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職場における暴力,暴言等で懲戒解雇できる?

ご質問

当社はクレーンのリース事業を営む株式会社です。当社でクレーンのオペレーターとして勤務している従業員が、客先の工事現場で,現場監督に対して怒鳴るなどし、言い争いになり暴力沙汰になりかけてしまいました。その従業員は,現場監督があまりに理不尽な事を言ってきたため,そのような言動を行ったとのことです。ただ,同従業員は,すぐに冷静になり,謝罪をしたそうです。なお,その従業員は普段はこのような暴言を行ったことはありません。当社としては,顧客に対して上記のような言動を行った事実は重く,重大な就業規則違反であると共に会社の信用を著しく失墜させ、多大な損害を与えた行為であるとして,懲戒解雇をすることを検討しています。このような解雇は有効なのでしょうか?

回答

事業上内での暴行・脅迫などの行為があった場合,このような行為は懲戒解雇事由に該当します。ただし,懲戒の程度については,暴行・脅迫の動機,内容・態様,その他の従業員への影響などを総合的に勘案して判断され,重大な企業秩序違反があると判断される場合には懲戒解雇となります。ご相談の事案では,現場監督が理不尽な事を最初に言ってきたことがきっかけとなったこと,つかみ合いになりましたが,相手に怪我などを負わせていないこと,その後冷静になり謝罪をしたこと,これまで暴言を吐いたことはなかったこと等の事情を考慮しますと,懲戒解雇とするのは重すぎると考えられます。

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  • 事業上内での暴行・脅迫などの行為があった場合,このような行為は懲戒解雇事由に該当するが,直ちに懲戒解雇が出来る訳ではない。

解説

1 事業上内での暴行・脅迫などの行為があった場合

事業場内や就労時間中に暴行や脅迫などの行為があると,従業員が暴力のもとに支配され,その恐怖を感じることにより労務提供に悪影響が生ずるため,このような行為は懲戒解雇事由に該当します。ただし,懲戒の程度については,暴行・脅迫の動機,内容・態様,その他の従業員への影響などを総合的に勘案して判断され,重大な企業秩序違反があると判断される場合には懲戒解雇となりますが,単なる同僚間のケンカといった事案では,たとえ暴力行為があったとしても,相手に大きな怪我を負わせるなど態様が著しく悪質であるという事情がなければ,懲戒解雇ではなく,降格,減給などの懲戒処分が相当であると考えられます。

2 事業場外で暴行・脅迫などの行為があった場合

企業外の非行である暴行・脅迫などの行為については,犯罪行為を理由として,必ずしも会社の社会的信用を損なうものとはいえませんので,それ自体では懲戒解雇事由に該当するとは言えません。ただ,実際には,懲戒を実施する場合もあり,当該行為の態様・程度に加え,非違行為者の年齢,これまでの勤務態度,勤務成績,上司・同僚からの評判,反省の姿勢などを総合考慮して決定することになります。

対応方法

1 まずは弁護士に相談!

問題のある社員に辞めてもらうために貴社が採れる手段は,ケースバイケースですが,退職勧奨,普通解雇,懲戒処分などが挙げられます。もっとも,従業員にとっても生活の糧となる収入が途絶えることになりますので,安易な措置はトラブルを生み,かえって貴社に混乱とコストの負担をかけることにもなりかねません。
まずは,なるべく早くご相談下さい。相談が早ければ早いほどとりうる手段は多いものです。
弁護士は,あなたのご事情を伺い,具体的対応策をあなたと一緒に検討し,最善の解決策をアドバイスします。
貴社のケースでは解雇は有効になるのか否か,具体的な対策として打つべき手は何か,証拠として押さえておくべきものは何か等をアドバイスします。

2 証拠の収集

法的措置に対応する場合はもちろん,交渉による解決を目指す場合も,証拠の確保が極めて重要になります。貴社にとって有利な証拠を出来るだけ確保して下さい。

3 労働者との交渉

まずは,法的措置に進む前に,労働者と交渉して,貴社の望む結果(問題社員の退職,解雇,低額の解決金の支払い等より有利な条件での退職等)が得られるようにします。 裁判に訴えられる前の交渉の時点で解決できれば,貴社にとっても次のようなメリットがあります。

