退職金支給日

賞与の支給日在籍要件 

社長
我が社の就業規則には,「賞与はその支給日に在籍する者に対して支給する」と規定しています。この規定について,支給日直前に定年退職日を迎える人や解雇された者にも,賞与不支給として問題はありませんでしょうか。
また,賞与支給額について,賞与の支給日直後に退職する者と,退職する予定のない者とで,差をつけることは違法でしょうか。
弁護士吉村雄二郎
賞与に関する就業規則で,支給日在籍払いの規定を設けている場合,賞与の支給日直前に定年により退職した者や,賞与の支給日直前に解雇された労働者など,自らの意思で退社日を選択し得ない立場にある者に対しても,この原則をそのまま適用してよいのでしょうか。裁判例は,こうしたケースについても,就業規則に定めをおくことによって,支給日在籍者払いの原則を適用することは許容されると判示しています。
次に,賞与の支給日直後に退職する者と,退職する予定のない者とで,差をつけることは可能でしょうか。
使用者の側からすれば,賞与には将来の貢献に対する期待分も含まれているのであって,それがさほど見込めない早期退職予定者と,それ以外の者との問に賞与額につき差が生ずるのは当然のこと考えられるのに対し,労働者の側からすれば,そのような差が生ずることが許容されるのであれば,低額の賞与となることをおそれて退職の決意を思いとどまらざるを得ず,実質的に退職の自由が制限される結果になるから,そのような取り扱いは許されるべきではないと考えられます。
賞与の支給基準について裁判例では,将来の貢献に対する期待を賞与の額に反映させることも許容する一方,実質的に退職の自由につき制約を受ける期間が約半月程度にとどまっていれば,早期退職予定者と退職予定のない者を区別して考える賞与支給規定の効力を是認し,不相当に長期間の将来の継続勤務を要件とする賞与額の算定までをも許容しているわけではなく,かつ,早期退職予定者とそれ以外の者との賞与額に2割以上の格差を設けることは許されないとしています。

賞与支給日の休業者への賞与支払い

今期の賞与支給日には,(賞与の算定期間中の全部を勤務した)出産休業者,(ほぼ半分を勤務した)育児休業者,(全く勤務していない)私傷病による休職者が各1人います。これらの者の賞与を,在籍していない者と同様に扱い,不支給としたいのですがいかがでしょうか。それとも,退職したわけではないので,計算期間の勤務日数に応じた額または在籍していて欠勤した社員と同一の算式で計算した金額を支給するのでしょうか。

産前産後休業を取得したことのみを理由に賞与を不支給とすることは,女性労働者の母性保護を図ることを目的に規定されている労基法65条の趣旨に反し認められず,無効となります。産前産後休業の日数を欠勤として扱って,賞与から減額することについては,認められるものと考えられます。
今回のケースで産前産後休業を取得している者は,賞与算定期間の全部を勤務したとのことで不就労期間はなかったのですから,減額の対象にもならず,会社としては定められた額を支給しなければなりません。
育児休業の取得を理由に,賞与を不支給とすることは,育児介護休業法が休業取得を権利として認めた趣旨を失わせることになりますから,認められません。育児休業による実際の不就労期間を欠勤同様に扱って賞与を減額することは,認められるものと考えます。
したがって,ご質問のケースでは,育児休業取得者は,賞与算定対象期間中のほぼ半分を勤務したとのことですから,不就労期間に相当する半分の期間については,欠勤者と同様に計算を行ってよいものと考えられます。
私傷病による休職制度は,法律上規定されている制度ではありません。私傷病休職制度は,私傷病により長期間労務の提供が見込めない場合に,一定期間就労義務を免除して私傷病からの回復を待つ解雇を猶予するための制度です。そのため,賞与の支給条件において,賞与算定期間中のほとんどを私傷病により休職した場合に,賞与を不支給とするとしたとしても,有効であると解されます。 今回のケースでも,賞与対象期間のほとんどが,私傷病休職でしたので,賞与を支給しないという取扱いをすることも許されるものと考えます。

 

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