年度途中の年俸減額

年俸制社員について年度途中の降格により年俸の引き下げは可能か

社長
当社は今年度から課長以上の管理職の賃金に年俸制を導入しましたが,ある課の業績が極端に悪いため,来月1日付で責任者である課長を課長代理に降格することになりました。管理職の年俸は役職と連動した等級を基準に決定しています。昨年までの月給制の時には,年度途中の降格や昇進について.当月1日付で発令し発令月から等級を変更していました。年俸制の場合でも年度途中での降格・昇進も月給制と同様に発令の月から行ってもよいでしょうか。年度途中で降職して,年俸を課長代理年収相当額に引き下げたり,課長代理の本来の給与体系である月給制に変更することは可能でしょうか。
弁護士吉村雄二郎
「降格」すなわち「降職」については,誰をどの役職に就けるかという問題であって,使用者の人事権の範囲内にある事柄であり,その裁量権を広く認めるのが一般的な考え方ですので,成績不良を理由とした課長から課長代理への降職は問題なく実施することができます。
問題は年俸の引き下げが可能かという点です。年俸制を導入した場合,対象者の年俸額は,労使の話し合いにより期間当初に確定しているので,その額を期間途中で変更することは,労働契約の変更となり,当事者の合意がなければ許されません。裁判例においてもそのように判示されています。契約や年俸に関する規程中に,役職の変更があった場合には,期の途中であっても,年俸額を変更する旨の定めが存するならば,当該条項に従って,降職者についてもその月から新たな役職により決まる年俸額を基準とする額を支給することができますが,そうした定めがまったくない場合には,すでに確定している年俸額を変更することは許されず,少なくとも当該期間中は職務権限だけ変更し年俸額は下げないという扱いにせざるを得ないでしょう。
また,年俸制の適用対象から月給制の適用対象とすることについても,契約ないし規程に根拠が存するならば可能と考えますが,そうした根拠が存しないのであれば,月給制とすることは許されません。

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