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吉村労働再生法律事務所

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解雇予告手当

ご質問

当社では,中小の製造メーカーですが,この度従業員の欠員を補うために高卒の従業員を採用いたしました。しかし,入社1ヶ月後に,その採用した従業員は実は大卒であるという事実が発覚いたしました。募集では「学歴不問」としていたのですが,面接の際に,その従業員自ら高卒であると経歴を述べていたため採用したという経緯がありました。そこで,経歴詐称を理由に,即時(懲戒)解雇されました。解雇予告はなく,解雇予告手当も支払っておりませんでしたが,法律上問題はありますでしょうか?

回答

そもそもお尋ねの事案では,学歴不問とされているので,学歴詐称があったとしても重大な経歴を詐称したとはいえないでしょう。懲戒解雇をすることが難しい事案と思われます。
また,「労働者の責めに帰すべき事由」に基づく解雇は例外的に解雇予告手続を経ずとも違法とはなりませんが,経歴詐称の場合は「雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合及び雇入れの際,使用者の行う調査に対し,不採用の原因となるような経歴を詐称した場合。」でなければなりません(S31.3.1基発111号)。従って,ご相談の場合,解雇予告手続も必要となり,それを行っていない点も法律違反となります。

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  • 使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。
  • 30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均貸金を支払わなければならない(労基法20条1項)。この予告日数は1日について平均賃金を支払った場合は、その日数を短縮できる(同条2項)。
  • 予告手当の支払時期は、解雇の効力が発生する日である(即時解雇の場合は、解雇の意思表示をした日)であり,予告手当を次の貸金支払日に支払うというのは違法である。
  • 解雇予告(解雇予告手当の支払い)を行えば解雇は有効となる,と考えるのは完全に間違い。

解説

1.労基法上の解雇予告

労基法によれば,期間の定めのない雇用契約において,使用者が労働者を解雇しようとする場合,少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。
30日前に予告をしない場合は,30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(予告手当 労基法20条1項)。また,1日分の平均賃金を支払った日数だけ,予告日数を短縮することができます(同条2項)。例えば,ある労働者を5月31日をもって解雇するためには,原則として,5月1日に解雇予告をする必要がありますが,5月13日に解雇予告をしようとする場合は,予告期間は18日間となるので,平均賃金の12日分の解雇予告手当を支払わなければなりません。
また,予告手当は,解雇の効力が発生する日に支払わなければなりません(即時解雇をする場合は,解雇の意思表示をした日)。予告手当を支払うことなく行われた即時解雇の申し渡しは,予告手当が支払われるまで,又は,30日が経過するまで解雇の効力が生じません。
※ 平均賃金・・・算定しなければならない事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額(但し,臨時に支払われた賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(ex夏冬の賞与)は算入しない)を,その期間の総日数で除した金額をいう(同法12条1項本文,4項)。

2.解雇予告の除外事由

天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合,又は,労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合には,解雇予告又は解雇予告手当の支払いは不要です(同法20条1項但書)。
但し,これらの除外事由については,労働基準監督署長(労基署長)による認定(「除外認定」といいます)を受けなければなりません。もっとも,この認定は労基署長による事実の確認手続にすぎず,労基署長の認定を受けないでなされた即時解雇が認定を受けなかったために無効となることはありません。つまり,労基署長による除外認定は,即時解雇の効力の発生要件ではないため,例えば,即時解雇の意思表示をし,その翌日に除外認定を受けた場合であっても,その即時解雇の効力は,使用者が即時解雇の意思表示をした日に発生します。
なお,使用者が労基署長の除外認定を受けずに即時解雇した場合は,6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金を課される可能性があります(同法119条)。

3.解雇予告の適用除外

解雇予告義務の規定は,以下の労働者には適用されません(同法21条)。

① 日日雇い入れられる者
② 2か月以内の期間を定めて使用される者
③ 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
④ 試用期間中の者

但し,①の者が1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合,②及び③の者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合,④の者が14日を超えて使用されるに至った場合において,その後解雇しようとするときは,解雇予告等が必要となります。

