかった。その人事上の権限は限られたものであった。
被告の就業規則上は,事務局の課長についても始業時刻及び終業時刻の定めが適用される上に,①被告は,平成21年末頃までは,事務局の課長についても,出退勤時間の変更が必要な場合は,事務局長又は事務局次長の承認を得た上で出退勤時間を変更する取扱いをしていたこと,②被告は,少なくとも平成21年10月頃の時点において,財務課長の土曜休暇及び休日の振替についても上司の承認を要するとの取扱いをしていたことからすると,少なくとも原告が財務課長の職にあった一定の時期までは労働時間の管理がされていた。事務職員に支給された時間外勤務手当の平均額は年間48万7326円であり,原告に支給された役職手当51万1200円とほぼ同額である。
課長(原告の場合は平成22年3月までは8級,平成22年4月からは9級)の俸給が課長補佐(7級)より高額であることも確かである。俸給表に定められた8級の最高額が42万7100円(ただし,枠外として最高で43万7600円とされている者がいる。),9級の最高額が45万1100円であるのに対し,7級の最高額が41万6700円と顕著な差があるとまではいい難い。
また,財務課長としての原告には,俸給の10パーセントに相当する役職手当が支給されていたことは確かである。しかし,被告が時間外勤務手当の支給対象であることを自認する担当課長についても俸給の8パーセントの役職手当が支給されることと対比すると,財務課長に対する役職手当が時間外勤務手当を支給しないことに見合うものであるとまではいい難い。
WILLER EXPRESS西日本ほか1社事件
東京地裁H25.4.9
労判1083号75頁
一般乗合旅客自動車運送事業,一般貸切旅客自動車運送事業等を業とする株式会社
否定運行管理者及び運行課長として入社し,千葉営業所で統括運行管理者兼運行課長として勤務していた。
乗務員の交番表の作成(他の運行管理者が作成した場合にはその確認),運行指示書の取りまとめ,運行管理者ミーティングの司会進行,点呼業務,乗務記録簿や安全運転日報等の保管等を行っていた。乗務員が不足した際には,運転業務に入ることもあった。
乗務員の評価は,年に1回,少なくとも4人の運行管理者によって行うこととされており,原告も運行管理者の1人として関与していた。
乗務員の採用試験において,D部長と2人で面接官を務めたほか,実技試験の試験官を行っていた。C社長が乗務員の採否を決定する際,原告の意見は尊重されることが多かったが,原告の意見が通らずに候補者が不採用となったことが少なくとも1回はあった
タイムカードによる勤怠管理と給与計算が行われていた。
原告を含む運行管理者について,早朝から深夜までの運行に対処できるよう,事務所交番表において宿直を含む業務シフトを組んでおり,原告ら運行管理者は,原則として事務所交番表に沿って出勤していた。事務所交番表は,原告が作成していた時期があったが,作成後は,D部長が決裁を行っていた。宿直の途中に自己の判断で帰宅することはできなかった。
基本給月額33万6000円と,6人の事務職員のうち基本給が最も高いのは原告であるが,いずれも総支給額は原告と同程度かこれを上回る。他方,D部長の給与額は,年俸で720万円,1月当たり60万円であり,原告の給与額とは月20万円以上の差がある。
イーハート事件
東京地裁H25.4.24
労判1084号84頁
パチンコ・スロット店などの遊技場・ゲーム場の経営等を目的とする有限会社
否定従業員の職位には,アソシエイト,シニアアソシエイト,サブマネージャー,アシスタントマネージャー,マネージャー,ゼネラルマネージャー,執行役員,取締役があり,原告はアソシエイトとして店舗に勤務していた。アソシエイトは,店舗の金庫の鍵を与えられ,両替機にある金銭の管理,ホールコンピュータの立ち上げ,シャットダウン,設定等の仕事を行う。イベントはアソシエイトやゼネラルマネージャー(店長)で決定し,台の機種についてもアソシエイトが選定し,店長の指示で決定していた。
店舗を統括したり,部下を有する立場になかった。
早出,遅出等のシフトに組み込まれ,裁量がはたらく余地がなかった。役付手当月額2万7000円。
月額給与の総額は,他の従業員と大差なく,管理監督者にふさわしい待遇とはいえない。
キュリオステーション事件
東京地裁H25.7.17
労判1081号5頁
主に初心者向けの定額月謝制のパソコン教室を全国展開するためのフランチャイズ本部運営(全国で約120店舗)及び直営店運営(約40店舗)を行っている会社。