①早期に解決できることにより,人的負担が回避できる。

法的手続に進んだ場合,労働者に関係する従業員(同僚・上司)はもちろん,経営者にも時間・労力・精神的負担を割くことを要求されます。この負担が日常業務に加わることで,かなりの負担感となります。交渉で解決することによりかかる人的負担が早期に回避できます。

②労働審判・訴訟等の法的手続に進んだ場合より解決金の水準が低い

一般に法的手続に進む場合に比べ,企業が支払う解決金の金額は低いものとなります。

4 裁判対応

労働者との間で交渉による解決が図れない場合は,労働者は自己の権利の実現を求めて裁判を起こす可能性が高いと言えます。具体的には,賃金仮払い仮処分手続,労働審判手続,訴訟手続などがありますが,労働者が事案に応じて手続を選択して,自己の請求の実現を目指すことになります。貴社としては,かかる労働者の法的請求に適切に対応する必要があります。

労働問題.comの対応

1 経験豊富な弁護士に相談

労働問題は適用される法律が難解で事実関係が極めて複雑であり,また,貴社が採るべき対応策はケースバイケースで決めざるを得ません。貴社独自で調査の上でのご対応が,時に誤った方法であることも多分にございます。
そこで,まず,労働問題について豊富な経験実績を有する弁護士にご相談下さい。ご相談が早ければ早いほどとりうる手段は多いのが実際ですので,トラブルが少しでも生じましたら出来るだけ早期にご相談されることをお勧めいたします。
労働問題.COMでは,常に労働問題を専門的に取り扱う経験豊富な弁護士が直接対応させていただいております(原則的に代表弁護士である吉村が対応させて頂きます。)。裁判のリスクを踏まえながら,法律上の問題点を指摘しつつも,抽象的な法律論に終始することなく,貴社が採るべき具体的な対応策を助言いたします。早期のご相談により紛争を未然に防止することが出来た事例が多数ございます。また、その後の交渉・裁判対応においても有利な対応を取ることが出来ます。

2 継続的なご相談・コンサルティング

労使間のトラブルは一時的なものではなく,長期化することがしばしばあります。ケースバイケースに採るべき対応策や確保すべき証拠も異なりますし,時々刻々と状況が変わっていき,その都度適切な対応をとることが必要です。この対応が間違っていた為に,その後の交渉や法的措置の段階で不利な状況に立たされることもままあります。
労働問題.COMでは,経験豊富な弁護士が,継続的なご相談を受けコンサルティングを行います。初期の段階より貴社にとって有利な対応をアドバイスしていきます。それにより,その後の交渉・法的措置にとって有利な証拠を確保でき,適切な対応をとることで,万全の準備が出来ます。また,継続的に相談が出来ることにより安心して他の日常業務に専念していただくことができます。

3 貴社を代理して労働者(弁護士,労働組合)と交渉いたします。

労働者の対応は様々ですが,貴社へ要求を認めさせるために,様々な働きかけをする事が多いのが実情です。労働者が弁護士や労働組合を介して,会社に対し各種の請求を行い,交渉を求めることはよくあることです。弁護士や労働組合はこの種事案の交渉のプロですので,貴社独自で臨むことで,あらぬ言質や証拠をとられ,本来了承する必要のない要求まで認めさせられることもしばしばです。貴社独自でのご対応は,一般的には困難であることが多いといえます。
そこで,労働問題.COMでは,労使間の交渉対応に精通した弁護士が,貴社に代わって交渉の対応を致します。具体的には,貴社担当者から詳細なヒアリングを実施し,証拠の収集等の準備を行った上で,弁護士が法的根拠に基づいた通知書を出し,適切に交渉することで,貴社にとって有利な結論を,裁判を経ずに勝ち取ることも可能となります。

4 裁判対応

労働者が労働審判,仮処分,訴訟などの裁判を起こしてくる場合が近時急増しています。かかる裁判への対応は法律で訴訟代理権を独占する弁護士のみが対応することができます。 但し,労働問題を適切に対応することができるのは労働問題について豊富な経験実績を有する弁護士に他なりませんが,労働問題は極めて特殊専門領域であるため,経験実績がない又は乏しい弁護士が殆どである実情があります。
労働問題.COMでは,労働事件を専門分野とし,裁判対応の豊富な経験実績を有する弁護士が常時対応させていただいております。貴社に対し,最善の弁護活動をお約束いたします。