3.解雇予告手続違反の解雇の効力

解雇予告の除外事由がないにもかかわらず,解雇予告又は解雇予告手当の支払いなしに即時解雇がなされた場合は,当然,使用者が罰則(同法119条)の適用を受けることは別として,その解雇の効力が生ずるかが問題となります。
この点につき,最高裁は,予告期間を置かず予告手当の支払いもしないでした解雇の通知は,「即時解雇としては効力が生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でないかぎり、通知後30日の期間を経過するか、または通知の後に予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力が生ずる」とし、相対的無効説を採用しています(細谷服装事件・最高裁判決昭35.3.11民集14巻3号)。
なお,裁判で予告手当の請求を受けた場合,未払額と同額の附加金の請求を受ける可能性があります(同法114条)。

労働問題.comの対応

① まずは経験実績が豊富な弁護士が相談を承ります。

労働問題は適用される法律や事実関係が極めて難解複雑であり,また,貴社が採るべき対応策はケースバイケースで決めざるを得ません。貴社で調査の上でのご対応が,時に誤った方法であることも多分にございます。
そこで,まず,労働問題について豊富な経験実績を有する弁護士にご相談下さい。ご相談が早ければ早いほどとりうる手段は多いのが実際ですので,トラブルが生じましたら出来るだけ早期にご相談されることをお勧めいたします。
労働問題.COMでは,常に労働問題について経験豊富な弁護士が直接対応させていただいております。裁判のリスクを踏まえながら,法律上の問題点を指摘しつつも,抽象的な法律論に終始することなく,貴社が採るべき具体的な対応策を助言いたします。早期のご相談により紛争が未然に防止することが出来た事例が多数ございます。

② 継続的なご相談・コンサルティング

労使間のトラブルは一時的なものではなく,長期化することがしばしばあります。ケースバイケースに採るべき対応策や確保すべき証拠も異なりますし,時々刻々と状況が変わっていき,その都度適切な対応をとることが必要です。この対応が間違っていた為に,その後の交渉や法的措置の段階で不利な状況に立たされることもままあります。
労働問題.COMでは,経験豊富な弁護士が,継続的なご相談を受けコンサルティングを行います。初期の段階より貴社にとって有利な対応をアドバイスしていきます。それにより,その後の交渉・法的措置にとって有利な証拠を確保でき,適切な対応をとることで,万全の準備が出来ます。また,継続的に相談が出来ることにより安心して他の日常業務に専念していただくことができます。

③ 貴社を代理して労働者(弁護士,労働組合)と交渉いたします。

労働者の対応は様々ですが,貴社へ要求を認めさせるために,様々な働きかけをする事が多いのが実情です。労働者が弁護士や労働組合を介して,会社に対し各種の請求を行い,交渉を求めることはよくあることです。弁護士や労働組合はこの種事案の交渉のプロですので,貴社独自で臨むことで,あらぬ言質や証拠をとられ,本来了承する必要のない要求まで認めさせられることもしばしばです。貴社独自でのご対応は,一般的には困難であることが多いといえます。
そこで,労働問題.COMでは,労使間の交渉対応に精通した弁護士が,貴社に代わって交渉の対応を致します。具体的には,貴社担当者から詳細なヒアリングを実施し,証拠の収集等の準備を行った上で,弁護士が法的根拠に基づいた通知書を出し,適切に交渉することで,貴社にとって有利な結論を,裁判を経ずに勝ち取ることも可能となります。

④ 裁判対応

労働者が労働審判,仮処分,訴訟などの裁判を起こしてくる場合が近時急増しています。かかる裁判への対応は法律で訴訟代理権を独占する弁護士のみが対応することができます。
但し,労働問題を適切に対応することができるのは労働問題について豊富な経験実績を有する弁護士に他なりませんが,労働問題は極めて特殊専門領域であるため,経験実績がない又は乏しい弁護士が殆どである実情があります。
労働問題.COMでは,労働事件を専門分野とし,裁判対応の豊富な経験実績を有する弁護士が常時対応させていただいております。貴社に対し,最善の弁護活動をお約束いたします。

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参考裁判例

労基法20条1項但書の「労働者の責めに帰すべき事由」について判断した事例

環境サービス事件

東京地判平成6.3.30労働判例649-6

(事案の概要)