否定三軒茶屋店の店長として同店の運営を行っていたほか,フランチャイズオーナーに対する研修,サポート,アドバイス業務に従事していた。また,店長のなかでもリーダーという立場にあり,3,4店舗の直営店の店長を部下とし,同人らの勤怠管理,売上げ管理,人事考課等を行っていた。さらに,現場の意見を踏まえて,店舗の売上拡大や運営改善等の企画を検討するという幹部会に出席していた。この幹部会は,40名程度の被告従業員のうち,6名ないし8名程度が出席するものであった。出退勤の際にインターネットにアクセスして打刻を行う方法で勤怠管理されているが,このようなウェブ打刻を原告は義務付けられていなかった。しかし,原告が営業時間(平日7時間,土曜日6時間)の定めがある三軒茶屋店を一人で運営していたことからすると,管理監督者に該当するというほどの労働時間についての裁量があるものと認めることはできない。月額24万円~26万円の給与。
業務委託契約類似の契約で,雇用保険や社会保険には加入していなかったが,実質的には雇用契約と認められる。
豊商事事件
東京地裁H25.12.13
労判1089号76頁
先物商品取引,金融商品取引等の取り次ぎ等を業とする会社。
否定管理本部の経理部株式担当部長として,有価証券報告書などの開示資料,半期報告書,四半期報告書,株主総会の招集通知等の作成の統括を行っていた。経理部員には経理部長を通じて間接的に業務の指示を出しており,原告は経理部員の労務管理を行っていない。従業員に対し,タイムカード等での労働時間管理が行われていなかった。休憩時間を変更する場合や,休憩時間に私用で外出する際,経理部長Aの許可をもらっていた。月額40万円~50万円の給与。
高額ではあるが,全額基本給としての支給で,役職に対する賃金は支給されていなかった。
乙山石油事件
大阪地裁H25.12.19
労判1090号79頁
ガソリン,軽油および灯油等の販売を主たる業とする株式会社。東大阪市においてサービスステーションを経営していた。
否定サービスステーション所長。
ガソリンの仕入先を変更する権限を有し,仕入値価格交渉を担当,代表者の了解を得て営業時間を変更するなど,一定の権限を有していた一方,他の従業員と同様の現場業務にも従事していた。金銭管理は代表者とその家族が行っていた。正社員の給与は代表者が決定しており,従業員を早く帰らせたことについて代表者から注意されるなど,社員の管理権限も限定的だった。
タイムカードにて管理。出勤予定表に従って,シフト勤務を行っていた。月額40万円の給与。
売上目標未達成で月額5万円減給されていた。
新富士商事事件
大阪地裁H25.12.20
労判1094号77頁
自動車運送取扱業等を目的とする株式会社。B市の会場で自動車オークションを開催するA社から,オークションに出品される車両の写真撮影,車両の移動・整理,落札されなかった車両の移動等の業務を請け負っていた。
否定B営業所営業所長。上司はC部長で,B営業所の正社員は原告とC部長の2名のみ。
約100名在籍していたアルバイト従業員の業務の割当て,業務内容の指示及び出退勤時間の指定等を行うなどして,出品車両の写真撮影や移動の業務を遂行していた。オークションは毎週土曜日開催され,約8000台から1万台の車両が出品されていた。
アルバイトの採用権限はC部長にあった。
タイムカードにて管理。
所定労働時間は午前9時~午後6時で,常に午前9時より前に出勤し,午後6時より後に退勤していた。
役付手当月額3万円。
DIPS(旧アクティリンク)事件
東京地裁H26.4.4
労判1094号5頁
不動産の売買,賃貸借管理及びこれらの仲介業等を目的とする株式会社。
否定原告の業務は,テレホンアポイント業務に従事するアルバイトスタッフのシフト管理,アルバイトスタッフの見込み顧客の管理,営業担当者への引継ぎ,アルバイトスタッフの指導等であり,毎週月曜日及び木曜日の午前9時から行われるマネージャー会議に出席することとされていたが,テレホンアポイント部の運営を自身の裁量で行うことができたとまで認めることはできない。タイムカードで管理。役職手当月額10万円。
管理監督者としての職責の重要度に見合った待遇であるかどうかは,被告における他の従業員が受給していた賃金との比較等を踏まえて判断すべきところ,被告は,他の従業員の待遇面については何ら主張立証しない。
農事組合法人乙山農場ほか事件
千葉地裁八日市場支部H27.2.27
労判1118号43頁
被告法人は,養鶏,有機栽培による各種農産物の生産,販売等を業とする農事組合法人であり,商人。

被告あさひ村株式会社は,農産物の買入・販売・仲介・販売委託,農産物の育成方法の研究,その他農産物の流通,製品企画,自然農法農場の企画及びその指導等を業とする株式会社で。法人と会社の代表者は同一。
否定新入社員の指導と従業員の監督を行っていたという事情のみで,具体的な労務管埋に関する権限を与えられていなかった。タイムカードで管理。