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参考裁判例

事業上内における暴言等を理由とする解雇等が有効と判断された事例

株式会社ミック事件

福岡地方裁判所判決 平成10年4月22日 労働判例746号53頁

(事案の概要)

被告Yはクレーンのオペレーター(運転操作員)付きリース事業を営む会社である。原告Xは、クレーンのオペレーターとしてYに雇用されていた。Xは、客先の工事現場で現場監督に対して怒鳴るなどし、言い争いになり暴力沙汰になりかけた。また同日、Xは、クレーン周辺の安全確保のためのバリケードをわざと倒しながらクレーンを移動させるなどしたため、客先の現場監督はXが安全確保に関する問題意識を欠いているとして、その是正を命じる安全衛生指示書を出し、Yは当該現場監督に謝罪し、Xに勤務の交代を命じ、かつ戒告処分をした。またXは、地の客先においても、怒鳴る等して卜ラブルを起こし、それらの行為のために戒告処分を受け、あるいは始末書を提出した。
そこで、Yは、①Xが勤務していた客先の指示を守らず、安全遵守義務を怠り客先からの厳重な抗議を受けて運転の交代を行うこととなったことは、重大な就業規則違反であると共に会社の信用を著しく失墜させ、多大な損害を与えた行為であり、また、②地の勤務地においても就業規則違反や同様の指摘を受け、再三の戒告にもかかわらず改俊の情なきものと判断され、厳重な処罰が至当であるとして、Xを諭旨解雇するに至った。それに対し,Xが右諭旨解雇処分が無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、賃金および賞与の支払いを求めた。

(裁判所の判断)

1 懲戒事由該当性

第一に懲戒事由の存否について判決は、Xが客先の現場監督に対してとった行為は、就業規則の「常に品位を保ち、会社の名誉を害し、信用を傷つけるようなこと」に該当し、また、Xが現場のバリケードを倒しながらクレーンを移動させた行為は、就業規則の「機械・器具、その地の設備は大切に取扱いしの双方に違反し、就業規則の懲戒規定に該当するとして、その存在を認めた。次に諭旨解雇処分の相当性を基礎づける地の就業規則違反事実の存否について,判決は、Xの客先でとった行為が、就業規則の「互いに協力してその職責を果たさなければならない」に違反し、「会社の名誉を害し、信用を傷つけるようなこと」に該当するとして、その存在を認めた。

2 懲戒権の濫用の有無

本件諭旨解雇が懲戒権の濫用となるか否かについて、判決は、Xの各行為が全く理由もなくなされたものではなく、そこに至った×の心情は理解できないものではないとしながらも、Xの行為は、①いずれの場合も暴言等によって取引先や同僚に不快感を与えたというにとどまらず、危険なクレーン作業においてチームワークを乱すものであり、事故を招来する原因となりうるものであって、放置できるものではない、②Yから戒告処分を受け、同じ行為を繰り返さないように何度も注意され、X自身も誓約しながら、その後の事件を起こした責任は重大である、また、③Yの下請的作業受注者としての立場からすれば、取引先に対するYの信用を失わせるものであり、営業活動に与える影響も少なくないとして、諭旨解雇処分が懲戒権濫用とはいえず、本件諭旨解雇は有効であるとした。

 

事業上内における暴言等を理由とする解雇等が無効と判断された事例

旭東広告社事件 

東京地方裁判所判決 平成21年6月16日 労働判例991号55頁

広告代理店Yに勤務していたXは正社員として営業に従事していた。Xは定年である満59歳を迎えた後も1年間の期間を定めた再雇用契約により就労を続けていた。会社Yは労働者Xに対し,給与の特別加算を約束していたが,この約束がなされなかったことを理由にXは飲酒の席で会社Yの専務に対し暴言・暴行を加えた。このことを理由にXは懲戒解雇された。

本件解雇において,交渉経過の中でXが行った暴言・暴行等の行為は懲戒事由に当たる余地があるが,懲戒雇解処分は重すぎるとして,懲戒解雇は権利濫用であり解雇無効が認められた。

 

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