Yは,給排水設備の維持管理等を業務とする会社であるところ,Yは,平成4年6月2日,期間を定めないで,Xを雇用した(以下,「本件雇用契約」という。)。
しかし,Yは,同年7月7日,Xに対し,経歴詐称を理由に,即時解雇する旨の意思表示をした(以下,「本件解雇」という。)。

(裁判所の判断)

裁判所は,被控訴人(筆者注:X)は,給排水工事に従事した経歴としては平成4年1月から3か月ロートルーターサービスという会社に勤務したことがあるだけで,右工事に関する経験,経歴は皆無とはいえないまでもきわめて乏しいものであったこと,被控訴人は,給排水工事についてあまり経験がなかったにもかかわらず,控訴人と本件雇用契約を締結するに際し,控訴人に対し,給排水工事について5年の経験がありどのような仕事でもできる旨虚偽の申告をし,これを信用した控訴人は被控訴人を経験者として就労させたが,被控訴人は仕事を十分にこなすことができなかったこと等を認定した。
その上で,「このように,被控訴人は,使用者たる控訴人において雇い入れをするかどうかあるいはどのような条件で雇用するかを決するための重要な判断証拠となる事項について虚偽の申告をし,これを信用した控訴人に被控訴人の労働条件の決定を誤らせたものであるが,このような事情は労基法20条1項但書の労働者の責に帰すべき事由に当たるというべきである。」と判示して,控訴人は,被控訴人に対し,本件解雇に当たり解雇予告手当を支払う義務を負わないと判断した。

(コメント)

なお,原審の簡易裁判所は,採用に際して知識・経験を誇張した事実があったとしても給与額が不当に高額に決められたとまでは言えず,また,通常の業務遂行に関して適格性を欠いたとまでは言えないとして即時解雇としての効力を認めませんでした。

タツミ保険サービス事件

大阪地判平成11.4.23労働経済判例速報1718-11

保険代理店の営業社員が,顧客の保険を無断で解約し,解約金を着服したり,競業する保険代理店を代理人とする保険契約を締結したことは,重大な背信行為であり,労基法20条1項但書の「労働者の責めに帰すべき事由」に基づく場合に該当すると判断した。

労基法20条違反の解雇の効力について判断した事例

細谷服装事件

最判昭和35.3.11判例時報218-6

(事案の概要)

Yは,洋服の製作修理を業とする者であるところ,Xは,昭和24年3月19日,Yに雇用され,以後,Yの一般庶務,帳簿記入等の業務に従事していた。
しかし,Yは,脱税のため二重帳簿の作成を命じたのにXがこれに応じなかったため,昭和24年8月4日,Xを即時解雇した。

(裁判所の判断)

裁判所は,「使用者が労働基準法20条所定の予告期間をおかず,または予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合,その通知は即時解雇としては効力を生じないが,使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り,通知後同条所定の30日の期間を経過するか,または通知の後に同条所定の予告手当の支払をしたときは,そのいずれかのときから解雇の効力を生ずるものと解すべきであって,本件解雇の通知は30日の期間経過と共に解雇の効力を生じたものとする原判決の判断は正当である。」とした。

即時解雇がなされた場合に,30日分の平均賃金の支払いをしたときに解雇の効力が生ずるとした事例

小松新聞舗事件

東京地判平成4.1.21労働判例600-14

(事案の概要)

Xは,昭和62年8月23日にYと労働契約を締結した。 しかし,Xは,Yの亀有南店において,同店の店長Aに対して暴力を働き,同人に対して約2週間の加療を要する頚椎捻挫の傷害を負わせたことが,Yの就業規則19条1号「法規にふれるなど,従業員として対面を汚した時」に該当するとして,同63年8月9日,Yより普通解雇された(以下,「本件解雇」という。)。

(裁判所の判断)