休日出勤,長時間勤務が多かったことからも,労働時間の裁量がなかったと言える。
基本給のみ。
管理監督者にふさわしい待遇を受けていない。
三井住友トラスト・アセットマネジメント事件
東京地裁
R3.2.17 判決
労判1248号42頁
被告は,投資運用業,投資助言・代理業,第二種金融商品取引業を業とする株式会社 
否定原告の担当する業務は,ファンドマネージャー等が示した見解を前提とした月次レポート等の内容に誤りがないかを確認したり,当該見解を踏まえてレポートを作成する業務であって,専門的かつ重要な業務ではあるものの,企画立案等の業務に当たるとはいえず,また,これらの業務が部長決裁で足りるとされていることからすれば,経営上の重要事項に関する業務であるともいえない。また,原告は,所属する部署の管理者ミーティング等に参加しておらず,月報関連業務以外に当該部署の業務を担当していたことは認められないほか,部下もおらず,人事労務管理業務に従事していたとは認められない。
※前提として、原告は有期雇用の専門職であり、いわゆるスタッフ職であった。被告は行政解釈(旧労働省の昭和63年3月14日基発第150号)を根拠にスタッフ管理職はライン管理職とは別の要件によるべきとの主張をしたが、裁判所はこれを退けて、通常の管理監督者性の要件で検討することを判示した。
業務のために時間的にも拘束されているものの,これらの業務の閑散期においては,比較的自由に時間を使うことが許容され,遅刻・早退があっても賃金から控除されることはなく,早朝及び深夜の業務についても,健康管理の観点から複数回の指摘はあったものの,自己の裁量で労働時間を決定できる環境にはあったといえることからすれば,労働時間について一定の裁量はあったといえる。原告の年俸は約1270万円(基本給部分が1140万円)であり,部長に次ぐ待遇であるといえ,被告の社員の上位約6%に入ることからすると,待遇面では,一応,管理監督者に相応しいものであったと認められる
土地家屋調査士法人ハル登記測量事務所事件
東京地裁
R4.3.23 判決
労経速2490号19頁
被告は,土地又は家屋に関する調査又は測量等を業とする土地家屋調査士法人
肯定・被告代表者と並んで被告設立時からの社員であり、社内では代表者に次ぐ地位
・人事上の最終決定権は代表者が有していたが、社員間の役割分担に過ぎない。登記申請等の現場実務の遂行方法の取り決めや従業員の指導権限はあった
・支店開設など重要な経営事項についても原告に相談の上決定されていた。
 出退勤に関する裁量があった(仕事中の中抜けがあっても減給等はされない、自分で休日出勤や代休日を決めていた) 当初月額50万、その後60万円。同じ土地家屋調査士の社員より10万円以上高く、一般従業員の基本給(20~30万円)や原告の前職での報酬水準(450万円)よりも大幅に高い。
日本レストランシステム事件
東京地裁
R5.3.3判決
労経速2535号3頁
被告事業は、多業態型レストランチェーンの経営輸入業および輸入品の販売
否定・被告における最重要部門である戦略本部において、「黒毛和牛腰塚」ブランドの事業経営について会長兼社長から示されたアイデアや大枠を基に常務とともに実行フェーズに移すという業務を遂行していたほか、戦略営業部の責任者として13店舗を統括(ただし、最終的には会長が重要な経営事項を決定)
・同ブランドの各店舗の社員の一次評価を行ったり、アルバイトを採用する権限を有していたが、アルバイトの解雇や社員の採用・解雇等の権限はなく、その人事権限は限定的
・同ブランドの各店舗の慢性的な人員不足から、経営企画業務より店舗業務に費やす比重が多くなり、指揮命令される側である従業員側の労務が仕事の中心になっていた。
・タイムカードにより労働時間を管理されており、各店舗のシフト表を作成する権利を有していたが、開店・閉店時間についての裁呈はなかった。
・店舗業務に従事する時間が増えたため、結果的にほとんどの月で月100時間を超える時間外労働等を余儀なくされていた。
・部長職の平均年収は816万円程度、課長職の平均年収は653万円程度であったところ、原告の当時の年収は700万円程度で、原告
は、被告における労働者の最上位である部長に次ぐ待遇を受けていた
・もっとも、原告は前記のような時間外労働等を余儀なくされていたが、これに見合う手当や賞与が支払われていたとは言い難い。例えば、非管理藍督者である店長が月100時間の時間外労働等を行った場合には、店長の月収は原告の月額42万円の給与を優に超えることになり、非管理監督者と比べて原告が厚遇されていたとはいえない。

 

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