裁判所は,「(原告(筆者注:X)が)被告会社(筆者注:Y)の他店の店長に暴力をふるい加療約2週間を要する傷害をあたえたことは,被告会社の就業規則19条1号に該当するというべきであり,本件解雇が解雇権の濫用にあたることをうかがわせる事情は存在しない。また,被告会社は,労働基準法が定める30日の予告期間をおかず,解雇予告手当を提供することなく本件解雇の意思表示を行っているが,被告会社が即時解雇に固執しているものとは認められないから,本件解雇の意思表示から30日の期間が経過することによって解雇の効力が生ずるものと解すベきである。したがって,原告は本件解雇の意思表示から30日間の賃金を請求することができる(被告会社が原告の労務提供を受け入れない意思は明確であるから,原告の労務提供の有無にかかわらず原告は賃金を請求することができるというべきである。)が,それ以後の賃金を請求することはできないものといわなければならない。そして,本件解雇の意思表示から30日間の賃金の額としては平均賃金の30日分であると解するのが相当であ(る)」とした。

アクティ英会話スクール事件

大阪地判平成5.9.27労働判例646-55

(事案の概要)

Yは,英会話学校を経営しているが,米国人であるXは,平成3年4月19日,英会話の講師として,Yに雇用された。
しかし,Xは,同年7月4日,Yより即時解雇された。

(裁判所の判断)

裁判所は,「控訴人(筆者注:Y)は,(平成3年)7月4日,解雇予告手当の支払をしないで被控訴人(筆者注:X)を即時解雇した。しかし,控訴人が即時解雇に固執しているものとは認められないから,7月4日から30日の期間が経過することによって解雇の効力が生じたものというべきである。したがって,被控訴人は,7月5日以降30日分の平均賃金を請求することができるところ(前述のとおり,控訴人が被控訴人の労務の提供を受け入れない意思は明確であるから,労務提供の有無にかかわらず,被控訴人は賃金を請求することができると解すべきである。),右平均賃金の額は,被控訴人の賃金が月25万円であったこと・・に照らし,35万円であると認められ,他に右認定を覆すに足りる証拠はない。」とした。

使用者は,予告手当請求の訴訟提起後,予告手当を弁済した場合にも附加金支払義務を負担するとした事例

エビス文字盤製作所事件

横浜地判昭和43.6.12判例タイムズ226-133

(事案の概要)

Xが,Yの経営する製作所の労働者であったところ,Yが,Xを昭和42年3月25日予告期間をおかず即時解雇したが,右解雇の当時,Yは,Xに労働基準法20条に定める平均賃金の30日分に相当する24,457円の予告手当を支払わず,その後Yは,Xの請求により,3回にわたり右予告手当に相当する金員を支払った。
ことは当事者間に争いがない。

(裁判所の判断)

裁判所は,「そもそも本条の附加金制度は労働者の即時解雇に伴う使用者の解雇予告手当支払義務の不履行に対し労働者の請求により未払金額と同額の附加金の支払を裁判所が命令しうることとし,労働者に対しては訴訟によってでも権利を実行する誘い水となり,使用者側に対しては,義務の不履行を引き合わないものとして遵法を奨めてその給付の不履行の防止を図る労働基準法上の一種の公法的制裁たる性質を有するものである。ただ右附加金の支払義務発生時期は使用者が予告手当を支払わなかつた場合当然発生するものではなく,労働者の請求によって裁判所がその支払を命ずることによって初めて発生するものであり,使用者に(労基)法20条の違反があってもすでに予告手当に相当する金額の支払を完了し,(支払は訴提起前に完了していることを要するが)使用者の義務違反の状況が消滅した後においては,労働者は独立に附加金の支払だけを請求することができないものと解せられる。しかし本条の附加金制度が特定の金銭支払義務の不履行に対する公法的制裁であるとの前記趣旨に徴すれば,労働者が裁判所に訴の提起をするまでに使用者による予告手当の支払が完了すれば裁判所も附加金の支払を命じ得ないが,訴提起時より後に予告手当の支払が完了しても使用者は附加金の支払を免れえないものと解するのが当然である。けだし予告手当金を訴提起後でも裁判所が命令を発するまでに支払えば裁判所はその支払を命じえないと解すれば使用者は口頭弁論の最後の段階で予告手当の未払金を弁済することによって(労基)法114条の適用を免れてしまい,かくては本条は実質上空文化し,自発的に所定の支払をさせようとするその趣旨目的を達しえなくなるからである。そして・・裁判所が使用者に命じ得る附加金の額は訴提起の時の予告手当の未払額と同一と解するのを相当とする。」とした。

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